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【第9部〜巨人の王国編〜】

第10話 知られた秘密

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「それで白面の女の足取りは掴めたのか?」
 楊慶齢ヤン・チンリンが不機嫌さを隠そうともせず、会議に集まった5人に向けて問うた。その問いには誰も答える事は無く、最初から期待してはいない質問だったが、それでも苛立ちは募り、一層不快感を露わにした。
「まぁ、まぁ、ヤンさん落ち着いて。ツァオもただで死んだ訳では無い。そうだな?ガオ氏」
 ガオは、つまらなさそうに外方そっぽを向いていたが、突然名前を呼ばれて嫌そうな顔をしたが、直ぐに笑顔を見せた。
「ええ、白面の女と戦いましたよ。ツァオさんと戦って疲弊していたのか、あの動きでツァオさんを倒したとは、とても思えませんでしたね。左腕を叩き折ってやりましたが、捕らえる前に逃げられてしまいました」
「それだけか?」
 ヤンに問い詰められると、一息突いてから口を開いた。
「その際に白面を割って素顔を見たのです」
 ガオは他の5人の顔を見渡した。
「早く続きを言え!」
「ふふふ、そう急かさなくても良いでしょう?白面の中の素顔は、アナトでしたよ」
「アナトだと!?」
 ヤンは、机を叩いて怒鳴り気味に聞き直した。
「間違いありません。あれはアナトでした」
「馬鹿な、あり得ん。あの女は塵も残さず消滅したはずだ。復活など不可能だ」
 ヤンが言い切ると、会議室中には重苦しい空気が流れた。
「…もしもアナトだったとするならば、恐らく目的はヤンさんの生命…でしょうな?母親アシェラさらわれて犯されている上に、自分は殺され掛けたんだ。そりゃ恨んでいるでしょう?ツァオは、ヤンさんの居場所を聞き出す為に殺されたに違いない」
 リウが、ツァオが殺されたのは貴方のせいだと、遠回しに言っているのに気付いて激怒した。
「塵も残さず消えた女が、生き返るはずが無いだろう!」
「では、あれは誰なんです?」
「…」
「あの、一つよろしいかしら?」
 最高指導部メンバー唯一の女性が、手を挙げて発言を求めた。
「何だ?」
「確か瑞稀アナトには瓜二つの娘がいたはずよね?娘と言っても、流産した娘の遺体に禁呪を使って生き返らせたとか。もっとも、自分の負の感情を持っただけの分身体とも呼べる存在がね」
「何?それでは瑞稀アナトと変わらないではないか?」
「でもね、禁呪の影響で不死者アンデットになって失敗したらしいわよ」
「それは確かなのか?そいつが不死者アンデットと言うのは?」
「ええ、間違いないわね」
 白面が不死者アンデットであるならば、対処の仕方がある。弱点が多いからだ。
(白面が不死者アンデットだと?違うな、あいつは神聖魔法を使っていた。不死者アンデットなら使う事が出来ないはずだ。ではアレは誰だ?)
 ガオは思案しながら腕を組んで、質問した。
「その瑞稀アナトの娘の名前は分かっているのか?」
「確か…Marinaと言う名前よ。日本でアイドルをしてたわ」
「Marina…?」
(マリナだと?まさか麻里奈と関係があるのか?)
「MyTubeで検索すれば、いくらでも動画が出て来るわよ」
 ガオは、検索して動画を見ると青ざめた。
(これは…麻里奈だ…)
 顔が違うが、間違いなく麻里奈に違いない。自分が惚れた相手だ。例え大勢の中で顔を隠されて自分の彼女が誰か見つけよ、と言われても見つけてみせる自信がある。これは理屈では無い。麻里奈が指1本動かす動作にすら恋惹かれたのだ。見間違うはずがない。
(整形しているのか?)
 ガオは帰ったら直接、麻里奈に問いただそうと考えた。
 会議は相変わらずまとまらず終わった。「自分の身は自分で守れ」と言う事だ。今の所はヤンが狙われている可能性が高いが、実際の所は分からない。瑞稀アナトとMarinaは、敵対していたと言う話もある。そのMarinaが果たして本当に、瑞稀アナトの仇打ちをしようと動いているのか疑問だ。行動が読めない為に、誰が狙われても不思議では無いと言う事だ。
 散会すると、ガオは飛んで帰った。
「麻里奈!麻里奈!」
 寝室のドアが激しく開けられて入って来たガオさんは、少し怒気を帯びていたので、怯えて見つめた。
「麻里奈、尋ねたい事がある」
「どうしたの?あらたまって…」
 両肩を掴まれて尋ねられた。
「キミは…Marinaなのか?」
 顎クイをされ、頬を撫でられた。その瞬間、頭の中が真っ白になって動揺の色を隠す事が出来なかった。
「まさか…本当に、本当にキミはMarinaなのか!?」
 ガオは否定して欲しくて、声を振り絞って出した。私はガオさんには嘘は付きたくないと思い、首を横に振った。
「違う、キミはMarinaでは無い…。だって…顔が違うじゃないか…」
 私は天井を見上げ、涙を流して決心した。
「これが…本当の私…」
 素顔に戻って見せた。
「馬鹿なっ…。なぜだ、なぜ黙っていなかった?違うと否定してくれなかったのだ?そうしてくれれば、ずっとキミと変わらずに一緒にいられたのに…」
「やっぱり…もう一緒にはいられないのよね?」
「キミは…ボクらの仲間をってしまった…殺すか捕えるしか無い…」
「私と一緒に逃げるとは、言ってくれないの?」
 答えは分かっているのに、意地悪で言った。
「麻里奈…」
 ガオは目頭を押さえて言った。
「出て行け!今すぐに!次に会えば容赦はしない…」
 そう言って窓の外を指差した。
ガオさん!…私は…本当に貴方の事を愛していたわ…今まで有難う…でも、サヨウナラは言わないわ!」
影の部屋シャドウ・ルーム
 私は影の中に入って去った。
「うっ、ううぅぅ…麻里奈…どうしてキミが…」
 麻里奈が去ると、膝から床に崩れ落ちてガオは泣いた。




 
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