上 下
181 / 343
【第6部〜アイドル編〜】

第12話

しおりを挟む
 母と2人で綾瀬のマンションに来たが、不在だった。もの凄く嫌な予感がする。綾瀬のスマホを使って、私をおびき出したのだから、綾瀬はヤクザ達に捕まっているに違いない。
「お願いだから無事でいて」
「瑞稀、『自動書込地図オートマッピング』と唱えてごらん」
自動書込地図オートマッピング
 呪文の様に唱えると、目の前の空中に地図が浮かび上がった。
「不思議、どうなってるのコレ?」
「そこで綾瀬を検索して、地図の画面をタップしてごらん」
 母に言われた通りにすると、だいぶ離れた所に青白い点の光が現れた。
「そこに綾瀬がいるわよ。まだ生きているみたいね。死んでたら光らないから」
影の部屋シャドウルーム
 母と一緒に全力で、光点の場所に向かって飛んだ。

「さてと、じゃあ今から解体バラすか。兄ちゃん、最期に言い残す事はあるか?」
「待て、待ってくれ!大和の奴に雇われたんだろう?幾らだ?あいつの倍、いや3倍出す。助けてくれ!この事は誰にも言わない」
「あははは、兄ちゃん。何か勘違いしてねぇか?大和さんの親父さんが誰だか知ってるか?反社って事で隠してるがな、組長なんだぜ。離婚して母方に引き取られてるがな。分かるか?金の問題じゃねぇんだよ。それに、兄ちゃんの女は今頃、気持ち良い思いをしている頃だぜ?」
「なっ、瑞稀、瑞稀に何をした!?」
「AVだよ、それも極上のな。今や推しも推されぬトップアイドルで、若手No.1女優の無修正動画だ。こいつは高く売れるぜ?あははは」
「うぐぐぐ…瑞稀…すまない、瑞稀、俺のせいで…うっ、うぅ…」
「さてと、兄ちゃんから、生きたまま臓器を取り出して行く。勿体無いから麻酔は使わない。だから暴れたら臓器が傷付くんだ。大人しく臓器を取り出されたら、女を沈めるのは止めて、生命だけは助けてやる。女の為に根性の見せ所だぞ?良いか、暴れたらお前の代わりに、女から臓器を抜いて殺す」
 男はそう言うと、メスを取り出して綾瀬の腹に当てた。
「じゃあ行くぞ!」
「うぐぐぐぐっ!」
 メスが腹を斬り裂き、鮮血が飛ぶ。

「綾瀬!」
 しゃがんでいる男の背中越しに、横たわる綾瀬が見えた。その男の側には他に2人いた。
「コイツの女か?随分と撮影が早かったじゃねえか?皆んな早漏かよ?俺も1発ヤラして貰おうかな」
 男が立ち上がると、胸から腹に掛けて斬り裂かれ、臓器が抜かれた無惨な綾瀬の遺体があった。
「綾瀬…」
 両手で目を覆う。
「ネェちゃん、兄ちゃんはな、あんたの為に頑張ったんだぜ?臓器を傷付けるから暴れるなってよ。臓器が傷付いたら、あんたから代わりに抜くって言ったら、最期まで動かなかったぜ。こんな根性ある奴、ヤクザにも中々いないぜ?殺しちまうのが惜しくてよ、久々に感動したぜ」
「あっ、あぁ…あっ…うっ、ひっく…」
 私は泣き崩れた。
「本当、どうしようも無いクズね。人間なんて滅ぼしてしまえば良いのに…」
 母は歩み寄りながら、2人の首を弾く様に飛ばした。
「くそっ!何だこのアマぁ!」
 懐から取り出した銃の引き金を夢中で引き、弾は母の胸に全て当たった。それでも歩みを止めない母に恐怖した。
「な、何だ?防弾チョッキでも着てるのか?」
 弾が出なくなった銃を母に向かって投げ付けた。
「残念ねぇ?私、物理攻撃吸収なのよ」
 そう言うと、男の目の前で銃を消化して見せた。
「ば、化け物だぁ!」
 男は腰が抜け、這う様にして逃げた。
「お前にも、彼の様な根性があるのか見せて貰おうかしら?」
 母は男の両足首を取り込んで逃げられなくすると、ゆっくりと時間を掛けてなぶる様に消化した。
「ふふふ、大した事、無かったね?」
 男3人を喰らって消化しながら言った。
「早く生き返らせてあげなさいよ」
「うん…」

「こ、ここは…天国か?」
「どうして天国なの?」
「瑞稀の膝枕で目覚めるなんて、天国でしかないだろう?」
「馬鹿ね…」
 本当に馬鹿だ。私の為に生きたまま臓器を抜かれるなんて言う、地獄の様な苦しみに耐えたのだ。涙が止まらない。この人は、それほどまでに私の事を愛してくれているのだ。
「イチャつくのは、お母さんが居なくなってからにしてくれないかしら?」
 母がいる事に驚いて、綾瀬は立ち上がった。
「瑞稀さんのお母様ですか?私は綾瀬潤と言います。お嬢さんと真剣に交際させて頂いています。将来は結婚したいと思っています。宜しくお願いします」
 そう言って母に深々と頭を下げた。ちょっと私は感動した。
「瑞稀からよく話しを聞かされています。ステキな彼氏だと。此方こそ宜しくね」
 母が綾瀬に顔を近づけると、顔を赤らめた。
「何、お母さんに意識しちゃってるのよ!?」
「あ、いや、瑞稀に似てて綺麗だなぁ、と思って…ははは」
 私にはまだ母の様な大人の色気が無い。少しだけ戻った母の記憶では、理想の顔とスタイルに変化しているらしいから、母は絶世の美女と言うやつだ。
「お母さんに鼻の下伸ばしちゃって、お母さんと浮気なんかしたら絶対に別れるから!」
 私は母に嫉妬して頭に血が昇った。
「瑞稀、そんな訳ないだろう?俺が愛してるのは、お前だけだよ」
「あらあら母親の前で、ご馳走様。良かったら、一緒に食事でもどうかしら?あ、2人っきりが良かったかしらね?気が利かなくて、ごめんなさいね」
「あ、いえ、ご一緒したいです」
 そう返事した綾瀬に、思わず睨み付けた。
「でも、俺は何で生きているんだ?確か臓器を抜かれて死んだはずじゃあ…」
「私に医学の心得があってね、元に戻したのよ。間に合って良かったわ」
 そんな事ある訳ないのに、母はめちゃくちゃな理由で綾瀬を納得させた。いや、綾瀬だって信じてないが、実際に生きているのだから、そう信じるしか無い。
 私達は、大和が組長の息子だと知り、また襲って来るかも知れない。今後どう対処して行こうかと話し合ったが、結論は出なかった。警察だって証拠が無ければ動いてはくれない。私が男達に襲われた時、母が突然現れたのは、母の分身を私のピアスに見立てて、身に付けていたからだそうだ。
「瑞稀、大丈夫。何があってもお母さんが守ってあげる」
 母の愛に包まれて、私は守られている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

処理中です...