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【第9部〜巨人の王国編〜】
第17話 相対する真祖・第3位階
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影の世界ではあるが、中華大陸に上陸出来た。しかし、すぐにここにも軍隊が来る事が予測された。
「ここからは、地上に出て人混みに紛れつつ、中南海を目指しましょう」
纏まらず、バラバラに目指した方が良いのかと悩んだが、戦力の分断による各個撃破を恐れた。魔王が揃っているのだから、迂闊には攻めて来れないだろうと思う。
そこからは嘘の様に、何の抵抗も無く中南海まで来れた。
「案外、簡単に来れたな?」
「完全に誘われているのが分からないか?ビゼル」
「俺は小細工を弄したりはしないからな」
項羽は似た者同士だと思い、全くその通りだと言って笑った。
「油断しないでよ?誘っていると言う事は、罠を張り巡らしていると言う事なのよ?」
2人とも、「そんな事は分かっている。小細工など噛み破ってしまえば良い」と言った。
「どうする?ロード」
「取り敢えず、中に忍び込んでから考えましょう」
私以外は、中南海がどんな所なのか知らない。知らなければ作戦の立てようもないと言う事だ。
守衛が交代する隙を突いて城壁を乗り越え、侵入に成功した。
「一旦、影の世界の高邸に行きましょう」
私は勝手知ったる高さんの屋敷に向い、疲労もあって着くなりそれぞれ部屋を決めて休む事にした。項羽やビゼルから私を守ると言う名目で、ロードは私と同室にした。
「麻里奈様、麻里奈様!」
部屋をノックして声を掛けて来たのは、人狼だった。
「どうぞ」
「失礼致します」
人狼は私に拝謁すると、真祖キュルテンが大変だと報告した。
「何があったの?」
「はい、キュルテン様は真祖第3位階・バートリ・エルジェーベト様のお力を借りようと尋ねたのですが…」
「どうしたの?」
「有無を言わさずに引き裂かれ、陽の光を浴びる拷問をされており、キュルテン様の主人である麻里奈様を呼んでおられます。真祖は陽の光にも強いのですが、それにも限度が御座います。このままでは、キュルテン様が…」
「分かった、案内して」
「お待ち下さい、皇上。吸血鬼どもは高潔を気取り、闇の住人でありながら魔族には従わず、真祖ともなれば魔王にも匹敵するほどの強さです。それが第3位階ともなれば、危険です。恐らく、私ですら勝てないかも知れません。魔王3人以上と行動して下さい」
「しかしそれでは…」
人狼は、困った表情をした。
「ロード、捕まって拷問されているのが貴女でも、私は助けに行くよ」
「…万が一その状況になれば、どうか私を見殺しにして下さい」
私は絶句した。この話しはこれ以上、ロードと話しても進展はしないだろうと思った。
「私に1人で来いと呼んでいるの?」
「いえ、人数は言われませんでした」
人数の制限が無いと言う事は、明らかに罠だろう。だが、本当に話し合いがしたいだけなら、1人で行くべきなのでは?
「皇上、絶対に1人で行ってはダメですよ。真祖に血を吸われると、快楽物質を体内に入れられます。それは、性的快楽を得たのと同じ効果があり、中毒症状が出ます。麻薬の様に、自ら血を吸われる事を欲する様になるのです。しかも奴らは本当に性交して来ます。美女を好むので、皇上は特に奴らの好みかと…」
「つまり、“鴨がネギを背負って来た”みたいになるのね?」
「例えは失礼ですが、そう言う事になるかと思われます」
ふぅ、思わず溜息を吐いた。だけど行かなければならない。キュルテンが上位の真祖に会うのは危険だと承知しながら、行かせたのは私だ。しかもキュルテンが危険を冒したのは、私の為なのだ。
その場ではロードに同意したが、私は屋敷をこっそりと抜けて、バートリの居城を目指した。私が屋敷を抜け出した事を知られるのを遅らせる為に、人狼とは別行動をした。人狼が屋敷にいれば、私が抜け出したとは思わないだろう。
私がいない事にロードは直ぐ気付くかも知れない為、全力で飛翔した。30分も飛ぶと、バートリの居城であるチェイテ城が見えて来た。堂々と正門から入ろうとすると、無数の蝙蝠が現れて渦巻くと、それは吸血鬼を形取った。
「何者だ?ここがバートリ様の居城だと知って入ろうとするのか?」
「私は麻里奈。お前達の主人に招待されて来たのよ」
「お前が?聞いてはいるが、1人か?」
「見ての通り1人よ」
(へぇ?ドラキュラのイメージのまんまじゃない。襟を立てた黒と赤のマントなんて本当にするんだ?)
少し可笑しくなって、笑いを堪えるのが苦しかった。
「貴方、名前は?」
「俺はハンス・イートンだ。階位は子爵だ」
「へぇ」
階位なんて言われても分からないよ。私は庶民だよ…いや、魔界の皇帝って事で良いのかな?
ハンスに案内されて、後ろをついて行く。すると、キュルテンの両手足が斬り落とされ、鎖に繋がれて日光を浴びさせられているのが見えた。陽の光に弱い吸血鬼は、日光で身体が発火して、全身が真っ赤な炎に包まれていた。
「バートリ!お望み通り来たわ!キュルテンを解放して!」
私が叫ぶと、背後の門が音を立てて閉められた。
「ようこそ!我がチェイテ城へ」
姿を現したのは、妖艶な美女だった。彼女の顔を眺めていると、肖像画を思い出した。バートリ・エルジェーベトは、エリザベート・バートリとしての名前の方が有名だ。
実在したバートリは、トランシルヴァニア公国の中で最も有力な貴族であり、ポーランド王の姪にして、トランシルヴァニア公やハンガリー王国の宰相も彼女の従兄弟であった。
バートリを有名にしたのは、拷問器具として有名な「鉄の処女」を開発し、攫った領地内の町娘や貴族の娘達を殺して、その血で沐浴していたからだ。処女の血を浴びると、己の美貌が保てると信じていたのだ。
また、性器を切り取り、膣を取り出してはそれを見て興奮し、性欲を満たしていたと言う。
更には体調が悪い時などは、生きたまま娘達の顔や腕、胸を食いちぎって食べた。人肉は万病に効く薬だと信じていたのだ。これは彼女だけでは無く、古代中国でもずっと信じられ、人肉を喰らっていた。
「ほほほほ、愚かよな。罠と知りつつ1人で来た愚か者。無謀と勇気を履き違えたか?」
「バートリ!キュルテンを返して!交渉の使者に来た者にこの仕打ち、恥ずかしくないの?」
「ほほほほ、交渉?お前は自分が喰らった牛や豚と交渉などしたのかぇ?」
バートリが右手を挙げると、他の吸血鬼とは明らかに纏っている空気が違う者が2人現れた。
「その者らは、真祖・第5位階と第6位階だ。お前たち!好きなだけその女の血を吸い、好きなだけ犯して良い。妾を楽しませよ!」
「私に協力してくれるつもりは無いの!?」
「オホホホ、まだ言うのかぇ?頭が緩いんじゃないのかぃ、この娘は?」
真祖2人がかりでは部が悪いのは承知している。だが何の策も無しに、敵の本拠地に赴いたりはしない。
「ギャアァ!」
私に触れた第6位階の真祖の右手が燃え上がった。
「まさか聖水か?小癪な真似を!」
「聖水?ノンノンノン。神聖魔法よ」
真祖は騒ついた。
「神聖魔法だと?まさか貴様、退魔師か吸血鬼狩か?」
「そのどちらでも無いわ。私は天道神君アナトの娘よ」
「豊穣の女神の娘だと?」
バートリは、第5位階と第6位階の真祖を下がらせた。
「お前は、妾が自ら喰ろうてやろう。誰にも喰わせん。妾の獲物じゃ」
ヨダレを垂らす様は、本気で私を食おうとしていて、恐怖を感じた。
「お前を喰らえば、永遠の若さと美しさが保てる!」
それは私では無くて、瑞稀の都市伝説だ!とツッコミ入れたかった。
「ここからは、地上に出て人混みに紛れつつ、中南海を目指しましょう」
纏まらず、バラバラに目指した方が良いのかと悩んだが、戦力の分断による各個撃破を恐れた。魔王が揃っているのだから、迂闊には攻めて来れないだろうと思う。
そこからは嘘の様に、何の抵抗も無く中南海まで来れた。
「案外、簡単に来れたな?」
「完全に誘われているのが分からないか?ビゼル」
「俺は小細工を弄したりはしないからな」
項羽は似た者同士だと思い、全くその通りだと言って笑った。
「油断しないでよ?誘っていると言う事は、罠を張り巡らしていると言う事なのよ?」
2人とも、「そんな事は分かっている。小細工など噛み破ってしまえば良い」と言った。
「どうする?ロード」
「取り敢えず、中に忍び込んでから考えましょう」
私以外は、中南海がどんな所なのか知らない。知らなければ作戦の立てようもないと言う事だ。
守衛が交代する隙を突いて城壁を乗り越え、侵入に成功した。
「一旦、影の世界の高邸に行きましょう」
私は勝手知ったる高さんの屋敷に向い、疲労もあって着くなりそれぞれ部屋を決めて休む事にした。項羽やビゼルから私を守ると言う名目で、ロードは私と同室にした。
「麻里奈様、麻里奈様!」
部屋をノックして声を掛けて来たのは、人狼だった。
「どうぞ」
「失礼致します」
人狼は私に拝謁すると、真祖キュルテンが大変だと報告した。
「何があったの?」
「はい、キュルテン様は真祖第3位階・バートリ・エルジェーベト様のお力を借りようと尋ねたのですが…」
「どうしたの?」
「有無を言わさずに引き裂かれ、陽の光を浴びる拷問をされており、キュルテン様の主人である麻里奈様を呼んでおられます。真祖は陽の光にも強いのですが、それにも限度が御座います。このままでは、キュルテン様が…」
「分かった、案内して」
「お待ち下さい、皇上。吸血鬼どもは高潔を気取り、闇の住人でありながら魔族には従わず、真祖ともなれば魔王にも匹敵するほどの強さです。それが第3位階ともなれば、危険です。恐らく、私ですら勝てないかも知れません。魔王3人以上と行動して下さい」
「しかしそれでは…」
人狼は、困った表情をした。
「ロード、捕まって拷問されているのが貴女でも、私は助けに行くよ」
「…万が一その状況になれば、どうか私を見殺しにして下さい」
私は絶句した。この話しはこれ以上、ロードと話しても進展はしないだろうと思った。
「私に1人で来いと呼んでいるの?」
「いえ、人数は言われませんでした」
人数の制限が無いと言う事は、明らかに罠だろう。だが、本当に話し合いがしたいだけなら、1人で行くべきなのでは?
「皇上、絶対に1人で行ってはダメですよ。真祖に血を吸われると、快楽物質を体内に入れられます。それは、性的快楽を得たのと同じ効果があり、中毒症状が出ます。麻薬の様に、自ら血を吸われる事を欲する様になるのです。しかも奴らは本当に性交して来ます。美女を好むので、皇上は特に奴らの好みかと…」
「つまり、“鴨がネギを背負って来た”みたいになるのね?」
「例えは失礼ですが、そう言う事になるかと思われます」
ふぅ、思わず溜息を吐いた。だけど行かなければならない。キュルテンが上位の真祖に会うのは危険だと承知しながら、行かせたのは私だ。しかもキュルテンが危険を冒したのは、私の為なのだ。
その場ではロードに同意したが、私は屋敷をこっそりと抜けて、バートリの居城を目指した。私が屋敷を抜け出した事を知られるのを遅らせる為に、人狼とは別行動をした。人狼が屋敷にいれば、私が抜け出したとは思わないだろう。
私がいない事にロードは直ぐ気付くかも知れない為、全力で飛翔した。30分も飛ぶと、バートリの居城であるチェイテ城が見えて来た。堂々と正門から入ろうとすると、無数の蝙蝠が現れて渦巻くと、それは吸血鬼を形取った。
「何者だ?ここがバートリ様の居城だと知って入ろうとするのか?」
「私は麻里奈。お前達の主人に招待されて来たのよ」
「お前が?聞いてはいるが、1人か?」
「見ての通り1人よ」
(へぇ?ドラキュラのイメージのまんまじゃない。襟を立てた黒と赤のマントなんて本当にするんだ?)
少し可笑しくなって、笑いを堪えるのが苦しかった。
「貴方、名前は?」
「俺はハンス・イートンだ。階位は子爵だ」
「へぇ」
階位なんて言われても分からないよ。私は庶民だよ…いや、魔界の皇帝って事で良いのかな?
ハンスに案内されて、後ろをついて行く。すると、キュルテンの両手足が斬り落とされ、鎖に繋がれて日光を浴びさせられているのが見えた。陽の光に弱い吸血鬼は、日光で身体が発火して、全身が真っ赤な炎に包まれていた。
「バートリ!お望み通り来たわ!キュルテンを解放して!」
私が叫ぶと、背後の門が音を立てて閉められた。
「ようこそ!我がチェイテ城へ」
姿を現したのは、妖艶な美女だった。彼女の顔を眺めていると、肖像画を思い出した。バートリ・エルジェーベトは、エリザベート・バートリとしての名前の方が有名だ。
実在したバートリは、トランシルヴァニア公国の中で最も有力な貴族であり、ポーランド王の姪にして、トランシルヴァニア公やハンガリー王国の宰相も彼女の従兄弟であった。
バートリを有名にしたのは、拷問器具として有名な「鉄の処女」を開発し、攫った領地内の町娘や貴族の娘達を殺して、その血で沐浴していたからだ。処女の血を浴びると、己の美貌が保てると信じていたのだ。
また、性器を切り取り、膣を取り出してはそれを見て興奮し、性欲を満たしていたと言う。
更には体調が悪い時などは、生きたまま娘達の顔や腕、胸を食いちぎって食べた。人肉は万病に効く薬だと信じていたのだ。これは彼女だけでは無く、古代中国でもずっと信じられ、人肉を喰らっていた。
「ほほほほ、愚かよな。罠と知りつつ1人で来た愚か者。無謀と勇気を履き違えたか?」
「バートリ!キュルテンを返して!交渉の使者に来た者にこの仕打ち、恥ずかしくないの?」
「ほほほほ、交渉?お前は自分が喰らった牛や豚と交渉などしたのかぇ?」
バートリが右手を挙げると、他の吸血鬼とは明らかに纏っている空気が違う者が2人現れた。
「その者らは、真祖・第5位階と第6位階だ。お前たち!好きなだけその女の血を吸い、好きなだけ犯して良い。妾を楽しませよ!」
「私に協力してくれるつもりは無いの!?」
「オホホホ、まだ言うのかぇ?頭が緩いんじゃないのかぃ、この娘は?」
真祖2人がかりでは部が悪いのは承知している。だが何の策も無しに、敵の本拠地に赴いたりはしない。
「ギャアァ!」
私に触れた第6位階の真祖の右手が燃え上がった。
「まさか聖水か?小癪な真似を!」
「聖水?ノンノンノン。神聖魔法よ」
真祖は騒ついた。
「神聖魔法だと?まさか貴様、退魔師か吸血鬼狩か?」
「そのどちらでも無いわ。私は天道神君アナトの娘よ」
「豊穣の女神の娘だと?」
バートリは、第5位階と第6位階の真祖を下がらせた。
「お前は、妾が自ら喰ろうてやろう。誰にも喰わせん。妾の獲物じゃ」
ヨダレを垂らす様は、本気で私を食おうとしていて、恐怖を感じた。
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