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【第9部〜巨人の王国編〜】
第15話 進撃前夜
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影の世界を抜けて人間界に出るのは、人間である私には簡単だ。しかし魔族が人間界に来るには、人間界から召喚されるか、門を潜るしか無い。
楊と事を構えると言う事は、戦争になると言う事だ。そして我々は、人類の敵と見做されている魔族だ。だから中国vs.魔族では無く、全人類が我々に敵対する可能性が高い。
「大軍を引き連れれば、そうなるでしょう」
丞相であり、軍師でもあるルシエラが言った。言わんとする事は理解出来る。少数精鋭を送り込み、国を敵に回すのでは無くて、最高指導部のメンバーだけを暗殺すれば良いと言うのだろう。
「敵の正体がXNUMX人であるならば、敵は強大だ。こちらも魔王クラスで当たらなければ勝ち目は無い」
私が曹を倒した為、残りは6人だ。だから私を除いて、5人来れば良い計算だ。しかし、高さんを敵視したくは無い。
「最高指導部メンバーの中に女が1人いる。戚令姿と言う女だ。あいつだけは私がこの手で殺す」
「その女が何か恨みを買う様な真似をしたのですか?」
「思い出すだけでも腹立たしい。あの女は私の顔に尿をかけたのよ」
「何と陛下の顔に?」
「陛下に何と言う無礼を…許せん…」
魔王達は憤った。
「俺は絶対に行くぞ!XNUMX人を皆殺しにしてやる」
ビゼルは息巻いて言った。
「馬鹿、それだと陛下も入る事になるだろう」
魔王ハルバートは呆れた顔をした。
「馬鹿とは何だ!」
単細胞なビゼルは、ハルバートに掴みかかりそうな勢いで食ってかかった。
「鎮まれ!陛下の御前ぞ!」
フレイアは、顔色を変えて怒鳴った。
「では行く者をどうやって決める?」
「ルシエラには来て欲しいが、魔界を守る者が必要だ。先ず、この私ロードが行く」
「何勝手に決めてんだ!」
「そしてビゼル、お前もだ!」
「お、俺…!?」
ついて行く気が満々だったビゼルは、押し黙った。
「何だかんだ言って、お前は戦力になるからな」
「お、おう。任せておけ!」
ビゼルは明らかに機嫌が良くなった。
「それからアーシャ、お前の時空魔法は必要になるだろう」
「私!私も連れて行ってよ!」
クラスタが手を挙げたが、ロードは首を振って断った。
「お前は、万が一の援軍として待機していて欲しい」
「援軍…?」
そう言われると反論出来ずに、大人しく聞いた。
「他にはフィーロとミューズにお願いしたい」
2人とも頷いて従った。
「では皇上、最高指導部メンバーの知っている情報を教えて下さい」
私は知っている限りの情報を話した。高さんの事も話し、傷付けないで欲しいとお願いした。
「…ですが、もしも攻撃されたなら、反撃は致します」
私は、その時は仕方がないと承知した。
「ロード、地上の情報は小まめに送っておくれ!」
ロードはルシエラに、「承知した」と答えた。そして明後日、出発する事となった。
「義妹、何故私を連れて行かないのかしら?」
フレイアはキセルで煙を吐きながら、ロードに尋ねた。
「義姉には万が一、我々が討たれた時に指揮をとってもらいたいんだ」
「やはり厳しいと思う?」
「…皇上がよく1人で戦えたと思うよ。恐らく、高と言う男の手助けのお陰だろうね?」
「そうよねぇ…。NXNUMX人が7人も相手だもの、生命が幾つあっても足りないわ」
フレイアは遠くを見つめて言った。目に涙を浮かべ、泣くのを堪えているみたいだった。
「恐らく、全員無事で戻る事は無いだろう」
それが分かっていたからこそ、10人の魔王のうち半数しか連れて行かないのだ。ロードの性格的に、麻里奈に何かあれば生命を捨てて守ろうとするだろう。
「今夜は飲もう。とっておきの酒があるんだ」
これが今生の別れとなるかも知れ無い。ロードとフレイアは、生きるも死ぬも同じと義姉妹の契りを交わした仲だ。
麻里奈は瑞稀では無い。だから誰か死んでも生き返らせる事は出来ない。それはアーシャやフィーロ、ミューズにビゼルも同じだ。
だが、何があっても皇上だけは守る、その覚悟を秘めて戦いに挑むのだ。
義姉妹は無言で酒を酌み交わすと、時折遠くを見つめた。
「こんな所で何を?」
城で最も高い場所から城下を眺めていた私に、魔王ルシエラが声を掛けて来た。
「…いえ、瑞稀が羨ましい…皆んなに慕われて。瑞稀の為なら、生命を投げ出しても惜しく無いと…」
「それは少し、見方が違います。陛下の為なら、生命を捨てても惜しくは無いと言うのは正しい。ですが、貴女も陛下なのですよ?確かに禁呪によって誕生した異端児かも知れません。ですがその身体は、陛下が生んだ娘を媒介にしております。つまり、その身体の50%は、陛下の血を引いております。更には自身の負の感情を移して誕生したのが貴女なのです。どうです?貴女は元々、陛下自身なのですよ。その上で光の心まで得たのです。まだ闇の心が強い為、光の力を使い切れておりませんが、いずれ使える様になるはずです」
「…もし、そうなったら…闇は消えてしまうのでしょうか?」
「ふふふ、貴女達は元々は1つだったのです。消えるも何も無いでしょう?また1つに戻るだけです。ただ、その時は1つの身体に2つの自我が残るのか、別の何かになるのか分かりません。ですが、闇だけでなく、光も今まで通りではいられないでしょうね」
それを聞くと私は、肩を落として寝室に戻った。
「陛下、どうかご無事で。これにはもっと恐ろしい陰謀が隠されている気がするのです…」
ルシエラは、立ち去る麻里奈の背に向けて呟いた。
楊と事を構えると言う事は、戦争になると言う事だ。そして我々は、人類の敵と見做されている魔族だ。だから中国vs.魔族では無く、全人類が我々に敵対する可能性が高い。
「大軍を引き連れれば、そうなるでしょう」
丞相であり、軍師でもあるルシエラが言った。言わんとする事は理解出来る。少数精鋭を送り込み、国を敵に回すのでは無くて、最高指導部のメンバーだけを暗殺すれば良いと言うのだろう。
「敵の正体がXNUMX人であるならば、敵は強大だ。こちらも魔王クラスで当たらなければ勝ち目は無い」
私が曹を倒した為、残りは6人だ。だから私を除いて、5人来れば良い計算だ。しかし、高さんを敵視したくは無い。
「最高指導部メンバーの中に女が1人いる。戚令姿と言う女だ。あいつだけは私がこの手で殺す」
「その女が何か恨みを買う様な真似をしたのですか?」
「思い出すだけでも腹立たしい。あの女は私の顔に尿をかけたのよ」
「何と陛下の顔に?」
「陛下に何と言う無礼を…許せん…」
魔王達は憤った。
「俺は絶対に行くぞ!XNUMX人を皆殺しにしてやる」
ビゼルは息巻いて言った。
「馬鹿、それだと陛下も入る事になるだろう」
魔王ハルバートは呆れた顔をした。
「馬鹿とは何だ!」
単細胞なビゼルは、ハルバートに掴みかかりそうな勢いで食ってかかった。
「鎮まれ!陛下の御前ぞ!」
フレイアは、顔色を変えて怒鳴った。
「では行く者をどうやって決める?」
「ルシエラには来て欲しいが、魔界を守る者が必要だ。先ず、この私ロードが行く」
「何勝手に決めてんだ!」
「そしてビゼル、お前もだ!」
「お、俺…!?」
ついて行く気が満々だったビゼルは、押し黙った。
「何だかんだ言って、お前は戦力になるからな」
「お、おう。任せておけ!」
ビゼルは明らかに機嫌が良くなった。
「それからアーシャ、お前の時空魔法は必要になるだろう」
「私!私も連れて行ってよ!」
クラスタが手を挙げたが、ロードは首を振って断った。
「お前は、万が一の援軍として待機していて欲しい」
「援軍…?」
そう言われると反論出来ずに、大人しく聞いた。
「他にはフィーロとミューズにお願いしたい」
2人とも頷いて従った。
「では皇上、最高指導部メンバーの知っている情報を教えて下さい」
私は知っている限りの情報を話した。高さんの事も話し、傷付けないで欲しいとお願いした。
「…ですが、もしも攻撃されたなら、反撃は致します」
私は、その時は仕方がないと承知した。
「ロード、地上の情報は小まめに送っておくれ!」
ロードはルシエラに、「承知した」と答えた。そして明後日、出発する事となった。
「義妹、何故私を連れて行かないのかしら?」
フレイアはキセルで煙を吐きながら、ロードに尋ねた。
「義姉には万が一、我々が討たれた時に指揮をとってもらいたいんだ」
「やはり厳しいと思う?」
「…皇上がよく1人で戦えたと思うよ。恐らく、高と言う男の手助けのお陰だろうね?」
「そうよねぇ…。NXNUMX人が7人も相手だもの、生命が幾つあっても足りないわ」
フレイアは遠くを見つめて言った。目に涙を浮かべ、泣くのを堪えているみたいだった。
「恐らく、全員無事で戻る事は無いだろう」
それが分かっていたからこそ、10人の魔王のうち半数しか連れて行かないのだ。ロードの性格的に、麻里奈に何かあれば生命を捨てて守ろうとするだろう。
「今夜は飲もう。とっておきの酒があるんだ」
これが今生の別れとなるかも知れ無い。ロードとフレイアは、生きるも死ぬも同じと義姉妹の契りを交わした仲だ。
麻里奈は瑞稀では無い。だから誰か死んでも生き返らせる事は出来ない。それはアーシャやフィーロ、ミューズにビゼルも同じだ。
だが、何があっても皇上だけは守る、その覚悟を秘めて戦いに挑むのだ。
義姉妹は無言で酒を酌み交わすと、時折遠くを見つめた。
「こんな所で何を?」
城で最も高い場所から城下を眺めていた私に、魔王ルシエラが声を掛けて来た。
「…いえ、瑞稀が羨ましい…皆んなに慕われて。瑞稀の為なら、生命を投げ出しても惜しく無いと…」
「それは少し、見方が違います。陛下の為なら、生命を捨てても惜しくは無いと言うのは正しい。ですが、貴女も陛下なのですよ?確かに禁呪によって誕生した異端児かも知れません。ですがその身体は、陛下が生んだ娘を媒介にしております。つまり、その身体の50%は、陛下の血を引いております。更には自身の負の感情を移して誕生したのが貴女なのです。どうです?貴女は元々、陛下自身なのですよ。その上で光の心まで得たのです。まだ闇の心が強い為、光の力を使い切れておりませんが、いずれ使える様になるはずです」
「…もし、そうなったら…闇は消えてしまうのでしょうか?」
「ふふふ、貴女達は元々は1つだったのです。消えるも何も無いでしょう?また1つに戻るだけです。ただ、その時は1つの身体に2つの自我が残るのか、別の何かになるのか分かりません。ですが、闇だけでなく、光も今まで通りではいられないでしょうね」
それを聞くと私は、肩を落として寝室に戻った。
「陛下、どうかご無事で。これにはもっと恐ろしい陰謀が隠されている気がするのです…」
ルシエラは、立ち去る麻里奈の背に向けて呟いた。
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