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【第8部〜龍戦争〜】

第49話 大魔王サタンの脅威15

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 光速で飛行していると、織田軍とモト軍が交戦しているのが見えた。信長の旗印が見えた為、潤が直々に攻めている事が分かった。
「どうしよう…このまま三哥サングァ(モト)の所に行けば、潤(信長)と敵対してしまう…」
 その時、ハッと閃いた。潤がモトを攻め、閻魔王が居城に攻めて来ない様に、家康が逆に閻魔王を攻めて対峙している。それなら今の潤の居城は、空き家も同然では?今なら仲間を生き返らせるチャンスだと考え、全速力で潤の城に引き返した。
 勿論、わざとだろう。潤の前世が織田信長だったのなら、そんな抜かりのある真似はしない。織田四天王も私の配下となった為に、殺されてしまっているけれど、閻魔王と戦うには必要なはずだ。つまり、わざと生き返らせる為に、私は利用されると言う事だ。
 それでも良いと思う。潤の為になるなら、都合の良い女にだってなれる。それに、潤は何かを隠している。私にも言えない何かを。直感的にそれを感じた。女の勘って奴だ。
 潤の城に戻ると想像通りに、守りは薄かった。
「よいしょっと」
 流石に門からは入れない為に、壁をよじ登った。天界や魔界の城と同じく、空を飛んで入る事が出来ない結界が張られているからだ。
 直ぐに、首が並べられている場所へと来れた。守衛にも出くわす事は無かった。
「本当に城をもぬけの殻にするとは誰も思わないからね」
 「空城の計」見事なりと、心の中で感心していた。蘇生呪文を唱え様とした時、悪寒がして反射的に身体をずらすと喉から鮮血が飛び散った。首を押さえて血を止め様とするが、止まらずに上半身を赤く染めた。
「そうはさせんぞ!誰も居ないとでも思ったか?」
 私は喉を斬られていて、声を出そうとしても、ヒューヒューと空気を出す様な音しか出せなかった。身体をずらしていなければ、首を失っていたであろう。私の首を斬った相手は、中村半次郎(桐野利秋)だった。
 喉を手で押さえながら、息も絶え絶えに後退りしていたが、実は既に傷は回復していた。殺気を押さえて、油断してくれないかと隙を伺っているが、微塵も隙を見せない。力尽きたと見せ掛けて、地面に倒れ伏した。
「苦しいか?だが楽に死ねると思うなよ?このまま苦しんで死んで逝け。お前は信長様の何だったんだ?妻なら名前が記録されているな。遊ばれただけの女か?俺は…この生命さえ捧げても良いと思える主がいた。だが、生命を掛けて守ると言った主より、先に俺が死んじまった。気が付いたら、俺はここに居た。信長あのひとは、俺の新しいひかり。希望の光だ。邪魔する者は許さん!」
 頭に来て私は、起き上がって怒鳴った。
「邪魔なんてしてないわよ!」
 中村半次郎は、私が死にそうだったはずの上に、傷が治っている事に驚いた表情を見せた。
「信じられん。だが、死が訪れるのが遅れただけだ。何も問題は無い」
 そう言って薬丸自顕流の構えを見せた。
「馬鹿ね、何度私に見せたと思っているの?既に模倣ラーニング済みよ」
 私は中村半次郎と同じ構えを見せた。
「笑わせるな!見様見真似で、この俺とり合うつもりか?」
 瞬歩で間合いをお互いに詰め、全く同時に抜刀して剣を弾いた。示現流に防御は無い。攻撃して相手の剣ごと真っ二つにするか、剣を払い2撃目を入れるかで相手の攻撃を凌ぐ。
 抜刀して直ぐに鞘に戻し、神速の抜刀を繰り返す。技もスピードも全くの互角だった。模倣ラーニングしているのだから当然だ。しかし身体が軽い分、攻撃の重さが違う。打ち合う度に少しずつだが、押されていた。
(強い…。だけど、私はもっと強いはずだ。コイツよりも、ずっと強い奴らを私は見て来たはずだ)
 後ろに下がらずに前へ、前へ。活路は前へ行くしか無いと、斎藤一が言っていたのを思い出した。気がつくと、彼が得意としていた片手平突きを繰り出していた。
「くっ」
 半次郎の左肩を掠めると、抜即斬で私を袈裟斬りにしようとしたので、左の小太刀を抜いて受け流した。奇しくも宮本武蔵の二天一流の構えを取ってみせた。
「何だそれは?今度は武蔵の真似事か?」
 そう言って笑うと、お構い無しに間合いに入ってきた。私は半次郎の抜即斬を左小太刀で払うと、右手の刀で額を斬った。倒れる半次郎へ、沖田総司から模倣ラーニングした3段突きを喰らわしてトドメを刺した。
「見事…」
 見事…自分の技量を上回った相手に対して讃える。武士道精神って奴に感動を覚えた。
「あんたも十分強かったよ…」
死者蘇生リアニメーション!』
 失った仲間達が生き返った。ついでに中村半次郎も生き返らせた。
「何故この俺を生き返らせた?」
「…歴史の本でしか知らないけどさ。貴方達って、戦乱の世を生きて来たんじゃない。その貴方達のお陰で100年後の日本は、戦争を知らない平和な世の中よ。貴方達が目指していた世界よね?それなのに死後の世界でも争っているなんて、何だか悲しいね」
「…お前は生者だったな?俺達の…俺達の子孫の時代は泰平の世なのか。そうか…俺達のした事は無駄では無かったのだな…」
 半次郎の目に光るものが見えた。それから暫く動こうとはしなかった。そっとしておく事にして、私は潤(信長)の居城を巡回した。
 成吉思汗チンギス・ハーン達も生き返り、織田四天王や上杉謙信らも生き返った。頼もしい限りだ。
「これからどうする?」
 私達は岐路に立たされていた。個人的には潤の味方となって共に戦いたい。しかしそれでは大魔王サタンにくみした事になる。そうなれば最終戦争ハルマゲドンを待つ事なく、サタンの勝利で世界は終わる。そんな事は許してはならない。となれば、信長(潤)を討つ!と言う事で方針は決まる。私は潤と、潤と戦いたくない。私には潤を殺せない。何故、愛する潤と殺し合わなければならないのか?
「私達の戦力は信長に比べれば小さなものとなってしまった。これでは戦えない。閻魔王と共闘の道を探ってみては、どうでしょうか?」
 私が振り絞った、精一杯の譲歩だった。
「確かにアナトの言う通りだ。信長は強大だ。閻魔王と共に信長を討とう!」
 皆は賛成し、閻魔王と同盟を結ぶ使者が送られた。
「ふぅ~、これで時間は稼げる」
 暫くの間は、潤と表面上は争わずに済むと、胸を撫で下ろした。
 
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