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10章 相合傘と家庭訪問
第39話 お母さんの言葉の意味…
しおりを挟む先ほどよりも落ち着いているけれど、まだ小降りの雨が続く中、私の家までの道を二人で同じ傘に入って歩く。
「道まだ覚えてます?」
「まだここに住んでいたんだ」
「私はあの当時と何も変わっていませんから」
扉を開けて、お母さんが帰っていることを確認する。
「お母さんごめん、バスタオルを出してあげて?」
「花菜、どうしたの? まぁ……! 啓太くん? 入って入って!」
お母さんは先生を見てすぐにそれが誰だか分かったようだった。これなら話が早い。
「花菜、お湯のスイッチ入れたから、啓太くんにシャワー使わせて。花菜も着替えちゃいなさい」
玄関のドアさえ閉めてしまえば、昔と変わらない。
「ほら、風邪ひくから濡れたものは脱いじゃって。シャワーで暖まってね。洗濯物はなんとかするから」
最初は遠慮がちだった先生も、お母さんに言われたとおりに浴室に消えた。
「花菜、啓太くんのズボンはアイロンで乾かしちゃいな。下着と靴下はお父さんのが新品で残っていたはずだから、それ出してくるから」
言われたとおり、先生のズボンとワイシャツを受け取ってアイロンがけで乾かす。
これをハンガーに吊るして扇風機で風を当てておけば大丈夫だ。
「松本、悪いな」
「先生、外じゃないんだから安心してください」
「おまえだって先生呼びだろ」
思わず二人で顔を見合わせて笑ってしまう。
「下着類は洗っておきますね。月曜日に職員室にお持ちします。分からないようにしますから安心してください」
「悪いな」
私の制服までアイロンがけが終わる頃には、お母さんが三人分の夕ご飯を作ってくれていた。
「ご飯まで、悪いですよ」
「どうせひとり暮らしで栄養が偏っているだろうから、食べて行きなさい。今度から花菜にお弁当作らせて持っていかせるからね」
「えぇっ?!」
「どうせ作るなら二人も三人も一緒。それに予行練習にもなるでしょ」
言い返せる言葉もなく、三人で食卓を囲んだ。
「どう? 花菜はクラスで足を引っ張ってない?」
「逆によく頑張ってます。忙しいのにあれだけの成績を維持してるので。夜更かしとか体の方が心配なときもありますよ」
あまり外で日焼けをすることも、スポーツもしなくなって、同時に体も弱くなってしまったようには感じている。
「無理するなとは学校でも言っているんですけどね」
先生が私のことを他の子に気づかれない程度に気にしてくれていることも感じていた。でも、まだ1学期は今の関係に戻っていなかったから……。
「啓太くんが見ていてくれた頃とは少し変わってしまったところもあるけど……。花菜のこと、これからもお願いできる?」
「分かりました」
「よかった。これでお母さんも何があっても大丈夫だぁ」
「えっ? そっちの意味で?」
二人で思わず顔を見合わせる。
「そうよ。だってお母さん、昔から啓太くん以外に花菜の将来を頼めるとは思っていなかったもの。こうして見ると、二人ともあの当時に戻っているみたいで安心した。だからお願いね」
お母さんは明日もお仕事だと言うので、先に休んでもらうことにした。
食卓を片付けて食器まで洗い終わると、時刻は夜9時を過ぎていた。
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