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【第6部〜アイドル編〜】

第12話

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 母と2人で綾瀬のマンションに来たが、不在だった。もの凄く嫌な予感がする。綾瀬のスマホを使って、私をおびき出したのだから、綾瀬はヤクザ達に捕まっているに違いない。
「お願いだから無事でいて」
「瑞稀、『自動書込地図オートマッピング』と唱えてごらん」
自動書込地図オートマッピング
 呪文の様に唱えると、目の前の空中に地図が浮かび上がった。
「不思議、どうなってるのコレ?」
「そこで綾瀬を検索して、地図の画面をタップしてごらん」
 母に言われた通りにすると、だいぶ離れた所に青白い点の光が現れた。
「そこに綾瀬がいるわよ。まだ生きているみたいね。死んでたら光らないから」
影の部屋シャドウルーム
 母と一緒に全力で、光点の場所に向かって飛んだ。

「さてと、じゃあ今から解体バラすか。兄ちゃん、最期に言い残す事はあるか?」
「待て、待ってくれ!大和の奴に雇われたんだろう?幾らだ?あいつの倍、いや3倍出す。助けてくれ!この事は誰にも言わない」
「あははは、兄ちゃん。何か勘違いしてねぇか?大和さんの親父さんが誰だか知ってるか?反社って事で隠してるがな、組長なんだぜ。離婚して母方に引き取られてるがな。分かるか?金の問題じゃねぇんだよ。それに、兄ちゃんの女は今頃、気持ち良い思いをしている頃だぜ?」
「なっ、瑞稀、瑞稀に何をした!?」
「AVだよ、それも極上のな。今や推しも推されぬトップアイドルで、若手No.1女優の無修正動画だ。こいつは高く売れるぜ?あははは」
「うぐぐぐ…瑞稀…すまない、瑞稀、俺のせいで…うっ、うぅ…」
「さてと、兄ちゃんから、生きたまま臓器を取り出して行く。勿体無いから麻酔は使わない。だから暴れたら臓器が傷付くんだ。大人しく臓器を取り出されたら、女を沈めるのは止めて、生命だけは助けてやる。女の為に根性の見せ所だぞ?良いか、暴れたらお前の代わりに、女から臓器を抜いて殺す」
 男はそう言うと、メスを取り出して綾瀬の腹に当てた。
「じゃあ行くぞ!」
「うぐぐぐぐっ!」
 メスが腹を斬り裂き、鮮血が飛ぶ。

「綾瀬!」
 しゃがんでいる男の背中越しに、横たわる綾瀬が見えた。その男の側には他に2人いた。
「コイツの女か?随分と撮影が早かったじゃねえか?皆んな早漏かよ?俺も1発ヤラして貰おうかな」
 男が立ち上がると、胸から腹に掛けて斬り裂かれ、臓器が抜かれた無惨な綾瀬の遺体があった。
「綾瀬…」
 両手で目を覆う。
「ネェちゃん、兄ちゃんはな、あんたの為に頑張ったんだぜ?臓器を傷付けるから暴れるなってよ。臓器が傷付いたら、あんたから代わりに抜くって言ったら、最期まで動かなかったぜ。こんな根性ある奴、ヤクザにも中々いないぜ?殺しちまうのが惜しくてよ、久々に感動したぜ」
「あっ、あぁ…あっ…うっ、ひっく…」
 私は泣き崩れた。
「本当、どうしようも無いクズね。人間なんて滅ぼしてしまえば良いのに…」
 母は歩み寄りながら、2人の首を弾く様に飛ばした。
「くそっ!何だこのアマぁ!」
 懐から取り出した銃の引き金を夢中で引き、弾は母の胸に全て当たった。それでも歩みを止めない母に恐怖した。
「な、何だ?防弾チョッキでも着てるのか?」
 弾が出なくなった銃を母に向かって投げ付けた。
「残念ねぇ?私、物理攻撃吸収なのよ」
 そう言うと、男の目の前で銃を消化して見せた。
「ば、化け物だぁ!」
 男は腰が抜け、這う様にして逃げた。
「お前にも、彼の様な根性があるのか見せて貰おうかしら?」
 母は男の両足首を取り込んで逃げられなくすると、ゆっくりと時間を掛けてなぶる様に消化した。
「ふふふ、大した事、無かったね?」
 男3人を喰らって消化しながら言った。
「早く生き返らせてあげなさいよ」
「うん…」

「こ、ここは…天国か?」
「どうして天国なの?」
「瑞稀の膝枕で目覚めるなんて、天国でしかないだろう?」
「馬鹿ね…」
 本当に馬鹿だ。私の為に生きたまま臓器を抜かれるなんて言う、地獄の様な苦しみに耐えたのだ。涙が止まらない。この人は、それほどまでに私の事を愛してくれているのだ。
「イチャつくのは、お母さんが居なくなってからにしてくれないかしら?」
 母がいる事に驚いて、綾瀬は立ち上がった。
「瑞稀さんのお母様ですか?私は綾瀬潤と言います。お嬢さんと真剣に交際させて頂いています。将来は結婚したいと思っています。宜しくお願いします」
 そう言って母に深々と頭を下げた。ちょっと私は感動した。
「瑞稀からよく話しを聞かされています。ステキな彼氏だと。此方こそ宜しくね」
 母が綾瀬に顔を近づけると、顔を赤らめた。
「何、お母さんに意識しちゃってるのよ!?」
「あ、いや、瑞稀に似てて綺麗だなぁ、と思って…ははは」
 私にはまだ母の様な大人の色気が無い。少しだけ戻った母の記憶では、理想の顔とスタイルに変化しているらしいから、母は絶世の美女と言うやつだ。
「お母さんに鼻の下伸ばしちゃって、お母さんと浮気なんかしたら絶対に別れるから!」
 私は母に嫉妬して頭に血が昇った。
「瑞稀、そんな訳ないだろう?俺が愛してるのは、お前だけだよ」
「あらあら母親の前で、ご馳走様。良かったら、一緒に食事でもどうかしら?あ、2人っきりが良かったかしらね?気が利かなくて、ごめんなさいね」
「あ、いえ、ご一緒したいです」
 そう返事した綾瀬に、思わず睨み付けた。
「でも、俺は何で生きているんだ?確か臓器を抜かれて死んだはずじゃあ…」
「私に医学の心得があってね、元に戻したのよ。間に合って良かったわ」
 そんな事ある訳ないのに、母はめちゃくちゃな理由で綾瀬を納得させた。いや、綾瀬だって信じてないが、実際に生きているのだから、そう信じるしか無い。
 私達は、大和が組長の息子だと知り、また襲って来るかも知れない。今後どう対処して行こうかと話し合ったが、結論は出なかった。警察だって証拠が無ければ動いてはくれない。私が男達に襲われた時、母が突然現れたのは、母の分身を私のピアスに見立てて、身に付けていたからだそうだ。
「瑞稀、大丈夫。何があってもお母さんが守ってあげる」
 母の愛に包まれて、私は守られている。
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