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【第8部〜龍戦争〜】
第57話 終戦
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既に347ターン目と言う、本来であれば有り得ないターン数を戦っていた。
「クソっ、何なんだコイツは?塵も残さずに焼け死ね!」
『落日之太陽!』
呪文を唱えると、まるで太陽を思わせる巨大な火球が上空に浮かび、閻魔に向かって落下した。その熱量は、灼熱などの表現が生温く感じるほどの高熱が周囲を襲い、足下の石までもが蒸発した。術者である私でさえも被害を受けて、身体が蒸発しながら再生した。
これで閻魔も流石に消滅しただろうと思っていたが、勝利のファンファーレが鳴らない。どうなっているんだ?と思って目を凝らして見ると、塵も残っていないはずの場所から、閻魔の身体が再生されていく。
「信じられない!私でさえ塵からしか再生出来ないのに、塵も残っていなければ、私は不死では無くなる。閻魔は本物の不死身なの!?」
どうやっても倒す事が出来ない閻魔に青ざめた。ふと由子が、上空に向けて指を差しているのが見えた。
「空の上に何かあるの?」
閻魔が生き返る秘密かと期待して目を凝らしたが、何も無かった。
「何なの?全く分からない」
Game Startでは、その場所にいても別の空間にいる様なもので、そこにいる者を見る事は出来るが、声や音は届かない。由子のジェスチャーから意図を汲み取るのは難解だった。
「はぁ、はぁ、はぁ…不味い…。もうほとんど魔力が残っていない。スキルが解けたら形勢が逆転してしまう」
筋力差を頼みに、復活した閻魔を抑え付けて魔力を吸収した。しかし不思議な事に、ほとんど閻魔には魔力が無かった。
「ふははは、打つ手無しか?ではそろそろ反撃と行くかな?」
閻魔の笏の一撃を受けると、痛くも痒くも無かったが、肉体から魂が弾き出された。
「お主の負けだ」
閻魔が呪文を唱えると、それはお経に似ていると感じた。閻魔は懐から縄を取り出して私を捕縛した。身体の自由が奪われ、ステイタスが1しかないはずの閻魔に簡単に捕えられて、身動きが取れなくなった。
「お主の敗因は己の力を過信して、慢心した事よ。自分は無敵だとでも思っていたか?ふははは」
『Game Over』の音声と敗北音が鳴り響くと、それまで外界と遮断されていた結界が掻き消えていく。それとほとんど同時に由子が斬り込んで、閻魔がアナトを捕えている縄を手首ごと斬り落とした。
「笏で魂を肉体から弾き出し、霊魂を捕縛する縄だな?」
私を捕えていた縄が外れた為に、魂は再び身体に戻った。
「有難う由子。さっきの天を指差していたのは、どう言う意味だったの?」
「閻魔は、腐っても冥界の主だ。この冥界自体が巨大な結界であり、この中にいる限り閻魔は不死身だ。倒すなら冥界から出すしか無い」
「冥界が閻魔の結界…?」
凄まじい規模の結界だが、それなら殺しても死ななかった理由が分かる。
「その笏で叩かれなければ、お前にはもうどうする事も出来ないでしょう?これで終わりよ」
『異空間転移』
手のひらからビー玉ほどの大きさの黒い光を発する玉を出して、閻魔の側に飛ばした。圧縮された超高密度の超重力は、周囲の空間をも曲げて見せ、ビー玉サイズでしか無い黒玉に、閻魔の巨体が擦り潰されながら吸い込まれていく。
目を背けたくなる惨劇を目の当たりにしながら、冷ややかに見つめていた。
「大人しく降伏していれば、死なずに済んだものを…」
その瞬間、ゾクッと悪寒が走った。まさか異空間に放り出されても生き返って、再びこの座標に戻って来たと言うのか?振り返ると、全裸の女性が宙に浮いていた。
「お前は、サタン!?」
女性の姿のまま口から吐いた咆哮の直撃を受けて、私の上半身は消し飛んだ。サタンは七つ首の龍の姿になると、織田軍を襲い始めた。
由子はサタンが上空に飛んだ時には、既にその背に乗っており、3つの首を落としていた。しかし、サタンの首は再生していく。
「やはり7つの首を同時に落とさなければダメな様だな」
人手が欲しい。だが、サタンは強い。瞬時に首を刎ねられる技量を持つ者は限られるだろう。
サタンは、七つの首を1箇所に向けて咆哮を吐いた。その先には冥界の門があった。冥界の門を破壊すると、空間に次元の裂け目が出来た。
「不味い!サタンを冥界から出すな!」
気が付いた織田軍や神魔兵が、サタンを止めようとしたけど蹴散らされた。私は、吹き飛んだ上半身が再生して半裸だった為、生活魔法の『衣装替』を唱えて服を着ると、全力で飛んでサタンの後を追った。
「ダメだ。もう魔力が無い。追い付いても何も出来ない。足手纏いになる…どうする、どうしたら良いの?お母さん」
えっ?今私は何を言った?私達は、母娘関係が上手くいっているとは言えない。それでも無意識のうちに、頼っているのは母親だった。母の事を嫌いになり切れない自分に気付いて驚いた。
噂をすれば影が差すと言う。サタンが冥界の門を抜ける直前で、母が宮本武蔵を連れて現れ、その背に乗った。
アイコンタクトでほぼ同時に、サタンの7つの首を斬り落とした。宮本武蔵が首を2つ、母が1つ、由子が1人で首を4つも落とした。首を失くしたサタンは、地面に墜落した。私も地面に降り立った。
「終わったの?」
長い戦いは、ようやく終わった。これで私は天界、魔界、天龍界に続いて冥界をも支配する事になるだろう。人間界を制圧するつもりは無いので、残すは巨人の王国だけだ。
黥布の様に、次は自分の番だと恐れて戦争を仕掛けて来るか、膝を屈して自ら傘下に加わるか分からない。これについては、相手の出方を見極める事とする。
何にせよ、戦は終わったのだ。潤と望と、束の間の再会と幸せを噛み締めたい。
「クソっ、何なんだコイツは?塵も残さずに焼け死ね!」
『落日之太陽!』
呪文を唱えると、まるで太陽を思わせる巨大な火球が上空に浮かび、閻魔に向かって落下した。その熱量は、灼熱などの表現が生温く感じるほどの高熱が周囲を襲い、足下の石までもが蒸発した。術者である私でさえも被害を受けて、身体が蒸発しながら再生した。
これで閻魔も流石に消滅しただろうと思っていたが、勝利のファンファーレが鳴らない。どうなっているんだ?と思って目を凝らして見ると、塵も残っていないはずの場所から、閻魔の身体が再生されていく。
「信じられない!私でさえ塵からしか再生出来ないのに、塵も残っていなければ、私は不死では無くなる。閻魔は本物の不死身なの!?」
どうやっても倒す事が出来ない閻魔に青ざめた。ふと由子が、上空に向けて指を差しているのが見えた。
「空の上に何かあるの?」
閻魔が生き返る秘密かと期待して目を凝らしたが、何も無かった。
「何なの?全く分からない」
Game Startでは、その場所にいても別の空間にいる様なもので、そこにいる者を見る事は出来るが、声や音は届かない。由子のジェスチャーから意図を汲み取るのは難解だった。
「はぁ、はぁ、はぁ…不味い…。もうほとんど魔力が残っていない。スキルが解けたら形勢が逆転してしまう」
筋力差を頼みに、復活した閻魔を抑え付けて魔力を吸収した。しかし不思議な事に、ほとんど閻魔には魔力が無かった。
「ふははは、打つ手無しか?ではそろそろ反撃と行くかな?」
閻魔の笏の一撃を受けると、痛くも痒くも無かったが、肉体から魂が弾き出された。
「お主の負けだ」
閻魔が呪文を唱えると、それはお経に似ていると感じた。閻魔は懐から縄を取り出して私を捕縛した。身体の自由が奪われ、ステイタスが1しかないはずの閻魔に簡単に捕えられて、身動きが取れなくなった。
「お主の敗因は己の力を過信して、慢心した事よ。自分は無敵だとでも思っていたか?ふははは」
『Game Over』の音声と敗北音が鳴り響くと、それまで外界と遮断されていた結界が掻き消えていく。それとほとんど同時に由子が斬り込んで、閻魔がアナトを捕えている縄を手首ごと斬り落とした。
「笏で魂を肉体から弾き出し、霊魂を捕縛する縄だな?」
私を捕えていた縄が外れた為に、魂は再び身体に戻った。
「有難う由子。さっきの天を指差していたのは、どう言う意味だったの?」
「閻魔は、腐っても冥界の主だ。この冥界自体が巨大な結界であり、この中にいる限り閻魔は不死身だ。倒すなら冥界から出すしか無い」
「冥界が閻魔の結界…?」
凄まじい規模の結界だが、それなら殺しても死ななかった理由が分かる。
「その笏で叩かれなければ、お前にはもうどうする事も出来ないでしょう?これで終わりよ」
『異空間転移』
手のひらからビー玉ほどの大きさの黒い光を発する玉を出して、閻魔の側に飛ばした。圧縮された超高密度の超重力は、周囲の空間をも曲げて見せ、ビー玉サイズでしか無い黒玉に、閻魔の巨体が擦り潰されながら吸い込まれていく。
目を背けたくなる惨劇を目の当たりにしながら、冷ややかに見つめていた。
「大人しく降伏していれば、死なずに済んだものを…」
その瞬間、ゾクッと悪寒が走った。まさか異空間に放り出されても生き返って、再びこの座標に戻って来たと言うのか?振り返ると、全裸の女性が宙に浮いていた。
「お前は、サタン!?」
女性の姿のまま口から吐いた咆哮の直撃を受けて、私の上半身は消し飛んだ。サタンは七つ首の龍の姿になると、織田軍を襲い始めた。
由子はサタンが上空に飛んだ時には、既にその背に乗っており、3つの首を落としていた。しかし、サタンの首は再生していく。
「やはり7つの首を同時に落とさなければダメな様だな」
人手が欲しい。だが、サタンは強い。瞬時に首を刎ねられる技量を持つ者は限られるだろう。
サタンは、七つの首を1箇所に向けて咆哮を吐いた。その先には冥界の門があった。冥界の門を破壊すると、空間に次元の裂け目が出来た。
「不味い!サタンを冥界から出すな!」
気が付いた織田軍や神魔兵が、サタンを止めようとしたけど蹴散らされた。私は、吹き飛んだ上半身が再生して半裸だった為、生活魔法の『衣装替』を唱えて服を着ると、全力で飛んでサタンの後を追った。
「ダメだ。もう魔力が無い。追い付いても何も出来ない。足手纏いになる…どうする、どうしたら良いの?お母さん」
えっ?今私は何を言った?私達は、母娘関係が上手くいっているとは言えない。それでも無意識のうちに、頼っているのは母親だった。母の事を嫌いになり切れない自分に気付いて驚いた。
噂をすれば影が差すと言う。サタンが冥界の門を抜ける直前で、母が宮本武蔵を連れて現れ、その背に乗った。
アイコンタクトでほぼ同時に、サタンの7つの首を斬り落とした。宮本武蔵が首を2つ、母が1つ、由子が1人で首を4つも落とした。首を失くしたサタンは、地面に墜落した。私も地面に降り立った。
「終わったの?」
長い戦いは、ようやく終わった。これで私は天界、魔界、天龍界に続いて冥界をも支配する事になるだろう。人間界を制圧するつもりは無いので、残すは巨人の王国だけだ。
黥布の様に、次は自分の番だと恐れて戦争を仕掛けて来るか、膝を屈して自ら傘下に加わるか分からない。これについては、相手の出方を見極める事とする。
何にせよ、戦は終わったのだ。潤と望と、束の間の再会と幸せを噛み締めたい。
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