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1章 泣かない約束
第2話 ここは私のお仕事場
しおりを挟む「春休みかぁ……」
今年は桜の開花が少し遅れていつもより遅めだ。来月の入学式の頃まで何とかもつかな。
そんなことを考えながら、学校のすぐ隣に立地する市立図書館の入り口に入った。
「お疲れさまです」
関係者以外立ち入り禁止と書かれている扉を抜けて、一度事務室に顔を出してタイムカードに出勤時間を記録する。
「花菜ちゃん、学校お疲れさま。今日も児童コーナーお願いできますか?」
「はい。分かりました」
ロッカーに学校のバックと上着を収めて、制服のベストの上からエプロンをつけて身だしなみを直す。
この図書館は3階建て。1階が会議室などの多目的ホール、2階が児童書、3階が一般書という構成になっている。
さっき「児童コーナーの担当」という話をもらったから、2階にあるキッズコーナーが私の仕事場ということだ。
今日の学校は午前中で終わりだったけれど、まだフロアは混雑していないと、仕事に入る前にざっと見ながらカウンターの裏に回って、朝から勤務に入っていてくれている先輩方に挨拶をした。
「ここにある返却本、棚に戻してきますね」
「あ、松本さんありがとう。春休みで急に利用者増えて追いつかなかったの!」
「任せてください!」
「花菜ちゃん悪いね!」
空のカートを持ってきて、返却処理が終わっている本を積みこんで、書棚に戻していく。
これも最初は要領を覚えるまでが大変だった。ジャンルや作家名ごとに積み込んでおかないと、重いカートを押しながら何度も同じところを往復しなくちゃならない。
その時に、一冊の本が目に入った。
「ここにも入れてくれたんだ……」
空色のハードカバーの絵本。どちらかと言えば幼い子向けの児童文学というよりも学生向けに近い。私はそれも元の書棚に戻して作業を続けた。
大人向けの図書は、ある程度大きさも決まってくるから、カートへ積み込むのも比較的楽なのだけど、子ども向けの書籍はそうはいかない。図鑑から紙しばい、絵本の大きさも色々だから、とくに低年齢コーナーは積み込みにもちょっとしたコツが必要なの。
ひととおり、2階のフロアの棚に返却図書を戻し終わってから、小さな子どもたち向けのコーナーに置いてあるテーブルが私のワークスペースになる。
「こんにちは、花菜おねぇちゃん」
「あ、今日も来てくれたのね?」
この子は今度の4月から幼稚園に上がるって言ってたっけ。冬場になって外で遊べない時はいつもここに来て絵本を読んでいたのをきっかけに、お母さん共々顔なじみになった。
「だって、絵本好きだもん」
「そうなんだぁ。あとで紙芝居やるね」
「やった! 待ってる!」
まだここでお仕事を始めて1年にもなっていないけれど、半年も続けていると、こんな学校では絶対に作れない交流も楽しみになっている。
「松本さんは、4月以降もいてくれるの?」
「はい、その予定です。この間、来年度のお話もしてきましたし」
先日、年度の契約更新があって、図書館側からぜひ更新をとお願いされて、私もありがたくお仕事を続けさせてもらうことが決まったばかり。しかも、発表してもいいよって告げられた時には正直驚いたよ。
「よかった。うちの子、松本さんがいないとがっかりしちゃうみたいなんです」
「えぇ? それは嬉しいです。大丈夫ですよ。しばらくお世話になるつもりですから」
そう、私の続投理由にはこういった利用者の後押しも多かったみたい。だからこそ話していいという例外的なお許しも出たのだと思うんだよね。
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