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【第8部〜龍戦争〜】
第5話 龍の花嫁
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突然の戦争終結に対して魔族は勿論、龍人族も驚き、そして反発した。
『死者蘇生』
唯一神の娘である私だけの固有魔法・死者蘇生で、両軍の死者は全員生き返った。被害は無かった、と言う事になり、停戦同意書にサインをし、同時に私と赤龍帝の婚姻が発表されて同盟締結が宣言された。
「はぁ?何だと!?」
阿籍だけでなく、多くの魔族も不満を唱えた。
「ふふふ、慕われていた様だな?だがもうお前は、ワシの女だ」
「約束を忘れないでね?他の女を抱いたら即離婚よ!」
婚姻を宣言したが、実際はまだ結婚してはいない。神魔と龍人とで、盛大な「婚姻の儀」が執り行われるまでは正式な夫婦では無い。
だが劉邦は既に私を妻と見做して解放せず、「婚姻の儀」を待たずして毎晩の様に私を抱いた。
劉邦は完全に私の虜となり、私に夢中になった。劉邦の寵愛を一身に受けている為、私の顔色を伺う龍人族も現れ始めた。
婚姻を結べば私は皇后となる。国母と呼ばれる存在となるのだ。
「何を考えている?宿敵に嫁ぐつもりか!?」
阿籍は激怒して去った。魔族達も反発した。龍を討伐する為に、天界から魔族を引き連れて来たのだ。当然だろう?
ルシフェルは私が自分の身を犠牲にして、龍を油断させて倒す策だと思っているみたいだった。確かに最初はそんな気もあった。思った以上に手強く、苦戦させられた。
それに、無理矢理に手籠にされた。だからこれは無理矢理では無く、自分の意思だと言い聞かせたかったのもある。しかし、劉邦が私を愛しているのは本当だ。女好きで知られるこの男が、私だけに夢中になっている。悪い気はしない。もう私は虞美人では無いのだから、誰に気兼ねする必要も無い。
ただ阿籍の気持ちを知っていながら彼の宿敵に嫁ぐのは、気持ちを逆撫でしている様なもので、激怒されても仕方がない。それどころか、阿籍の性格的に、敵対してくる可能性が高い。例えそうなっても恨む事は出来ない。先に裏切ったのは私だ、と言う事だ。
私に侍女が付いた。魏さんと李さんで、2人とも名前は無いそうだ。貧しい出自なら、特別に珍しい事でも無い。次男ならニ、末っ子なら季と名前に付けて呼ばれる。魏さんが末っ子であれば、魏季と呼ばれ、これは魏さんの末っ子と言う意味だ。
何はともあれ、2人が私のお目付役を兼ねている事は分かる。劉邦から私が裏切らないか監視しろ、と命じられているのだ。
未来の皇后である私は、後宮から外に出る事は出来ない。娘が後宮に入れば、実の父親でさえ特別な許可が無ければ会う事も出来ない。
「まるで囚われの小鳥ね?」
劉邦は雒陽から長安に遷都した。その為、私は長楽宮に住まう事になった。吉日を選んで婚姻の儀の日になった。
「天地に一拝」
「父母の霊に一拝」
「新郎新婦お互いに一拝」
婚姻の儀では三拝を行う。天地に結婚しますと報告し、お互いの両親に一拝して結婚を認めてもらう。今回の場合、劉邦の両親は亡くなっている為に、父母の霊に対して一拝したのだ。そして、お互いを認め合い、夫婦になる誓いとして、お互いに一拝する。基本的にこの三拝が終われば、新婦である私は長楽宮に行って新郎を待ち、初夜を迎える事になる。
三拝を終える前に突然、晴天だった空は曇って雷が鳴り嵐となった。
「大変です赤龍帝。黒龍が攻めて参りました!」
「何だと!?」
雷雲を抜けて、真っ黒な龍が現れた。手勢を引き連れている。上空から火では無く、雷を吐いた。1箇所に集中して攻撃している。結界が破れるのも時間の問題だろう。
「ねぇ?黒龍って同じ龍じゃないの。龍同士、仲間じゃ無いの?」
「仲間?ワシらには仲間などと言う意識は無い。ただ黄龍の命には従うがな。それにしても、奴らが攻めて来たのには目的があるはずだ」
赤龍達は、間も無く破られるであろう結界の前で迎え撃った。結界は破られ、それと同時に黒龍王と思われる黒龍雷撃咆哮によって結界ごと赤龍兵の大半が黒焦げになった。
「結界が破られたぞ!食い止めろ!」
城内は騒然となった。守備兵以外は婚礼用の衣装を着ているので、まともに動けない。この日を狙っていたとしたら、かなり用意周到に計画されていたに違いない。
龍人の将軍達は、婚礼用衣装を脱ぎ捨てて応戦した。
「神魔達よ、我々はお前達と敵対する意思は無い!向かって来なければ攻撃しない」
そう言われて、応戦しようと剣を抜いた者は、武器から手を離し周囲を見渡して顔色を伺った。
「神魔は敵では無い」この一言だけで黙らせた。まだ婚姻は成立していない。神魔はまだ赤龍の身内では無いのだから、血を流す必要は無い。そう判断し、敵対行動は取らなかった。黒龍達は神魔を無視して、赤龍だけに的を絞って戦い始めた。
「いよぉ、久しぶりだな?赤龍のぉ」
「黒龍…貴様、何が望みだぁ?」
「ふははは、俺か?俺の望みは、その女だ。お前にゃあ、勿体ない美女だ。俺が貰ってやるっつってんだよ!」
(私?私が目的って言ったの?)
赤龍帝・劉邦は、明らかに黒龍に押されていた。
「ほれ、ほれ、ほれぃ!身体がなまっちまったみたいだな?」
「うぐっ…」
黒龍王に胴を斬られて、劉邦は床に転がった。
「うるぁ!」
その瞬間、突然現れた阿籍によって、劉邦の首は斬り落とされた。
「どうした?助けられて嬉しく無いのか?小虞」
「阿籍…」
「まさか劉邦の奴を、愛していたなどとは言わないだろうな?」
頭が混乱していた。1度は受け入れた相手だ。嫁ぐと覚悟を決めてからは、毎晩の様に肌を重ねて妻としての役目を果たした。つまり子を身籠る事だ。まだその兆候は無いが、少しの間だったが、私は確かに劉邦の妻だったのだ。婚姻の儀が完了しておらずともだ。私は劉邦の妻として生活したのだ。
私は知らぬうちに、涙を流していた。
「コイツの為に泣いているのか…」
阿籍はそれ以上、何も言って来なかった。
「ふん、とんだ茶番が入ったな。おい、その女を大人しくこっちに渡せ!」
「誰に物を言ってやがる龍の分際で、俺の妻を奪ろうって言うのか?」
全身から凄まじい殺気を放ち、ほぼ2人同時に打ち合った。阿籍のランクはファイブスター(S5)ランクだったが、オクタス(S8)ランクまで上がっていた。ランクは上がらないはずだったが、その常識を破った。
しかし黒龍王は、その阿籍と互角か、それ以上の強さだった。
『死者蘇生』
唯一神の娘である私だけの固有魔法・死者蘇生で、両軍の死者は全員生き返った。被害は無かった、と言う事になり、停戦同意書にサインをし、同時に私と赤龍帝の婚姻が発表されて同盟締結が宣言された。
「はぁ?何だと!?」
阿籍だけでなく、多くの魔族も不満を唱えた。
「ふふふ、慕われていた様だな?だがもうお前は、ワシの女だ」
「約束を忘れないでね?他の女を抱いたら即離婚よ!」
婚姻を宣言したが、実際はまだ結婚してはいない。神魔と龍人とで、盛大な「婚姻の儀」が執り行われるまでは正式な夫婦では無い。
だが劉邦は既に私を妻と見做して解放せず、「婚姻の儀」を待たずして毎晩の様に私を抱いた。
劉邦は完全に私の虜となり、私に夢中になった。劉邦の寵愛を一身に受けている為、私の顔色を伺う龍人族も現れ始めた。
婚姻を結べば私は皇后となる。国母と呼ばれる存在となるのだ。
「何を考えている?宿敵に嫁ぐつもりか!?」
阿籍は激怒して去った。魔族達も反発した。龍を討伐する為に、天界から魔族を引き連れて来たのだ。当然だろう?
ルシフェルは私が自分の身を犠牲にして、龍を油断させて倒す策だと思っているみたいだった。確かに最初はそんな気もあった。思った以上に手強く、苦戦させられた。
それに、無理矢理に手籠にされた。だからこれは無理矢理では無く、自分の意思だと言い聞かせたかったのもある。しかし、劉邦が私を愛しているのは本当だ。女好きで知られるこの男が、私だけに夢中になっている。悪い気はしない。もう私は虞美人では無いのだから、誰に気兼ねする必要も無い。
ただ阿籍の気持ちを知っていながら彼の宿敵に嫁ぐのは、気持ちを逆撫でしている様なもので、激怒されても仕方がない。それどころか、阿籍の性格的に、敵対してくる可能性が高い。例えそうなっても恨む事は出来ない。先に裏切ったのは私だ、と言う事だ。
私に侍女が付いた。魏さんと李さんで、2人とも名前は無いそうだ。貧しい出自なら、特別に珍しい事でも無い。次男ならニ、末っ子なら季と名前に付けて呼ばれる。魏さんが末っ子であれば、魏季と呼ばれ、これは魏さんの末っ子と言う意味だ。
何はともあれ、2人が私のお目付役を兼ねている事は分かる。劉邦から私が裏切らないか監視しろ、と命じられているのだ。
未来の皇后である私は、後宮から外に出る事は出来ない。娘が後宮に入れば、実の父親でさえ特別な許可が無ければ会う事も出来ない。
「まるで囚われの小鳥ね?」
劉邦は雒陽から長安に遷都した。その為、私は長楽宮に住まう事になった。吉日を選んで婚姻の儀の日になった。
「天地に一拝」
「父母の霊に一拝」
「新郎新婦お互いに一拝」
婚姻の儀では三拝を行う。天地に結婚しますと報告し、お互いの両親に一拝して結婚を認めてもらう。今回の場合、劉邦の両親は亡くなっている為に、父母の霊に対して一拝したのだ。そして、お互いを認め合い、夫婦になる誓いとして、お互いに一拝する。基本的にこの三拝が終われば、新婦である私は長楽宮に行って新郎を待ち、初夜を迎える事になる。
三拝を終える前に突然、晴天だった空は曇って雷が鳴り嵐となった。
「大変です赤龍帝。黒龍が攻めて参りました!」
「何だと!?」
雷雲を抜けて、真っ黒な龍が現れた。手勢を引き連れている。上空から火では無く、雷を吐いた。1箇所に集中して攻撃している。結界が破れるのも時間の問題だろう。
「ねぇ?黒龍って同じ龍じゃないの。龍同士、仲間じゃ無いの?」
「仲間?ワシらには仲間などと言う意識は無い。ただ黄龍の命には従うがな。それにしても、奴らが攻めて来たのには目的があるはずだ」
赤龍達は、間も無く破られるであろう結界の前で迎え撃った。結界は破られ、それと同時に黒龍王と思われる黒龍雷撃咆哮によって結界ごと赤龍兵の大半が黒焦げになった。
「結界が破られたぞ!食い止めろ!」
城内は騒然となった。守備兵以外は婚礼用の衣装を着ているので、まともに動けない。この日を狙っていたとしたら、かなり用意周到に計画されていたに違いない。
龍人の将軍達は、婚礼用衣装を脱ぎ捨てて応戦した。
「神魔達よ、我々はお前達と敵対する意思は無い!向かって来なければ攻撃しない」
そう言われて、応戦しようと剣を抜いた者は、武器から手を離し周囲を見渡して顔色を伺った。
「神魔は敵では無い」この一言だけで黙らせた。まだ婚姻は成立していない。神魔はまだ赤龍の身内では無いのだから、血を流す必要は無い。そう判断し、敵対行動は取らなかった。黒龍達は神魔を無視して、赤龍だけに的を絞って戦い始めた。
「いよぉ、久しぶりだな?赤龍のぉ」
「黒龍…貴様、何が望みだぁ?」
「ふははは、俺か?俺の望みは、その女だ。お前にゃあ、勿体ない美女だ。俺が貰ってやるっつってんだよ!」
(私?私が目的って言ったの?)
赤龍帝・劉邦は、明らかに黒龍に押されていた。
「ほれ、ほれ、ほれぃ!身体がなまっちまったみたいだな?」
「うぐっ…」
黒龍王に胴を斬られて、劉邦は床に転がった。
「うるぁ!」
その瞬間、突然現れた阿籍によって、劉邦の首は斬り落とされた。
「どうした?助けられて嬉しく無いのか?小虞」
「阿籍…」
「まさか劉邦の奴を、愛していたなどとは言わないだろうな?」
頭が混乱していた。1度は受け入れた相手だ。嫁ぐと覚悟を決めてからは、毎晩の様に肌を重ねて妻としての役目を果たした。つまり子を身籠る事だ。まだその兆候は無いが、少しの間だったが、私は確かに劉邦の妻だったのだ。婚姻の儀が完了しておらずともだ。私は劉邦の妻として生活したのだ。
私は知らぬうちに、涙を流していた。
「コイツの為に泣いているのか…」
阿籍はそれ以上、何も言って来なかった。
「ふん、とんだ茶番が入ったな。おい、その女を大人しくこっちに渡せ!」
「誰に物を言ってやがる龍の分際で、俺の妻を奪ろうって言うのか?」
全身から凄まじい殺気を放ち、ほぼ2人同時に打ち合った。阿籍のランクはファイブスター(S5)ランクだったが、オクタス(S8)ランクまで上がっていた。ランクは上がらないはずだったが、その常識を破った。
しかし黒龍王は、その阿籍と互角か、それ以上の強さだった。
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