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【第8部〜龍戦争〜】

第51話 大魔王サタンの脅威17

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 緊張して神経をとがらせながらサタン領に入ったが、領民は長閑のどかで普通の営みをおくっている様に見えた。
「あのぉ、ここはサタン様の領地ですよね?」
「そうじゃが、あんた達は何処から来なさった?」
 領民のおじさんは怪訝な表情で、私達を舐め回す様に見ていた。
「私達はモト様の民でしたが滅ぼされ、信長は閻魔といくさを始めたので、こちらに避難して参りました」
「なんじゃ、避難民か。それならここは、えぇ土地じゃぞ。好きなだけ開墾して農作物を育てても徴収されるのは、たったの3割じゃ」
「3割!?」
 納税が安過ぎる。普通は4割から5割近く納税させられるだろう。悪徳な領主なら7割、8割も摂取して、民の叛乱を招く結末になる領主もいると言うのに。
「有難う御座いました、おじさん」
 笑顔で手を振って、その場を離れた。
「ふーん、なるほどね。良い領主か政治に興味が無いかって所ね?まぁ前者は無いわね、政治に興味が無いのも当然か。統治が目的では無くて、全てを破壊するのが目的なんでしょう?」
 とすると、この長閑のどかに見える平穏は、薄氷の上を歩いてる様なもので、束の間の平穏に過ぎない。
 サタンが住むと言う居城へと向かった。驚くべき事にサタン配下と呼ばれる者は、第六天魔王・織田信長(綾瀬潤)しか居らず、領地には守備軍などまるで居ない。国を守る気すら無い様に感じる。
「あれがサタンの城か?」
 広大な領土内に1城だけがあった。
「城1つとは、何を考えているのか理解出来ないわね」
 キラリと光が見えた気がした。
「ごふっ…?」
 胸を光に射抜かれて撃ち落とされ、地上へと墜落して行く。来夢がクッションとなって、地上への激突はまぬがれた。
「有難う、大丈夫よ。もう傷は治った」
 今度は地上から城へと近づいたが、同じ距離まで近くと、やはり光に胸を射抜かれた。
「まさか…?森の中だよ、ここは。一定の範囲内に入った侵入者を自動オートで攻撃するのかしら?」
「凄いスキルだな?」
「違う…これはスキルじゃない。高性能レーダーとレーザー…科学の力よ」
 サタンが科学だと?信じられない。それから何度も侵入を試みたが、確実に急所を射抜かれて即死する。私は死んでも生き返る。結果、不死なのだ。一瞬死ぬのだから、これでは永久に近づく事が出来ない。
 攻撃を受けるのが生物だけなのかと思ったら、どうやら違うみたいで、木の枝を投げ込んだり、ボールを転がして見たりしたが、やはり攻撃された。
「不自然な動きで射程距離に入ったものを、無差別に攻撃しているんだわ」
 この絶対的防衛システムに自信があって、守衛を置いていないのだろう。
「困ったね」
 全く良いアイデアが浮かばない。異空間転移魔法とかも持っているが、1度でも行った事のある場所(座標)でなければ無理だ。
 来夢が、「少し遠いけど、目視出来るのだから既に呪文の効果範囲内だろう?」と言うので、城へ落雷呪文を雨の様に降らせてみた。しかしバリアの様なもので、そのことごとくを防がれた。
「はぁ~ダメだ。イライラする。今日の所はここで休もうよ」
 森の中で野営する事にした。城の射程距離に入ると、攻撃を受ける事を学習したのか、周囲には猛獣などの生物の姿は見えなかった。
 安心して眠っていると、ガシャンガシャンと言う機械音がしたので目が覚めた。それは最初見た時、サイボーグ兵に見つかったのかと思ったが、どうやらそれは自動機械人形オートマタらしかった。
 私は抵抗も虚しく自動機械人形オートマタに捕らえられ、来夢は?と見ると、来夢が居たはずの辺りが水溜まりの様になっているのが見えたので、溶かされたのだと思った。私より先に、邪魔な来夢から倒したのだろう。すると、最初からわたしが狙いか?
(落ち着け、来夢は大丈夫だ。来夢の核は私が持っている。来夢は大丈夫…)
 動揺する自分を落ち着かせる為に、自分に言い聞かせた。
 自動機械人形オートマタには識別信号でもあるのか、かかえられている私は、レーザーで攻撃をされなかった。
 そのお陰で、あんなに苦労したサタンの居城に、容易たやすく入れた。城の中に入ると中央が大きく、くり抜かれた様な造りになっており、その壁面沿いに螺旋階段上に石畳が乗っていた。
 その上を自動機械人形オートマタが歩くたびに揺れるので、底が見えない真っ暗闇な穴に落ちそうになる恐怖で、しがみ付いていた。高所恐怖症なので時々、自分が空を飛べると言う事を忘れてしまう。
「落ちちゃう、落ちちゃうよ」
 と思った矢先に、後ろを歩いていた自動機械人形オートマタが重みに耐えられなかったのか、石畳が割れて穴の底へと落ちて行った。耳を澄ましても、底に激突して砕けた様な音が聴こえない。それだけ穴の底が深いと言う事だ。
 私は青ざめて、更に力強く自動機械人形オートマタにしがみ付いた。
「ひえぇぇ。怖い、怖いよ。早く着いて、早く!」
 自動機械人形オートマタはそれに応える事は無く、淡々と一定のリズムを刻んで石畳を降りて行った。
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