まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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7章 口に出せない呼び名

第28話 やはり…あの子だ、本物だ

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 自分の紹介のあとは、生徒たちひとりずつの紹介をしてもらう。

 一応、各自の前年度資料をもらっているけれど、次の席替えの前には顔と名前を一致させておく必要があるからだ。

 順番に進めていって、とうとうその時が来た。

「次は、松本さんですね」

「はい。松本花菜です……」

 その声に、背筋が痺れたように感じた。
 きっと他の人は気づかれていないだろうが……。

 髪型も背中までのロングヘアでキューティクルの輪も見える。病的ではないけれど、透き通るような白い肌。おとなしそうな雰囲気の女子生徒だ。

 全体の見た目は確かに変わった。ただ、左耳の近くに片方だけ結ってある三つ編みは変わらない。それに耳から入って頭の中に響いた声から分かる。

 あの「花菜ちゃん」だ。間違いない。

 あの頃は外で遊ぶのが好きだったためか、ほどよく日焼けもしていたはず。

 小学校ではバスケットボールのクラブに入っていたはずなのに。今は文芸部に所属しているとは、当時を知っている人からはもはや別人だろう。

 大学で会えなかった3年強という時間で彼女がここまで変わった。何らかのタイミングであの当時の花菜ちゃんと話せる機会があればいいのだけど。

「ありがとうございました。こちらこそよろしくお願いします」

 もちろん、この場面でいきなり彼女に旧知のように話しかけることは出来ない。

 あれだけイメージが変わってしまったのであれば、当時の約束など忘れてしまっているのかもしれない。


 そのあとは教科書を配り、各委員を決めて、その日のホームルームは終了した。


「それでは、また来週からの授業で頑張りましょう」


 名簿をパタンと閉じると、何人かの人懐っこい連中が俺を取り囲んだ。


「先生、独身ですか?」

「だれか、彼女とかいるんですか?」

「そんなこと聞いて、いきなり身辺調査ですか?」

「新任の先生からは、ちゃんと情報聞き出しておく必要ありますから」

「なるほど。皆さんもお年頃ですからね」

 共学とはいえ、女子というのはやっぱり変わらないものなのか。

「僕は大学を出たばかりなので独身ですよ。彼女というより、もっと手前のお付き合いしている方も誰もいません」

 彼女たちも高校生だ。このくらいの情報は隠したところで調べればすぐに分かるし、今は特別な行動をすればすぐスマホでパシャリ&拡散だ。

 いろいろ裏で詮索されたり勝手な噂を立てられたりするくらいなら、最初から公言しておいた方が情報統制も楽なのだ。

 本当のことを言えば、もっと昔に「必ず迎えに行く」と約束した女の子はいた。それはここで出すべき情報ではないだろうし。

「ありがとうごさいましたぁ!」

「気をつけて帰ってくださいね」

 そんな生徒たちを見送って教室の窓を閉めようと誰も残っていないことを確認した時、すでに彼女……、松本花菜は教室から姿を消していた……。
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