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【第6部〜アイドル編〜】
第35話
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ゲートを抜けて地上に出た。神兵もおよそ半数がゲートから現れて、布陣していた時だった。
「報告!敵襲!」
無数の銃弾を浴びて、次々と神兵達が倒されて行く。咄嗟に物理攻撃無効のシールドを張った者もいたが、それごと貫通して命を落とした。
「貫通魔法が掛けてある!退避しろ!」
そうは言ってもここは草原で、身を伏せる場所も無い。一方的に的にされ、なす術もなく倒されて行く。
「ふふふ、河川を渡る兵半ばにして討つ、孫子に書いてあるわね?これで終わると思わない事ね」
今度は戦闘機からミサイル攻撃を受けた。半数近い神兵が一方的に殺戮された。中軍の太后アシェラが現れると、超強力催眠を受けて、戦闘機は墜落し、歩兵達はバタバタと倒れた。
「ちっ、まさか祖母まで来ているとは…。全軍、撤退しろ!」
「逃げ切れると思うなよ?」
激怒した母は、邪魔する兵士達を切り伏せながら、1人で麻里奈を追った。
「お母さんー!深追いはぁ」
深追いは禁物だ、と伝える前にもう姿は見えなくなっていた。
「太后の後を追いなさい!」
中軍は母の子飼いの神兵だ。私に命令されるまでもなく、既に後を追っていた。
麻里奈は去り際に黄泉替反魂を唱えていた。殺害された半数の神兵が生き返って、襲いかかって来たのだ。
「くそっ、麻里奈の奴」
こうなると誰が敵で誰が味方なのか分からなくなり、同士討ちが始まって大混乱となった。そこへ後軍が突っ込んで来た。率いているのは、ルシフェルとミカエルの兄妹とゼウスだ。
『真実の鏡』
ゼウスが魔法道具を取り出すと、鏡映った神兵が骸骨の姿で映っている者がいた。
「それ!骸骨は屍人じゃ。皆殺しにせよ!」
混乱を収拾出来たのは、麻里奈が去ってから、5時間も経っての事だった。
「こんな事で麻里奈も、我軍を倒せるとは思っていない。足止めが目的だ。急いで母の後を追うぞ!」
その時、遥か上空で光りが見えた気がした。鼓膜が裂ける爆音と共に、爆風によって身体は引きちぎられながら、圧倒的火力と熱量によって身体が蒸発していく。骨も残らない。不老不死である私も死を覚悟した。塵の一欠片からでも再生出来るが、その塵の一欠片も残らなければ助からない。
神兵がいた場所は、焦土と化して一面焼け野原となった。太后を追っていた中軍が振り返ると、キノコ雲の下で蒸発していく仲間の姿を見た。
「な、何なのだ、あれは?」
「あれが核だ…」
「核兵器か?」
しかし、神は核くらいでは死なない。恐らく、あれにも貫通魔法が掛けてあったに違いない。
気が付くと私は、全裸で焦土と化して全てが消えた大地に、立ち尽くしていた。私の周囲の地面には、無数の影が焼き付いていた。皆が私を守る為に、盾となって蒸発したのだろう。皆の生命を犠牲にして守られた私は、欠片ほど残った身体から再生したのだろう。
「うぁぁぁぁぁ!!!」
ミカエルは絶叫し、天界に於いて3本指に入るほど美しい姿が、激しい哀しみと深い憎悪に心が支配され、異形の姿へと変貌していく。堕天したのだ。
何にも変え難く、この世で最も愛しい兄が自分を庇い、目の前で消し炭となって蒸発したのだ。
「許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない…」
ぶつぶつと呪文の様な独り言を呟き続け、麻里奈が去った方角を目指した。
「ミカエルが堕天したら、地球が粉々になるよ…」
だが最早、止める術が無い。
「あれは無理じゃろう?ワシもハラワタが煮え繰り返っておるわい」
ゼウスが怒りに満ち、髪の毛を逆立てた。すると、再び上空で光りが走った。
「まさか!?」
「アナト、お前は希望。絶対に死なせん。ワシらの仇を必ず討ってくれぃ」
ゼウスが私を庇って両手を広げて仁王立ちすると、アポロンやハデス、ポセイドンらが続いた。
2発目の核ミサイルを受けると、地面は抉れてクレーターの様になり、緑豊かなアルプス山脈は山肌が見え、何処までも土と石しか見えなかった。
「核を連発するなど正気の沙汰じゃない!」
周囲を見回したが、ゼウスらの姿は無かった。全員、蒸発したのだろう。怒りと憎しみで手足が震え、体内のアドレナリンが沸騰して心拍が増大し、呼吸が苦しくなった。
「麻里奈ぁぁぁぁぁ!」
怒りを吐き出す様に叫んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
『光速飛翔』
その場を離れた瞬間に3発目の核が炸裂した。神軍を倒す為なら、なりふり構わずに中国を犠牲にしてまで、滅ぼすつもりだったのだろう。
「なんて言う下策を…、麻里奈…」
怒りと憎しみを通り越して半ば呆れた。
「陛下、よくぞご無事で」
麻里奈を追いかけていた先陣だ。
「800万もいた神軍が5分の1になったな…」
「はっ、たかが人間に何が出来ると侮った我々の罪です。罰をお与え下さい」
「良い。朕も麻里奈があの様な下策をとるとは思わなんだ」
神軍と合流すると、無数の戦闘機がこちらに向かって来るのが見えた。全世界を統一した事によって、全ての戦力は麻里奈のものだ。
「我軍を疲れさせて、殲滅するつもりだ。何としても突破して麻里奈を討つ!」
先陣を40万ずつ4軍に分けて迎い討った。神とは言え私ほど速く飛べず、戦闘機と同じくらいの速さで飛ぶのが精一杯だった。つまり発射されたミサイルを避ける事が出来ずに、次々と撃たれて地上に落ちて行く。
「我々に構わず、先に行って下さい!」
それでも仲間を見捨てられず、一戦して敵機を落とした。空だけでなく、地上からも対空ミサイルで味方ごと撃ち落として来た。麻里奈は生き返らせた人間達を、使い捨ての駒にしていた。
ようやくの思いで敵の囲みを突破すると、私の率いていた40万の神軍は、たったの5万にまで減っていた。他の軍を率いた者の姿はなく、無事に突破出来たのか心配だった。
軍を立て直して、『影の部屋』を唱え、影の世界で神兵達を休ませた。ここも安全では無い。麻里奈なら影の世界に来れるからだ。それでも疲労困憊した身体は、瞼を閉じると、すぐに眠りについた。
「報告!敵襲!」
無数の銃弾を浴びて、次々と神兵達が倒されて行く。咄嗟に物理攻撃無効のシールドを張った者もいたが、それごと貫通して命を落とした。
「貫通魔法が掛けてある!退避しろ!」
そうは言ってもここは草原で、身を伏せる場所も無い。一方的に的にされ、なす術もなく倒されて行く。
「ふふふ、河川を渡る兵半ばにして討つ、孫子に書いてあるわね?これで終わると思わない事ね」
今度は戦闘機からミサイル攻撃を受けた。半数近い神兵が一方的に殺戮された。中軍の太后アシェラが現れると、超強力催眠を受けて、戦闘機は墜落し、歩兵達はバタバタと倒れた。
「ちっ、まさか祖母まで来ているとは…。全軍、撤退しろ!」
「逃げ切れると思うなよ?」
激怒した母は、邪魔する兵士達を切り伏せながら、1人で麻里奈を追った。
「お母さんー!深追いはぁ」
深追いは禁物だ、と伝える前にもう姿は見えなくなっていた。
「太后の後を追いなさい!」
中軍は母の子飼いの神兵だ。私に命令されるまでもなく、既に後を追っていた。
麻里奈は去り際に黄泉替反魂を唱えていた。殺害された半数の神兵が生き返って、襲いかかって来たのだ。
「くそっ、麻里奈の奴」
こうなると誰が敵で誰が味方なのか分からなくなり、同士討ちが始まって大混乱となった。そこへ後軍が突っ込んで来た。率いているのは、ルシフェルとミカエルの兄妹とゼウスだ。
『真実の鏡』
ゼウスが魔法道具を取り出すと、鏡映った神兵が骸骨の姿で映っている者がいた。
「それ!骸骨は屍人じゃ。皆殺しにせよ!」
混乱を収拾出来たのは、麻里奈が去ってから、5時間も経っての事だった。
「こんな事で麻里奈も、我軍を倒せるとは思っていない。足止めが目的だ。急いで母の後を追うぞ!」
その時、遥か上空で光りが見えた気がした。鼓膜が裂ける爆音と共に、爆風によって身体は引きちぎられながら、圧倒的火力と熱量によって身体が蒸発していく。骨も残らない。不老不死である私も死を覚悟した。塵の一欠片からでも再生出来るが、その塵の一欠片も残らなければ助からない。
神兵がいた場所は、焦土と化して一面焼け野原となった。太后を追っていた中軍が振り返ると、キノコ雲の下で蒸発していく仲間の姿を見た。
「な、何なのだ、あれは?」
「あれが核だ…」
「核兵器か?」
しかし、神は核くらいでは死なない。恐らく、あれにも貫通魔法が掛けてあったに違いない。
気が付くと私は、全裸で焦土と化して全てが消えた大地に、立ち尽くしていた。私の周囲の地面には、無数の影が焼き付いていた。皆が私を守る為に、盾となって蒸発したのだろう。皆の生命を犠牲にして守られた私は、欠片ほど残った身体から再生したのだろう。
「うぁぁぁぁぁ!!!」
ミカエルは絶叫し、天界に於いて3本指に入るほど美しい姿が、激しい哀しみと深い憎悪に心が支配され、異形の姿へと変貌していく。堕天したのだ。
何にも変え難く、この世で最も愛しい兄が自分を庇い、目の前で消し炭となって蒸発したのだ。
「許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない…」
ぶつぶつと呪文の様な独り言を呟き続け、麻里奈が去った方角を目指した。
「ミカエルが堕天したら、地球が粉々になるよ…」
だが最早、止める術が無い。
「あれは無理じゃろう?ワシもハラワタが煮え繰り返っておるわい」
ゼウスが怒りに満ち、髪の毛を逆立てた。すると、再び上空で光りが走った。
「まさか!?」
「アナト、お前は希望。絶対に死なせん。ワシらの仇を必ず討ってくれぃ」
ゼウスが私を庇って両手を広げて仁王立ちすると、アポロンやハデス、ポセイドンらが続いた。
2発目の核ミサイルを受けると、地面は抉れてクレーターの様になり、緑豊かなアルプス山脈は山肌が見え、何処までも土と石しか見えなかった。
「核を連発するなど正気の沙汰じゃない!」
周囲を見回したが、ゼウスらの姿は無かった。全員、蒸発したのだろう。怒りと憎しみで手足が震え、体内のアドレナリンが沸騰して心拍が増大し、呼吸が苦しくなった。
「麻里奈ぁぁぁぁぁ!」
怒りを吐き出す様に叫んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
『光速飛翔』
その場を離れた瞬間に3発目の核が炸裂した。神軍を倒す為なら、なりふり構わずに中国を犠牲にしてまで、滅ぼすつもりだったのだろう。
「なんて言う下策を…、麻里奈…」
怒りと憎しみを通り越して半ば呆れた。
「陛下、よくぞご無事で」
麻里奈を追いかけていた先陣だ。
「800万もいた神軍が5分の1になったな…」
「はっ、たかが人間に何が出来ると侮った我々の罪です。罰をお与え下さい」
「良い。朕も麻里奈があの様な下策をとるとは思わなんだ」
神軍と合流すると、無数の戦闘機がこちらに向かって来るのが見えた。全世界を統一した事によって、全ての戦力は麻里奈のものだ。
「我軍を疲れさせて、殲滅するつもりだ。何としても突破して麻里奈を討つ!」
先陣を40万ずつ4軍に分けて迎い討った。神とは言え私ほど速く飛べず、戦闘機と同じくらいの速さで飛ぶのが精一杯だった。つまり発射されたミサイルを避ける事が出来ずに、次々と撃たれて地上に落ちて行く。
「我々に構わず、先に行って下さい!」
それでも仲間を見捨てられず、一戦して敵機を落とした。空だけでなく、地上からも対空ミサイルで味方ごと撃ち落として来た。麻里奈は生き返らせた人間達を、使い捨ての駒にしていた。
ようやくの思いで敵の囲みを突破すると、私の率いていた40万の神軍は、たったの5万にまで減っていた。他の軍を率いた者の姿はなく、無事に突破出来たのか心配だった。
軍を立て直して、『影の部屋』を唱え、影の世界で神兵達を休ませた。ここも安全では無い。麻里奈なら影の世界に来れるからだ。それでも疲労困憊した身体は、瞼を閉じると、すぐに眠りについた。
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