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35章 「担任の先生」だもん!
第142話 カードのお題は…諦めろ?
しおりを挟むその借りもの競走、名前はシンプルでルールもいたって単純明快なのだけれど、過去に毎回いろんなハプニングやエピソードが生まれることで有名で、プログラム最後のリレー以上に一番盛り上がる名物競技だと聞いていた。
借りものとなっているところがミソなんだよね。
これは、何度か練習を通してみて分かった。
「『借り物』じゃなく『借り者』競走だ」と誰かが言っていたのは本当のことで、そのカードに書かれたお題が毎回本番で話題を呼んでいるという。
連れてくるのが『○年○組の学級委員』『生徒会長』『校長先生』なんてのはまだいい。ある程度顔が分かっているし、探すのも楽だ。
お約束なのが、『中間試験の成績上位5位以内を連れてくる』なんてのに当たったらまず、それを知っていそうな人に誰かを聞き出さなきゃならない。
知り合いなら大助かり。さらに当該人物が偶然にも自分のクラスならそれこそラッキー。
よくあるのが、他のクラスの場所まで行って、顔も知らない本人を探すために呼び出すなんて光景。
こんな場合に備えて、体育祭にも関わらず試験の順位表が審査係のところに備えてある。
もっとドギマギしてしまうような問題もあるって事だし、もしそれに当たったときは『諦めろ』なんて噂も聞いたことがある。
しかもそんな無理難題カードは本番にならないと混ぜられない。そんなのに当たってしまったときは目も当てられないことになるんだって……。
また呼ばれるのは応援席にいる人、順番待ちで並んでいる人、すでにゴールした人も関係ないから、全員がいつ呼ばれるか分からない緊張に包まれる。
毎回この競技は盛り上がるのと引き換えに時間もかかるから、午前中の最後に行われるのが恒例なんだって。
「松本さん」
「あ、加藤くん」
同じ組のスタートになった。各クラスの選手ががそれぞれ一斉にスタートするから、みんなが自分のクラスの選手に注目する。
「よーい」
ピストルの音がして、まずは30メートル先の障害物まで挨拶代わりに走る。
「おい……」
「松本の足速くねぇ!?」
そんな声が後ろから聞こえた。
そう、夏休みよりも少しだけ自分へのハードルを上げた。直線だけなら足も不安なく頑張ってくれるようになった。
問題カードまでの障害物は体育委員がその場で考えて出してくる。
私たちの組に出されたのはハードル。それも飛び越えるのではなくて、その下を倒さずに潜り抜けなければならない。
倒してしまうともう一度やり直しでロスタイムになるから、通り抜けるのにもコツがある。
「松本、いいぞ!!」
一番手でそれを抜けて、問題のカードが置いてあって、それに手を伸ばす。
「うわ……」
裏返して見た瞬間、これはやられた……。瞬時に思った。冷や汗が額に浮かぶ。
『一番大切な人』
「あちゃー」
隣で加藤くんも動揺して頭を抱えている。
「どうしたの?」
この競技に限り、その場でも敵味方関係なく相談が可能だからだ。その代わり問題の交換は出来ない。
「これさぁ……やられたな……」
そう言いながら問題を見せてくれる。
「『好きな人』って、えぇ?」
今日は雲ひとつない秋晴れなのに、私と加藤くんの周りだけ、大雨警報クラスの雨雲と停電しそうなほどの雷に覆われているような気分になった。
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