恋の絆は虹の色 【妹でも恋していい?】

小林汐希

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【第1章】初めて、恋を始めます

3話 調理クラブに夏合宿!?

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「桜、この間の記事見たよ。相変わらずカメラ写りいいんだから」

 放課後、学校の調理室で同じ三年生の飯島いいじま佐紀さきが先日の取材記事が載った例のフリーペーパーを持ってきた。

 私は特に部活には入っていない。ただ、部活までの人数に達していない場合のクラブ活動も認められているので、この「調理クラブ」が私の放課後の居場所になっている。

 最近は女子だけじゃなくて、男子も希望者がいるので、それなりに活動は活発になってきているけれど。

 今は期末試験も終わって、夏休みを控えた金曜日。のんびりとした空気が流れて、話題はもはや夏休みの予定一色になってしまう。


「今年の夏は最後だもんねぇ。合宿しない?」

 突如、佐紀がメンバーに提案してきた。

「えぇ? 合宿ってどう報告するのよ?」

 受験だってあるし、そもそも正式に認められた部活動ではないのだから、合宿費だって全額持ち出しになっちゃう。

 私だって夏休みというハイシーズンに自宅とは言ってもお店を空けるのは気が引ける。

「無理か~」

 当たり前の話で、要するに合宿と言う名のもとに遊びに行きたいわけね。

「でも、頭に一泊くらいなら堂々と旅行って言えばいいんじゃない?」

 一番行きたいのは佐紀であるのはみんな分かっている。

「そりゃさぁ、桜みたいに頭があればさぁ…。お兄さんだっけ? 専属家庭教師いればどうにでもなるし」

 私とお兄ちゃんの存在は、昔からのことだから私も隠すようなことはしていない。

 つまり、佐紀が発起人として夏休みの旅行と言い出しても彼女の自宅では受験を控え、巻き返しを必要とするこの時期という理由では許可が下りない。

 学校のクラブ活動という名目を使って息抜きをしたいのだろう。

「あんなお兄さんいたら、他の男子なんて目に入らないよねぇ」

「でも、お兄ちゃん私のこと何とも思ってないよ」

「でも、桜の初恋ってどうなの?」

「わ、私の初恋? ……気にしたことない……」

 そんな会話をしている内に、教室の扉が開いて、話題が中断された。

「祐介お疲れさま」

「あ、お疲れさまです先輩」

 二年生の桂木かつらぎ祐介ゆうすけ君。

 大人しい感じで、あまり男子というイメージがないのは少々申し訳ないけど、私たちと一緒にいても違和感がないし、それなりに馴染んでいる。

 それどころか将来はパティシエを目指しているという希望もあって、甘いもの作りは私たちよりレパートリーが広い。

 ほんと、私たちの世代はまだ放課後のティータイムメンバーの集まりだったけれど、最近はそうでもなくなってきている。

 今年度で私たちが抜けて、その補充以上に新入生が入るとなれば、部活動への昇格も見えてくるのだけど……。


「ねぇ、祐介は夏休みはなんか予定あんの?」
 
「後半は塾の夏期講習がありますけど、前半はあまり……」

「じゃあ決まった」

 私が食器棚にお皿を片づけて戻ってくると、佐紀がニヤリと笑うと同時に私の背中に冷や汗が流れるのを感じた。
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