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【第8.5部〜アイドル編2】
第3話 アイドル始動
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事務所に呼び出されて、片桐祐介マネージャーと一緒にいる。このマネージャーは元々、小百合達のマネージャーで、私が入所してユニットグループが作られる事が決まった為に、私達のマネージャーとなったのだ。でも私とはまだ初対面に近いので壁があり、少し冷たそうな印象のある人だ。
「失礼します」
「瑞稀!よく来てくれたわね。さ、座って頂戴!」
「はい」
「凄いわぁ、貴女。音楽の才能があったのね?歌もダンスも完璧に近いわ。何処で習ってたの?」
それは、前回で猛特訓したダンスと、歌手として安定していた時に、作曲家の先生からアドバイスを貰いながら、何度も書き直してようやく完成したオリジナルの曲だ。当然、思入れもある。
「いえ、小さい頃から見様見真似で作った曲ですが、この1曲で精一杯でした。やはり私には才能が無かったみたいです」
「謙遜しなくても良いのよ。本当に才能が無い人は、その1曲でさえヒットさせる事なんて出来ないの。これを見て、音楽番組とバラエティーから貴女宛に、オファーが殺到しているわよ」
仕事が入って社長は嬉しそうだ。音楽系の番組出演のギャラは、高額だと聞いた事がある。社長の喜びはその辺りだろう。自らの力で掴んだチャンスだ。
だけど、そのバズった要因を作ったのが、あの大和さんだと言う事だ。あの場に居たのか?前回で私は、主演男優だった大和さんとお酒を部屋飲みして、目が覚めると行為の後だった。後にそれは合意では無く、ドラッグを盛られて昏睡レイプされた事が判明した。
だが問題はその後で、行為中の動画を撮影されていて、それをネタに身体の関係を求めて来た事だ。私は彼の好みの女性に入っている為に、関われば今ループでも必ず狙われるだろう。
これでは矢沢Pから大和に代わっただけで、社長からは「御礼に行け、あわよくば気に入られて大和の女になって来い!」とでも言われる可能性がある。
「取り敢えず全部仕事を受けてスケジュールを入れるから、これから忙しくなるわよ?」と言われて社長室を退室した。
TV番組で私のデビューが急遽決まった。それに合わせて、小百合達とのユニットグループ名も決まり、同日にデビューする事となった。私はその日、グループとソロの2曲出演する事になった。
それからはデビューに向けて、連日ダンスと歌のレッスンを受けた。私は小百合達と息が合わず、何度もNGを出して険悪な雰囲気になった。
私は模倣でダンスを完璧に出来ていたが、逆に出来過ぎて小百合達とタイミングが合わないのだ。しかし、傍目からは私だけがズレている様に見える。
「私は悪くない、私は出来ている」と思うが故に小百合達と溝が出来て、険悪になった。何度も練習を重ねて、ようやくタイミングが合い始めた。私がテンポを落として合わせたのでは無く、彼女達のダンスが上手くなった為にタイミングが合い始めただけだ。
そんなこんなで、何とかカタチに出来るまでになり、本番に間に合いそうな感じだ。
音楽番組出演の当日、私の楽屋はソロで用意出来ると尋ねられたけど、グループとして皆んなと同じ楽屋が良いと言って断った。
小百合と由美子は、緊張して顔が引き攣っていた。
「笑顔よ、笑顔」と私が言うと、「そんな事は分かっているわよ!」と反感を買った。
正直本音を言うと、小百合とは仲良くやって行く自信が無い。プライドが高すぎて、高慢かつ傲慢だ。由美子が小百合とどうして仲が良いのか分からないけど、幼馴染らしいから腐れ縁と言ったところか?
美香は、小学1年生の頃からJr.アイドルだったらしく、芸歴はこの中では1番長い。場慣れしているのか、緊張している素振りを全く見せない。
私は、久しぶりのステージに立つんだと考えると、プレッシャーを感じて膝がガクガク震えていた。
「Mizukiさん、そろそろスタンバイお願いします!」
「はい」
私はギターを手に取って楽屋を出ると、ステージのセットの裏に待機した。
「すぅ~、はぁ~」
手のひらに「人」の文字を書いて、何度も飲み込んだ。
(大丈夫、大丈夫。思い出せ、アイドルだった時の私を。潤、見てて。これを足掛かりに、必ず貴方の隣りに立って見せる)
名前を呼ばれてステージに登場すると、歓声の中で曲が流れ始めた。ギターを弾きながら歌い、気分もノッテ来た所で2回目のサビ前に弦を外すと、頭の中が真っ白になった。咄嗟に歌を止めて、ギターとダンスを続けて誤魔化した。どうやらパフォーマンスだと思ってもらえたみたいだ。思い出した歌詞の続きを歌い始めて、事なきを得た。
「はぁ~緊張した。私の中では、アイドル時代って3000年も昔だもん。ブランクあり過ぎだよ…」
ソロが終わって次はグループだ、息が合うかな?とか思うと緊張してトイレに行きたくなった。
トイレ前の自販機を通り過ぎて何気無く見ると、心臓が飛び出そうになった。
(嘘!潤…、潤がいる…)
そう言えばこの頃はまだ、人気アイドルグループGENERATIONSのメンバーだった。歌番組だから呼ばれている可能性があったのに、緊張し過ぎて頭から抜けていた。
出演者を確認しておけば良かった、と思いながらトイレで用を足して出ると、潤はいなかった。ステージの袖でマネージャーに出演者の一覧を見せてもらった。
私達のグループの出番は次の次で、GENERATIONSは大トリでラストだった。私のスケジュールは、この後何も無いので、大和と出会うリスクはあるが、偶然を装って潤に話し掛けて、縁を作ろうと画策した。
「さぁ、お待ちかね。本日グループデビューのSweet Starsには、先程ソロで歌って頂いたMizukiさんがいます。それでは歌って頂きましょう♪Sweet Starsで『愛はこれから』です、どうぞ!」
私は先にソロで歌っていた分、どこか吹っ切れた所があった。終始笑顔を心掛けて歌い切った。歌い終わると次の歌手の準備の繋ぎで、MCが本日デビューと言う事で、色々と好感度が上がる質問を敢えてしてくれていた。
グループのリーダーは小百合である為、小百合がMCからの質問に受け応えをしていた。私もMyTubeがバズったのと、先程ソロを行ったので、グループの時と違うことがありますか?とか質問された。
次の準備がOKとなり、私達は用無しになったので、MCは私達に御礼を言って退場させた。小百合達は、緊張したとか言いながら楽屋に戻って行った。私は袖に引っ込んで、GENERATIONSの出番を待った。
「Mizukiちゃん、Mizukiちゃんでしょう?」
背後から声をかけられ振り向くと、大和翔だった。
「あっ、大和さん!MyTube見ました。お陰様で、有名になりました」
「ははは、俺のお陰で有名になれて、こうして同じ番組に出れたんだから、何か御礼をして欲しいなぁ」
「…御礼…ですか?」
「この後、予定無い?無ければ、御礼に一杯付き合ってよ」
私は乗り気はしなかったが、何らかの御礼をしておかないと社長がうるさいだろうな?と考えてOKした。
(昔と違って今の私には状態異常無効がある。どうせドラッグを盛って、私を昏睡レイプしようと企んでいるに違いない)
大トリになったGENERATIONSがステージに上がる。潤がステージに上がる横で手を振って、手でハートを作って愛を捧げた。大和は自分にしていると勘違いして、手を振ってウインクして来た。
「いや、お前じゃないんだけど…」
聴き取られない様に、蚊の囁く様な声で呟いた。
「失礼します」
「瑞稀!よく来てくれたわね。さ、座って頂戴!」
「はい」
「凄いわぁ、貴女。音楽の才能があったのね?歌もダンスも完璧に近いわ。何処で習ってたの?」
それは、前回で猛特訓したダンスと、歌手として安定していた時に、作曲家の先生からアドバイスを貰いながら、何度も書き直してようやく完成したオリジナルの曲だ。当然、思入れもある。
「いえ、小さい頃から見様見真似で作った曲ですが、この1曲で精一杯でした。やはり私には才能が無かったみたいです」
「謙遜しなくても良いのよ。本当に才能が無い人は、その1曲でさえヒットさせる事なんて出来ないの。これを見て、音楽番組とバラエティーから貴女宛に、オファーが殺到しているわよ」
仕事が入って社長は嬉しそうだ。音楽系の番組出演のギャラは、高額だと聞いた事がある。社長の喜びはその辺りだろう。自らの力で掴んだチャンスだ。
だけど、そのバズった要因を作ったのが、あの大和さんだと言う事だ。あの場に居たのか?前回で私は、主演男優だった大和さんとお酒を部屋飲みして、目が覚めると行為の後だった。後にそれは合意では無く、ドラッグを盛られて昏睡レイプされた事が判明した。
だが問題はその後で、行為中の動画を撮影されていて、それをネタに身体の関係を求めて来た事だ。私は彼の好みの女性に入っている為に、関われば今ループでも必ず狙われるだろう。
これでは矢沢Pから大和に代わっただけで、社長からは「御礼に行け、あわよくば気に入られて大和の女になって来い!」とでも言われる可能性がある。
「取り敢えず全部仕事を受けてスケジュールを入れるから、これから忙しくなるわよ?」と言われて社長室を退室した。
TV番組で私のデビューが急遽決まった。それに合わせて、小百合達とのユニットグループ名も決まり、同日にデビューする事となった。私はその日、グループとソロの2曲出演する事になった。
それからはデビューに向けて、連日ダンスと歌のレッスンを受けた。私は小百合達と息が合わず、何度もNGを出して険悪な雰囲気になった。
私は模倣でダンスを完璧に出来ていたが、逆に出来過ぎて小百合達とタイミングが合わないのだ。しかし、傍目からは私だけがズレている様に見える。
「私は悪くない、私は出来ている」と思うが故に小百合達と溝が出来て、険悪になった。何度も練習を重ねて、ようやくタイミングが合い始めた。私がテンポを落として合わせたのでは無く、彼女達のダンスが上手くなった為にタイミングが合い始めただけだ。
そんなこんなで、何とかカタチに出来るまでになり、本番に間に合いそうな感じだ。
音楽番組出演の当日、私の楽屋はソロで用意出来ると尋ねられたけど、グループとして皆んなと同じ楽屋が良いと言って断った。
小百合と由美子は、緊張して顔が引き攣っていた。
「笑顔よ、笑顔」と私が言うと、「そんな事は分かっているわよ!」と反感を買った。
正直本音を言うと、小百合とは仲良くやって行く自信が無い。プライドが高すぎて、高慢かつ傲慢だ。由美子が小百合とどうして仲が良いのか分からないけど、幼馴染らしいから腐れ縁と言ったところか?
美香は、小学1年生の頃からJr.アイドルだったらしく、芸歴はこの中では1番長い。場慣れしているのか、緊張している素振りを全く見せない。
私は、久しぶりのステージに立つんだと考えると、プレッシャーを感じて膝がガクガク震えていた。
「Mizukiさん、そろそろスタンバイお願いします!」
「はい」
私はギターを手に取って楽屋を出ると、ステージのセットの裏に待機した。
「すぅ~、はぁ~」
手のひらに「人」の文字を書いて、何度も飲み込んだ。
(大丈夫、大丈夫。思い出せ、アイドルだった時の私を。潤、見てて。これを足掛かりに、必ず貴方の隣りに立って見せる)
名前を呼ばれてステージに登場すると、歓声の中で曲が流れ始めた。ギターを弾きながら歌い、気分もノッテ来た所で2回目のサビ前に弦を外すと、頭の中が真っ白になった。咄嗟に歌を止めて、ギターとダンスを続けて誤魔化した。どうやらパフォーマンスだと思ってもらえたみたいだ。思い出した歌詞の続きを歌い始めて、事なきを得た。
「はぁ~緊張した。私の中では、アイドル時代って3000年も昔だもん。ブランクあり過ぎだよ…」
ソロが終わって次はグループだ、息が合うかな?とか思うと緊張してトイレに行きたくなった。
トイレ前の自販機を通り過ぎて何気無く見ると、心臓が飛び出そうになった。
(嘘!潤…、潤がいる…)
そう言えばこの頃はまだ、人気アイドルグループGENERATIONSのメンバーだった。歌番組だから呼ばれている可能性があったのに、緊張し過ぎて頭から抜けていた。
出演者を確認しておけば良かった、と思いながらトイレで用を足して出ると、潤はいなかった。ステージの袖でマネージャーに出演者の一覧を見せてもらった。
私達のグループの出番は次の次で、GENERATIONSは大トリでラストだった。私のスケジュールは、この後何も無いので、大和と出会うリスクはあるが、偶然を装って潤に話し掛けて、縁を作ろうと画策した。
「さぁ、お待ちかね。本日グループデビューのSweet Starsには、先程ソロで歌って頂いたMizukiさんがいます。それでは歌って頂きましょう♪Sweet Starsで『愛はこれから』です、どうぞ!」
私は先にソロで歌っていた分、どこか吹っ切れた所があった。終始笑顔を心掛けて歌い切った。歌い終わると次の歌手の準備の繋ぎで、MCが本日デビューと言う事で、色々と好感度が上がる質問を敢えてしてくれていた。
グループのリーダーは小百合である為、小百合がMCからの質問に受け応えをしていた。私もMyTubeがバズったのと、先程ソロを行ったので、グループの時と違うことがありますか?とか質問された。
次の準備がOKとなり、私達は用無しになったので、MCは私達に御礼を言って退場させた。小百合達は、緊張したとか言いながら楽屋に戻って行った。私は袖に引っ込んで、GENERATIONSの出番を待った。
「Mizukiちゃん、Mizukiちゃんでしょう?」
背後から声をかけられ振り向くと、大和翔だった。
「あっ、大和さん!MyTube見ました。お陰様で、有名になりました」
「ははは、俺のお陰で有名になれて、こうして同じ番組に出れたんだから、何か御礼をして欲しいなぁ」
「…御礼…ですか?」
「この後、予定無い?無ければ、御礼に一杯付き合ってよ」
私は乗り気はしなかったが、何らかの御礼をしておかないと社長がうるさいだろうな?と考えてOKした。
(昔と違って今の私には状態異常無効がある。どうせドラッグを盛って、私を昏睡レイプしようと企んでいるに違いない)
大トリになったGENERATIONSがステージに上がる。潤がステージに上がる横で手を振って、手でハートを作って愛を捧げた。大和は自分にしていると勘違いして、手を振ってウインクして来た。
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