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【第8部〜龍戦争〜】
第52話 大魔王サタンの脅威18
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石畳をいくつ踏んで、何時間降りているのか、いや感覚が麻痺して何時間も経っている様に感じるが、実は数十分しか経っていないのかも知れない。それどころか、何時間では無くて何日も降りているのかも知れない。同じ事を繰り返していると、人間は時間の感覚を失う。
いつの間にかに抱きかかえられたまま眠っていた私は、不意に何かの気配を感じて目を開けた。
「まさか!大魔王サタン!?」
ちょうど、7つの首がもたげる龍の頭と目線が等しくなった。この城が何故、中央部分がくり抜かれた様なデザインであったのかそれは、この巨大な厄災を世界にもたらす恐怖の大魔王がいたからだ。石畳はサタンの下へ向かう為のものだった。
サタンの龍の頭は動き、目が時折り合うのだが、別に襲って来る様子は無い。何とも奇妙な違和感を覚えた。
それから間も無く自動機械人形は、最下層に降り立った。そこで私はゆっくりと降ろされると、自動機械人形は何処かに行ってしまった。
「凄いな…」
手摺に身を預ける様にして乗り出し、大魔王サタンを間近で見ていた。
「ほっほっほっ、凄いじゃろう?」
背後で声を掛けられたので、ビクッとして振り返った。私は…、私はこの人を知っている。
「アルベルト・アインシュタイン…」
「ほっほっほっ、儂の事をご存知の様じゃな?神様に知られておるとは、光栄な事じゃて」
「そうか…貴方なら、自動機械人形もサイボーグも造れても不思議じゃないわね」
「お前さんは、何処の神様じゃ?」
「私はアナトよ」
「アナト?あぁ、唯一神の娘で人になりたいと、地上に降りた変わり者か?人類に食物を実らせる事を教えた豊穣の女神か」
「貴方は、ここで何をしているの?」
「儂か?儂はな…研究を続けておるのよ。もうほとんど終わり、これから…やっとこれから復讐出来る所じゃったのに…」
「復讐とは?」
「ナチスドイツ第三帝国じゃよ。やつらが、あの悪魔めが儂らの同胞を、生きたまま人体実験を繰り返したのよ」
「…そうだったね…貴方は、ユダヤ人だったね…」
「儂がこの冥府に落とされ、偶然にこの大魔王を見つけた時、死に掛けておった。儂は、このまま死なすには惜しいと考えた。じゃが儂は科学者で、医学の事なんて全く分からん。そこで、科学者は科学者らしく、大魔王の身体の大部分を機械化にして、生命を繋ぎ止める事に成功したのじゃよ」
「だからって、こんなの地上に出したら全世界が滅んでしまうわ!」
「…儂は思い違いをしておったのじゃ。大魔王が瀕死の重傷を負っていたのは、神々との戦が原因かと思っておったのじゃ。じゃが、違う。違ったのじゃ」
「違ったって何が?」
「大魔王に瀕死の重傷を負わせた者が、この冥府におるのじゃ。あやつは、あやつだけは別格。強者を強く追い求める修羅なのじゃ。恐ろしい」
「それじゃ、まさかあのレーザーの防衛システムは、そいつから身を守る為のものだったの!?」
「そうじゃ。じゃがそれすらも、あやつはすり抜けおったのじゃ」
「一体誰なの?宮本武蔵を連想したけれど、違うよね?」
「違う。あやつの名は…由子」
「由子?子って師の事で、先生と言う意味よね?由先生って誰?」
「知っている物は少ないじゃろう。あやつは、己に関する書物を全て燃やさせた為に、口伝でしか伝わっていない。歴史に初めてその名を刻んだ時より個人の武勇は凄まじく、10回振った剣が1振りに見えるほどの神速で、“一振り十殺”と畏れられた飛燕剣の達人じゃったそうな。ただ強いだけで無く、兵を率いては古の孫子や韓信にも匹敵すると謳われ、生涯不敗を誇ったのじゃ」
「へぇ、そんな者がいたのね?それでどうなったの」
「由子は晋と言う国に登用されたが、言葉は粗野で荒々しく、気に入らなければ味方にも剣を抜いたと言う。由子の活躍もあって晋が天下を統一したのじゃが、皇帝が後継も無いままに3年で病死したのじゃ。再び天下は乱れ五柱国の乱が起こる。由子は韓の公主(姫)に迎えられて、韓の為に力を尽くす。この時まで皆が皆、由子の事を男じゃと思っておった。じゃが由子は、公主の実母として迎えられたのじゃ。公主は12歳で、由子はこの時は32歳じゃった。由子の夫は、亡くなった韓王の実兄じゃったのじゃ。つまり韓の王后として迎えられた訳じゃ。大臣や民は、あの荒々しい由子が王后じゃと?と、まるで見世物でも見る様に集まった。男女と囃し立て、笑い者にしてやろうとな。しかし、正装をして現れた由子に皆が息を飲んだのじゃ。そのあまりの美しさにな」
「ふふふ、痛快ですね♪」
「その後、由子は他の国々を制圧し、韓が天下を統一して大韓帝国を建国した。この時、由子の娘(公主)は男子を生んでおり、建前上はこの男子が皇帝で建国者と言う事になっているが、まだ1歳にもなっていない赤子の皇帝に建国など出来るはずも無く、事実上の建国者は女性である由子だったのじゃ。由子は名前が伝わっていない。なぜなら、名前を呼ぶ事は不敬に当たり、由太皇太后(皇帝の祖母)と呼ばれていた為じゃ。太皇太后(皇帝の祖母)となっても、この時はまだ由子は35歳じゃった。その後も紆余曲折あり、政治的にも優れた手腕を発揮して、大韓帝国の礎と最盛期を築いたのじゃ。民からは聖后(聖なる皇后)と崇められた。聖后と呼ばれた皇后は他の時代にもいる為に、大韓の聖后と言えば由子の事を指すのじゃ」
(詳細は、筆者の著書「大韓の聖后」が連載中ですので、併せて読んで頂けると幸いです)
とても信じられない話だ。最終戦争に於いて、大魔王サタンが勝利すると予言されている。いくら強いと言っても、単身で大魔王サタンを倒しただと?しかも、あの鉄壁の防衛システムを物ともせずに城内に入るだと?そんな事が出来るはずが無い。
私はアインシュタインのジョークかと思って聞いていた。
いつの間にかに抱きかかえられたまま眠っていた私は、不意に何かの気配を感じて目を開けた。
「まさか!大魔王サタン!?」
ちょうど、7つの首がもたげる龍の頭と目線が等しくなった。この城が何故、中央部分がくり抜かれた様なデザインであったのかそれは、この巨大な厄災を世界にもたらす恐怖の大魔王がいたからだ。石畳はサタンの下へ向かう為のものだった。
サタンの龍の頭は動き、目が時折り合うのだが、別に襲って来る様子は無い。何とも奇妙な違和感を覚えた。
それから間も無く自動機械人形は、最下層に降り立った。そこで私はゆっくりと降ろされると、自動機械人形は何処かに行ってしまった。
「凄いな…」
手摺に身を預ける様にして乗り出し、大魔王サタンを間近で見ていた。
「ほっほっほっ、凄いじゃろう?」
背後で声を掛けられたので、ビクッとして振り返った。私は…、私はこの人を知っている。
「アルベルト・アインシュタイン…」
「ほっほっほっ、儂の事をご存知の様じゃな?神様に知られておるとは、光栄な事じゃて」
「そうか…貴方なら、自動機械人形もサイボーグも造れても不思議じゃないわね」
「お前さんは、何処の神様じゃ?」
「私はアナトよ」
「アナト?あぁ、唯一神の娘で人になりたいと、地上に降りた変わり者か?人類に食物を実らせる事を教えた豊穣の女神か」
「貴方は、ここで何をしているの?」
「儂か?儂はな…研究を続けておるのよ。もうほとんど終わり、これから…やっとこれから復讐出来る所じゃったのに…」
「復讐とは?」
「ナチスドイツ第三帝国じゃよ。やつらが、あの悪魔めが儂らの同胞を、生きたまま人体実験を繰り返したのよ」
「…そうだったね…貴方は、ユダヤ人だったね…」
「儂がこの冥府に落とされ、偶然にこの大魔王を見つけた時、死に掛けておった。儂は、このまま死なすには惜しいと考えた。じゃが儂は科学者で、医学の事なんて全く分からん。そこで、科学者は科学者らしく、大魔王の身体の大部分を機械化にして、生命を繋ぎ止める事に成功したのじゃよ」
「だからって、こんなの地上に出したら全世界が滅んでしまうわ!」
「…儂は思い違いをしておったのじゃ。大魔王が瀕死の重傷を負っていたのは、神々との戦が原因かと思っておったのじゃ。じゃが、違う。違ったのじゃ」
「違ったって何が?」
「大魔王に瀕死の重傷を負わせた者が、この冥府におるのじゃ。あやつは、あやつだけは別格。強者を強く追い求める修羅なのじゃ。恐ろしい」
「それじゃ、まさかあのレーザーの防衛システムは、そいつから身を守る為のものだったの!?」
「そうじゃ。じゃがそれすらも、あやつはすり抜けおったのじゃ」
「一体誰なの?宮本武蔵を連想したけれど、違うよね?」
「違う。あやつの名は…由子」
「由子?子って師の事で、先生と言う意味よね?由先生って誰?」
「知っている物は少ないじゃろう。あやつは、己に関する書物を全て燃やさせた為に、口伝でしか伝わっていない。歴史に初めてその名を刻んだ時より個人の武勇は凄まじく、10回振った剣が1振りに見えるほどの神速で、“一振り十殺”と畏れられた飛燕剣の達人じゃったそうな。ただ強いだけで無く、兵を率いては古の孫子や韓信にも匹敵すると謳われ、生涯不敗を誇ったのじゃ」
「へぇ、そんな者がいたのね?それでどうなったの」
「由子は晋と言う国に登用されたが、言葉は粗野で荒々しく、気に入らなければ味方にも剣を抜いたと言う。由子の活躍もあって晋が天下を統一したのじゃが、皇帝が後継も無いままに3年で病死したのじゃ。再び天下は乱れ五柱国の乱が起こる。由子は韓の公主(姫)に迎えられて、韓の為に力を尽くす。この時まで皆が皆、由子の事を男じゃと思っておった。じゃが由子は、公主の実母として迎えられたのじゃ。公主は12歳で、由子はこの時は32歳じゃった。由子の夫は、亡くなった韓王の実兄じゃったのじゃ。つまり韓の王后として迎えられた訳じゃ。大臣や民は、あの荒々しい由子が王后じゃと?と、まるで見世物でも見る様に集まった。男女と囃し立て、笑い者にしてやろうとな。しかし、正装をして現れた由子に皆が息を飲んだのじゃ。そのあまりの美しさにな」
「ふふふ、痛快ですね♪」
「その後、由子は他の国々を制圧し、韓が天下を統一して大韓帝国を建国した。この時、由子の娘(公主)は男子を生んでおり、建前上はこの男子が皇帝で建国者と言う事になっているが、まだ1歳にもなっていない赤子の皇帝に建国など出来るはずも無く、事実上の建国者は女性である由子だったのじゃ。由子は名前が伝わっていない。なぜなら、名前を呼ぶ事は不敬に当たり、由太皇太后(皇帝の祖母)と呼ばれていた為じゃ。太皇太后(皇帝の祖母)となっても、この時はまだ由子は35歳じゃった。その後も紆余曲折あり、政治的にも優れた手腕を発揮して、大韓帝国の礎と最盛期を築いたのじゃ。民からは聖后(聖なる皇后)と崇められた。聖后と呼ばれた皇后は他の時代にもいる為に、大韓の聖后と言えば由子の事を指すのじゃ」
(詳細は、筆者の著書「大韓の聖后」が連載中ですので、併せて読んで頂けると幸いです)
とても信じられない話だ。最終戦争に於いて、大魔王サタンが勝利すると予言されている。いくら強いと言っても、単身で大魔王サタンを倒しただと?しかも、あの鉄壁の防衛システムを物ともせずに城内に入るだと?そんな事が出来るはずが無い。
私はアインシュタインのジョークかと思って聞いていた。
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