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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第3章 アナトの嫉妬

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 目が覚めると、お腹が鳴った。昨晩は、お風呂に入って疲れを癒した後、何も食べずにそのまま眠ってしまっていた。
「お腹空いたぁ」
 お腹をさすりながらベッドから起き上がって、冷えたお水を一気飲みした。
「はぁ~、生き返る」
 目が覚めると、最初に飲料水を飲むのがルーティンと化している。
「あれ?麻生さんは?」
 耳を澄ますとシャワーの音が聞こえる。
「シャワーを浴びているのね?山下は…と」
 山下を起こしに行こうと部屋を出た。部屋の外では侍女が待機していた。
「山下の部屋は何処かしら?」
「殿方のお部屋でしたら、あちらで御座います」
 山下の部屋に入ると、ベッドを囲う白い天幕を開けて中を覗いた。
「キャア!」
 山下は全裸で朝勃ちしていたのだ。思わず両手で目を隠すが、指の隙間からこっそり覗き見た。
「うわぁ、大きい…って、何言ってるの私…」
 ふと、ベッドの下に目線をやると、全裸の女性がベッドから落ちたのか、そのまま眠っていた。
「ふ~ん、昨晩はお楽しみだったって訳ね?私の事、愛しているって言ったのに?」
 何だかイライラして、直ぐに部屋を出ると、自分達の部屋に戻った。部屋に戻ると麻生さんは、髪を乾かしていた。
「おはよう、麻生さん」
「おはよう。何処に行ってたの?」
「え、えぇ…」
「元気が無いね?体調が悪いの?診察するね」
「大丈夫、大丈夫よ」
 侍女が朝食だと言って声を掛けられた。案内されて広間に入って、席に着いた。すると、山下も少し遅れて入って来ると、私の左に座った。私は嫌そうな顔をして、ジロリと睨んでやった。
「おはよう、瑞稀」
「…」
「おはようございます、麻生さん」
「おはよう、山下くん」
「瑞稀、どうしたの?」
「馴れ馴れしくしないで!」
 プイっと、そっぽを向いて、身体ごと麻生さんの方を向いた。
「何を怒っているんだ?」
「自分の胸に聞いてみれば分かるんじゃないの?」
「何もやましい事はしてないぞ?」
「へぇ~、あれでやましく無いなら、平気で浮気出来るって事じゃないの?この間の返事だけど、お断りさせて頂きます。貴方とは、お付き合い出来ません。金輪際、私には関わらないで下さい」
 ぶっきらぼうに言い放って、そっぽを向いた。すると背後から1人の侍女が、耳元で囁いて来た。
「山下様と裸で寝ていたのは、私で御座います。ロード様のご命令で、夜のご奉仕にお伺い致しました所、好きな女性がいらっしゃるとの事でしたので、お断りされてしまいました」
「それなら何で、2人とも裸で寝ていたのよ!?」
「それは、ロード様のご命令を果たす為に魔法で眠らせて、無理矢理に行為を行いました。ですから、山下様の記憶には御座いません」
「えっ?眠らせて、やっちゃったって事?」
「左様で御座います」
「そ、それは…。それでも…」
「山下様は、悪くは御座いません。お怒りなら、私にぶつけて下さいませ」
 なんて潔い。それでもモヤモヤする。だって男なら「こんな美女とやれてラッキー」くらいにしか思わないでしょう?
「うーん。ねぇ、麻生さん。もしも男の時の私が、同じ状況で眠らされている間に、致しちゃった場合、どうする?」
「そりゃ怒るわねぇ。でも、相手の女性には、もっと怒るわ。だって、これが男女逆だと考えてみてよ?女性を薬で眠らせている間に犯しちゃうのよ。女性は分からないわよね?これって、犯罪よね?」
「でもここは魔界だし、人間の法律や常識は通じない。このイライラは誰にぶつけたら良いのかしら?」
「私にぶつけて下さいませ」
「貴女に命令したのは魔王様でしょう?例え嫌な命令でも承知するしかない。だから責任なら、ロードに取ってもらう」
「私が魔王様に殺されてしまいます。どうかお許し下さい」
 侍女は土下座する様な格好で床に平伏して、泣きながら謝罪して来た。
「分かった。分かった。もう許すから、早く向こうに行って」
 山下はニヤニヤして、こっちを見ていた。
「何なの?ニヤニヤして、腹立つ!」
「それって、もう完全に俺の事が好きじゃん?」
 絶句して、頭に血が昇って来た。
「怒るなよ。俺が愛しているのは、お前だけなんだから瑞稀!」
 そう言って抱き寄せられ、キスされそうになって横を向くと、唇がほっぺに当たった。離れようとすると、強く抱きしめられた。
「ちょっ、ちょっと、皆んな見てるし、止めてよ!」
「愛してるんだ、瑞稀。俺の女になって欲しい」
「あははは。さぁ、それはどうかなぁ…」
抱きしめられながら、背中を撫でられた。身体に触れられていると心が落ち着き、さっきまでのイライラが嘘の様に解消されていく。
「もう、イヤらしいから、触るのは止めて」
 ちょっと嬉しくなり、機嫌が直った。
「アナトってば、チョロ過ぎよ。ふふふふ」
 そう言って麻生さんは、笑った。
「チョロいって…麻生さん酷い」
 先程までの険悪な空気が和んだタイミングで、魔王ロードが入って来た。
「食事は口に合っているか?」
「ええ、凄く美味しいです」
「それは良かった」
 ロードは、差し出されたグラスの中身を飲み干した。
「では、これから私が描く、図を述べてもらおうか?女神アナト」
「良いわ」
 私は、同盟関係にある魔王フレイアと魔王クラスタを傘下にし、魔王ビゼルらの同盟軍に対抗すると語った。そして、魔王ビゼル達を傘下にする事が出来れば、残りの魔王達は、自ら傘下に加わるだろうと述べた。ゲートの守護者に関しては、私が何とかすると語ると、満足そうにロードは笑みを浮かべた。
「まるで本当に、未来を見て来た様な策だな?見事だ。その案に乗ろう」
 その後朝食は、楽しく語らいながら美味しく頂いた。どうやら完全に、ロードの信頼を得たみたいだった。
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