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【第8.5部〜アイドル編2】
第11話 不穏な空気
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私は帰国した空港で、大勢のファンの歓声を浴びて出迎えられたが、直ぐに警察に取り囲まれて連行された。パトカーの中で、国の帰国要請を何度も無視した為に、国防法違反で逮捕されたと説明を受けた。
「逮捕…」
ショックだった。自分が犯罪を犯したつもりなど無かった。女神の力を使えばこんな所から抜け出すのは簡単だ。しかしそれでも人として暮らす事を選んだ私には出来なかった。
国の権益を損ね、国を危険に晒した罪で起訴され、有罪判決を受けた。
【無期限幽閉の刑】
不老不死である私を死刑に出来ないので、魔封牢で鎖に繋がれたまま永遠に出る事が許されないと言う刑罰だ。
来夢は正体を現してキレ、日本人を皆殺しにして逃げようと提案したが、私は首を横に振った。
現役のトップアイドルが、失われし能力持ちであった事が大きく報道され、世界の注目を集めた。
米国が干渉し、私の釈放を求めたが、日本は他国の干渉は受けないと拒絶した。
いよいよ刑が執行される当日、中国が日本に対して宣戦布告を行った。私の保釈が認められれば、血を流す事は無いと警告して来たのだ。
欧米はSSSランクである私の保釈を求めていた為、中国の行動に対して批判する事が出来ず、黙認した。
日本は沖縄、長崎を中心に守りを固め、米国から購入して配備していたトマホークを積んだイージス艦を、7隻も向かわせた。中国は台湾近郊から沖縄に戦艦と潜水艦を向かわせ、更に朝鮮半島から日本の本土上陸を目指した。
韓国も米国と同様に中国の軍事行動を黙認した形だ。ヨーロッパは触り無く遠回しに批判はしたが、それ以上の事は何もしなかった。日本が私を釈放すれば、戦争を回避出来るのだ。そもそも私の逮捕も帰国要請に従わなかっただけだ。しかし、それが国を危険に晒す、と言う言い掛かりの様な罪に問われた。私は国家戦力であり、それを隠匿していた罪も加わっている。
当事者である米国は当然、日本を批判した。当の日本国民も政府を批判した。しかし政府は、本当に私を幽閉するつもりは無く、国家戦力の流出を恐れたのだ。
私が政府の言う事を聞く様になれば、SSSランクを擁し、米国と中国の超大国と肩を並べる事が出来る。だから、他国の干渉など恐れてはおらず、強気な行動に出たのだ。
欧米諸国も、どうせ私なら死んだ全員を生き返らせる事が出来るのだろう?と、中国の軍事行動を黙認した。だが皆んな忘れている。私の能力は、塵も残っていない者には効果が無い事を。
2524年8月13日、この日の出来事を日本人は深く胸に刻み込む事となる。
「イージス艦、全艦撃沈!」
レーダーにすら反応する事も無く、攻撃された形跡も無く撃沈されたのだ。
「そんな馬鹿な!」
日本政府高官達は狼狽えた。
「Mizukiさん、国家存亡の危機です。何卒お力添えをお願い致します」
頭など下げた記憶も無いだろう大臣達が、私が入っている牢屋の前で土下座していた。
「止めてよ、気持ち悪い…。そんな事で私の怒りが収まるとでも?」
「勿論、思ってはおりません。この埋め合わせはきっとさせて頂きます。貴女の条件は全て飲みます。どうかこの日本を救って下さい」
「でも私を釈放すれば、中国の大義名分を失うから約束通り停戦するのでは?」
「とんでもありません。貴女の件は口実に過ぎず、これは侵略戦争です。中国はこの日の為に準備を推し進めていました。我々はその情報を掴んでおきながら、むざむざと侵攻を許してしまったのです!」
「それなら私を逮捕した理由は?」
「貴女は独自で米国とコネクションを得ました。貴女に何があっても米国は庇護するでしょう。しかしそれは貴女の能力が有用だからです。我々は貴女を最もらしい理由で拘束する事によって、他国に利用されるのを守る為でした」
私の説得を任されただけの事はある。上手い物言いだ、そう感じた。
「分かりました。私も今は日本人です。国を守りましょう。しかし先ずは、私を釈放したと全世界に発信するべきでしょう。それで中国の出方を見ます。それでも止まらず侵攻して来るつもりなら…私が全力で叩き潰します」
「いや、そこまでしなくても…第一キミは、回復魔法に長けているのでは無いのかね?中国を刺激して全面戦争になる様な事は…」
「慎みたまえって?もし本当に中国が止まらないなら、私への認識が誤り(戦闘力が低い)だと言う事を教えてあげるわ」
そうならない事を祈りながらも、そうなるだろうと感じていた。前ループでも私を得る為に張玉が戦争を仕掛けて来た。今回の裏にも張玉がいるはずだ。
彼がいるなら、王の奴もいるに違いない。それならば、レーダーに映る事なくイージス艦が破壊されたのは想像がつく。恐らく、闇魔法が使える者が『影の部屋』を使って近寄り、貫通魔法が施された武器で撃沈させたのだろう。
手加減しなくて良いなら簡単だ。しかし、張玉とは恋人だった事もある相手だ。出来れば殺したくは無い。
「逮捕…」
ショックだった。自分が犯罪を犯したつもりなど無かった。女神の力を使えばこんな所から抜け出すのは簡単だ。しかしそれでも人として暮らす事を選んだ私には出来なかった。
国の権益を損ね、国を危険に晒した罪で起訴され、有罪判決を受けた。
【無期限幽閉の刑】
不老不死である私を死刑に出来ないので、魔封牢で鎖に繋がれたまま永遠に出る事が許されないと言う刑罰だ。
来夢は正体を現してキレ、日本人を皆殺しにして逃げようと提案したが、私は首を横に振った。
現役のトップアイドルが、失われし能力持ちであった事が大きく報道され、世界の注目を集めた。
米国が干渉し、私の釈放を求めたが、日本は他国の干渉は受けないと拒絶した。
いよいよ刑が執行される当日、中国が日本に対して宣戦布告を行った。私の保釈が認められれば、血を流す事は無いと警告して来たのだ。
欧米はSSSランクである私の保釈を求めていた為、中国の行動に対して批判する事が出来ず、黙認した。
日本は沖縄、長崎を中心に守りを固め、米国から購入して配備していたトマホークを積んだイージス艦を、7隻も向かわせた。中国は台湾近郊から沖縄に戦艦と潜水艦を向かわせ、更に朝鮮半島から日本の本土上陸を目指した。
韓国も米国と同様に中国の軍事行動を黙認した形だ。ヨーロッパは触り無く遠回しに批判はしたが、それ以上の事は何もしなかった。日本が私を釈放すれば、戦争を回避出来るのだ。そもそも私の逮捕も帰国要請に従わなかっただけだ。しかし、それが国を危険に晒す、と言う言い掛かりの様な罪に問われた。私は国家戦力であり、それを隠匿していた罪も加わっている。
当事者である米国は当然、日本を批判した。当の日本国民も政府を批判した。しかし政府は、本当に私を幽閉するつもりは無く、国家戦力の流出を恐れたのだ。
私が政府の言う事を聞く様になれば、SSSランクを擁し、米国と中国の超大国と肩を並べる事が出来る。だから、他国の干渉など恐れてはおらず、強気な行動に出たのだ。
欧米諸国も、どうせ私なら死んだ全員を生き返らせる事が出来るのだろう?と、中国の軍事行動を黙認した。だが皆んな忘れている。私の能力は、塵も残っていない者には効果が無い事を。
2524年8月13日、この日の出来事を日本人は深く胸に刻み込む事となる。
「イージス艦、全艦撃沈!」
レーダーにすら反応する事も無く、攻撃された形跡も無く撃沈されたのだ。
「そんな馬鹿な!」
日本政府高官達は狼狽えた。
「Mizukiさん、国家存亡の危機です。何卒お力添えをお願い致します」
頭など下げた記憶も無いだろう大臣達が、私が入っている牢屋の前で土下座していた。
「止めてよ、気持ち悪い…。そんな事で私の怒りが収まるとでも?」
「勿論、思ってはおりません。この埋め合わせはきっとさせて頂きます。貴女の条件は全て飲みます。どうかこの日本を救って下さい」
「でも私を釈放すれば、中国の大義名分を失うから約束通り停戦するのでは?」
「とんでもありません。貴女の件は口実に過ぎず、これは侵略戦争です。中国はこの日の為に準備を推し進めていました。我々はその情報を掴んでおきながら、むざむざと侵攻を許してしまったのです!」
「それなら私を逮捕した理由は?」
「貴女は独自で米国とコネクションを得ました。貴女に何があっても米国は庇護するでしょう。しかしそれは貴女の能力が有用だからです。我々は貴女を最もらしい理由で拘束する事によって、他国に利用されるのを守る為でした」
私の説得を任されただけの事はある。上手い物言いだ、そう感じた。
「分かりました。私も今は日本人です。国を守りましょう。しかし先ずは、私を釈放したと全世界に発信するべきでしょう。それで中国の出方を見ます。それでも止まらず侵攻して来るつもりなら…私が全力で叩き潰します」
「いや、そこまでしなくても…第一キミは、回復魔法に長けているのでは無いのかね?中国を刺激して全面戦争になる様な事は…」
「慎みたまえって?もし本当に中国が止まらないなら、私への認識が誤り(戦闘力が低い)だと言う事を教えてあげるわ」
そうならない事を祈りながらも、そうなるだろうと感じていた。前ループでも私を得る為に張玉が戦争を仕掛けて来た。今回の裏にも張玉がいるはずだ。
彼がいるなら、王の奴もいるに違いない。それならば、レーダーに映る事なくイージス艦が破壊されたのは想像がつく。恐らく、闇魔法が使える者が『影の部屋』を使って近寄り、貫通魔法が施された武器で撃沈させたのだろう。
手加減しなくて良いなら簡単だ。しかし、張玉とは恋人だった事もある相手だ。出来れば殺したくは無い。
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