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【第8部〜龍戦争〜】
第30話 冥界の門
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「ずっと閉じこもっていると、病気になりそうで…お散歩したいから、案内してもらえる?」
1人に伝えるとOKしてもらえたが、8人全員が付いて来た。
「ねぇ、ここは何処なの?」
地上は荒野と化していたはずだ。まだこんな所が残っていたなんて。
「ここは、冥界だよ」
「冥界?えっ、ちょっと待って。ここって、あの世なの?」
「あの世って何だ?お前達は冥界の事を、あの世と呼んでいるのか?」
「う、うん…。亡くなった人が行く場所…」
「ははは、あながち間違っちゃいないな。俺らは殺されたから、ここにいるんだしな」
「ねぇ?冥界の門が開いたでしょう。地上に出たのに、何でまた戻って来たの?」
「ああ、あの穴の事か?あれなら開きっぱなしだぞ」
何だって?大変だ。あの世の亡者達が門を抜けて、地上に溢れ返るって事じゃないの。
「地上には随分と行っていない。強者に襲われないとも限らない。それに、お前を取り戻そうとする連中もいるはずだ」
ここが冥界なら、古の伝説級の化け物が、うようよ居るに違いない。大蛇達が全員、私に付いて来る訳だ。私は八岐大蛇より弱い。その八岐大蛇よりも強い相手が大勢居るのだ。
と、背筋に寒気を感じた。それを見た私の身体は、恐怖で凍り付いたみたいに動けなくなった。
「何をしている。早く逃げるんだ!」
それは八岐大蛇並みの巨体で、牛の頭に目が4つ、6本の腕はそれぞれ刀、大弓、楯、戦斧、矛を握っていた。
「しまった。ここは奴の縄張りか」
「奴?」
私を突き飛ばした大蛇の1人は、胴斬りにされて絶命した。
「うわっ」
突き飛ばされた私は、手を付いて受け身を取った。大蛇の1人が、私を抱きかかえて逃げた。
「あれは何なの?」
「あれは蚩尤だ」
蚩尤?ああ、蚩尤の事ね?と言うと、黄帝と最後まで争った敵よね?黄帝は負け続けたけど、最後の最後に勝って倒せたと言う。神農帝の最後の血縁者だっけ?
戦斧が振り下ろされて大地が割れた。グラついてバランスを崩したので、飛翔して態勢を整えた。その背を大弓で射られると、私を抱きかかえていた大蛇は、私を別の大蛇に投げた。私は抱き止められたが、投げた大蛇は背を射抜かれて絶命した。
8人の大蛇の内、2人を失った。しかも2人とも、私を庇って亡くなったのだ。何ともいたたまれない気持ちになった。
最初は、私を監禁レイプしたコイツらを許せなかった。必ず報復してやると、恨んだ。だけど勝手に嫁にされ、私を本当の妻の様に接して尽くしてくれた。今も生命をかけて逃がそうとしてくれている。
私は1度も応龍には勝てず、黄帝はその応龍よりも強い。蚩尤は、その黄帝が負け続けた相手だ。どれほどの強さか推し量れると言うものだ。
冥界の門は開いたままだ。まだ気付かれてはいないが、コイツを絶対に地上に出してはダメだ。
「うわあぁぁぁ!」
私は大蛇から離れ、蚩尤に向かって行った。
「よせ!」
背中越しに大蛇が叫んだが、私は気を練った。
『練気剣!』
身体を纏う気を練って剣を創り出す練気の剣だ。練った気の強さで斬れ味が変わる為、特に憎悪を糧に気を練ると、格段に斬れ味が増す。
蚩尤の腕を足で蹴って肩の高さまで一気に飛ぶと、袈裟斬りにした。…つもりだった。しかし、擦り傷1つ付いてはいない。
「硬っ…」
手が痺れて練気剣は、霧散して消えた。
蚩尤は武器を手放すと、私をまるで蝿の様に叩き払おうとしたので、避けると他の手で打ち払われそうになり、その手に気を取られていると、死角からの手に捕まって握り締められた。
「あぐうっ、わっ…」
必死に脱出しようと試みたが無駄で、締め付ける力は更に強くなり、肋骨と胸骨を砕き、膀胱を圧迫されて失禁すると、口を大きく開けて飲んだ。
「何だメスの尿の味がすると思って良く見たら、良い女じゃないか?俺の慰み者にしてやろう」
「止めろぉ!」
叫んで私を取り戻そうとした大蛇は、蹴り飛ばされて木々を倒しながら吹き飛んで絶命した。
「この野郎!」
頭上の背後を取った大蛇は、隙ありと頭を目掛けて剣で突っ込んだが、手でハタキ落とされて絶命した。生命など、虫を殺すほどにも感じてはいない奴だ。コイツは絶対に、ここで殺しておかなければならない。
蚩尤は、骨が折れてまだ回復出来ずに苦しんでいる私を摘み上げると、飲み込んだ。
真っ暗な落とし穴に落ちたみたいに、真っ逆さまに落ちて行く。すると、何か弁の様な物で弾かれると、横穴に落ちた。そこには財宝やら武器やら、何やらかんやらと落ちていた。横穴から下を覗き込むと、鼻が曲がる程の悪臭と、覗き込んだ時に落ちたボタンが一瞬で溶けたので、胃酸だと思った。
元の横穴の奥に戻ると、嗚咽されて身体が弾かれると、ゲップと共に吐き出された。
「うっ、臭いっ」
胃の中の悪臭が、ゲップに包まれて吐き出された事により、私の全身から悪臭を放っているみたいだ。
『自動洗浄』
服と身体を同時に綺麗にし、臭いは完全に取れた。
「げほ、げほ、ごほっ。凄い臭い…マジ最悪だった」
私を吐き出した蚩尤は、驚く事に人のサイズに縮んだ。イケメンと呼ぶには遠く掛け離れ、粗野で野蛮な雰囲気そのものの顔をしていた。
「それが蚩尤の正体なの?」
「俺の事を知ってるみたいだが、何者だ?」
「知っていると言うか、あなたは有名人だし、私も黄帝と戦ったし…」
「何?あの野郎と戦っただと?で、どっちが勝った?」
「えっと…全然勝てなくて、最後は反則勝ちみたいなもので…」
「ほう、では勝ったんだな?」
「ええ、まぁ…」
「がははははっ。最高だぜ、今日は飲もう。飲むぞぉ!」
蚩尤に抱きかかえられ、飛ぶ様な速さで何処かに向かった。
1人に伝えるとOKしてもらえたが、8人全員が付いて来た。
「ねぇ、ここは何処なの?」
地上は荒野と化していたはずだ。まだこんな所が残っていたなんて。
「ここは、冥界だよ」
「冥界?えっ、ちょっと待って。ここって、あの世なの?」
「あの世って何だ?お前達は冥界の事を、あの世と呼んでいるのか?」
「う、うん…。亡くなった人が行く場所…」
「ははは、あながち間違っちゃいないな。俺らは殺されたから、ここにいるんだしな」
「ねぇ?冥界の門が開いたでしょう。地上に出たのに、何でまた戻って来たの?」
「ああ、あの穴の事か?あれなら開きっぱなしだぞ」
何だって?大変だ。あの世の亡者達が門を抜けて、地上に溢れ返るって事じゃないの。
「地上には随分と行っていない。強者に襲われないとも限らない。それに、お前を取り戻そうとする連中もいるはずだ」
ここが冥界なら、古の伝説級の化け物が、うようよ居るに違いない。大蛇達が全員、私に付いて来る訳だ。私は八岐大蛇より弱い。その八岐大蛇よりも強い相手が大勢居るのだ。
と、背筋に寒気を感じた。それを見た私の身体は、恐怖で凍り付いたみたいに動けなくなった。
「何をしている。早く逃げるんだ!」
それは八岐大蛇並みの巨体で、牛の頭に目が4つ、6本の腕はそれぞれ刀、大弓、楯、戦斧、矛を握っていた。
「しまった。ここは奴の縄張りか」
「奴?」
私を突き飛ばした大蛇の1人は、胴斬りにされて絶命した。
「うわっ」
突き飛ばされた私は、手を付いて受け身を取った。大蛇の1人が、私を抱きかかえて逃げた。
「あれは何なの?」
「あれは蚩尤だ」
蚩尤?ああ、蚩尤の事ね?と言うと、黄帝と最後まで争った敵よね?黄帝は負け続けたけど、最後の最後に勝って倒せたと言う。神農帝の最後の血縁者だっけ?
戦斧が振り下ろされて大地が割れた。グラついてバランスを崩したので、飛翔して態勢を整えた。その背を大弓で射られると、私を抱きかかえていた大蛇は、私を別の大蛇に投げた。私は抱き止められたが、投げた大蛇は背を射抜かれて絶命した。
8人の大蛇の内、2人を失った。しかも2人とも、私を庇って亡くなったのだ。何ともいたたまれない気持ちになった。
最初は、私を監禁レイプしたコイツらを許せなかった。必ず報復してやると、恨んだ。だけど勝手に嫁にされ、私を本当の妻の様に接して尽くしてくれた。今も生命をかけて逃がそうとしてくれている。
私は1度も応龍には勝てず、黄帝はその応龍よりも強い。蚩尤は、その黄帝が負け続けた相手だ。どれほどの強さか推し量れると言うものだ。
冥界の門は開いたままだ。まだ気付かれてはいないが、コイツを絶対に地上に出してはダメだ。
「うわあぁぁぁ!」
私は大蛇から離れ、蚩尤に向かって行った。
「よせ!」
背中越しに大蛇が叫んだが、私は気を練った。
『練気剣!』
身体を纏う気を練って剣を創り出す練気の剣だ。練った気の強さで斬れ味が変わる為、特に憎悪を糧に気を練ると、格段に斬れ味が増す。
蚩尤の腕を足で蹴って肩の高さまで一気に飛ぶと、袈裟斬りにした。…つもりだった。しかし、擦り傷1つ付いてはいない。
「硬っ…」
手が痺れて練気剣は、霧散して消えた。
蚩尤は武器を手放すと、私をまるで蝿の様に叩き払おうとしたので、避けると他の手で打ち払われそうになり、その手に気を取られていると、死角からの手に捕まって握り締められた。
「あぐうっ、わっ…」
必死に脱出しようと試みたが無駄で、締め付ける力は更に強くなり、肋骨と胸骨を砕き、膀胱を圧迫されて失禁すると、口を大きく開けて飲んだ。
「何だメスの尿の味がすると思って良く見たら、良い女じゃないか?俺の慰み者にしてやろう」
「止めろぉ!」
叫んで私を取り戻そうとした大蛇は、蹴り飛ばされて木々を倒しながら吹き飛んで絶命した。
「この野郎!」
頭上の背後を取った大蛇は、隙ありと頭を目掛けて剣で突っ込んだが、手でハタキ落とされて絶命した。生命など、虫を殺すほどにも感じてはいない奴だ。コイツは絶対に、ここで殺しておかなければならない。
蚩尤は、骨が折れてまだ回復出来ずに苦しんでいる私を摘み上げると、飲み込んだ。
真っ暗な落とし穴に落ちたみたいに、真っ逆さまに落ちて行く。すると、何か弁の様な物で弾かれると、横穴に落ちた。そこには財宝やら武器やら、何やらかんやらと落ちていた。横穴から下を覗き込むと、鼻が曲がる程の悪臭と、覗き込んだ時に落ちたボタンが一瞬で溶けたので、胃酸だと思った。
元の横穴の奥に戻ると、嗚咽されて身体が弾かれると、ゲップと共に吐き出された。
「うっ、臭いっ」
胃の中の悪臭が、ゲップに包まれて吐き出された事により、私の全身から悪臭を放っているみたいだ。
『自動洗浄』
服と身体を同時に綺麗にし、臭いは完全に取れた。
「げほ、げほ、ごほっ。凄い臭い…マジ最悪だった」
私を吐き出した蚩尤は、驚く事に人のサイズに縮んだ。イケメンと呼ぶには遠く掛け離れ、粗野で野蛮な雰囲気そのものの顔をしていた。
「それが蚩尤の正体なの?」
「俺の事を知ってるみたいだが、何者だ?」
「知っていると言うか、あなたは有名人だし、私も黄帝と戦ったし…」
「何?あの野郎と戦っただと?で、どっちが勝った?」
「えっと…全然勝てなくて、最後は反則勝ちみたいなもので…」
「ほう、では勝ったんだな?」
「ええ、まぁ…」
「がははははっ。最高だぜ、今日は飲もう。飲むぞぉ!」
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