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37章 文学少女からヒロインへ
第152話 誰にも教えてなかったもんね…
しおりを挟む「また明後日ね」
「今日はありがとう。明日の代休はゆっくり休んでよ?」
「先生、ごちそうさまでした」
加藤くんと千景ちゃんをタクシーに乗せて見送ったあと、二人でお部屋を片付けた。
「なんか、いつもと同じなのに……。静かになっちゃいましたね」
同じように感じたのは、あの結花先生のお家に行った帰りだったっけ。私たち二人だけじゃ、まだ何かが足りないのかな……。
「そうだな。お風呂、先に入るか?」
「私シャワーしか浴びられないですから、先生が先でいいですよ?」
「そうだった。ごめん。じゃあ、背中を流してあげるよ」
「はい。お願いしてもいいですか?」
先生がこのお部屋を選んだ理由のひとつに、一緒に入れるくらいお風呂が大きかったということがあった。
呼ばれてバスルームに入ると、左足が濡れないように台を用意してくれていて、テーピングされていないところを濡れタオルで拭いて、背中も流してくれる。
「ありがとう……。ごめんなさい、私って昔からいつもこんなのばっかり……」
そうだよ。今に始まったことじゃない。小さかったあの頃も、転んでひざを擦りむいたときは同じようにお風呂に入れてくれたっけ。
「自分の嫁さんの背中を流して何が悪い? いつも考えすぎだ。花菜はもっと堂々としていいんだ」
背中のあとは、私の左側に結ってある三つ編みを解いて、髪の毛にシャワーを当ててくれる。これも小学生の頃から変わらない。手つきも慣れているから安心して任せてしまった。
「そういえば、橘だったかな。俺なら知っているかもって聞かれたんだけど答えられなくて。いつか聞こうと思ったんだけど、今日聞いてもいいか?」
「うん。何か気になることあった?」
「もし、答えたくなかったらいいんだ。どうして花菜の三つ編みは片方だけなのかって……」
そっか。みんな不思議がっていたんだ……。そうだよね。後ろ髪を大きく編み込んで横に流して出すスタイルはよく見るけれど、いつも片方だけって変だもんね。
今は全ての髪を下ろしているから、左側の一部だけが三つ編みの分だけ長くなっているのがよく分かる。
「ちょっと長いお話になるかもしれません。のぼせてしまうと思うので、お風呂から出たらお話しします」
「無理に答えなくていいんだ。ごめん、変なことを聞いてしまった……」
「ううん。もうお話ししてもいいと思います。お風呂を出たら用意しておきますね」
これまで、誰にも話したことのなかったこと。でも、夫婦の間に隠し事はしたくない。
「これでよし。ドライヤーは自分で出来るよな?」
「ありがとう。うん、あとは大丈夫。先に着替えて待ってますね」
髪の毛をタオルで包んでくれて、私はドライヤーでそれを乾かした後、自分の大切なものが入っている小さな箱を取り出した。
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