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【第9部〜巨人の王国編〜】
第13話 瑞稀(アナト)の存在
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「う~…ん、えっ!?」
しまった、いつの間にか寝ていたみたいだ。周囲を見渡すと、かつての魔王達が既に集まっており、私を興味深そうに見ていた。
「んっ?」
両手両足が、椅子に鎖で繋がれている事に気が付いた。
「どう言う事?」
「どうもこうも無いだろ?お前は陛下の敵だ。よくも抜け抜けと来れたものだ」
魔王ビゼルが言うと、他の魔王達も私を睨み、蔑んだ目で見ていた。
(嗚呼、やはり来るのでは無かった)
後悔した。皆んな瑞稀の信奉者であり、ただの君臣以上の絆がある。それに比べて私は、忌み嫌われる存在だ。
「瑞稀の仇を取ろうと思ったけど…もう良い…殺して…疲れたわ…」
「お前が陛下の仇討ちだと?笑わせるな!言え、何を企んで魔界に来た?」
「…力を貸して欲しくて来たのよ。来るんじゃなかったわ」
「では望み通り殺してやろう。だが楽に死ねると思うなよ?先ずは俺が味見した後で、1万の手下にも回させる。それから身体を少しずつ切り刻んでやろう」
その瞬間、私は舌を噛んだ。魔王ビゼルなら本当にやるからだ。噛みちぎられた舌半分が喉奥に落ち、気道を塞いで窒息してもがき、括り付けられた椅子に爪が食い込むほど掴んで爪が剥がれて指先から血を流した。身体が痙攣して筋肉が緩み失禁すると、意識が遠退いて口から血を垂らした。
意識を取り戻すと、ベッドに横たわっていた。しかし手足は拘束されたままで、口には猿ぐつわがされていた。わざわざ介抱してまで拷問するつもりか?と思い、これから私がされる事に絶望した。
「気が付いたな?」
目を泳がせると、声の主は魔王ビゼルだった。そしてベッドに腰掛けて、私の胸を触り出した。どうせ犯すなら、せめて意識の無い間にして欲しかった。嫌がる私を見て興奮するのも、込みなのだろうけども。
今度は猿ぐつわをされているので、舌を噛んで自殺を図る事が出来ない。諦めて目を閉じ、薄っすらと涙を浮かべた。
「そのくらいにしておくんだな、ビゼル!」
室内に入って来たのは、魔王ロードだった。
「以前の様な邪悪さを全く感じないな。何故だか寧ろ、皇上の存在を強く感じる。それに不死者では無くなったのは何故だ?」
質問に答える為に一時的に猿ぐつわを外され、私は瑞稀の光が身体の中に入ったこと、焼け付く様な熱さを感じて気が付いたら不死者では無くなっており、肉体を得ていたことなどを話した。
「嘘は言ってないな…」
「どう言う事だ?分かる様に説明しろ!」
「待て、推論の確証を得る」
魔王ロードは『神眼」のスキルを使うと驚いて震え、涙を流して平伏した。
「皇上…」
魔王ロードが皇上と呼ぶ者は、瑞稀だけだ。その様子を見た他の魔王達が、ロードに尋ねた。
「一体、何だと言うのだ?」
「何故もっと早く気付けなかったのか、自分の愚かさに恥いるばかりだ」
魔王達は顔を見合わせた。察しの良い者はまさかと思い、高揚して興奮が隠せないでいた。
「プロテクトが掛かって使用出来ないでいるが、麻里奈には『Game Start』のスキルがある」
察しの悪いビゼルはイライラし、察しの良い者が驚いて言った。
「信じられん、『Game Start』は陛下の固有能力のはずだ!それが使えなくとも、ステイタスにあると言う事は…」
「だからどう言う事なんだ?勿体振らずに早く教えろよ!」
「つまり今の麻里奈は、陛下が封印されている状態だと言う事だ」
その場にいた皆が、驚愕と喜びの表情を見せた。
「思えば麻里奈は、皇上が禁呪で生き返らせ、己の負の感情を得て誕生した者。つまり元々、皇上自身だったとも言える存在だ。皇上が消滅する寸前に、自らの一部を麻里奈に移したのかも知れない」
「それは、どう言う事になるのよ?」
私は不安になり尋ねた。
「お前は、いや貴女は皇上の負から生まれた、つまり闇の存在。我々の知る皇上は闇を排除した言わば光。だが、今の貴女の中には光と闇の両方がある。それが融合するのか、それとも闇と言う存在が消えて、光としての自我が芽生えるのか分からない。後者であるならば、貴女の身体を借りて皇上の復活だ」
私は絶句し、他の魔王達は色めき立った。
「おお、陛下が復活されるかも知れないのだな?」
「ははは、あの陛下が死ぬなんて思ってなかったわ!あははは」
アナトの自我が芽生えれば、今の麻里奈としての私はどうなる?消えて無くなるに違いない。死ぬのは怖く無い。だが高さんは、私が消えてしまったらどう思うのだろうか?失いたく無いものが出来ると、死は恐怖となる。自分と言う存在が消えるなら、それは死と同義である。
「嫌だ…消えたく無い…」
か細い声で呟き、涙を流した。
「これで分かっただろう?何故、私が平伏したのかを。麻里奈は、皇上である」
皆、歓声を上げた。直ぐに私の拘束を解いた。
「全ての魔族はこれより貴女様を皇上と崇め、絶対の忠誠を誓います!」
魔王以下、魔族達は声を揃えて万歳三唱をした。
「陛下、万歳、万歳、万万歳!」
こうして私は当初の目的を果たしたが、自分の中に瑞稀が存在し、いつ入れ替わるのかと怯える事となった。
しまった、いつの間にか寝ていたみたいだ。周囲を見渡すと、かつての魔王達が既に集まっており、私を興味深そうに見ていた。
「んっ?」
両手両足が、椅子に鎖で繋がれている事に気が付いた。
「どう言う事?」
「どうもこうも無いだろ?お前は陛下の敵だ。よくも抜け抜けと来れたものだ」
魔王ビゼルが言うと、他の魔王達も私を睨み、蔑んだ目で見ていた。
(嗚呼、やはり来るのでは無かった)
後悔した。皆んな瑞稀の信奉者であり、ただの君臣以上の絆がある。それに比べて私は、忌み嫌われる存在だ。
「瑞稀の仇を取ろうと思ったけど…もう良い…殺して…疲れたわ…」
「お前が陛下の仇討ちだと?笑わせるな!言え、何を企んで魔界に来た?」
「…力を貸して欲しくて来たのよ。来るんじゃなかったわ」
「では望み通り殺してやろう。だが楽に死ねると思うなよ?先ずは俺が味見した後で、1万の手下にも回させる。それから身体を少しずつ切り刻んでやろう」
その瞬間、私は舌を噛んだ。魔王ビゼルなら本当にやるからだ。噛みちぎられた舌半分が喉奥に落ち、気道を塞いで窒息してもがき、括り付けられた椅子に爪が食い込むほど掴んで爪が剥がれて指先から血を流した。身体が痙攣して筋肉が緩み失禁すると、意識が遠退いて口から血を垂らした。
意識を取り戻すと、ベッドに横たわっていた。しかし手足は拘束されたままで、口には猿ぐつわがされていた。わざわざ介抱してまで拷問するつもりか?と思い、これから私がされる事に絶望した。
「気が付いたな?」
目を泳がせると、声の主は魔王ビゼルだった。そしてベッドに腰掛けて、私の胸を触り出した。どうせ犯すなら、せめて意識の無い間にして欲しかった。嫌がる私を見て興奮するのも、込みなのだろうけども。
今度は猿ぐつわをされているので、舌を噛んで自殺を図る事が出来ない。諦めて目を閉じ、薄っすらと涙を浮かべた。
「そのくらいにしておくんだな、ビゼル!」
室内に入って来たのは、魔王ロードだった。
「以前の様な邪悪さを全く感じないな。何故だか寧ろ、皇上の存在を強く感じる。それに不死者では無くなったのは何故だ?」
質問に答える為に一時的に猿ぐつわを外され、私は瑞稀の光が身体の中に入ったこと、焼け付く様な熱さを感じて気が付いたら不死者では無くなっており、肉体を得ていたことなどを話した。
「嘘は言ってないな…」
「どう言う事だ?分かる様に説明しろ!」
「待て、推論の確証を得る」
魔王ロードは『神眼」のスキルを使うと驚いて震え、涙を流して平伏した。
「皇上…」
魔王ロードが皇上と呼ぶ者は、瑞稀だけだ。その様子を見た他の魔王達が、ロードに尋ねた。
「一体、何だと言うのだ?」
「何故もっと早く気付けなかったのか、自分の愚かさに恥いるばかりだ」
魔王達は顔を見合わせた。察しの良い者はまさかと思い、高揚して興奮が隠せないでいた。
「プロテクトが掛かって使用出来ないでいるが、麻里奈には『Game Start』のスキルがある」
察しの悪いビゼルはイライラし、察しの良い者が驚いて言った。
「信じられん、『Game Start』は陛下の固有能力のはずだ!それが使えなくとも、ステイタスにあると言う事は…」
「だからどう言う事なんだ?勿体振らずに早く教えろよ!」
「つまり今の麻里奈は、陛下が封印されている状態だと言う事だ」
その場にいた皆が、驚愕と喜びの表情を見せた。
「思えば麻里奈は、皇上が禁呪で生き返らせ、己の負の感情を得て誕生した者。つまり元々、皇上自身だったとも言える存在だ。皇上が消滅する寸前に、自らの一部を麻里奈に移したのかも知れない」
「それは、どう言う事になるのよ?」
私は不安になり尋ねた。
「お前は、いや貴女は皇上の負から生まれた、つまり闇の存在。我々の知る皇上は闇を排除した言わば光。だが、今の貴女の中には光と闇の両方がある。それが融合するのか、それとも闇と言う存在が消えて、光としての自我が芽生えるのか分からない。後者であるならば、貴女の身体を借りて皇上の復活だ」
私は絶句し、他の魔王達は色めき立った。
「おお、陛下が復活されるかも知れないのだな?」
「ははは、あの陛下が死ぬなんて思ってなかったわ!あははは」
アナトの自我が芽生えれば、今の麻里奈としての私はどうなる?消えて無くなるに違いない。死ぬのは怖く無い。だが高さんは、私が消えてしまったらどう思うのだろうか?失いたく無いものが出来ると、死は恐怖となる。自分と言う存在が消えるなら、それは死と同義である。
「嫌だ…消えたく無い…」
か細い声で呟き、涙を流した。
「これで分かっただろう?何故、私が平伏したのかを。麻里奈は、皇上である」
皆、歓声を上げた。直ぐに私の拘束を解いた。
「全ての魔族はこれより貴女様を皇上と崇め、絶対の忠誠を誓います!」
魔王以下、魔族達は声を揃えて万歳三唱をした。
「陛下、万歳、万歳、万万歳!」
こうして私は当初の目的を果たしたが、自分の中に瑞稀が存在し、いつ入れ替わるのかと怯える事となった。
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