308 / 343
【第9部〜巨人の王国編〜】
第10話 知られた秘密
しおりを挟む
「それで白面の女の足取りは掴めたのか?」
楊慶齢が不機嫌さを隠そうともせず、会議に集まった5人に向けて問うた。その問いには誰も答える事は無く、最初から期待してはいない質問だったが、それでも苛立ちは募り、一層不快感を露わにした。
「まぁ、まぁ、楊さん落ち着いて。曹もただで死んだ訳では無い。そうだな?高氏」
高は、つまらなさそうに外方を向いていたが、突然名前を呼ばれて嫌そうな顔をしたが、直ぐに笑顔を見せた。
「ええ、白面の女と戦いましたよ。曹さんと戦って疲弊していたのか、あの動きで曹さんを倒したとは、とても思えませんでしたね。左腕を叩き折ってやりましたが、捕らえる前に逃げられてしまいました」
「それだけか?」
楊に問い詰められると、一息突いてから口を開いた。
「その際に白面を割って素顔を見たのです」
高は他の5人の顔を見渡した。
「早く続きを言え!」
「ふふふ、そう急かさなくても良いでしょう?白面の中の素顔は、アナトでしたよ」
「アナトだと!?」
楊は、机を叩いて怒鳴り気味に聞き直した。
「間違いありません。あれはアナトでした」
「馬鹿な、あり得ん。あの女は塵も残さず消滅したはずだ。復活など不可能だ」
楊が言い切ると、会議室中には重苦しい空気が流れた。
「…もしもアナトだったとするならば、恐らく目的は楊さんの生命…でしょうな?母親が攫われて犯されている上に、自分は殺され掛けたんだ。そりゃ恨んでいるでしょう?曹は、楊さんの居場所を聞き出す為に殺されたに違いない」
劉が、曹が殺されたのは貴方のせいだと、遠回しに言っているのに気付いて激怒した。
「塵も残さず消えた女が、生き返るはずが無いだろう!」
「では、あれは誰なんです?」
「…」
「あの、一つ宜しいかしら?」
最高指導部メンバー唯一の女性が、手を挙げて発言を求めた。
「何だ?」
「確か瑞稀には瓜二つの娘がいたはずよね?娘と言っても、流産した娘の遺体に禁呪を使って生き返らせたとか。もっとも、自分の負の感情を持っただけの分身体とも呼べる存在がね」
「何?それでは瑞稀と変わらないではないか?」
「でもね、禁呪の影響で不死者になって失敗したらしいわよ」
「それは確かなのか?そいつが不死者と言うのは?」
「ええ、間違いないわね」
白面が不死者であるならば、対処の仕方がある。弱点が多いからだ。
(白面が不死者だと?違うな、あいつは神聖魔法を使っていた。不死者なら使う事が出来ないはずだ。ではアレは誰だ?)
高は思案しながら腕を組んで、質問した。
「その瑞稀の娘の名前は分かっているのか?」
「確か…Marinaと言う名前よ。日本でアイドルをしてたわ」
「Marina…?」
(マリナだと?まさか麻里奈と関係があるのか?)
「MyTubeで検索すれば、いくらでも動画が出て来るわよ」
高は、検索して動画を見ると青ざめた。
(これは…麻里奈だ…)
顔が違うが、間違いなく麻里奈に違いない。自分が惚れた相手だ。例え大勢の中で顔を隠されて自分の彼女が誰か見つけよ、と言われても見つけてみせる自信がある。これは理屈では無い。麻里奈が指1本動かす動作にすら恋惹かれたのだ。見間違うはずがない。
(整形しているのか?)
高は帰ったら直接、麻里奈に問いただそうと考えた。
会議は相変わらずまとまらず終わった。「自分の身は自分で守れ」と言う事だ。今の所は楊が狙われている可能性が高いが、実際の所は分からない。瑞稀とMarinaは、敵対していたと言う話もある。そのMarinaが果たして本当に、瑞稀の仇打ちをしようと動いているのか疑問だ。行動が読めない為に、誰が狙われても不思議では無いと言う事だ。
散会すると、高は飛んで帰った。
「麻里奈!麻里奈!」
寝室のドアが激しく開けられて入って来た高さんは、少し怒気を帯びていたので、怯えて見つめた。
「麻里奈、尋ねたい事がある」
「どうしたの?あらたまって…」
両肩を掴まれて尋ねられた。
「キミは…Marinaなのか?」
顎クイをされ、頬を撫でられた。その瞬間、頭の中が真っ白になって動揺の色を隠す事が出来なかった。
「まさか…本当に、本当にキミはMarinaなのか!?」
高は否定して欲しくて、声を振り絞って出した。私は高さんには嘘は付きたくないと思い、首を横に振った。
「違う、キミはMarinaでは無い…。だって…顔が違うじゃないか…」
私は天井を見上げ、涙を流して決心した。
「これが…本当の私…」
素顔に戻って見せた。
「馬鹿なっ…。なぜだ、なぜ黙っていなかった?違うと否定してくれなかったのだ?そうしてくれれば、ずっとキミと変わらずに一緒にいられたのに…」
「やっぱり…もう一緒にはいられないのよね?」
「キミは…ボクらの仲間を殺ってしまった…殺すか捕えるしか無い…」
「私と一緒に逃げるとは、言ってくれないの?」
答えは分かっているのに、意地悪で言った。
「麻里奈…」
高は目頭を押さえて言った。
「出て行け!今すぐに!次に会えば容赦はしない…」
そう言って窓の外を指差した。
「高さん!…私は…本当に貴方の事を愛していたわ…今まで有難う…でも、サヨウナラは言わないわ!」
『影の部屋』
私は影の中に入って去った。
「うっ、ううぅぅ…麻里奈…どうしてキミが…」
麻里奈が去ると、膝から床に崩れ落ちて高は泣いた。
楊慶齢が不機嫌さを隠そうともせず、会議に集まった5人に向けて問うた。その問いには誰も答える事は無く、最初から期待してはいない質問だったが、それでも苛立ちは募り、一層不快感を露わにした。
「まぁ、まぁ、楊さん落ち着いて。曹もただで死んだ訳では無い。そうだな?高氏」
高は、つまらなさそうに外方を向いていたが、突然名前を呼ばれて嫌そうな顔をしたが、直ぐに笑顔を見せた。
「ええ、白面の女と戦いましたよ。曹さんと戦って疲弊していたのか、あの動きで曹さんを倒したとは、とても思えませんでしたね。左腕を叩き折ってやりましたが、捕らえる前に逃げられてしまいました」
「それだけか?」
楊に問い詰められると、一息突いてから口を開いた。
「その際に白面を割って素顔を見たのです」
高は他の5人の顔を見渡した。
「早く続きを言え!」
「ふふふ、そう急かさなくても良いでしょう?白面の中の素顔は、アナトでしたよ」
「アナトだと!?」
楊は、机を叩いて怒鳴り気味に聞き直した。
「間違いありません。あれはアナトでした」
「馬鹿な、あり得ん。あの女は塵も残さず消滅したはずだ。復活など不可能だ」
楊が言い切ると、会議室中には重苦しい空気が流れた。
「…もしもアナトだったとするならば、恐らく目的は楊さんの生命…でしょうな?母親が攫われて犯されている上に、自分は殺され掛けたんだ。そりゃ恨んでいるでしょう?曹は、楊さんの居場所を聞き出す為に殺されたに違いない」
劉が、曹が殺されたのは貴方のせいだと、遠回しに言っているのに気付いて激怒した。
「塵も残さず消えた女が、生き返るはずが無いだろう!」
「では、あれは誰なんです?」
「…」
「あの、一つ宜しいかしら?」
最高指導部メンバー唯一の女性が、手を挙げて発言を求めた。
「何だ?」
「確か瑞稀には瓜二つの娘がいたはずよね?娘と言っても、流産した娘の遺体に禁呪を使って生き返らせたとか。もっとも、自分の負の感情を持っただけの分身体とも呼べる存在がね」
「何?それでは瑞稀と変わらないではないか?」
「でもね、禁呪の影響で不死者になって失敗したらしいわよ」
「それは確かなのか?そいつが不死者と言うのは?」
「ええ、間違いないわね」
白面が不死者であるならば、対処の仕方がある。弱点が多いからだ。
(白面が不死者だと?違うな、あいつは神聖魔法を使っていた。不死者なら使う事が出来ないはずだ。ではアレは誰だ?)
高は思案しながら腕を組んで、質問した。
「その瑞稀の娘の名前は分かっているのか?」
「確か…Marinaと言う名前よ。日本でアイドルをしてたわ」
「Marina…?」
(マリナだと?まさか麻里奈と関係があるのか?)
「MyTubeで検索すれば、いくらでも動画が出て来るわよ」
高は、検索して動画を見ると青ざめた。
(これは…麻里奈だ…)
顔が違うが、間違いなく麻里奈に違いない。自分が惚れた相手だ。例え大勢の中で顔を隠されて自分の彼女が誰か見つけよ、と言われても見つけてみせる自信がある。これは理屈では無い。麻里奈が指1本動かす動作にすら恋惹かれたのだ。見間違うはずがない。
(整形しているのか?)
高は帰ったら直接、麻里奈に問いただそうと考えた。
会議は相変わらずまとまらず終わった。「自分の身は自分で守れ」と言う事だ。今の所は楊が狙われている可能性が高いが、実際の所は分からない。瑞稀とMarinaは、敵対していたと言う話もある。そのMarinaが果たして本当に、瑞稀の仇打ちをしようと動いているのか疑問だ。行動が読めない為に、誰が狙われても不思議では無いと言う事だ。
散会すると、高は飛んで帰った。
「麻里奈!麻里奈!」
寝室のドアが激しく開けられて入って来た高さんは、少し怒気を帯びていたので、怯えて見つめた。
「麻里奈、尋ねたい事がある」
「どうしたの?あらたまって…」
両肩を掴まれて尋ねられた。
「キミは…Marinaなのか?」
顎クイをされ、頬を撫でられた。その瞬間、頭の中が真っ白になって動揺の色を隠す事が出来なかった。
「まさか…本当に、本当にキミはMarinaなのか!?」
高は否定して欲しくて、声を振り絞って出した。私は高さんには嘘は付きたくないと思い、首を横に振った。
「違う、キミはMarinaでは無い…。だって…顔が違うじゃないか…」
私は天井を見上げ、涙を流して決心した。
「これが…本当の私…」
素顔に戻って見せた。
「馬鹿なっ…。なぜだ、なぜ黙っていなかった?違うと否定してくれなかったのだ?そうしてくれれば、ずっとキミと変わらずに一緒にいられたのに…」
「やっぱり…もう一緒にはいられないのよね?」
「キミは…ボクらの仲間を殺ってしまった…殺すか捕えるしか無い…」
「私と一緒に逃げるとは、言ってくれないの?」
答えは分かっているのに、意地悪で言った。
「麻里奈…」
高は目頭を押さえて言った。
「出て行け!今すぐに!次に会えば容赦はしない…」
そう言って窓の外を指差した。
「高さん!…私は…本当に貴方の事を愛していたわ…今まで有難う…でも、サヨウナラは言わないわ!」
『影の部屋』
私は影の中に入って去った。
「うっ、ううぅぅ…麻里奈…どうしてキミが…」
麻里奈が去ると、膝から床に崩れ落ちて高は泣いた。
0
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる