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第3話 間違った情報が広がる前に
しおりを挟む「のぞみ、昨日の放課後に大河先輩から呼び出し受けてたでしょ?」
教室で同じ班の北島佳英ちゃんから海斗に聞こえないくらいの声で話しかけられた。
「うん、来年度の活動予算とか計画について早く出すように言われてたんだけど……」
「やっぱり……。みんな勘違いしてるんだよなぁ」
「それがなにか関係があるの?」
大河先輩は、中学の中でもイケメンと言われていたし、私が所属している料理研究部でも女子顔負けの腕を披露してくれる。
将来はパティシエを目指したいと言っているほどだから、技術も確かだし私たち後輩への教え方も上手。
だから、3年生の同級生だけでなく私たち2年生以下の後輩たちからも先輩から声をかけられるだけで舞い上がっちゃう子も多いし、先輩の特別なポジションを欲しがる子は何人も知っている。
「そうそう、それ。でも、校庭で言われてたじゃない? あれから木村くんの動きおかしくなっちゃって、最後は突然止まるような感じになっちゃってさ。そこに突っ込まれちゃったもんだから、自分でもあんな大怪我するなんて考えていなかったと思うよ」
そんな……。それじゃあの怪我は……。直接ではないけれど私が原因で起きちゃったということ……。
「そんな……。どうしよう……。あんなに痛そうだったのに……」
昨日の様子を見ていれば分かる。
「まあ、実際の話が分かれば、のぞみが落ち込むことじゃないけどさ。耳には入れておこうと思って。木村くん頑張ってたし、応援していた子も多かったんだよ。だから、変なところからくだらない言いがかりつけられる前にと思って。でも、よかった。のぞみが木村くんとの関係をいきなり解消したとは思えなかったから」
きっと、昨日の怪我については他にも知っている子がいる。そして、海斗と私の関係を知っている子も沢山いる。
そして、大河先輩から呼び止められた私とその直後のアクシデント。
結びつけようと思えばどんなストーリーだって作り上げてしまえるのが、私も含めた女の子という生き物なんだよね……。
「佳英ちゃん、ありがとう……」
もう、その日の授業はほとんど頭に入らなかったよ。
その日、海斗はもちろん部活はお休みにしていたし、私も当面は荷物を持って一緒に登下校することを決めていたから、ゆっくりと海斗の家に帰って、一緒に宿題をすることにしたんだ。
「なぁ」
「あの……」
陽が落ちる頃に無事に宿題が終わって、私が海斗の足の包帯を巻き直していたとき、お互いの声が重なった。
「なに?」
「いや……、のぞみが先でいいよ。俺の話なんて大したことないから……」
ううん。
もう、これは幼馴染というより、それ以上の直感だったよ……。
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