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【第8部〜龍戦争〜】
第38話 大魔王サタンの脅威④
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私はその場で取り押さえられ、斎藤一も土方歳三と睨み合っていたが、織田軍と新撰組に取り囲まれても尚戦意を喪失しなかったが、近藤勇が声を掛けると溜息をついて剣を置いた。
「一、これが正しい選択なのかまだ分からん。だが、その時(間違っていた時)は遠慮なく斬りかかって来い」
ついに城内への侵入を許してしまうと、柴田勝家が南門から突入して来た。門が破られた狼煙が上がったが、他の門を守るのが精一杯で、対応する余力は無かった。
城内に侵入した織田軍は、民家を打ち壊し火を放ちながら城に迫った。
「撃て!」
城から織田軍に矢を放つと、織田軍も盾隊が矢を防ぎながら火矢を放って応酬した。火矢が刺さった場所を、女官達は火消しに追われる。
新撰組が城内に突入する準備を始め、南門攻めの主将である柴田勝家が到着した。
そこへ城から飛び降り、ゆっくりと上空から降りて来る者がいた。
『超強力催眠』
新撰組はその場で全員、意識を失った。それを見て柴田勝家は、踵を返して逃げた。撤退の合図の狼煙が上がると、各城門を攻めていた織田軍は退いた。
新撰組を捕虜にしたが、被害は甚大で手放しで喜べる状況ではなかった。局所的に勝利を上げる事は出来たが、織田軍には大したダメージは与えていないだろう。羽柴秀吉は、最初から必要最小限の攻めしか行わず、ゆとりを残していた為に殆ど被害を受けてはいない。明智光秀も同様である。唯一、正門に我々を釘付けにする役目を担った滝川一益の軍には、ある程度の被害を与えたが、それはこちらの上杉謙信の軍も同じだった。
ただ負傷者や戦死者は、私が治療したので、人為的被害は回復出来た。
「アナト殿が味方で良かった」
そう感謝された。
「大魔王サタンは復活を目論んでいる。織田信長や他にもいる強国を取り込んで勢力を拡大しているが、サタンが復活してしまった世で、何を望むのだ?全てが灰塵と化すと言うのに」
捕虜にした近藤勇に問うたが、黙秘された。「敗軍の将は語らず。斬れ」と言い、説得に応じようとはしなかった。その為、斎藤一と2人きりにして、その場を離れた。
「ミイラ取りがミイラにならないか?」
そう心配の声もあったが、斎藤一の性格上その様な心配は無いだろう。むしろ私の方がもうダメだった。手足の震えが止まらず、気を練る事も出来なくなり、練気剣は霧散した。
近藤勇の剣気に当てられたからだ。本物の人殺しの目。強い殺意。漂う気は、多くの死者の念を抱えていた。恐怖を感じると、もはや歯止めが効かなくなった。元々私は戦闘は苦手だ。これまで、色々なものを背負って戦って来たが、ここまで殺伐としていなかった。
ここは冥界だ。死者の怨念、無念が渦巻く世界だ。自分に向けられる強い殺意と憎悪に心が削られ、もう精神が保たない。
戦えなくなった私は、後方支援組に回されて、主に負傷者の手当をするのがメインとなった。
『完全回復』
手足を欠損した者や、刀傷が深い重症者を回復した。亡くなっても生き返らせてあげられるけど、消費する魔力が段違いだ。だから亡くなる前に回復させる必要があった。
「嗚呼、有難う。有難う。神の奇跡だ」
失ったはずの手を合わせて私を拝んだ。まぁ、確かに私は神様だけどね?そう思いつつも人から感謝されるのは心地良いものだ。
夜が明け始め、空が白身掛かって来た頃、再び織田軍は攻めて来た。深夜ぶっ通しだ。こちらを休めさせないつもりだ。
「我らは夜通し戦い、疲弊している。だがそれは敵も同じ事だ!」
関羽は、疲れきった兵士を鼓舞して、指揮を高めた。
南門が落ちた時、主将だった楊太眼は源義経に、お酒に混ぜられた薬を飲まされて眠っていた。この失敗を取り戻そうと、率先して南門の修繕を行なっていた。
「来たか!この俺がいる限り、南門を抜けると思うなよ?」
楊太眼は門を開けて、柴田勝家軍に突撃した。雑兵を蹴散らしながら進み、勝家と対峙した。
「うぬが大将か?」
「楊太眼、参る」
「某は、織田家筆頭家老、北陸方面軍司令官・柴田勝家である」
信長の軍が強かった理由の1つが、物干し竿とも呼ばれるほど長い槍を使っていた事による。相手の得物(武器)の間合いよりも遠くから攻撃出来れば、自らは傷を負う事なく戦えると言う信長らしい発想によるものだ。しかし長ければ、それだけ扱いが難しくなる。だが勝家は、それを身体の1部であるかの如く使いこなす。
楊太眼は、今まで見た事も無い長槍に苦戦していた。柴田勝家の槍捌きは見事で、一瞬でも気を抜けば頭を叩き割られてしまいそうだ。槍を受けると、しなやかに穂先が反動で曲がり、楊太眼の頭を掠めた。数合打ち合い間合いを見切ると、槍を捌いて懐を詰め勝家の喉を貫いて討ち取った。
「柴田勝家、討ち取ったり~!」
織田家が誇る猛将の柴田勝家を討ち取られて動揺する織田軍に斬り込んだ。指揮官を失った烏合の衆など楊太眼の敵では無い。あっという間に数百人が討ち取られた。
ガガーン!
恐慌に陥った戦場に鉄砲の音が響いた。楊太眼の左目と心の臓は、ほぼ同時に射抜かれていた。馬上からまるでスローモーションの様にゆっくりと地面に落ちていく。余りの衝撃的な光景に目を疑い、楊家軍の目には時が止まった様に映ったのだ。
楊太眼が討ち取られるのと同じく、滝川一益が兵を率いて乱戦に突入して来ると、柴田勝家の残兵も息を吹き返してそれに合流した。今度は楊家軍が殲滅の危機に陥った。
泡や全滅の危機を救ったのは、その横腹を突いて突撃して来た花木蘭だった。敵将と見て向かって来た将校2人を、見事な手綱捌きで長槍を躱わし、手首を返して喉を掻き斬って討ち取っると、返り血が木蘭の顔に掛かり紅く染めた。戦場を俯瞰して見れる能力があり、織田軍の手薄な箇所を的確に把握すると、突撃を繰り返して打撃を与えた。
そのまま数時間に渡って戦闘は続き、互いに消耗戦の様相を見せると、撤退の合図の鐘が鳴り、織田軍も兵を退いた。
成吉思軍は、勝利の女神と呼ばれ不敗を誇った木蘭がいなければ、南門の守備兵のほとんどを失っていただろう。
織田軍は柴田勝家を失い、成吉思軍は楊太眼を失った。だが成吉思軍にとって最強の猛将を失った精神的ダメージは大きく、それに対して織田軍は柴田勝家が最強では無い。
織田軍は城を陥すべく、遂に切り札を投入する。
「一、これが正しい選択なのかまだ分からん。だが、その時(間違っていた時)は遠慮なく斬りかかって来い」
ついに城内への侵入を許してしまうと、柴田勝家が南門から突入して来た。門が破られた狼煙が上がったが、他の門を守るのが精一杯で、対応する余力は無かった。
城内に侵入した織田軍は、民家を打ち壊し火を放ちながら城に迫った。
「撃て!」
城から織田軍に矢を放つと、織田軍も盾隊が矢を防ぎながら火矢を放って応酬した。火矢が刺さった場所を、女官達は火消しに追われる。
新撰組が城内に突入する準備を始め、南門攻めの主将である柴田勝家が到着した。
そこへ城から飛び降り、ゆっくりと上空から降りて来る者がいた。
『超強力催眠』
新撰組はその場で全員、意識を失った。それを見て柴田勝家は、踵を返して逃げた。撤退の合図の狼煙が上がると、各城門を攻めていた織田軍は退いた。
新撰組を捕虜にしたが、被害は甚大で手放しで喜べる状況ではなかった。局所的に勝利を上げる事は出来たが、織田軍には大したダメージは与えていないだろう。羽柴秀吉は、最初から必要最小限の攻めしか行わず、ゆとりを残していた為に殆ど被害を受けてはいない。明智光秀も同様である。唯一、正門に我々を釘付けにする役目を担った滝川一益の軍には、ある程度の被害を与えたが、それはこちらの上杉謙信の軍も同じだった。
ただ負傷者や戦死者は、私が治療したので、人為的被害は回復出来た。
「アナト殿が味方で良かった」
そう感謝された。
「大魔王サタンは復活を目論んでいる。織田信長や他にもいる強国を取り込んで勢力を拡大しているが、サタンが復活してしまった世で、何を望むのだ?全てが灰塵と化すと言うのに」
捕虜にした近藤勇に問うたが、黙秘された。「敗軍の将は語らず。斬れ」と言い、説得に応じようとはしなかった。その為、斎藤一と2人きりにして、その場を離れた。
「ミイラ取りがミイラにならないか?」
そう心配の声もあったが、斎藤一の性格上その様な心配は無いだろう。むしろ私の方がもうダメだった。手足の震えが止まらず、気を練る事も出来なくなり、練気剣は霧散した。
近藤勇の剣気に当てられたからだ。本物の人殺しの目。強い殺意。漂う気は、多くの死者の念を抱えていた。恐怖を感じると、もはや歯止めが効かなくなった。元々私は戦闘は苦手だ。これまで、色々なものを背負って戦って来たが、ここまで殺伐としていなかった。
ここは冥界だ。死者の怨念、無念が渦巻く世界だ。自分に向けられる強い殺意と憎悪に心が削られ、もう精神が保たない。
戦えなくなった私は、後方支援組に回されて、主に負傷者の手当をするのがメインとなった。
『完全回復』
手足を欠損した者や、刀傷が深い重症者を回復した。亡くなっても生き返らせてあげられるけど、消費する魔力が段違いだ。だから亡くなる前に回復させる必要があった。
「嗚呼、有難う。有難う。神の奇跡だ」
失ったはずの手を合わせて私を拝んだ。まぁ、確かに私は神様だけどね?そう思いつつも人から感謝されるのは心地良いものだ。
夜が明け始め、空が白身掛かって来た頃、再び織田軍は攻めて来た。深夜ぶっ通しだ。こちらを休めさせないつもりだ。
「我らは夜通し戦い、疲弊している。だがそれは敵も同じ事だ!」
関羽は、疲れきった兵士を鼓舞して、指揮を高めた。
南門が落ちた時、主将だった楊太眼は源義経に、お酒に混ぜられた薬を飲まされて眠っていた。この失敗を取り戻そうと、率先して南門の修繕を行なっていた。
「来たか!この俺がいる限り、南門を抜けると思うなよ?」
楊太眼は門を開けて、柴田勝家軍に突撃した。雑兵を蹴散らしながら進み、勝家と対峙した。
「うぬが大将か?」
「楊太眼、参る」
「某は、織田家筆頭家老、北陸方面軍司令官・柴田勝家である」
信長の軍が強かった理由の1つが、物干し竿とも呼ばれるほど長い槍を使っていた事による。相手の得物(武器)の間合いよりも遠くから攻撃出来れば、自らは傷を負う事なく戦えると言う信長らしい発想によるものだ。しかし長ければ、それだけ扱いが難しくなる。だが勝家は、それを身体の1部であるかの如く使いこなす。
楊太眼は、今まで見た事も無い長槍に苦戦していた。柴田勝家の槍捌きは見事で、一瞬でも気を抜けば頭を叩き割られてしまいそうだ。槍を受けると、しなやかに穂先が反動で曲がり、楊太眼の頭を掠めた。数合打ち合い間合いを見切ると、槍を捌いて懐を詰め勝家の喉を貫いて討ち取った。
「柴田勝家、討ち取ったり~!」
織田家が誇る猛将の柴田勝家を討ち取られて動揺する織田軍に斬り込んだ。指揮官を失った烏合の衆など楊太眼の敵では無い。あっという間に数百人が討ち取られた。
ガガーン!
恐慌に陥った戦場に鉄砲の音が響いた。楊太眼の左目と心の臓は、ほぼ同時に射抜かれていた。馬上からまるでスローモーションの様にゆっくりと地面に落ちていく。余りの衝撃的な光景に目を疑い、楊家軍の目には時が止まった様に映ったのだ。
楊太眼が討ち取られるのと同じく、滝川一益が兵を率いて乱戦に突入して来ると、柴田勝家の残兵も息を吹き返してそれに合流した。今度は楊家軍が殲滅の危機に陥った。
泡や全滅の危機を救ったのは、その横腹を突いて突撃して来た花木蘭だった。敵将と見て向かって来た将校2人を、見事な手綱捌きで長槍を躱わし、手首を返して喉を掻き斬って討ち取っると、返り血が木蘭の顔に掛かり紅く染めた。戦場を俯瞰して見れる能力があり、織田軍の手薄な箇所を的確に把握すると、突撃を繰り返して打撃を与えた。
そのまま数時間に渡って戦闘は続き、互いに消耗戦の様相を見せると、撤退の合図の鐘が鳴り、織田軍も兵を退いた。
成吉思軍は、勝利の女神と呼ばれ不敗を誇った木蘭がいなければ、南門の守備兵のほとんどを失っていただろう。
織田軍は柴田勝家を失い、成吉思軍は楊太眼を失った。だが成吉思軍にとって最強の猛将を失った精神的ダメージは大きく、それに対して織田軍は柴田勝家が最強では無い。
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