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【第8.5部〜アイドル編2】

第2話 MyTube

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「お帰りなさい」
「ただいま、来夢。お母さんって呼んだ方が良いのかな?」
「どっちでも良いよ。お母さん役は続けるから安心して」
「有難う。ふふふ、それにしてもまさかアイドル時代までさかのぼるとは思わなかったな」
「天界は、貴女に未練を残して欲しく無いのよ。冥界から動こうとしなかったものね」
 来夢は、全てを喰らうエルダー・スライムだが、意外にも料理は上手だった。
「来夢が作ってくれたご飯も、『上菜シィアンツァイ』で出せる様になるから、たくさん作ってもらわなくっちゃ」
 来夢は表情の無いスライムだったが、表情を表せる様になっていた。
 ご飯を食べてお風呂に入って目を閉じた。
「早く潤に会いたい…」
 あの社長の事だ。前回と同じく近いうち、私に枕営業を経験させるはずだ。
 Hの経験をしていなければ、濡れ場やヌードシーンのある映画やドラマで、演技が出来ないからだ。経験が無くてどうして良いのか分からず、オロオロしている女優に監督が、「やり方が分からないなら、俺が抱いて教えてやろうか!?」と、怒鳴っているのを前回では聞いた事がある。
 また演技指導と称して、皆んなの前で裸にされ、胸を触られるだけでなく、秘部に指を入れられて、クチュクチュと音が立つまで手淫をされたアイドルもいた。
 こう言うシーンの場合、人払いされて監督、助監督、カメラマン、照明、メイク、マネージャーなど数人に絞られるが、男性マネージャーに恋しているアイドルや女優もいるから、好きな人の前で演技とは言え、その様な事をさせられて興奮する者もいるだろうが、大抵は罪悪感と仕事を引き受けてしまった事への後悔で涙を流す。
 私は業界に影響力がある矢沢Pがバックに付いてくれたから、短期間で売れた。オーディションも強引に合格させてくれて、主演女優になれた。
「さて、どうしようか…」
 お風呂から上がると、まだ20時半だった。私はギターを手にして、センター南駅前に来た。ここは時々、弾き語りをしている人達がいる。私は前回、作曲の勉強も行って作ったオリジナル曲がヒットした。
 このループではまだ曲を頂いていないから、先出しすると未来が大きく変わってしまうので避けた。私が自分で作った曲なら問題ないだろう。
 ギターを弾きながら歌い、ダンスを踊ると、足を止めて聴いてくれる人、忙しく足早に去って行く人、一瞥だけして興味無さそうにする人などが、私の前を通り過ぎて行った。
 立ち止まって聴いてくれていた人の中には、ギターケースにお金を入れてくれる人もいた。歌い手ながらお礼を言い、笑顔で手を振った。
 気が付けば22時を過ぎていたので、片付けを始めると、2人の男性に声を掛けられた。ナンパかな?と思っていると、違っていた。
「お姉さん、もう何処かの事務所に所属されていますか?」
 と、かれた。
「はい、スターフェアリーに所属しています」
「スターフェアリーね?」
「あなたは?」
「私は、ダイヤモンドジーニーのスカウトマンです」
「僕は、XYZ企画のスカウトマンです」
 ダイヤモンドジーニー、通称DJは良いとして、XYZ企画と言えばAVだよ。
「私、AVなんてやりませんよ!」
「ま、ウチは無理強いはしないんでね。スターフェアリーね?キミはどっちかな?」
 含んだ言い方をするが、事務所は大切に育てる金のなる木と、枕営業用の女優をかかえる。私が枕用なら使い捨てられた後、どうせAV落ちするだろう?と遠回しに言ったのだ。
 2人から名刺を受け取ると、そそくさとその場を離れると、駅の女子トイレに入って呪文を唱えた。
影の部屋シャドウルーム
 足下からズブズブと影の世界に沈んで行く。私は絶世の美女の称号持ちだから、男性を魅了する確率が高い。家を特定されて、付き纏いによるストーカー被害を受けたくないので、誰にも見られない移動手段をとったのだ。
 家に帰って再び、お風呂に入り汗を流した後、ベッドに寝転がった。
「ふぅ~なんだか長い1日で新鮮だったな」
 駅前で弾き語りを繰り返して、少しでも知名度を上げる努力をしよう。明日は、来夢に撮影を頼んでMyTubeに投稿して貰おうかな?瞼が重く感じて目を閉じると、直ぐに寝息を立てた。
 私はスカウトされる前から、私のファンと称する人達がいた。校門周辺で待ち伏せされているが、家までつけて来る事は無い。彼らなりのルールを作って、守っているみたいだったので、私も怖がらずに彼らに挨拶をしていた。しかし今朝は、いつもと様子が違っていた。
「何、この人だかりは?」
「あっ!瑞稀!ちょっとこっち…」
 友達の幸子ちゃんが、眉を顰めて私の手を引っ張った。
「何、何、何!?どうしたの?さっちゃん」
 さっちゃんは、息を切らせて言った。
「瑞稀、コレ見て!」
 校舎に隠れる様にして入ると、さっちゃんはスマホでMyTubeの動画を見せて来た。
「えっ、それ私じゃん。昨晩の奴だよ。へぇ~よく撮れてる。綺麗に撮ってくれて有難いね」
「ただの動画じゃないんだよ。これ、大和やまとかけるのMyTubeの動画なんだよ!だから、超バズってる」
 よく見ると再生回数が、1200万回となっていた。
「ヤッバぁ!超バズってるじゃん私」
 さっちゃんが言うには、私を一目見たくて学校に押し寄せた人や、色んな事務所のスカウトや、地元のローカル新聞社だけでなく、大手の新聞社からテレビ局の取材依頼などで、朝から電話が鳴りっぱなしだと言う。
「瑞稀!」
 声を掛けられて振り返ると、事務所のマネージャーだった。
「社長が呼んでいる。事務所に行くぞ。今日、学校は無理だろう?この状況では」
 私は社長に呼び出されて事務所に向かった。



 
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