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【第9部〜巨人の王国編〜】

第3話 婚約

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「息子が、ワシの息子が帰って来おったわぃ」
「ほれ、お前の嫁じゃ」と、私は陸ばぁさんの息子に紹介された。
(そう言えば中国の女性が求める第1位は、顔でも性格でもなくお金…だったわね。自分の生活を豊かにしてくれるなら、どんな男とでも平然と寝れる。…でも私は嫌だ)
「義母さん、私は…」
「ワシの事、義母さんと呼んでくれたじゃろう?嬉しくてな。生い先短いババァじゃ、どうか願いを聞いてはくれんかの?頼みます」
 いつも勝気で強気な陸ばぁさんが、平伏して頭を下げた。目には涙を浮かべていた。
「義母さん…そんな…、頭を上げて下さい」
「ワシの、願いを聞いてくれるかの?」
「…少し…考えさせて下さい」
 私は陸ばぁさんと、その息子に頭を下げて寝室に行った。
「はぁ…困った。今までお世話になった義理があるから無下にも出来ないけど、結婚となれば話は別だわ…」
 不意に寝室の戸が開けられ、息子が入って来た。
「驚かせて済みません。俺の名前は江昊然ジン・ハオランと言います。貴女の様な美しい女性に会ったのは初めてです。母からの手紙で、嫁を決めたと言うので嫌々会いに来たのですが、一目惚れしました。どうか俺との結婚、前向きに考えては頂けませんか?」
「…貴方の事、私はまだ何も知らないのよ?貴女も私の事を何も知らないじゃない?」
「それならこれから知っていけば良い。お時間ある時に、一緒に出かけましょう」
 デートに誘われた。私はOKして、もう寝るからと部屋から追い出した。
「…めっちゃ勃ってたんだけど。私とヤりたかったのね?結構大きそうだったから、1度くらいならヤらせてあげても良いかもね」
 欠伸をしながら背伸びをし、ベッドに入って目を閉じると、直ぐに寝息を立てた。
 中国では古来より男女別姓だ。女性は結婚しても苗字は変わらない。子供達は夫の苗字を名乗る。だから母の陸さんと、息子の江さんの苗字が違うのだ。

「おはようございます」
 陸ばぁさんは、もう起きていて朝食の支度を始めていた。昨日の夕方に汲んでいた水瓶みずがめは、もう空っぽになっていた。
「井戸で水を汲んで来ます」
 朝日がようやく見えて来た頃、まだ薄暗く肌寒かった。クシャミをして薄着過ぎた事を後悔した。
「上着を羽織ってくれば良かった」
 井戸水を汲んで運ぶのは、中々の重労働だ。魔法が無ければ。近所の人達も早朝から水汲みに来ていて、怪しまれない様に水瓶の重力を軽くして、重そうに運んだ。
「おはよう、早いね」
 そう言って井戸から中程の場所で、ジンさんに会った。寒いだろう?と上着を掛けてくれて、水瓶を持ってくれた。
「重かったね」
 微笑み掛けられて、不覚にも可愛いと思ってしまった。好意を寄せられて悪い気はせず、満更では無いな?と思って微笑み返した。
 復讐を忘れて、本当にこのまま結婚してしまえば、ささやかな幸せが得られるだろう。人はそのささやかな幸せを得る為に、努力をする生き物だ。
「えっ?ジンさんって官僚なんですか?」
 実は都市部のエリート官僚だった。それなのに、全く偉ぶっていない人柄に感心した。話を聞けば、嫁となる私に会いに来たのが理由では無く、中南海で仕事をする為に戻って来たと言う。そこで母を連れて中南海に引っ越すのだが、私はそのついでに会っただけだった。
 正式にプロポーズされ、受けるなら一緒に中南海で暮らそうと言う事になった。1度、中南海に入ると簡単には出られないからだ。
 難攻不落と思われた中南海も、思わぬ形で中に入れる事になった。私はプロポーズを受け入れた。
 その晩、もう婚約者なのだからと、ジンさんに身体を求められた。ジンさんは、女性との性行為が初めてだった。私がフォローしながらリードし、挿入に導いた。ぎこちなく動く腰使いは新鮮で興奮し、平均よりも明らかに大きい男根は期待通りの快楽を与えてくれた。陸ばぁさんに絶対に聴こえてると思っても堪えられずに、喘いで何度も求めた。
 行為が終わると初めての印が無く、私が処女では無かった事に激しく落胆していた。
「初めてで無くて、ごめんなさい」
 しかしジンさんは、豹変した。
「この売女が!どこの馬の骨と遊びやがった!」
「えっ?」
 髪の毛を掴まれて耳元で怒鳴られ、頬を何度も平手打ちされた。顎を掴んで口付けすると、首を絞めながら挿入し、激しく腰を動かして膣内なかで果てた。
「すまない。キミが他の男と同じ事をしていたかと思うと嫉妬して、カッとなってしまい自分を抑えられなかった。もう2度としないから許して欲しい」
 ジンさんは泣きながら謝罪した。
「…過去は変えられないの。私の過去の男性経験も消せないのよ。私達、もう別れましょうか?」
「嫌だ!絶対にこんな事は2度と無いと誓う。お願いだ、許して欲しい」
 泣きながら抱きしめるジンさんの頭を、優しく撫でてあげた。
「分かったわ…1回だけ許す。でも貴方は私を抱く度に、私を抱いた男の事を思うでしょう?それに堪えられるの?今度同じ事をしたら、絶対に別れるわよ」
 口付けをして、再びジンさんに抱かれた。彼は泣きながら「愛してる」と言い続けて果てた。
 ジンさんの腕の中で目を閉じて、過去の男を思った。私はアナトと違って、実は男性経験は多くない。
 初めての相手は、アナトが固執した綾瀬潤だった。その次は冥界で会った項籍(項羽)だった。
 項籍は、虞美人だったアナトに固執し、アナトの負の感情から生まれた私も、アナトだと主張して私を強引に抱いた。アナトの光に触れて不死者アンデットでは無くなり、地上に来て項籍との関係は終わった。
 目を閉じて、ウトウトとしていると、部屋戸の前で気配を感じた。陸ばぁさんだ。私達が静かなので寝たと確認したのか、部屋の前から立ち去る足音がした。
(私達が結ばれて安心したのかな?)
 Hしていたのが親バレする事よりも恥ずかしい事は無い。顔を真っ赤にして、その日は眠れそうになかった。
 
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