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【第8.5部〜アイドル編2】

第14話 XNUMX人

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 部屋に着いたらしく、そこで目隠しを取られた。部屋はまるで、中国の時代劇の世界を思わせる邸宅の造りだった。
「やぁ、よく来たね。どうした?震えているではないか。部下が手荒な真似をしたみたいで申し訳ない。ここにいる限りキミには手出しをさせないから安心しておくれ」
 室内に入り、声を掛けて来たこの若い男が彼らの王だろう。見た目は私と同じ20歳くらいに見えるが、おそらく実年齢は遥か上に違いない。何せ私だってアナトとして生まれてからは、1万年近く経っている。
「…」
「ふふふ、そんなに警戒しなくても良い。うむ、裸のままでは目のやり場に困るな」
衣装替チェンジ
 この王も生活魔法を唱えて見せた。私以外で生活魔法が使える者を見たのは初めてだ。
「…有難う御座います」
「礼には及ばない。部下がキミを犯そうと脱がしたのだろうからね。まぁ、立ち話も何だから、まずは座ろうか?」
 私は促されるままに椅子に腰掛けた。
「ふふふ、自己紹介がまだだったね。ボクの名前はダゴン。キミはアシェラの娘だね?」
「はい。私の母はアシェラです。母をご存知なのですか?」
「…キミはアシェラの面影がよく似ている。ボクはキミを大切にしたい。意味が分かるね?」
「はい…、私を…妻にするんですね?」
「妻に?あははは。誤解させたなら申し訳ない。そうでは無くて…ボクの娘として大切にしたいんだ」
「娘に…?」
 なるほど、その言葉でおよそ理解出来た。ダゴン王は私の母を愛しているのだ。だからその娘の私と敵対しようとはせずに、娘の様に大切に育てようと言っているのだ。私を匿っていれば母に会える可能性があるし、恩も売れる。
「…思い出しました。ダゴン王…かつてのイスラエルの王ですよね?母と結婚された方ですね?」
「そうだ。ボクはキミの母を愛している…」
 母アシェラは浮気性で、何人もの男性と婚姻を結んでいる。このダゴン王もそのうちの1人だ。強いて言えば、母の愛の憐れな犠牲者の1人だ。
「教えて下さい。XNUMX人であり、イスラエルの王だった貴方が、どうしてこの中国の、それも政治の中枢にいるのですか?」
「…それについては、詳しく話すつもりは無い。だが、この国を動かす7人全員が我々の仲間(XNUMX人)だ」
 恐らく本物を殺して、成り代わったのだろう。
張玉ヂャン・ユゥにキミを連れて来る様に言ったのはボクだ。彼には気の毒な事をした」
「彼は…後で生き返らせるつもりでした…」
「生き返らせる?…その力を使うのは止めた方が良い」
「何故ですか?」
「キミは、その力が無限だとでも思っているのかい?」
「えっ?意味が分かりませんが?これは私の回復魔法です。回数制限などありません」
「あははは、無知だな?無知とは罪だ。我々XNUMX人の能力スキルには限りがある。無限に使える事などない。キミの母は教えてくれなかったのかい?」
「嘘っ!?私の能力スキルが有限だなんて。ま、まさか…不死も…!?」
「勿論そうとも。キミはたまたま不老不死だったかも知れないが、生き返れなくなる日が必ずやって来る。その時は不老長寿になるんだろうけどね?」
 あまりのショックに口が利けなくなって、呆然とした。
「ショックを受けている所、申し訳ないが寝室を案内させよう」
 何処をどう歩いたのか記憶に無く、我に返ると木製のベッドの上に腰掛けていた。
「アナト、アナト」
「来夢?何処?」
 私の右耳の穴から、来夢の分身体が出て来た。
「来夢!」
「アナト、直ぐに本体が行くから待ってて。分身体がいれば場所を特定出来る」
「心強いよ…来夢がいてくれて」
「どうした?元気が無いな。酷い事をされたのか?」
「ううん、されそうになったけど大丈夫。…私ね、不死身なんかじゃ無かったのよ…。私の能力スキルは有限だったの」
 多少の無茶も不死であるからこそ出来た。回数も分からない。あと何回、死んでも生き返る事が出来るのだろうか?本来、死が付き纏うのは当然なのだけど、今後は死が怖くて無茶な事は出来なくなる。
 それに無闇に蘇生させていると、本当に必要な時に、生き返らせる事が出来ない時が来るかも知れない。
 精神的に疲れた。瞼を閉じると直ぐに深い眠りについた。
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