上 下
288 / 343
【第8.5部〜アイドル編2】

第5話 美香の過去

しおりを挟む
「瑞稀、あんたちょっと良い?」
 翌日私は小百合と由美子、美香に呼び出された。
「あんた昨日あの後、大和翔さんと一緒だったの?あんたの姿を見たって人がいて」
「え?うん、食事に誘われたよ」
「嘘、マジで!?まさか、もうヤっちゃったの?」
「えっ?してないよ、本当に。多分、向こうはその気だったみたいだけど、私は好きな人がいるので断ったよ」
「こ、断った!?」
 小百合達は顔を見合わせた。
「あんた、自分が何やったか分かっているの?」
「?寝るべきだったって言うの?」
「当たり前じゃない!そんなチャンスは無いんだよ?」
「不味いわね。大和さんの所属事務所の力を知らない訳じゃ無いわよね?私達なんて簡単に潰されるわよ。そうなったらここまで来るのに、変態オヤジ達に抱かれて来た意味が無くなるわ。どう責任取ってくれるのよ!!」
「まさか、美香も?」
「美香が男と寝た数は1番多いわよ」
「嘘っ!」
「美香、大人しそうな顔しているでしょう?元Jr.アイドルだから、幼い頃から変態どもの餌食にされて来たんだよ」
「由美子、止めときな。それは他人の口から言う事じゃない…」
「だって小百合…」
 美香を見て首を振った。
「良いよ、2人が知ってて、瑞稀だけ知らないなんて、もう同じグループの仲間なんだから…この芸能界せかいがどんな所か教えてあげるわ」
 美香の口から聞いた過去は、凄まじくおぞましいものだった。
 美香は物心ついた頃には父はなく、シングルマザーの母親に育てられていた。ある時、母の恋人から「コイツ顔は良いから、アイドルにしたら儲かるんじゃないか?」と何気ない一言を本気にした母が、水商売の客のツテで怪しい事務所に入った。
 そこで美香はJr.アイドルとなった。アイドルとは名ばかりで、ロリコンの変態を満足させる為に、際どい水着を着せられ、足を広げたり年齢には見合わない艶かしいポーズを要求された。
 それでも自分もいつかは、テレビに出られるアイドルになりたいと思う様になり、生活は貧しかったが母と2人仲良く穏やかに暮らしていた。
 その平穏が破られたのは、美香が10歳になった時だ。その日は、いつも母が側で撮影を見ていたのに、重要な話があるからと言って離れ、スタッフもカメラマンと男が1人だけで人払いされた。その男は馴れ馴れしく身体を触り、突然唇を奪われて押し倒された。10歳の女の子の力では大人の男には敵わない。処女をレイプで奪われ、しかもその様子は撮影されていた。
 美香がこんな目に合ったのに男達は、「これは高く売れるぞ」などと言って笑っていた。
「お母さん酷い!」と母を責めると、「だってあなた、いつまで経っても売れないんだもの、仕方ないでしょう?」と言って悪びれなかった。
 それからは撮影の度に、AVを撮られる様になった。しかし本当の悪夢はここからだった。
「ガキだから妊娠しないだろう?」と避妊などはされず、全て膣内なかに出された。しかしそんなはずは無く、3ヶ月もした頃、体調が悪くなり妊娠が発覚した。
「チッ、ガキのくせにはらんでんじゃねぇよ!」
 美香は11歳にして最初の中絶を行った。これに懲りて避妊はされずにお構い無しに膣内なかに出され、誰の子かも分からない子供を中絶から半年もしないうちに、再び妊娠した。それから更に3度も妊娠中絶を繰り返し、身も心もボロボロになった頃、母の新しい彼氏から犯された。それからはセフレの様な扱いを受け、遂には母の目の前で抱かれる様になった。時には母と代わる代わる犯された事もある。
 そんな時、遂に耐え切れなくなり、線路の上の陸橋から身を投げ様とした。
「そんな所で死なれたら、皆んな迷惑だよ。どうせ死ぬなら富士の樹海にでも行きな!誰にも迷惑をかけず、誰にも知られずにひっそりと死んだら良いさね。でもね、あんたがまだ生きたいって気持ちがあるなら、私がチャンスをあげる。死んだ気になったら、やって出来ない事なんて無いさ」
 そう言って拾ってくれたのが、今の社長だと言う。社長はクズ母親に、契約金だと言って大金を払って引き取った。
 そうだ、思い出した。前ループで美香が事務所に住んでいるから尋ねた事があった。確か社長は、「私の目の前で美香が貨物(列車)に飛び込もうとしたんだよ。どんな死体になるか分かるかい?グチャグチャだよ。そんなの見ちまった日には、寝覚めが悪いだろう?それに美香は、顔だけは良かったからさ、枕に使えると思ったのさ」そう言ったのを聞いた。私は最低だなと思ったが、あれは本心では無かったのかも知れない。
 だけど美香は、自分から率先して枕を受け、交際クラブにも通っている。足りない生活費や学費を稼ぐ為だ。
 交際クラブとは、芸能人御用達の売春クラブだ。身体を売る女も、買う男も芸能関係者である為に口は固い。
「私を抱いた男は1000人を超えるよ」
 平然と言ってのけた。そうだ、美香は既に壊れている。愛した男に裏切られ、捨てられて、リベンジポルノをネットに晒されて、今から5年後の22歳の時、首吊り自殺をして亡くなるのだ。
「美香…ごめん。今度は絶対に守って見せるから…」
 私は美香をハグして泣いた。
「今度って何?」
 美香は、安っぽい同情は要らないと言って苦笑いをした。
 美香ほど地獄を見て来たなら、今の生活でも極楽に感じるだろう。感覚も麻痺しているから、男に抱かれる事にも抵抗を感じないのだろう。
 由美子が話のキッカケを作ったがその理由は、美香は大和の彼女だからだ。と言っても、本当の彼女ではなく、交際クラブでの彼女である為、大和専属のセフレと言う意味だ。
 しかし、普通にデートをしてプレゼントを貰ったり、Hをする。実際の彼氏と行っている事は、なんら変わらないのだ。だから勘違いする女の子も出て来る。実際は都合の良い女でしかなく、しかもその為に相手はお金を支払っているのだ。生活の援助と言う名目で。
 美香は大和に夢中だった。だからもし私が大和と寝ていたら、グループ内で険悪になるから身を引けと釘を刺そうとしたのだ。由美子の気持ちも分かる。
「私…秘密にしたかったけど言うね。潤が…綾瀬潤の事が好きなの…」
 大和と同じグループだから、それを聞いて3人は納得し、胸を撫で下ろした。
「分かったわ。良い?美香を裏切って泣かせたら、あんたを絶対に許さない!」
 私は美香に誓った。この1件で私達の絆は深まり、溝が埋まる事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

処理中です...