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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第3章 夢、幻の如く

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「あっ、お母さん!」
「情けないわね」
母は、信じ難い事に檻を素手で広げた。
「嘘っ!?何て強さなの?もうお母さんには逆らわないよ」
「良い心掛けね」
母を見ると、ゾロゾロと奴隷にした男達が20人を超えていた。
「あっ、ヤザン!」
「知っているの?」
「う、うん…あの、お母さん…」
「ダメよ、あげないわよ!」
「まだ何も言って無いじゃないの、ケチ!」
「ふふふ、後で貸してあげようと思ってたけど、やーめた」
「えーっ、嘘、嘘、嘘、お母さん、ごめんなさい。貸して下さい」
「うふふふ、貴女がこんなに素直になるなんて、良い拾い物をしたわね」
それからアシェラは思い出した様に、魔法箱マジックボックスからルシフェルとミカエルの遺体を出した。
死者蘇生リアニメーション
ルシフェルとミカエルは生き返った。
「あー、そのブサイク野郎!」
ミカエルはヤザンを見ると殴り掛かったが、母に止められた。
「貴女もヤられちゃったのかしら?私とアナトのお気に入りだから、壊させないわよ?」
アシェラは命の恩人だ、大人しく従った。それにどうせ戦っても、勝てる相手では無い。
「ほらミカエル、大好きなお兄ちゃんを、放ったらかしにしちゃダメじゃないの!」
ミカエルの関心をルシフェルに逸らした。
「お兄様…」
 全裸で抱き合う兄妹。何だかとてもシュールだ。美男美女と言うか、顔も双子だからよく似ている。イケメンと美女なら兄妹でも許されるって?そんな訳ないだろう。神々の倫理観がぶっ飛んでるんだわ。唯一禁止されているのは、男同士の同性愛だけだ。
 司令室に行くと、床に遺体が転がっていて、よく見ると司令官だった。
「これは、お母さんが?」
「そうよ」
それにしても強過ぎる。超強力催眠って、眠気を誘ったり、眠らせたり、幻想を見せたり、夢を見させたり…って、まさか…。

「がはぁっ、げほっ、ごほっ、げほ…」
 目を覚ますと水溶液の中にいて、身体中がパイプに繋がれていた。酸素やエネルギーの供給や排泄も、パイプを通じて行われていたみたいだ。
「何なのコレは?春町の夢から覚めた時みたいに、今まで見ていたものが、全て夢だったの?」
辺りを見回すと、母がいた。
「そうよ、全部夢よ。今見ているのも夢。思い出してごらんなさい。貴女の、いえ、貴方の本当の姿を…よく思い出すのよ…何処から夢を見ていたのか…」
「夢?何もかも夢?それに…貴方だって?まるで私が男みたいに…、男?…男、そうだ…男だ…私は…全部思い出した…」


 再び目を覚ますと、白い天井が見えた。首を横に傾けると、デスクの上に見覚えのあるマスコットが飾られていた。確か何かのゲームの限定特典だったはずだ。ここは会社の医務室だ。
「あら?ようやく目が覚めた?」
声を掛けて来た女性を見て、懐かしくも驚いた。
「麻生さん…」
頭から足の先まで舐める様に見ていると、麻生さんは恥ずかしそうに言った。
「そんなに見られたら恥ずかしいよ」
「ごめんなさい。足が付いてるのかな?と思って」
「ふふふ、幽霊じゃないよ?むしろ青山くんの方が、幽霊になりかけてたんだけどね?」
 手のひらを見ると、乾いた血が付いていた。そうだ、確か頭を殴られて意識を失ったんだった。私をここまで運んでくれたのは、山下だ。
「山下が運んでくれたんですよね?」
「ええ、そうだけど、意識があったの?」
「あぁいえ、そんな気がしただけです。麻生さんでは、ここまで私を運べないと思って」
 そう言うと、麻生さんは顔を覗き込んで来た。近い、あと数㎝口を突き出すと口付けが出来てしまいそうだ。まだ友達関係のはずだから、早過ぎるし、嫌われて未来が変わるかも知れない。あの夢で見たものが、本当に未来であったのなら。
「頭は打ってたけれど、もう大丈夫そうね?」
「そうですか」
と、私が顔を赤らめて横を向くと、距離が近い事に気付いて麻生さんは離れた。麻生さんも、ここで初めて意識したのか、顔が赤くなっていた。
「麻生さんにくっつかれて、嬉しくない男はいないですよ?ちょっとドキドキしちゃいました」
「もう、なんて事言うの~」
麻生さんは耳まで真っ赤にして、顔を両手で隠した。
「ごめんなさい麻生さん、揶揄からかった訳じゃないですよ。ずっと麻生さんの事が好きでした」
「えっ!」
「麻生さんと結婚を前提に付き合いたいです。嫌だったら、抵抗して下さい」
 そう言うと、麻生さんを抱きしめて唇を重ねた。麻生さんは震える手で抱きしめ返して来たが、抵抗する感じがなかったので、舌を入れて絡めた。麻生さんは驚いた表情をして、されるがままだった。そのまま5分以上キスしていた気がするが、実際には3分も経っていなかった。
「今まで生きて来て、今が1番幸せです。麻生さんも、必ず幸せにしてみせます」
 麻生さんは、うなずいて見せた。OKを貰ったと解釈しても良いだろう。
『ステイタスオープン』
 自分のステイタスを見ると、『女性変化0%』が見えた。やはり自分は青山瑞稀に戻っている。いや、最初からそうで、神崎瑞稀や虞美人にアナトだった自分は夢だったのか?しかし、夢で見た事が現実に起こっている。それならそろそろ山下が来るはずだ、と思っていると、果たして医務室のドアが勢いよく開けられた。
「先輩、目が覚めたんですね?心配しましたよ、頭から血が流れて倒れてたので、死んじゃったかと思いましたよ」
「でも救急車を呼ぼうにもずっと話し中で繋がらないし、このままだと危ないと思って、ここに運んじゃいました」
良かった死ななくて、と言って私にしがみついて来た。夢の中で見たセリフそのままで、実は今も母アシェラの『超強力催眠ヒュブノ』にかけられたままなのでは?と思い、顔を叩いたり、つねったりした。
「痛いっ」
「先輩!頭を打って、やっぱり何処か悪くなったんじゃ…」
そう言って麻生さんを見たが、大丈夫よと目で答えていた。
 母の幻覚ではない。今度は、水溶液カプセルの中にいました、では無い。本当に現実なのだ。夢の中で女性だった時が長かったせいなのか、山下に抱きつかれても嫌な気がしなかった。むしろ愛しい気持ちがあった。ダメだダメだ。男の時にこの感情をもったらホモになるだろう。そう自分に言い聞かせた。
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