恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希

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【第2章】その涙と笑顔が嬉しくて…

30話 みんな無理しちゃって…私を泣かせるため?

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「うわ、やられた……」

 お父さんに手を引かれ、バージンロードの上に進んだ瞬間。正直にそう思った。

 考えてみれば当然だよ。ドレスを作ってもらった佐紀には日取りも場所も伝えてあるはず。

 そこから情報が回ってもおかしくない。

 席にいたのは、私のお母さんと秀一さんのご両親。佐紀をはじめとする高校時代の友人が数名。

 こんなメンバーだもん。朝からのサプライズで必死に涙腺を抑えている私に、泣いてくれと言っているようなものじゃない?

 お父さんと並んで歩きながら、佐紀に目配せをすると、彼女は悪戯っ子のように笑って返してきた。

「桜、綺麗……」

 思わずそんなため息が出たように聞こえた。

 ベールを降ろしているからまだいいけれど、このあとベールアップしたらどうするの?

 バージンロードの終わりで私たちが立ち止まり、形としては、秀一さんが私を迎えに来てくれる形になる。

「二度目だな。桜を頼むよ」

「はい」

 もう知らない……! きっと幼い頃に泣き出すのを懸命に我慢していたあの当時とそっくりな顔をしているに違いないんだもの。

「もう少し頑張れよ?」

「うん」

「あなたは、この桜を妻として生涯愛すると誓いますか?」

「はい。誓います」

 お互いにもう決して迷ったり変わることはない。いろいろあったけど、もうそれは揺るがなかった。

 昨日の夜に教えてくれたの。

 あの桃葉さんは昨年幼馴染みとご結婚されたって。だから心配はいらないと。

 あれがフラグだったなんて、気づかなかった私が鈍すぎる。

「あなたは、この秀一を生涯夫として支えあい、愛すると誓いますか?」

「はい。誓います!」

 私だって即答だった。

 世界でたった一人の愛する人とこの言葉を交わせるまで、人はどれだけ迷い、傷つけ、傷ついてくるのだろう。

 神さまとの約束を済ませて指輪を交換し、今度は二人で退場する。

「よく頑張ったな」

「うん……、もうだめぇ」

 扉の前に戻ってくると、とうとう私の涙腺が崩壊した。

「みんなひどいよぉ。こんなのずるぅい!」

 結局、みんな高速バスや新幹線で来られるからと、急きょの弾丸ツアーをやってしまったということらしかった。

「桜先輩、おめでとうございます」

「祐介君……」

「素敵でした。僕も頑張ります!」
 
 あの当時、意を決して私に告白までしてくれた彼。今では佐紀に迷惑をかけるわけにいかないと、勉強とバイトと家事で大忙しの毎日なんだって。

「今度は二人でうちに遊びに来てね。ご馳走するから」

「はい。これからもお願いします」

 予定外だったけれど、みんなで集合写真を撮り、撮影用の小型ブーケでブーケトスもやった。

 そこは予想通り、それをハイジャンプでつかみ取った佐紀がやってくる。

「もぉ、桜は泣かせるんだから、みんなもらい泣きしちゃったよ」

「佐紀先輩ズルいです。私にも桜先輩の幸せ分けてもらわないと。佐紀先輩に私もドレス作ってもらいたいです」

 一緒に最後まで張り合っていたらしいクラブの後輩である美紀ちゃんも駆けつけてくれていた。

「ごめんね。軽井沢まで来てもらって、みんなすぐに帰るんでしょ?」

「せっかく来たんだし、今日はこのあと買い物して泊まる。せっかく祐介と二人だからさ」

 佐紀と祐介君の二人もすっかり落ち着いた。彼の学業が全て終わったあとに籍を入れるんだって。

 チャペルやホテル内での撮影を終えて、私服に戻った私たち。

「みんな、ありがとう」

 ホテル側のご厚意で、レストランではなく空いているお部屋を使って昼食を出してもらい、それぞれを見送った。
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