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【第6部〜アイドル編〜】

第5話

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 目が覚めると、既に矢沢Pはいなかった。テーブルの上を見ると、置手紙がされていた。
「キミと一晩過ごした夜は楽しかった。もっと余韻を楽しみたかったけど、仕事でこれから移動しなくちゃいけない。朝食を摂ったら、外に黒塗りの車を用意している。それに乗れば事務所まで送って貰える。キミのこれからの活躍を信じ、祈っています。キミの1番のファンより」と書いてあった。
 俺は粋な計らいを感じて、クスリと笑った。手紙の通りに、一流旅館の気合いの入った朝食を美味しく頂いた後、車に乗り込むと、行き先も何も言わずに発進して事務所に着いた。
「有難う御座いました。お世話になりました」と運転手さんに声を掛けると、「良い子だねぇ。おじさんもその一言でファンになっちゃったよ」と笑顔で言われた。アイドルは大勢の人の笑顔を作る仕事だ。運転手さんに褒められて、アイドル冥利に尽きると満足気に笑った。
 映画の撮影に入ると過酷で、時々台詞が飛んで頭が真っ白になり、NGを連発して現場の空気が悪くなり、皆んなに泣きながら謝った。
「ははは、そんなに硬くならないでも良いよ?現場は初めて何だろう?リラックスして、リラックス。アイドルなんだろ?笑顔、笑顔よ」
 今人気のイケメンアイドルグループの1人が、俺を慰めてくれた。顔だけでなく、性格までイケメンだ。休憩になると、そのイケメンが声を掛けて来て、自販機でジュースを買ってくれた。
「何か飲む?って、アイスティーかお茶だろう?」
「え?何で知っているんですか?」
「うーん、キミに興味があって、どんなのが好きなのか見てたんだよ」
 そう言って顔を覗き込まれると、胸が高鳴って、そっぽを向いた。
「ちゃんと目を見て…」
「えーっ、そんな…恥ずかしい…」
「おい、おい、瑞稀ちゃんが困っているだろう?止めとけよ!」
「何だお前?邪魔すんなよ!」
「邪魔って何だよ?」
「あー、止めて、止めて、喧嘩しないでよ」
 後から声を掛けて来たイケメンこそ、この映画の主人公の大和やまとかけるさんだ。女子なら知らぬ者はいない、今をトキメク抱かれたい男No.1だ。大和さんも、ジュースを奢ってくれたイケメンと同じグループのアイドルだ。
「あーあ、またやってるよ。誰だよ配役考えた奴、あの2人は共演NGだろ?いつも共演者を奪い合うんだからよ」
 そんな声が聞こえて来た。なるほど、2人とも俺狙いだったのね?俺は中身が男だから、自分が好意を寄せられている事に、全く気付かなかった。
 それにしても、人気アイドルグループのこの2人から奪い合われるなんて、俺が本物の女子なら、キャーキャー言って喜んだんだろうな?でも、俺のフォローしてくれたのは、主人公のお前ではなかったな。と思って、最初に声を掛けて来た方に声を掛けて場所を変えた。勝ち誇った顔をして俺の肩を抱くと、部屋から連れ出された。
「瑞稀ちゃん最初に見た時から、めっちゃ可愛いなぁと思ってたんだよ。良かったら、俺と付き合ってくれないかな?」
「えっと、その…」
「何?交際、事務所NGとか?大丈夫だよ。内緒で付き合おうよ。大切にするからさ」
 彼女を大切にするって普通じゃないのかな?とか思った。アイドルだし沢山の女の子を抱いて来たんだろうな?きっと俺の事も身体目当てなんだろうな?とか思ってしまった。
「ごめんなさい。嫌いとか、そう言うんじゃないので。さっき、助けてくれて嬉しかった。ありがとう」
 お礼を言って頭を下げて去ろうとすると、抱き寄せられてキスされた。
「瑞稀ちゃん、良い匂いがする。俺の事、軽そうに見えるんだろう?でも俺、本気だから。瑞稀ちゃんの事、本気で好きだから」
 ギュッと抱きしめる腕に力が込められた。良い匂いだって?コイツだって良い匂いがする。何の香水だろう?とか抱きしめられながら思っていた。
 休憩が終わり、撮影が続いた。途中、何度かトイレ休憩を挟まれたが、俺は照明さんや音声さんにも話しかけ、何か演技のヒントになる事は無いかと、聞いてメモを取っていた。
「はーい、本日の撮影は終了です。また明日、宜しく。あと、瑞稀ちゃんは、監督が呼んでるので宜しく!」
「はーい、畏まりました!」
 俺は監督に呼ばれて向かった。
「瑞稀ちゃん、この後、少し空いてる?飯でも食いに行かない?」
「はい、多分…空いてると思います」
「そうか?おーい!瑞稀ちゃんのマネージャー!」
 俺のマネージャーを呼んで、スケジュールを確認していた。
「空いてるみたいだから、良いね?」
「はい、宜しくお願いします」
 監督と2人で食事に行くと、いかにも高級そうなお寿司屋だった。
「ここのお寿司は美味しいんだよ」
「うわぁ、有難う御座います。私、お寿司、大好きなんです!」
「そう?」
 監督は大将のお任せで、と言った。よくここに来るのかな?とか思って、ワクワクして待っていると、最初に出て来たネタはスズキだった。続いてホタテ、赤身、イクラ、ウニ、玉子、イカ、エビ、大トロ、コハダ、穴子の順に出て来た。
「お寿司ってね、食べる順番があるんだよ。先ずは淡白なネタから食べて行き、味が濃くて旨味の強いネタを食べ、次に脂が強いネタを食べる。最後に軍艦などの巻物を食べ進めるんだよ」
「へぇ、知りませんでした。勉強になります」
「あははは、キミさっき照明や音声にも話を聞いていただろう?勉強熱心なのは良い事だよ。キミのその姿勢は、いつか必ず血肉となって身に付き、花が咲くよ。例え今が蕾であっても。俺がそうだったんだ」
「監督がですか?」
 私はお酒を注ぎながら聞き返した。
「実は俺はね?照明出身だったんだよ」
「えっ!?監督って元照明さんだったんですか?」
「そうなんだよ。演技している俳優さん達を見下ろしながら、いつか必ず俺もこの俳優さん達を使える様になって、監督になってやる、映画作ってやる!ってね。思ってたんだよ」
「へぇ」
「上から見てるとね、うーん、サッカー選手をフィールドの上から見てる感じなんだ。皆んなの動きが手に取る様に分かるんだ。俺は照明だったお陰で、映画を撮る時、俯瞰ふかんして見れる様になったんだよ」
「凄いですね?そうなんですね」
「ふふふ、キミ良いね。今まで出会った若手女優の中で1番、輝いてるよ」
「あははは、褒めても何も出ませんよ?」
「でも、抱けるかも知れない」
「えっ!?」
「キミ、矢沢くんと寝たんだろう?俺じゃダメかな?」
「な、酔ってるんですか?監督。もう帰りますよ」
「待って、本気なんだよ。矢沢くんには内緒にしておくから」
「別に彼氏じゃありませんから」
「だったら良いじゃないか?矢沢くんとも寝たんだろう?何で俺はダメなんだ?」
「もう、飲み過ぎですよ」
 俺はタクシーを呼んで店を出た。タクシーに乗り込むと、監督のホテルに向かった。酔っ払って寝た監督をベッドまで運ぶと、隙を突いて押し倒された。服の上から胸を揉まれた。
「柔らかくて気持ち良い。弾力といい、形も良いな。演技指導してやるから脱げ」
「嫌です。触らないで、訴えますよ」
「出来るのか?トラブルが起きたら映画は終わりだぞ?損害賠償請求するからな?映画は億単位だぞ、払えるのか?それにヒロインを降板する気か?」
「卑怯です。そんな人だったんですか?監督」
「どうしてもキミ抱きたいんだよ!頼む、1回だけ。1回だけヤらせて」
「嫌だぁ、絶対にしたくない。許して下さい。何も聞かなかった事にしますから」
 言うと同時に服を引き裂かれた。
「キャッ!」
 下着をずり上げられると、むしゃぶりつく様に胸を吸われた。
「あっだ!止めて!」
 左手で俺の両手首を掴んで、押さえ付けられた。力が強くてびくともしない。胸を吸われながら、右手でスカートをめくられて、パンツに手を掛けられてずり下ろされて行く。
だ、だ、止めて!」
 パンツを完全に降ろされると、レイプされる恐怖を感じて泣いた。
「お願い、止めて下さい。お願い。明日からもう演技出来なくなります。お願い、許して下さい。お願いします」
 涙を流して震えながらお願いした。
「何だよ、泣くなよ。萎えるな。分かった、分かった、もう良いよ。でもこのまま帰るなら、もう明日から来なくて良いからな?コレを満足させてくれたら、俺も許してやるよ」
 俺はもうすっかり慣れた手つきで口に咥えた。
「おぉ…おっ、くぅ、上手だ。矢沢くん仕込まれたんだろう?嫉妬しちゃうね、こんな可愛い子のバージンを奪えるなんて。うっ、はぁ、はぁ…気持ちいい」
 口淫している間ずっと、俺の頭や髪を撫でていた。腰の動きが早くなり、口から抜いて顔射された。目にかかったので、目を開けられずにいると、再び口に入れられた。
「お掃除してくれよ」
 言われるがままにして上げると、顔に付いた精液を拭き取ってくれた。
「髪に付いたら取れにくくて嫌なのよ」
 と、足首を掴んで広げられると、秘部を指で広げられて舐められた。
「うあっ!や、止め、ダメったら…あっ…」
 舌の動きがまるで生き物の様で、気持ち良過ぎて監督の頭を押し付けて喘いだ。
「何だ、気持ち良いんじゃないか?」
 俺が放心していると、隙を突かれて膣内なか挿入れられた。
「もう良いだろ?もう良いだろ?」
と、繰り返しながら、激しく腰を突いて来た。
だ、挿入れちゃダメー!」
 俺の絶叫と抵抗を無視して、腰を振り続けられた。俺はショックで泣きじゃくった。泣きながら、心とは別に身体は感じていて、気持ち良いのを悟られまいと、歯を食いしばって耐えた。
 行為が終わって膣内なかに出された。
「もし妊娠していたら、結婚しよう?」
 だが、俺は泣いていて耳に入らなかった。セカンドバージンがレイプだなんて最悪だ。清純派アイドルだって?俺が?こんなにも汚されているのに?
 ファンの皆んなを裏切っている。何よりも自分の心を裏切っている。こんな事をしてまで、俺は芸能界なんかに居たいのか?元々スカウトだし、なりたくて入った芸能界では無い。この世界では売れてない女も、もっと売れようとしている女も、身体を売ってのし上がるのが常套手段とされている。異常な世界だ、そして甘美な世界だ。テレビに出まくった忙しい日々。ギャラは何百万単位で通帳に振り込まれて行く。ここに来れるのは一握りの人間だけだ。俺はその一握りになる為に、失ってはいけない何かを失ってしまった。
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