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【第9部〜巨人の王国編〜】

第34話 合流

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 私達が西洋天界に向けて出発すると直ぐに、阿弥陀如来アミターバらが合流して来た。
天道神君アナト様とお見受け致します」
 声を掛けて来た女神は、線が細くてスタイルの良い日焼けをした健康的な美女で、腕が4本あった。
「私がアナトよ。貴女は?」
「私の名前は、摩利支天マーリーチーと申します。この先で、あるじがお待ちで御座います」
あるじと言うと、阿弥陀如来アミターバよね?無事だったのね?」
「はい、巨人族にやられたのは、先遣部隊だけです。しかし、本隊が到着した時には既に遅く、神族は降伏し天帝夫婦は亡くなっており、阿修羅神族も壊滅状態でしたので兵を引き返し、東洋天界の援助を頼もうとしていたのです」
 私達と同じ考えである事に驚いた。
「それは不幸中の幸いでした。貴女達まで壊滅していたら、敵討ちも出来なかったわ。共に天界を守り抜きましょう」
 正直に言えば、魔法箱マジックボックスの中には、全ての神々の髪の毛を確保してあるから、何人死んでも生き返らせる事が出来る。私が無事なら神々の敗北は無いのだ。
 摩利支天マーリーチーの案内で先を急ぐと、筋骨隆々で屈強そうな男達が集っているのが見えた。
 近づくと、せ返る様な男の体臭が鼻についた。私は天道神君だったので、彼らとは殆どが顔馴染みだ。
「わぁ、皆んな居るね」
 嬉しくなって、思わずテンションが上がる。不動明王アチャラ降三世明王トライローキャヴィジャヤ大威徳明王ヤマーンタカなどの明王達もいたからだ。彼らは天界屈指のイケメン集団で、女神や天女達がメロメロになって追いかけている。
 美女が嫌いな男が居ない様に、イケメンが好きじゃない女なんていない。私も彼らに会って、さっきから高揚してドキドキが止まらない。
 チラッと麻里奈を見ると、イケメン達に目もくれずに、ガオと楽しそうに話している。「ご馳走様」と皮肉言って、私は目を輝かせてイケメンに色めき立った。
 だけどそのイケメン達の中心にいたのは、「絶世の美女」の称号持ちの私も足元にも及ばない美女が立っていた。
 彼女は孔雀明妃マハーマユーリーだ。孔雀明王の呼び方の方が有名だろう。だが彼女は女性なので、明王では無く明妃と呼ぶのが正しい呼び方である。
「久しぶりね、孔雀王」
 私は嫉妬して、少し嫌な呼び方をした。
陛下ビーシャアに拝謁致します」
 孔雀明妃マハーマユーリーが膝をついて、うやうやしく平伏しようとしたので、右腕を取って立たせた。平伏なんてされたら、私が高慢で嫌な女に見えるわ。それが分かっていて平伏しようとしたのなら、相当に計算高くて腹黒い女に違いない、と邪推してしまうのは、やはり私が孔雀明妃マハーマユーリーの事を快く思っていないからだろう。
「東洋天界の為に、御礼を言うわ。壊滅された先遣部隊を率いていたのは誰なの?」
馬頭明王ハヤグリーヴァで御座います」
 孔雀明妃マハーマユーリーが答えた。
馬頭明王ハヤグリーヴァと言うと、馬頭観音ね?」
「左様で御座います」
 孔雀明妃マハーマユーリーの背後から、観音菩薩アヴァローキテーシュヴァラが答えた。馬頭観音ハヤグリーヴァ観音菩薩アヴァローキテーシュヴァラの従者で、怒りを体現した明王だ。
「そう…菩薩殿、申し訳ない…」
 私は頭を下げて、涙を流した。
陛下ビーシャアのせいでは御座いません」
 しみじみとした重苦しい空気が流れた。
「ふぅ、なんだかこう言うのは嫌だね」
 魔王クラスタが口をついた。
「しぃー!」
 魔王フレイアがクラスタを睨んで、黙る様に促した。クラスタは口を尖らせて、渋々引っ込んだ。
「クラスタの言う通りね。観音菩薩アヴァローキテーシュヴァラ殿、安心して下さい。馬頭観音ハヤグリーヴァは、生き返らせる事が可能です」
 その言葉を聞いて、軍内に笑顔が戻った。
「おお、やはりそうでしたか。感謝致します、陛下ビーシャア
 観音菩薩アヴァローキテーシュヴァラが涙を流して私を拝むと、他の明王達が笑顔になって話しかけて来た。
 どうやら本当に、先遣部隊以外の被害は無いみたいだ。馬頭観音ハヤグリーヴァの敵討ちだと血気にはやったり、深追いしない冷静クールさが不気味に感じられた。
 阿弥陀如来アミターバの軍師は、釈迦か弥勒菩薩マイトレーヤだろう。感情の起伏を感じさせない冷徹さがあるのはこの2人だ。
 私は不動明王アチャラについて行き、阿弥陀如来アミターバに会った。そこは簡易的なテーブルが作られ、会議を行なえる様になっていた。
 不動明王アチャラに連れられて会議テーブルに来ると、座っていた大日如来マハーヴァイローチャナが立ち上がって挨拶をした。彼は、阿弥陀如来アミターバの高弟である。
 高弟とは高足の弟子の事で、阿弥陀如来アミターバの弟子の中で、特に優れた弟子と言う意味だ。
 手短に阿弥陀如来アミターバとも挨拶を交わすと、今後について語り食事を共に食べて、その日は早目の就寝についた。
 





 
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