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【第8.5部〜アイドル編2】

第15話 さよならアナト、永遠に【第8.5部完】

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「アナト様、アナト様!」
 外から大声で呼ぶ声で目を覚ました。
「はーい!」
「アナト様、朝食のご用意が出来ました!」
「はい、支度をするので、お待ち下さい!」
「いえ、我々が支度のお手伝いをさせて頂きます」
 支度なんて自分で出来るから良いよ、と思うが彼女達の仕事を奪うのも申し訳ないと考え直して、部屋に入れた。
 侍女達は、顔を拭く濡れタオルを差し出し、1人は私の寝巻きを脱がして着付けを始めた。顔を拭き終わり服を着ると、椅子に座らせられて髪を結って整えてくれた。化粧を施されながら、まるでお姫様の様な扱いを受けるのは、久しぶりだと感じて笑みを浮かべ、虞美人ユーメイレンや、由太后ヨウタイホゥ時代を思い出して懐かしく思った。
「おぉ、美しい…」
 そう言って私に見惚れたのは、ダゴン王だった。恐らく私を通して、母アシェラの面影を見ているに違いない。
 ダゴン王の中国人としてのなまえは、楊慶齢ヤン・チンリンと言った。今はこの国のトップである国家主席だ。
 他愛の無い話をしながら朝食を摂った。まだ心の底から彼らを信頼した訳では無いので、緊張して食事をした為に何を食べたのか、味はどんなだったのかをまるで覚えてはいない。
 朝食の後、ダゴン王に肩を抱かれて中南海を案内された。高い城壁に囲まれて外界から隔離されたこの場所は、周囲を湖で囲まれている。中南海とは、中海と南海の間にあると言う意味で名付けられ、その広さはおよそ東京ドーム25個分の湖に囲まれた島にある。
 陸の孤島であり外界から隔絶された島だが、ここには全ての商業施設、最先端の病院、娯楽施設が立ち並んでおり、不自由する事なく暮らせる。
 主に住んでいるのは、最高指導部のメンバー7人とその家族達だ。あまりの居心地の良さに、旦那が亡くなって指導部のメンバーが入れ替わっても、その家族が他の地に引越しをしようとはせずに居座り続ける者が後をたたない。
 なるほど確かにここに居れば、確かに不自由はしなさそうだと感じた。
“アナト様”
“珍しいわね、どうかしたの?ロード”
 頭の中に念思が届いた。
“そこにXNUMX人がいますね?彼らの目的が分かりました”
“目的?”
“はい、彼らの目的はゲートを抜けて天界を制圧する事です。人間界の、それも中国を制圧した理由は、樟木ヅァンムー鎮にあるゲートだと思われ、現在彼らは配下にゲートの場所を探させております”
“天界を制圧?”
 有り得なくは無い。ダゴン王の目的は母アシェラだ。天界にいると思って、天界の制圧を目指しているとしたら…。
“ゲートを守らなければならない。最悪の場合、私がこちら側のゲートを破壊する”
“しかしそれでは…”
“大丈夫よ、人間界から天界に行く手段は無くなるけど、まだ魔界と繋がっているから”
 それにしても母アシェラは、まだ冥界にいるのだろうか?宮本武蔵に自分を、お通さんだと思わせて愛し合っていた。あの分だと当分は此方に来る事は無いだろう。ダゴン王が知ったら激怒するだろうな?と表情を曇らせた。
 中南海には特に結界などは無く、隙を見て抜け出すのは難しくはなさそうだった。
「美しいな…」
「母を愛しているのでしょう?」
 ダゴン王は私を押し倒すと、首筋に舌を這わせながら胸を揉んだので驚いて母を持ち出した。
「今はアシェラの事は良い…」
 抵抗も虚しく、ダゴン王に処女を奪われると朝まで私の身体を貪り続けた。
「痛かったか?」
「酷い…私を抱きながら母を想ってたでしょう?」
「お前達母娘おやこは良く似ている。」
 私はダゴン王が母の夫だった時の事を知らないが、元義理の父に犯された事になる。処女を失った事よりも、それに深くショックを受けて涙が止まらなかった。
「人間に染まり過ぎたな?神なら親も子も兄妹でさえも性交するだろう。何も泣く事では無い」
 そう言って再び私を犯し始めた。泣きじゃくって抵抗したが、無駄だった。更にショックな事に、元義理の父に犯されているのにオルガスムを感じて何度もイってしまった事だ。
「気持ち良さそうに自分で腰を振っているのが分かるか?」
 私を犯しながら笑ったダゴン王に、激しい憎悪と殺意が芽生えた。ダゴン王が精を吐き出す瞬間を狙って、至近距離から頭を吹き飛ばそうと全力攻撃をしたがかわされた。
「俺を殺そうとしたのか?」
 激怒したダゴン王に、顔の形が変わるほど殴られて意識を失った。
 意識を取り戻すと、もうここには居られないと思い、抜け出すタイミングを見計らった。ダゴン王は1度私を抱くと、最早罪悪感も躊躇いも無く、性欲を処理する為に何度も私の身体を求めた。母を抱いた男に抱かれていると、死にたいと感じた。
 ようやくチャンスはやって来て、ダゴン王が他国からの使者に会う為に、私を自由にしたのだ。今しかないと思った私は、全力で空を飛んで逃げた。当然気付かれて追われたが、『影の部屋シャドウルーム』を唱えて影の世界に逃げ込んで、追手を撒いた。
 樟木ヅァンムー鎮を目指すと、確かに中国軍が周辺を捜索していた。私はゲートの場所を知っている分、彼らより有利だ。
 手に魔力を込めてゲートの場所に触れると、光を放ってゲートが現れた。
「ほう?そんな所にゲートがあったのか」
 驚いて声のする方に振り返ると、ダゴン王が立っていた。
「嘘!?どうしてここに?」
「お前の後をつければ、ゲートに案内してくれると思ってな?泳がせたのよ、思惑通りに動いてくれたな?あはははは」
「くっ!」
 ゲートを破壊しようと魔力を込めると、ダゴン王に背中を蹴り飛ばされて血を吐いて倒れた。
「そうはさせん!」
 ダゴン王がゲートに近寄り、私は立ち上がると、練気剣ヴァジュラを出して斬りかかった。剣帝の剣技だけでななく、冥界で模倣ラーニングした沖田総司の三段突きや、中村半次郎の薬丸自顕流を繰り出したがことごとく防がれ、由太后ヨウタイホゥの飛燕剣すらも通用しなかった。
「ふははは、無駄だ」
 ダゴン王は余裕で、私の服だけを切り刻んだ。
「殺す前にもう1発|やっておくか?」
 私は死を覚悟すると相打ちを狙って、何度も突撃を繰り返して、死んでは生き返り攻撃し続けた。
 ピキッと足に違和感を感じると、足が石化していた。
「ふふふ、言っただろう?お前の能力スキルには限りがあると。遂に限界に達したな?悪い事は言わん、それ以上戦えば本当に死ぬぞ?」
「最期に教えて?貴方は私をどうしたいの?」
「お前もアシェラも俺の妻にする」
「…私の事、大切にするって言ったじゃない?大切な娘だって!私には好きな人がいたの。処女を奪った貴方を絶対に許さない!」
「よせ!」
 私は目を閉じて両手に全魔力と全生命力を込め、カッと目を見開くとゲートに拳を繰り出して攻撃した。
 その瞬間、私の身体は足から胸、頭と石化が進み、地面に倒れて崩れると石化した身体は灰となり、灰は塵となり、塵は光の結晶となって霧散し、光の結晶も掻き消えて私の存在は完全に消滅した。
 私の生命を賭けた最期の攻撃によってゲートは破壊され、永遠に人間界から天界に行く道は閉ざされた。
「脅しが過ぎたか…」

「アナト…間に合わなかったのね…」
 ダゴン王が振り返ると、そこにはアナトの母アシェラが立っていた。
「アシェラ?アシェラ!会いたかった」
「ダゴン…このペテン師が、私の娘に何をしたの?大方、不死では無いなどと言って陥れたのね?許さない…よくも私の可愛い娘を!」
 アシェラは深く踏み込んで、重く鋭い正拳突きを繰り返したが、ダゴン王に防がれた。
「この!『超強力催眠ヒュブノ』」
 しかしダゴン王には効かず、アシェラの両腕を折って拘束した。
「ふふふ、アシェラ。これでようやくお前も俺の物だな?」
「何故私の超強力催眠ヒュブノが効かないの?まさか…自分自身に?」
「そうだ俺の能力スキル真実の嘘ジェンダマーは、相手が信じた事が現実となる能力スキルだ。不死であるアナトに、自分の能力スキルに限界があると信じこませて、死に導いたのよ。死なすつもりはなかったんだかな?お前よりもアソコの具合が良かったぜ?」
「あのを抱いたの?無理矢理犯したのね!」
 アシェラは身体を無理矢理捻ると左腕が千切れ、拘束を解いてダゴンの顔面に頭突きを喰らわした。
「このアマァ!」
 ダゴンがアシェラのお腹を渾身の力で殴り付けると、血を吐いて倒れた。
「はははは。やっと、やっと手に入れたわ」
 アシェラを手に入れた喜びでダゴンは笑った。気を失ったアシェラを肩に担ぐと、何処かに連れ去った。

 アナトは死ぬ間際に、念思を通じて後を託した者がいた。
「アナト…貴女が死ぬなんて…きっと私が仇を討ってあげる」
 そう言ってゲートのあった場所に花を添えた者の姿は、アナトに瓜二つであった。

               ~Fin~
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