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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第3章 女神再臨

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 ホスゲンが入った瓶を咥えて殺害された議員を調べると、内ポケットの中に犯人達からのメッセージが書かれていた。
「かつて日本政府は、悪には屈せずと言い、日本国民を見殺しにした。では今度は自分達が標的となった時、果たして同じ事が言えるのか?-神の使徒・アストピア-」
 このメッセージは瞬く間に報道され、全ての国民の知る所となった。「アストピア同時多発毒ガス事件」の被害者遺族は、この犯人からのメッセージに共感した。遺族らは、自分達の家族を見殺しにした政府の高官達を恨んでいた。総理大臣達も死ねば良い。そう思った。この空気が世間を支配し、内部にいる大臣ごと犯人を射殺しろ!と過激な発言も飛び出したのだ。助ける、助けないと意見は分かれ、両者は対立した。
 SATだけでなく、自衛隊も動き始めた。国家安全保障の危機だと、自衛隊最高位者である統合幕僚長が指揮し、自衛隊も国会議事堂を取り囲んだ。日本国民が固唾を飲んで、このニュースを見守った。
 そこへゆっくりと歩いて、正門に向かう1人の少女の姿を映した。警察に止められそうになると、光のバリアの様な物が少女を包んで触れる事が出来なかった。ここで皆んなは気付いた。この少女は、アストピア同時多発毒ガス事件を解決した華友の女神だと。止めるべき警察が道を開けて、少女の歩みを止めないと言う異様な光景が広がった。少女は正門を飛んで中に入り、閉ざされた議事堂の扉は、手をかざすと、熱で溶けてこじ開けた。
 入って直ぐに存在に気付かれた。1発で頭を撃ち抜かれたが、瞬時に治った。
光之拘束ライトバインド
 先ずは1人を拘束した。
自動言語翻訳オートトランスレーション
 この呪文効果は、話す言葉が聞く相手の言語に自動翻訳され、相手の言葉も自動翻訳される為に、どんな相手にも言葉は通じる様になる。神は勿論、動物や虫にすら言葉が通じる様になる。
「お前達は、完全に包囲され逃げる事は出来ない。大臣達を人質にしても、国民の空気は見殺しにしろ、だ。つまり、脱出する為の乗り物は用意されないし、金も用意はされない。死にたければ、勝手に大臣を巻き込んで死ね!これが国民の声だ。つまり、お前達はもう終わりだ。そして、その引導を私が渡しに来た」
 低い声で、立て籠り犯に言った。その方が迫力が出て、投降するかと思ったのだ。しかし甘かった。彼らは日本人の様に温温ぬくぬくとした温室で育った訳ではなく、常に死と隣り合わせの過酷な環境下で生き抜いて来たのだ。この仕事を引き受けた時から、成功しても失敗しても死を覚悟していた。金は家族の下に届けられる。それだけで、良い。この生命を捨てるだけの価値がある、そう思っていた。失敗すれば死ぬ、成功しても口封じで殺されるだろう。
 立て籠り犯から数百発にも及ぶ銃弾を受けたが、『完全物理防御障壁パーフェクトシールド』を唱えて無傷だった。犯人らを次々と拘束していくと、この少女には勝てないと悟った男が、中央に大量に集めていたホスゲンの入った瓶を銃で割った。議会内をホスゲンが包み込み、犯人達も大臣達も窒息死した。結局、誰1人助ける事は出来なかった。
 警察や自衛隊が踏み込んで見たのは、死体の山となった大臣や犯人らの遺体で、射殺された職員らの凄惨な状況であった。
 報道規制は続き、外に運び出される遺体を撮影されない様にした。私は、警察官らに事情を聞かれたが、言葉が通じないフリをして無視していた。
 遺体が全て運び出されると、『死者蘇生リアニメーション』を唱えて生き返らせた。勿論、犯人は拘束したままだ。大臣全員死亡のニュースが流れて、涙を流して叫んでいた家族は、喜びの涙に変わった。
「日本は神国である。日本の平和と平穏を脅かす、全ての存在を私は許さない」
 そう言って上空に浮かび、光に包まれて掻き消えた。この効果は大なり小なりあり、日本の犯罪が減少し、世界からは日本は最も警戒するべき国と認識された。
【神国日本、女神再臨!】
翌日の新聞のトップ見出しだ。総理大臣達が人質にされた事件や、立て籠り犯についての報道を差し置いて女神が現れたニュースとなった。この謎の少女の姿をした女神を、天照アマテラスと呼び出した。
「天照降臨だって?イヤイヤ待て待て、天照は別の神様だよ。会った事あるし(夢の中で)、今度はちゃんとアナトだと名乗ろうか…」
 例の如く、山下が新聞を片手に興奮した様子でやって来た。私はいつもの様に、適当に相槌をしながら話を聞いていた。
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