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【第6部〜アイドル編〜】
第34話
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私が朝堂に着くと、既に神々が揃っていた。かつて魔族と呼ばれた者の大半は、冤罪によって魔界に堕とされた罪神である為、現在では全ての魔物は神位が与えられ、冤罪で無かった者にも恩赦が与えられて天界に住んでいる。
しかしよく見ると、かつて魔族だった者と神仙達は分かれて左右に立ち、派閥が出来ている事が判る。両陣営の間には深い溝があり、仲良くなるにはまだまだ時間がかかる事だろう。
「陛下、本来なれば天界は、人間界に関与出来ないのが掟でございます」
1発目からかまして来るあたり、私が半分人間だと思って舐められている証拠だ。気の短い私は、思わずカチンと来て睨んだ。
「それは、朕が招いた事であるから己で解決せよ、そう言いたいのか?老君よ」
言葉に怒気と不満の色を含ませて答えると、畏れて平伏した。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
太上老君が平伏すると、彼の意見に賛同する老君派閥が続いて平伏し、声を揃えた。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
思わず溜息が出る。老君に従ったのは、左側に立ち並ぶ天界側のおよそ3分の2である。既に過半数と言っても良い状況で、私には不利な状況となった。
残り3分の1は、もっと良い意見が出るのを待っているか、私に友好的な者達だ。例えば、帝釈天や梵天は、私の元愛人である為に、老君の意見に賛同せずに立ったままだ。
この不利な状況を覆すには、まだ意見を述べていない右側に立ち並ぶ元魔界側が、私の意見に賛同するしかない。
「老君の言う様に、真っ向から反対ではございませんが、ここは慎重を来すべきかと存知あげます」
魔界4貴族の1人であるコロンゾンが言った。
「ほう?それは何故だ?」
「はい。敵とは言え、あれは陛下であるからでございます」
「我々が手を出す事は致しかねます」
同じく4貴族の1人であるガープが意見を述べた。どちらかと言えば、元魔界側は私の派閥である。その彼らに反対されて憤りを隠せない。
「では手を子招いて見ておるだけと申すのか!?誰も手助けしようと申す者はいないのか!」
激昂して怒鳴ると、全員が平伏した。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
呆気に取られて一瞬、何が起こっているのか理解出来なかったが、要は全員が反対で人類が滅ぼうと知った事ではない、と言っているのだ。
私が虞美人だった時の夫である阿籍(項羽の事)でさえもが反対側に回った。私の目的が、今の夫である綾瀬を救う為にある事を、阿籍は知っているのだろう。男の嫉妬は醜い。
完全に頭に血が昇り、席を立ち上がって怒鳴る瞬間に母アシェラが入って来た。
「太后娘娘、千歳、千歳、千、千歳」
朝堂にいる群臣全員が、母に拝礼を取った。
「お母さん…」
「控えなさい!ここは朝堂よ。太后と呼びなさい。政は、貴女のおままごとでは無いのよ?皇帝としての自覚が足りないわ」
母アシェラに嗜められ、シュンと意気消沈した私は、立ち上がって母に席を譲った。
「何も立たなくても良いのよ?それにしても、薄情ねぇ?アナトが悔し涙を流すほど憤っているのに、誰も味方をしてあげないのね?」
母は周囲を冷酷な瞳で一瞥した。凄まじい迫力と圧力だ。
「良い、お前達はそこで指を咥えているが良い。余が自ら兵馬を率いよう」
えっ?と皆んな一瞬、耳を疑った。先程はアナトを一蹴し、嗜めたのだ。それなのに?と皆んな驚いた。
「いけません!太后にもしもの事があれば一大事です。ご再考を!」
「余の事が心配であるならば、兵馬を率いよ!決定はもはや覆らぬ」
「お母さん…ありがとう…」
「だから…」
私は母の胸で泣き出すと、優しく抱き締めてくれた。やはり母は母だったのだ。冷酷で冷徹な母だと思っていたが、唯一私に助け舟を出したのは、母だった。
母に感動したが、少し冷静になって来ると、天道神君の私よりも母の言葉に従うのか?と思うと、イラッとして来た。だが仕方がないとも思う。私が天界を500年留守にしている間、朝堂を守って来たのは母なのだ。母の言葉に従うのは仕方がない。
決断してからの行動は迅速だった。およそ800万もの神兵が統率され、進撃を開始した。
「即死無効の軍隊だ。簡単に倒せると思うなよ、麻里奈…」
私は白金の鎧に身を包み、細身の剣を腰に差した。
「敵は麻里奈!朕の分身だが遠慮なく殺れ!強さは朕と同等ぞ!躊躇えば己が死ぬと思え!」
ペガサスに跨り、ゲートを潜り抜けた。本当はユニコーンの背に乗りたかったのだが、清らかな乙女しか背に乗せない為、私が近づいただけで鼻息を荒くし、ブルルルと鼻を鳴らして威嚇された。
そのユニコーンの背に、剣帝の娘だった元魔王ロードが乗っていたので驚いた。
「う、嘘でしょう?処女?だって帝釈天に犯されたでしょう?」とヒソヒソ声でロードに尋ねると、口に入れられただけだ、と言われた。
そうか、ソーシャが生まれる未来も変わったんだっけ?と思い出した。ソーシャに会う未来が無いのが少し残念に思った。
しかしよく見ると、かつて魔族だった者と神仙達は分かれて左右に立ち、派閥が出来ている事が判る。両陣営の間には深い溝があり、仲良くなるにはまだまだ時間がかかる事だろう。
「陛下、本来なれば天界は、人間界に関与出来ないのが掟でございます」
1発目からかまして来るあたり、私が半分人間だと思って舐められている証拠だ。気の短い私は、思わずカチンと来て睨んだ。
「それは、朕が招いた事であるから己で解決せよ、そう言いたいのか?老君よ」
言葉に怒気と不満の色を含ませて答えると、畏れて平伏した。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
太上老君が平伏すると、彼の意見に賛同する老君派閥が続いて平伏し、声を揃えた。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
思わず溜息が出る。老君に従ったのは、左側に立ち並ぶ天界側のおよそ3分の2である。既に過半数と言っても良い状況で、私には不利な状況となった。
残り3分の1は、もっと良い意見が出るのを待っているか、私に友好的な者達だ。例えば、帝釈天や梵天は、私の元愛人である為に、老君の意見に賛同せずに立ったままだ。
この不利な状況を覆すには、まだ意見を述べていない右側に立ち並ぶ元魔界側が、私の意見に賛同するしかない。
「老君の言う様に、真っ向から反対ではございませんが、ここは慎重を来すべきかと存知あげます」
魔界4貴族の1人であるコロンゾンが言った。
「ほう?それは何故だ?」
「はい。敵とは言え、あれは陛下であるからでございます」
「我々が手を出す事は致しかねます」
同じく4貴族の1人であるガープが意見を述べた。どちらかと言えば、元魔界側は私の派閥である。その彼らに反対されて憤りを隠せない。
「では手を子招いて見ておるだけと申すのか!?誰も手助けしようと申す者はいないのか!」
激昂して怒鳴ると、全員が平伏した。
「陛下、無能な私に罰をお与え下さい!」
呆気に取られて一瞬、何が起こっているのか理解出来なかったが、要は全員が反対で人類が滅ぼうと知った事ではない、と言っているのだ。
私が虞美人だった時の夫である阿籍(項羽の事)でさえもが反対側に回った。私の目的が、今の夫である綾瀬を救う為にある事を、阿籍は知っているのだろう。男の嫉妬は醜い。
完全に頭に血が昇り、席を立ち上がって怒鳴る瞬間に母アシェラが入って来た。
「太后娘娘、千歳、千歳、千、千歳」
朝堂にいる群臣全員が、母に拝礼を取った。
「お母さん…」
「控えなさい!ここは朝堂よ。太后と呼びなさい。政は、貴女のおままごとでは無いのよ?皇帝としての自覚が足りないわ」
母アシェラに嗜められ、シュンと意気消沈した私は、立ち上がって母に席を譲った。
「何も立たなくても良いのよ?それにしても、薄情ねぇ?アナトが悔し涙を流すほど憤っているのに、誰も味方をしてあげないのね?」
母は周囲を冷酷な瞳で一瞥した。凄まじい迫力と圧力だ。
「良い、お前達はそこで指を咥えているが良い。余が自ら兵馬を率いよう」
えっ?と皆んな一瞬、耳を疑った。先程はアナトを一蹴し、嗜めたのだ。それなのに?と皆んな驚いた。
「いけません!太后にもしもの事があれば一大事です。ご再考を!」
「余の事が心配であるならば、兵馬を率いよ!決定はもはや覆らぬ」
「お母さん…ありがとう…」
「だから…」
私は母の胸で泣き出すと、優しく抱き締めてくれた。やはり母は母だったのだ。冷酷で冷徹な母だと思っていたが、唯一私に助け舟を出したのは、母だった。
母に感動したが、少し冷静になって来ると、天道神君の私よりも母の言葉に従うのか?と思うと、イラッとして来た。だが仕方がないとも思う。私が天界を500年留守にしている間、朝堂を守って来たのは母なのだ。母の言葉に従うのは仕方がない。
決断してからの行動は迅速だった。およそ800万もの神兵が統率され、進撃を開始した。
「即死無効の軍隊だ。簡単に倒せると思うなよ、麻里奈…」
私は白金の鎧に身を包み、細身の剣を腰に差した。
「敵は麻里奈!朕の分身だが遠慮なく殺れ!強さは朕と同等ぞ!躊躇えば己が死ぬと思え!」
ペガサスに跨り、ゲートを潜り抜けた。本当はユニコーンの背に乗りたかったのだが、清らかな乙女しか背に乗せない為、私が近づいただけで鼻息を荒くし、ブルルルと鼻を鳴らして威嚇された。
そのユニコーンの背に、剣帝の娘だった元魔王ロードが乗っていたので驚いた。
「う、嘘でしょう?処女?だって帝釈天に犯されたでしょう?」とヒソヒソ声でロードに尋ねると、口に入れられただけだ、と言われた。
そうか、ソーシャが生まれる未来も変わったんだっけ?と思い出した。ソーシャに会う未来が無いのが少し残念に思った。
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