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【第8部〜龍戦争〜】

第14話 お通の正体

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 黄龍は、手から数本の光の鞭を出して武蔵を攻撃した。繰り出す度に鞭の速度は上がり、もはや目で追えるものでは無かったが、武蔵は軌道を見切り、鞭を捌きながら間合いを詰め、にじり寄って行く。
 光の鞭は前後左右から武蔵に襲い掛かり、その鞭の数はどんどん増えて行く。次第に武蔵は捌き切れなくなり、鞭を見切ってわしていたが、数発受けて斬り傷を付けていた。
 攻撃を受けながらも間合いを詰めた武蔵は、黄龍を袈裟斬りにして真っ二つにした。討ち取った、そう思った瞬間、武蔵の首が落ちた。
 真っ二つになったはずの黄龍の傷が、修復されていた。
「まさか黄龍も不死なの?」
「いえ、不死は陛下ビーシャアだけのはずです」
「見た所、攻撃力、敏捷力は向こうが私よりも上だわ。話してダメなら、全員で始末するわよ」
 私は黄龍に歩み寄った。
「黄龍様とお見受け致します。私は天道神君アナトと申します。黄帝とよしみを結びたいのです」
「あははは。我に恐れを成したか?だがもう遅い。我の復活は父の知る所となった。直ぐにも大軍が押し寄せるだろう。お前達の天下もこれで終わりだ」
「そんな事はさせない」
「ふふふ、どうやって?非力なお前達で、この私を再び封印するとでも言うつもりか?」
「交渉が決裂なら、そうさせてもらう」
 黄龍は不適な笑みを浮かべると、攻撃しようと構えたが、舌打ちをして逃げ出した。突然の事で追い掛けるとか、対応出来なかった。気配を感じて振り返ると母がいた。
「お母さん?」
 アシェラがいつの間にかに、背後に立っていた。黄龍は母を恐れて逃げ出したのか?
「アナト、武蔵を生き返らせて頂戴」
 私は母に命じられて、武蔵を黄泉還反魂リザルトで生き返らせようとした。
「ダメよ。普通に生き返らせなさい」
 黄泉還反魂リザルトなら、生き返らせた術者に服従するようになる。武蔵が私達の敵にならなくなる為だったが、母に言われたのだから従うしかない。
死者蘇生リアニメーション
 武蔵が眼を開けて母の姿を見て言った。
「お通…」
武蔵たけぞう…」
「えっ?今何て言ったの?」
 母は武蔵と抱き合って泣いた。
「アナト…貴女は歴女を自称しているけど、日本史はあまり得意じゃないのね?お通なんて存在しないのよ。三国志の貂蝉の様に、創作された人物なのよ」
「えぇ!?知らなかった…」
「私がお通なのよ。武蔵は、私がお通を超強力催眠ヒュブノで演じて愛し合った人なの」
 武蔵が母の愛人?知りたくなかった。母が武蔵に抱かれていたって事よね?想像すると気持ち悪い。私も武蔵は、ちょっと良いなぁって思ったけど、私も武蔵に抱かれていたら、親子丼だったわ…とか頭の中がぐちゃぐちゃになって、何とも言えない感情が湧き起こった。
武蔵たけぞうと旧交を温めるから、貴女達は黄龍を追いなさい!」
 旧交を温めるって、今から武蔵とHするって言う事でしょう?邪魔な私達は、さっさと出ていけ!と、黄龍の件を言い訳にしてるんだよね?お父さんは?唯一神ヤハウェへの裏切り行為だよね?お母さんが浮気するって宣言したのに、黄龍を追い掛けるなんて出来るはずないじゃない。
 私は母を睨み付けて言った。
「浮気者!最低だよ、お母さん。浮気なんて止めて!」
「子供が大人のする事に口を出すんじゃないわよ!」
 母は羞恥心なのか、怒りなのか顔を真っ赤にして私をビンタした。
「暴力は止めてよ、お母さん。話し合いたいの。武蔵の事が好きなの?お父さんは?」
「貴女っては…」
「お前がお通の娘だったとはな…。又八の娘か?だが、俺とお通さんは愛し合っている。又八には…お前の父には、悪い事をしていると思っている」
 又八?そうか確か物語では、お通さんは又八の婚約者だったよね?なら又八も創作の人物か。母が超強力催眠ヒュブノで父ヤハウェの事を又八って事にしているんだ、きっと。
「お母さんの事を愛しているの?」
「愛している。だが、それがしは修行の身。お通さんを幸せにしてやれない。俺とは別れた方が良い」
「何を言っているの?絶対に別れないわ!」
 はぁ~、なるほど。母の方がゾッコンって訳ね?
「お母さん、私、弟も妹も要らないから。Hしても、ちゃんと避妊してよね?」
 私は母の顔が見れなくなり、黄龍を追い掛けてその場を離れた。
「宜しいので?太后タィホゥ娘娘ニャンニャンと武蔵を引き離すべきでは?」
「武蔵は母の虜になって夢中なのよ。母の身体を貪る姿が想像出来る…気色悪い。好きにさせてあげましょう」
 自分の母親が父親以外の男性と性的な関係にあるのを想像なんてしたくない。考えただけでも気持ち悪い。でも私も結婚していた時、他の男性と身体の関係になったのは1人や2人ではない。だから母の事をとやかく言う資格は無い。それでも気持ち悪くて、心がザワザワする。
 はぁ、と溜息を吐いた。やっぱり母の浮気Hは止めるべきだったのかも知れない。そう思って引き返そうかとした時、黄帝の軍隊が現れた。
「我は黄帝の丞相力牧である。速やかに降伏せよ!さもなくば死あるのみ」
 金色の鎧に身を包んだ男が、弓を携えて進み出た。
「マズいです。あれは力牧です。あの蚩尤を討ち取ったのが力牧で御座います」
「強いって事ね」
「弓の腕は百発百中です。剛腕から繰り出される矢は、1矢で数百名を葬ると言われています」
「要するに、貫通魔法がかけられているんだ」
 厄介だな。相当な被害が出るに違いない。
「朕は天道神君アナトである!話し合いがしたい」
 力牧は構わずに弓を引き絞ると、矢を放った。その矢は寸分の狂いもなく、私の心の臓を貫いた。私は口から血を吐いて地面に転がった。
「降伏しないのであれば、死あるのみ」
 総大将である私を討ち取ったと見て総攻撃に移り、全軍で突撃して来た。
「向い討て!」
 怒号とともに黄帝の軍が突っ込み、神魔の軍は応戦したが蹴散らされた。直ぐにルシフェルやベルゼブブの指揮で立ち直り、黄帝軍にあたった。
 私の傷は癒え、黒龍の背に乗って鼓舞すると、兵の指揮が高まった。
「黄帝の四賢臣の1人か…相手に取って不足なし!」
 私は自らを奮い立たせて、力牧に立ち向かった。
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