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【第9部〜巨人の王国編〜】
第39話 母アシェラの秘密
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「はっ!」
突然、頭の中に浮かんで来た訃報に立ちすくんで、空を見上げた。
「どうかされましたか?陛下」
魔王アーシャが怪訝そうに聞いて来た。
「…たった今…麻里奈の生体反応が消えたわ…。信じられない。麻里奈は、私の能力の殆どを模倣していた。言うなれば、ほぼ私だったわ…」
『自動書込地図』
空中に透き通った地図が現れると、麻里奈の生体反応が消えた場所を示していた。
「これの新機能を使う時が来たわね」
「いけません、陛下!」
私が麻里奈の生体反応が消えた場所をタップすると、瞬時にその場所へ移動して姿を現した。
「ふぅ、瞬間移動とは便利ね」
巨人達は麻里奈の遺体に群がって、服を脱がせて裸にしている所だった。
「何してくれてんの!」
両手に出した練気剣で、その巨人達をメッタ斬りにすると、立ち去って行く巨人の背後に向かって呪文を唱えた。
『光之神槍』
貫通効果のある光速の槍は、次々と巨人達を殺傷して行った。
「生きて帰れると思うなよ?貴様ら」
天道神君は深い憎悪に支配されると、魔王達すら震撼するほど冷酷で冷徹になる事がある。まだ話しかけている分、ギリギリで理性を保っていたが、既に怒りで我を失う寸前であった。
「うおぉぉぉ!」
巨人達の中に斬り込むと、練気剣に最後の理性で、貫通魔法を掛けた。当たるを幸いに、片っ端から斬って捨てた。この時になると既に血に酔っており、快楽殺人鬼の様に薄ら笑みを浮かべて、周囲に血の海を巻き起こしながら突き進んで来る姿は、巨人達も恐怖を感じた。
「何を騒いでいる?残党でも現れたか?」
殺したはずの天道神君の姿を見て、奸智に長けたロキも唖然として思考回路が停止した。
「うらあ!」
ロキの両足を切断すると、地面に転げたロキに馬乗りになって、両手を斬り落とした。そして顔面に練気剣を突き刺そうとした時、嫌な予感がして咄嗟に飛び退けた。
そこへ聖炎剣が空を斬った。
「何だお前は、死んだはずだ。そうか、貴様は不死だったな?まさか本当に、不死の者などが存在しようとは」
既に私は血に酔って我を失っており、会話をする能力は低下し、狂戦士と化していた。
「うがあぁぁっ!」
振り下ろされる聖炎剣を気にもせず懐に飛び込み、左手の練気剣で弾き返すと、聖炎剣は遂に限界を超えて折れた。そこへ右手の練気剣でスルトを袈裟斬りにした。
「ぐわぁっ」
「があぁ!」
続け様に左の練気剣を一閃して、スルトの首を刎ねた。
「ひえぇぇっ、スルト様が殺されたぁ!」
巨人達は恐慌状態となって、右往左往して逃げ惑った。そこへ容赦なく斬りかかって、血の海を築いた。どれほどの時間、そうしていたのか分からない。
私が1人で先走ってしまった為に、慌てて本隊と合流した全軍が到着した時、意識を失った私が巨人達の血の海の中で、練気剣を振り回して空を斬っている姿だった。
「皇上、もう終わったのです。凄いです皇上…」
ロードの胸に抱き締められていると、我を取り戻して来た。
「巨人は?どうなった?」
ロードが周囲に視線を送って、目で答えた。
「この辺りに、もう生きている巨人達はおりません。皇上が、1人で皆殺しにしてしまわれたのです」
麻里奈が裸に剥かれている所を見て、激昂した所まではハッキリと覚えている。その後は断片的で、ロキを切り刻んでスルトと斬り合った所を何となく覚えている。鮮明な記憶では無いので、それをしたのが本当に自分であるのか、良く分からない。
パチパチパチと背後で手を叩く音が聞こえて振り返ると、驚いて目を見張った。
「お母さん!?どうして此処にいるの?」
だが母からは、これまでとは違う雰囲気を感じた。
「…私を母などと呼ぶな!穢らわしい」
今まで見た事も無いほど、冷たい目で私を見た。それに、目を合わせようともしない。
『死者蘇生!』
「えっ?嘘っ!!」
母アシェラは、巨人達を一瞬で生き返らせた。私は驚きで声も出ない。
「どうした?死者蘇生が使えるのは自分だけだとでも思っていたのか?まぁ、確かにそうだ。だが私は、お前の模倣とは違い、私を抱いた者の能力を得られると言う能力がある」
「どうやって?」
「ふふふ、この姿を見ても何も思い出さない?」
アシェラは、花井緑さんの姿に変わった。
「えっ、緑さん!?突然、姿を消して2度と会えなかったわ」
「そう、貴女が男性として生まれて来た時に、愛し合った子持ちの女は私。その時に、貴女から能力を得たのよ。ふふふ、貴女は本当は麻生佳澄さんと結ばれる運命だったけど、私が貴女を誘惑して引き裂いてあげたのよ。あははは」
ロキやトールの傷も治り、スルトまでもが生き返っていた。
「ふふふ、でもここは一旦引かせてもらうわ。私と相対したいなら、あの門を潜って来なさい。相手をしてあげるわ」
「待って、お母さん!」
「私を母と呼ぶなと言った!」
「どうして、どうしてなの?」
アシェラは、巨人達の神輿に担がれて座した。
「…良いだろう。お前には教えておいてやろう。何故これまでお前にキツく当たっていたのか理解出来るだろう…」
母アシェラから聞かされた話は、寝耳に水であった。
元々アシェラは、エルと言う巨人の神の妻であった。アシェラの美しさに横恋慕した唯一神ヤハウェが、言い掛かりを付けてエルに宣戦布告し、戦争の最中に殺した。
女は戦に勝った者の戦利品である。当然、ヤハウェがその権利を得てアシェラを凌辱した。そうして生まれて来たのがアナトなのだ。つまりアナトは、愛する夫を殺した男に犯されて生まれた子供だ。その様な子に愛情などあるはずがない。
「最初は、貴女を愛そうと努力したわ。子供には罪は無いと。でもダメだった。貴女の姿を見る度に、愛する夫と送るはずだった幸せな日々を想像してしまうの」
「お母さん…」
私は聞かされた話のショックで、話の途中から何も頭に入らなくなっていた。
「でも、貴女を生んで良かったわ。だって、これであの人を生き返らせる事が出来るのですもの」
「嫌だ。行かないで、お母さん!」
母は私に一瞥すると、もう興味は無さそうにして門の向こう側へと消えて行った。
「うああぁぁぁ…」
膝から崩れ落ちて涙が止まらず、私はいつまでも泣き続けた。
突然、頭の中に浮かんで来た訃報に立ちすくんで、空を見上げた。
「どうかされましたか?陛下」
魔王アーシャが怪訝そうに聞いて来た。
「…たった今…麻里奈の生体反応が消えたわ…。信じられない。麻里奈は、私の能力の殆どを模倣していた。言うなれば、ほぼ私だったわ…」
『自動書込地図』
空中に透き通った地図が現れると、麻里奈の生体反応が消えた場所を示していた。
「これの新機能を使う時が来たわね」
「いけません、陛下!」
私が麻里奈の生体反応が消えた場所をタップすると、瞬時にその場所へ移動して姿を現した。
「ふぅ、瞬間移動とは便利ね」
巨人達は麻里奈の遺体に群がって、服を脱がせて裸にしている所だった。
「何してくれてんの!」
両手に出した練気剣で、その巨人達をメッタ斬りにすると、立ち去って行く巨人の背後に向かって呪文を唱えた。
『光之神槍』
貫通効果のある光速の槍は、次々と巨人達を殺傷して行った。
「生きて帰れると思うなよ?貴様ら」
天道神君は深い憎悪に支配されると、魔王達すら震撼するほど冷酷で冷徹になる事がある。まだ話しかけている分、ギリギリで理性を保っていたが、既に怒りで我を失う寸前であった。
「うおぉぉぉ!」
巨人達の中に斬り込むと、練気剣に最後の理性で、貫通魔法を掛けた。当たるを幸いに、片っ端から斬って捨てた。この時になると既に血に酔っており、快楽殺人鬼の様に薄ら笑みを浮かべて、周囲に血の海を巻き起こしながら突き進んで来る姿は、巨人達も恐怖を感じた。
「何を騒いでいる?残党でも現れたか?」
殺したはずの天道神君の姿を見て、奸智に長けたロキも唖然として思考回路が停止した。
「うらあ!」
ロキの両足を切断すると、地面に転げたロキに馬乗りになって、両手を斬り落とした。そして顔面に練気剣を突き刺そうとした時、嫌な予感がして咄嗟に飛び退けた。
そこへ聖炎剣が空を斬った。
「何だお前は、死んだはずだ。そうか、貴様は不死だったな?まさか本当に、不死の者などが存在しようとは」
既に私は血に酔って我を失っており、会話をする能力は低下し、狂戦士と化していた。
「うがあぁぁっ!」
振り下ろされる聖炎剣を気にもせず懐に飛び込み、左手の練気剣で弾き返すと、聖炎剣は遂に限界を超えて折れた。そこへ右手の練気剣でスルトを袈裟斬りにした。
「ぐわぁっ」
「があぁ!」
続け様に左の練気剣を一閃して、スルトの首を刎ねた。
「ひえぇぇっ、スルト様が殺されたぁ!」
巨人達は恐慌状態となって、右往左往して逃げ惑った。そこへ容赦なく斬りかかって、血の海を築いた。どれほどの時間、そうしていたのか分からない。
私が1人で先走ってしまった為に、慌てて本隊と合流した全軍が到着した時、意識を失った私が巨人達の血の海の中で、練気剣を振り回して空を斬っている姿だった。
「皇上、もう終わったのです。凄いです皇上…」
ロードの胸に抱き締められていると、我を取り戻して来た。
「巨人は?どうなった?」
ロードが周囲に視線を送って、目で答えた。
「この辺りに、もう生きている巨人達はおりません。皇上が、1人で皆殺しにしてしまわれたのです」
麻里奈が裸に剥かれている所を見て、激昂した所まではハッキリと覚えている。その後は断片的で、ロキを切り刻んでスルトと斬り合った所を何となく覚えている。鮮明な記憶では無いので、それをしたのが本当に自分であるのか、良く分からない。
パチパチパチと背後で手を叩く音が聞こえて振り返ると、驚いて目を見張った。
「お母さん!?どうして此処にいるの?」
だが母からは、これまでとは違う雰囲気を感じた。
「…私を母などと呼ぶな!穢らわしい」
今まで見た事も無いほど、冷たい目で私を見た。それに、目を合わせようともしない。
『死者蘇生!』
「えっ?嘘っ!!」
母アシェラは、巨人達を一瞬で生き返らせた。私は驚きで声も出ない。
「どうした?死者蘇生が使えるのは自分だけだとでも思っていたのか?まぁ、確かにそうだ。だが私は、お前の模倣とは違い、私を抱いた者の能力を得られると言う能力がある」
「どうやって?」
「ふふふ、この姿を見ても何も思い出さない?」
アシェラは、花井緑さんの姿に変わった。
「えっ、緑さん!?突然、姿を消して2度と会えなかったわ」
「そう、貴女が男性として生まれて来た時に、愛し合った子持ちの女は私。その時に、貴女から能力を得たのよ。ふふふ、貴女は本当は麻生佳澄さんと結ばれる運命だったけど、私が貴女を誘惑して引き裂いてあげたのよ。あははは」
ロキやトールの傷も治り、スルトまでもが生き返っていた。
「ふふふ、でもここは一旦引かせてもらうわ。私と相対したいなら、あの門を潜って来なさい。相手をしてあげるわ」
「待って、お母さん!」
「私を母と呼ぶなと言った!」
「どうして、どうしてなの?」
アシェラは、巨人達の神輿に担がれて座した。
「…良いだろう。お前には教えておいてやろう。何故これまでお前にキツく当たっていたのか理解出来るだろう…」
母アシェラから聞かされた話は、寝耳に水であった。
元々アシェラは、エルと言う巨人の神の妻であった。アシェラの美しさに横恋慕した唯一神ヤハウェが、言い掛かりを付けてエルに宣戦布告し、戦争の最中に殺した。
女は戦に勝った者の戦利品である。当然、ヤハウェがその権利を得てアシェラを凌辱した。そうして生まれて来たのがアナトなのだ。つまりアナトは、愛する夫を殺した男に犯されて生まれた子供だ。その様な子に愛情などあるはずがない。
「最初は、貴女を愛そうと努力したわ。子供には罪は無いと。でもダメだった。貴女の姿を見る度に、愛する夫と送るはずだった幸せな日々を想像してしまうの」
「お母さん…」
私は聞かされた話のショックで、話の途中から何も頭に入らなくなっていた。
「でも、貴女を生んで良かったわ。だって、これであの人を生き返らせる事が出来るのですもの」
「嫌だ。行かないで、お母さん!」
母は私に一瞥すると、もう興味は無さそうにして門の向こう側へと消えて行った。
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