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【第8部〜龍戦争〜】

第36話 大魔王サタンの脅威②

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 盟友を結んで兄弟国となった場合、兄または姉となる国は国力の高い方となり、その場合は弟または妹となる国側は、朝貢(貢ぎ物を送る)する事になる。
 しかし母の場合は、朝貢は不要だとした。大魔王サタンに対抗する為に、一時的に国と言う形態を取っただけで、維持存続するつもりは無いと驚くべき発言をしたからだ。その際は、成吉思チンギスが建てた国に組み込んで欲しいと言われ、思ってもみない言葉に動揺しつつも受け入れた。内心ほくそ笑んだに違いない。
 この為、母の軍兵らは全て成吉思チンギスの軍に再編成され、姉弟国と言いながら事実上、母の国家は成吉思チンギス軍に吸収合併された形だ。母はトップに立つのを嫌う傾向があるので、こうなるのでは無いかと内心思っていた。母はていよく押し付けた感じだ。
「聞いたよアナト、また母に甚振いたぶられたらしいな?」
「うん…出来事だけを見れば、そう見えるよね」
「どう言う事だ?」
「考えたの、何故お母さんがあんな事をしたのか?私の事を可愛い娘だと言ったのよ。矛盾しているわよね?私は不老不死だし、失った臓器は新しく出来るの。私が牢番6人からレイプされて、精子が逆流するほど溜まっていた子宮を、母は取り除いたのよ。…受精していたわ。誰の子か分からない子を生む所だったの。母はレイプされて出来た子供でも、私なら生むと考えたのよ。私に出来ない代わりに母は、子を生ませまいとしたのよ。やがて子供が育ち、父がいない事に疑問を持って聞かれたら何て答えれば良い?アナタは私がレイプされて出来た子供なのよ、なんて言える?きっと私は、お父さんはアナタが生まれる前に病気で死んでしまったの。アナタが生まれて来るのを楽しみにしていたわ、と嘘をつく…。私の心は傷付きすり減り、いつか事実を知った子供は自分が望まれない子供だった事を知って絶望するでしょうね?母も子も不幸な未来しか待っていない…だから母は…不器用だから私の為に、敢えて憎まれ役に徹したのよ」
 それでも、生を受けた子供には罪は無いと考えてしまう。確かに私なら生んでいたな、と遠い目をした。神は妊娠率が限りなく0%に近く、妊娠するチャンスが無い。せっかく宿った生命なのだ、守ってあげたいと考えるのが自然だ。私が妊娠していた事を知ったのは、母が子宮を取り出して暫くしてからだったので、どうしようも無い。
 城内が騒がしいので、城壁に出ると敵の先遣隊が布陣していた。
「どこの軍隊…って、永楽通宝の家紋!知ってる、私は知ってるよ…えっと、何だっけ…あぁ、思い出した。あれは織田信長の旗印じゃないのか!?」
「者知りだな?そうだ、あれは第六天魔王と称する織田信長の軍勢だ」
 上杉謙信が城壁の上から見下ろし、拳を強く握り締めたのを見逃さなかった。同じ戦国武将同士だ、因縁も深いだろう。
 織田信長の家紋としては、 織田木瓜おだもっこうが有名だが、信長は家紋を7つ持っている。時代劇などでは、織田木瓜が主な旗印として使われているが、実際はこの永楽通宝(当時の貨幣をデザインした家紋)が使われていたのだ。
 1543年、種子島に1隻の中国船が漂着する。その中に乗船していたポルトガル人によって、鉄砲は伝来した。それからおよそ8ヶ月後、初の国産鉄砲が完成した。これより急速に鉄砲の普及は高まり、僅か数十年で日本1国が保有する鉄砲の数は、およそ1500万丁にも上り、これは当時の全ヨーロッパが保有する鉄砲を掻き集めても800万丁にしかならず、この時日本は間違い無く世界最強国であった。
 天才とは、無から有を創り出す者の事を言うが、日本人には天才はいない。しかし日本の恐るべき所は、天才が創りだした物を独自に品種改良を加えて量産する所にあった。
 たった1丁の銃が僅か数十年で、世界の保有量の2倍を有すると言う脅威的な国が日本だ。
 その鉄砲による世界初の戦術を、武田の騎馬隊相手に編み出して勝利を収めたのが、言わずと知らず織田信長であった。彼もまた、戦の天才であった。誰の想像も及びつかない奇抜な発想に豊臣秀吉は心酔し、明智光秀は何を考えているのか分からない相手に眉を顰めた。
 織田信長はB型、豊臣秀吉はO型、明智光秀はA型で、実に良く彼らの性格を表していた。B型は発想タイプの天才肌が多く、上杉謙信もまた、変わり者か天才が多いと言われるAB型であった。
 また、奇しくも世界制覇に王手を掛けた成吉思汗チンギス・ハーンもまた、B型であった。
 織田信長の先遣隊が城門に近づくと、矢文を放った。
大哥ダーグァ、奴らは何と?」
「第六天魔王は、大魔王サタンの傘下に加わったそうだ。我らにも帰参を呼び掛けている」
「降れと?」
「馬鹿にしやがって!」
「1戦も交えずに降れるものか!」
 主戦論派がほとんどであった。直ぐに兵を編成して、敵に備える事になった。
「先遣隊の将は誰なのかな?」
「滝川一益です」
「織田四天王で、銃の腕が百発百中だったらしい。それに実は甲賀忍者だったとも言われているわね」
 忍者か、何やら嫌な予感しかしない。
「工作員に気を付けて!夜間の守備を増員するのよ」
「アナト、広い城壁全てを見張るのは無理だぞ?それに忍びへの対策はそれではダメだ」
 上杉謙信の指示によって、配置を変えられた。斎藤一の様子がおかしいので声を掛けた。
「実は、局長も副長も第六天魔王の所にいるのだ」
「えっ?近藤勇と土方歳三が信長の配下なの?」
「実はそれがしも局長達と共に信長殿に加わる予定だったのだが、隠密行動中に傷を負い、手当して頂いていたのだ」
「一宿一飯の恩義。どちらにも義理を立てたいわよねぇ?やまいと称して戦わなければ良いんじゃない?局長達を万が一、殺しちゃっても生き返らせるから」
 そうは言ったが、あの新撰組は強敵だし織田の軍勢が相手だ。しかも大魔王サタンの傘下の1つに過ぎない。それに信長の事だ。もっと、とんでもない隠し玉があるかも知れないな、と思いながら城外を見下ろした。
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