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【第8部〜龍戦争〜】
第25話 応龍の咆哮
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「哥哥!(義兄!)おのれ、よくも」
『光之神槍』
光速の投げ槍は、風后の身体を貫いた。光速である為に避けられず、弾こうとしたが貫通効果がある為に無理だった。
「ぐわぁっ…」
風后が倒れる様は、まるでスローモーションを見ているみたいに、ゆっくりと時が流れて地面に倒れた。
「最後の最後に読み間違えたみたいね?」
「…」
風后は既に虫の息だった。
「最後に顔くらい拝んであげるわ」
風后の顔を覆う白い覆面を剥ぎ取った。
「えっ?女…」
話を聞こうとした時には、既に風后は息をしていなかった。腰から玉牌を下げているのを目にし、手に取った。
「黄帝の玉牌よ。もしかすると、黄帝の愛妾だったのかも」
黄帝には4人の妻がいる。風后は、その4人の中の1人では無い。黄帝の妻は、嫘祖、女節、三妃、嫫母の4人だ。
私は風后の亡骸を、魔法箱に収納した。
「連れて行くの?マメねぇ」
彼女が黄帝の愛妾なら、交渉材料になるかも知れない。生き返らせる事を条件に、交渉が有利に働くかも知れない。
「ふふふ。貴女には私の本心を伝えておくわ」
「本心?」
「私は天界と魔界を統一した。この機に乗じて龍人界を制圧する」
「あははは、驚いたわ。貴女がそんなに野心家だったなんて」
言葉とは裏腹に麻里奈は上機嫌になった。なんだかんだ言っても、麻里奈は私の分身なのだ。考え方も似ている。
『死者蘇生』
ルシフェルとミカエルを生き返らせた。
「哥哥(義兄)」
ルシフェルとハグをすると、ミカエルは頬を膨らませた。それから急いで城に急行すると、凄惨な有様だった。城に近づく前から血の匂いが漂い、城内は腐敗臭が充満していた。
私が鼻を押さえていると、麻里奈はクスリと笑った。当然だろう。麻里奈はアンデットの女帝だ。こんなの慣れっこで、へっちゃらなのだろう。
「麻里奈、私の魔力が足りないの」
「足りないのって、私を頼るつもり?まぁ良いけど、この借りは高くつくわよ?」
麻里奈から見た事がない魔石を渡された。これ1個で、私の魔力を10回は全回復出来る超貴重品らしい。
『死者蘇生』
『黄泉還反魂』
勿論、私の兵は普通の光魔法で蘇生し、黄帝の兵は私の命令に絶対服従となる闇の蘇生魔法を使った。
「小虞!」
「阿籍…」
「はぁ、小虞、小虞、小虞。あんたも懲りないわね?あんた達は、もうとっくに終わっているのよ」
「小虞が2人だと…?」
色んな人に会う度に一から説明するのが面倒くさくて、だいぶ省略して説明した。取り敢えず麻里奈が、味方だと分かれば良いよね。
「そうか小虞の分身体なら、本人も同然だな」
そう言って麻里奈を抱き寄せた。
「おっ?私でもイケる口なの?良いわよ、後で相手してあげる。でも瑞稀がヤキモチ妬くかもよ?」
「妬かないわよ」
イラっとして睨みつけた。
「ほらね?もう妬いているわよ」
麻里奈が含み笑いをするのが、苛立って仕方がない。
城内を見回すと、廃城みたいに崩壊されていた。
「どちらにしろ、もうここでは守れないわ」
「兵も回復した。ここまま黄帝の居城を攻めれば良いだろう」
阿籍らしい考え方だ。でもそれだから私が、彭城で劉邦に犯されたんだ、と思うと腹が立って来た。
虞美人だった時の私は無力だった。でも今は違う。簡単にどうにか出来ると思うなよ?
「確かに今はそれが一番かも。使える物はまとめて持って行こう」
「もう準備は出来ている」
「えっ?早っ!」
仕事が早いな。流石は阿籍だ。これは、自分達だけでも攻め込むつもりだったでしょう?と言い掛けて、言葉を飲み込んだ。
部隊を再編して点呼を取らせた。その間に私にはする事がある。宮本武蔵の遺体を回収する事だ。黄泉還反魂で生き返らせて、私の言う事を聞く様になれば、強力な戦力となる。
武蔵の遺体が見当たらず、埋めた場所を知っている者を探すのに手間取った。
「全軍、進軍!」
神魔と黄帝の争いは、この一戦にかかっている。元々の神魔兵に加えて、討ち死にした龍人族も手勢に加わっている。さらに麻里奈が率いるアンデット軍団も加わり、大軍となった。
黄帝の居城に怒涛の如く攻め入ると、応龍と黄帝が現れた。応龍は龍の姿となり、虹色に輝く咆哮を吐いた。
咆哮1発で、アンデット軍団はほぼ壊滅した。2発目でルシエラにロード、ビゼル、フレイア、クラスタに率いさせていた魔軍がほぼ壊滅した。
「くそっ!」
単身突撃を行うと、右翼より阿籍が斬り込み、黄帝軍を撹乱した。黄帝軍の動きにいつものキレが無い。風后を討たれたのは、やはり大きいのだろう。
3発目の咆哮を吐く前に、応龍に達した。
「待て!お前の母はこちらの手にある!」
「お前達が母を殺したのだろう?仇打ちだ」
私は魔法箱から黄龍の遺体を取り出した。
「おおぉ…。母の、母の仇!」
「待て待て、私なら生き返らせられる事は知っているだろう?」
「…い、生き返させられるの?」
「だがそれには条件がある」
応龍は黙って頷いた。母が生き帰るのであれば何でもすると言った。そうは言っても、黄帝の敵になって首を取って来い!と言う命令には従うまい。
『黄泉還反魂』
これで黄龍が私の敵になる事は無い。
「嗚呼、母様…」
応龍は涙を流して黄龍と抱き合った。しかしこうして見ると、姉妹の様にしか見えない。私と母アシェラも同様だ。不老不死や不老長寿スキルは、見た目の年齢が20歳で止まるからだ。
黄帝は4人の妻の他に、この2人も抱いているのか、それに風后も。そう考えると、羨ましく思った。男目線な考えに気付いて、思わず苦笑した。男も女もどっちもイケるんだな、私は。
「応龍、約束よ。黄帝は裏切らなくても良い。でも私達の敵にも回らないで」
応龍は黄龍にしがみ付く様に抱きしめ、頷いた。よほど母親が居なくなる(死んで)恐怖を感じたのだろう。万が一、応龍が敵に回りそうになった場合、黄龍に止めさせよう。
これで残る敵は黄帝だけとなった。
『光之神槍』
光速の投げ槍は、風后の身体を貫いた。光速である為に避けられず、弾こうとしたが貫通効果がある為に無理だった。
「ぐわぁっ…」
風后が倒れる様は、まるでスローモーションを見ているみたいに、ゆっくりと時が流れて地面に倒れた。
「最後の最後に読み間違えたみたいね?」
「…」
風后は既に虫の息だった。
「最後に顔くらい拝んであげるわ」
風后の顔を覆う白い覆面を剥ぎ取った。
「えっ?女…」
話を聞こうとした時には、既に風后は息をしていなかった。腰から玉牌を下げているのを目にし、手に取った。
「黄帝の玉牌よ。もしかすると、黄帝の愛妾だったのかも」
黄帝には4人の妻がいる。風后は、その4人の中の1人では無い。黄帝の妻は、嫘祖、女節、三妃、嫫母の4人だ。
私は風后の亡骸を、魔法箱に収納した。
「連れて行くの?マメねぇ」
彼女が黄帝の愛妾なら、交渉材料になるかも知れない。生き返らせる事を条件に、交渉が有利に働くかも知れない。
「ふふふ。貴女には私の本心を伝えておくわ」
「本心?」
「私は天界と魔界を統一した。この機に乗じて龍人界を制圧する」
「あははは、驚いたわ。貴女がそんなに野心家だったなんて」
言葉とは裏腹に麻里奈は上機嫌になった。なんだかんだ言っても、麻里奈は私の分身なのだ。考え方も似ている。
『死者蘇生』
ルシフェルとミカエルを生き返らせた。
「哥哥(義兄)」
ルシフェルとハグをすると、ミカエルは頬を膨らませた。それから急いで城に急行すると、凄惨な有様だった。城に近づく前から血の匂いが漂い、城内は腐敗臭が充満していた。
私が鼻を押さえていると、麻里奈はクスリと笑った。当然だろう。麻里奈はアンデットの女帝だ。こんなの慣れっこで、へっちゃらなのだろう。
「麻里奈、私の魔力が足りないの」
「足りないのって、私を頼るつもり?まぁ良いけど、この借りは高くつくわよ?」
麻里奈から見た事がない魔石を渡された。これ1個で、私の魔力を10回は全回復出来る超貴重品らしい。
『死者蘇生』
『黄泉還反魂』
勿論、私の兵は普通の光魔法で蘇生し、黄帝の兵は私の命令に絶対服従となる闇の蘇生魔法を使った。
「小虞!」
「阿籍…」
「はぁ、小虞、小虞、小虞。あんたも懲りないわね?あんた達は、もうとっくに終わっているのよ」
「小虞が2人だと…?」
色んな人に会う度に一から説明するのが面倒くさくて、だいぶ省略して説明した。取り敢えず麻里奈が、味方だと分かれば良いよね。
「そうか小虞の分身体なら、本人も同然だな」
そう言って麻里奈を抱き寄せた。
「おっ?私でもイケる口なの?良いわよ、後で相手してあげる。でも瑞稀がヤキモチ妬くかもよ?」
「妬かないわよ」
イラっとして睨みつけた。
「ほらね?もう妬いているわよ」
麻里奈が含み笑いをするのが、苛立って仕方がない。
城内を見回すと、廃城みたいに崩壊されていた。
「どちらにしろ、もうここでは守れないわ」
「兵も回復した。ここまま黄帝の居城を攻めれば良いだろう」
阿籍らしい考え方だ。でもそれだから私が、彭城で劉邦に犯されたんだ、と思うと腹が立って来た。
虞美人だった時の私は無力だった。でも今は違う。簡単にどうにか出来ると思うなよ?
「確かに今はそれが一番かも。使える物はまとめて持って行こう」
「もう準備は出来ている」
「えっ?早っ!」
仕事が早いな。流石は阿籍だ。これは、自分達だけでも攻め込むつもりだったでしょう?と言い掛けて、言葉を飲み込んだ。
部隊を再編して点呼を取らせた。その間に私にはする事がある。宮本武蔵の遺体を回収する事だ。黄泉還反魂で生き返らせて、私の言う事を聞く様になれば、強力な戦力となる。
武蔵の遺体が見当たらず、埋めた場所を知っている者を探すのに手間取った。
「全軍、進軍!」
神魔と黄帝の争いは、この一戦にかかっている。元々の神魔兵に加えて、討ち死にした龍人族も手勢に加わっている。さらに麻里奈が率いるアンデット軍団も加わり、大軍となった。
黄帝の居城に怒涛の如く攻め入ると、応龍と黄帝が現れた。応龍は龍の姿となり、虹色に輝く咆哮を吐いた。
咆哮1発で、アンデット軍団はほぼ壊滅した。2発目でルシエラにロード、ビゼル、フレイア、クラスタに率いさせていた魔軍がほぼ壊滅した。
「くそっ!」
単身突撃を行うと、右翼より阿籍が斬り込み、黄帝軍を撹乱した。黄帝軍の動きにいつものキレが無い。風后を討たれたのは、やはり大きいのだろう。
3発目の咆哮を吐く前に、応龍に達した。
「待て!お前の母はこちらの手にある!」
「お前達が母を殺したのだろう?仇打ちだ」
私は魔法箱から黄龍の遺体を取り出した。
「おおぉ…。母の、母の仇!」
「待て待て、私なら生き返らせられる事は知っているだろう?」
「…い、生き返させられるの?」
「だがそれには条件がある」
応龍は黙って頷いた。母が生き帰るのであれば何でもすると言った。そうは言っても、黄帝の敵になって首を取って来い!と言う命令には従うまい。
『黄泉還反魂』
これで黄龍が私の敵になる事は無い。
「嗚呼、母様…」
応龍は涙を流して黄龍と抱き合った。しかしこうして見ると、姉妹の様にしか見えない。私と母アシェラも同様だ。不老不死や不老長寿スキルは、見た目の年齢が20歳で止まるからだ。
黄帝は4人の妻の他に、この2人も抱いているのか、それに風后も。そう考えると、羨ましく思った。男目線な考えに気付いて、思わず苦笑した。男も女もどっちもイケるんだな、私は。
「応龍、約束よ。黄帝は裏切らなくても良い。でも私達の敵にも回らないで」
応龍は黄龍にしがみ付く様に抱きしめ、頷いた。よほど母親が居なくなる(死んで)恐怖を感じたのだろう。万が一、応龍が敵に回りそうになった場合、黄龍に止めさせよう。
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