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【第5部〜旧世界の魔神編〜】
第2章 胡蝶の夢
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地下へと降りていくと、何だか違和感を覚えた。こんな感覚に見覚えがある。デジャヴと言う奴だ。思い出せないけど、以前にも同じ様な事を体験したはずだ。
「あ、頭がぁ…」
頭が割れそうなほどの痛みを感じて、その場に蹲った。
「うあぁぁぁー!!!」
絶叫すると目が覚めて起き上がると、水溶液の中にいた。呼吸が出来ずにもがいて溺れた。慌てて水溶液から頭を出すと、水溶液の入ったカプセルの中に、チューブで繋がれた全裸の神々を見た。私も全裸にされている。
「はぁ、はぁ、はぁ…こ、これは?」
周囲には、誰かがいる気配を感じない。水溶液の入ったカプセルの中から、這う様にして抜け出した。力が、と言うよりも体力が無い。少し動いただけで、生命力を吸われているみたいだ。仰向けになり、水溶液に繋がっているパイプで埋め尽くされている天井を見上げた。
「思い出した…」
そうだ私は唯一神ヤハウェの娘、アナトだ。天界と魔界を揺るがす陰謀を断つ為、父を倒した。その後、私は自分のスキルから抜け出せず、ダンジョンを降りてラスボスを倒すと、母であるアシェラが現れて、私は攻撃された…所までは思い出した。その後はどうなったのだ?
「あらぁ?目覚めちゃったのね?」
振り返ると、母が立っていた。
「お、お母さん…」
筋力が無く、立って逃げる事が出来ないので、床を醜く這いずった。
「あははは」
母は私の背に乗って動きを止めた。
「可愛い娘…そして、誰よりも憎い娘…。私がこの世で最も愛する夫を殺した罪深い娘」
「お母さん…」
「よく私の超強力催眠から抜け出せたわね?私の娘だから、少しは耐性があったのかしら?ふふふ、状態異常無効なのに何故?って顔してるけど、貴女も理解してたはずよ?食欲、性欲、睡眠欲を防ぐ事は出来ない。状態異常とは認識されないからなのよ。だから貴女は私の夢の中でも、ほとんど食べてるかHしているかだけだったわね?」
背に乗る母の重みで、身動きが取れずに私はもがいていた。
「さて、どうしようかしらね?皮でも剥いであげようかしら?」
「許して…お母さん…」
その言葉を聞くと、アシェラは激昂した。
「許して?どの口が言っているのよ!嬲り殺しても、まだ足りないわ!」
髪の毛を引きちぎられるかと思うほどの力で掴まれた。
「あぁぁ、痛いっ!」
「痛い?あの人の苦しみ、痛みはこんな物じゃ無かったわよ!」
右の耳を掴まれると引きちぎられた。
「うぎゃあぁぁぁ!」
「はぁー、はぁー、はぁー。そうね…あの人を生き返らせてくれるなら…許してあげるわ。貴女になら出来るはずよ、アナト」
心を落ち着かせると、優しい口調で語りかけられた。もう母の言いなりとなった私は、頷いて答えた。
「ごめんなさい、お母さん。お父さんを生き返らせるから、もう許して!」
アシェラは、私の背から降りた。
「あの人は光の結晶となって散ったけど、髪の毛が残っているの。貴女なら、塵の一欠片からでも生き返らせられるでしょう?」
私は母の後ろをついて歩き、母の部屋に入った。部屋と言っても、部屋のドア的な物は何処にも付いておらず、母が手をかざすと室内に入る事が出来たのだ。その部屋も、広い空間になっており、自分達の考える「部屋」と言う概念は覆された。
また母は手をかざすと、引き出しくらいの大きさの空間が開き、中から箱を取り出した。母が箱を開けて中からミサンガの様に編まれた物を取り出した。
「これはね、私とあの人が愛を違い合って、2人の髪の毛と神聖な布で編んで作った腕輪なのよ」
そう言った母は、嬉しそうでもあり、恥ずかしそうでもあり、少し寂しそうな表情をしていた。
「はい、お願い。あの人を生き返らせて!」
母からミサンガを渡されると、私は手に魔力を込めた。
『死者蘇生』
ミサンガは白い光に包まれて輝くと、次第にそれは人の形となると、父が現れた。
「嗚呼、あなた…」
「アシェラ…」
父と母は抱き合って、涙ぐんでいた。父ヤハウェは、私の方を向いた。
「アナト、強くなったな」
その言葉で、私は父に許されたんだと思い、涙が流れた。
「お前は思い違いをしていただけなのだ、アナト。忘れているみたいだから、思い出させてやろう。父と母がこの星に来た時、何も無かった。やがて、お前が生まれた。何も無いこの星で、お前の遊び相手を作ってやろうと、父が神々をお前の遊び相手として作ったのだ。だからアナト、お前は神々とは違うのだ。だがお前は、彼らを本当の友達の様に思い、信じ切ったのだ。子供に与えたオモチャを友達と呼び、一緒に遊んだ。そこまでなら普通の子供と変わらぬ。しかし、作られた彼らをお前は、いつの間にか自分と同じ存在だと思い込む様になってしまったのだ。だが別にそれは悪い事では無い。でもその為に、実の父をも殺害してしまうとは、愚かよな」
「ごめんなさい、お父さん。私が間違っていたわ」
「反省したなら…分かってくれたなら良いのだ」
私は父と母に歩み寄ると、優しく抱きしめられた。
「これからは、家族の時間を過ごそう」
「お母さん、ダンジョンを降りたらお母さんが居て、催眠攻撃を受けたわ。目が覚めるまでの間、春町の住人として過ごしたけど、あれは全て夢だったの?」
「そうよ。夢だから、貴女の願望にも左右されるの。見たい夢を見て、それがリアルに感じられるほど、この世界は夢であるとは認識されないの。そうなればなるほど、その夢の世界から抜け出る事は出来なくなるのよ」
何てとんでもないスキルなのだろうか?あの春町で生活した日々の全てが夢だったなんて、とても信じられない。あの世界に戻りたいと願っても、夢であるならそれは叶わぬと言うものだ。これでは「胡蝶の夢」ではないか。
「胡蝶の夢」とは、荘子が夢の中で、胡蝶として飛んでいて目が覚めたが、果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか、それとも夢で見た蝶が本来の自分であり、今の自分は蝶が見ている夢なのか、と考えさせられた説話だ。これに対して荘子は、3つの説話で説いたのだが、ここでは割愛しよう。
私はまだ夢の中にいるのか、夢の中の私が見ている夢なのか分からなくなった。
「あ、頭がぁ…」
頭が割れそうなほどの痛みを感じて、その場に蹲った。
「うあぁぁぁー!!!」
絶叫すると目が覚めて起き上がると、水溶液の中にいた。呼吸が出来ずにもがいて溺れた。慌てて水溶液から頭を出すと、水溶液の入ったカプセルの中に、チューブで繋がれた全裸の神々を見た。私も全裸にされている。
「はぁ、はぁ、はぁ…こ、これは?」
周囲には、誰かがいる気配を感じない。水溶液の入ったカプセルの中から、這う様にして抜け出した。力が、と言うよりも体力が無い。少し動いただけで、生命力を吸われているみたいだ。仰向けになり、水溶液に繋がっているパイプで埋め尽くされている天井を見上げた。
「思い出した…」
そうだ私は唯一神ヤハウェの娘、アナトだ。天界と魔界を揺るがす陰謀を断つ為、父を倒した。その後、私は自分のスキルから抜け出せず、ダンジョンを降りてラスボスを倒すと、母であるアシェラが現れて、私は攻撃された…所までは思い出した。その後はどうなったのだ?
「あらぁ?目覚めちゃったのね?」
振り返ると、母が立っていた。
「お、お母さん…」
筋力が無く、立って逃げる事が出来ないので、床を醜く這いずった。
「あははは」
母は私の背に乗って動きを止めた。
「可愛い娘…そして、誰よりも憎い娘…。私がこの世で最も愛する夫を殺した罪深い娘」
「お母さん…」
「よく私の超強力催眠から抜け出せたわね?私の娘だから、少しは耐性があったのかしら?ふふふ、状態異常無効なのに何故?って顔してるけど、貴女も理解してたはずよ?食欲、性欲、睡眠欲を防ぐ事は出来ない。状態異常とは認識されないからなのよ。だから貴女は私の夢の中でも、ほとんど食べてるかHしているかだけだったわね?」
背に乗る母の重みで、身動きが取れずに私はもがいていた。
「さて、どうしようかしらね?皮でも剥いであげようかしら?」
「許して…お母さん…」
その言葉を聞くと、アシェラは激昂した。
「許して?どの口が言っているのよ!嬲り殺しても、まだ足りないわ!」
髪の毛を引きちぎられるかと思うほどの力で掴まれた。
「あぁぁ、痛いっ!」
「痛い?あの人の苦しみ、痛みはこんな物じゃ無かったわよ!」
右の耳を掴まれると引きちぎられた。
「うぎゃあぁぁぁ!」
「はぁー、はぁー、はぁー。そうね…あの人を生き返らせてくれるなら…許してあげるわ。貴女になら出来るはずよ、アナト」
心を落ち着かせると、優しい口調で語りかけられた。もう母の言いなりとなった私は、頷いて答えた。
「ごめんなさい、お母さん。お父さんを生き返らせるから、もう許して!」
アシェラは、私の背から降りた。
「あの人は光の結晶となって散ったけど、髪の毛が残っているの。貴女なら、塵の一欠片からでも生き返らせられるでしょう?」
私は母の後ろをついて歩き、母の部屋に入った。部屋と言っても、部屋のドア的な物は何処にも付いておらず、母が手をかざすと室内に入る事が出来たのだ。その部屋も、広い空間になっており、自分達の考える「部屋」と言う概念は覆された。
また母は手をかざすと、引き出しくらいの大きさの空間が開き、中から箱を取り出した。母が箱を開けて中からミサンガの様に編まれた物を取り出した。
「これはね、私とあの人が愛を違い合って、2人の髪の毛と神聖な布で編んで作った腕輪なのよ」
そう言った母は、嬉しそうでもあり、恥ずかしそうでもあり、少し寂しそうな表情をしていた。
「はい、お願い。あの人を生き返らせて!」
母からミサンガを渡されると、私は手に魔力を込めた。
『死者蘇生』
ミサンガは白い光に包まれて輝くと、次第にそれは人の形となると、父が現れた。
「嗚呼、あなた…」
「アシェラ…」
父と母は抱き合って、涙ぐんでいた。父ヤハウェは、私の方を向いた。
「アナト、強くなったな」
その言葉で、私は父に許されたんだと思い、涙が流れた。
「お前は思い違いをしていただけなのだ、アナト。忘れているみたいだから、思い出させてやろう。父と母がこの星に来た時、何も無かった。やがて、お前が生まれた。何も無いこの星で、お前の遊び相手を作ってやろうと、父が神々をお前の遊び相手として作ったのだ。だからアナト、お前は神々とは違うのだ。だがお前は、彼らを本当の友達の様に思い、信じ切ったのだ。子供に与えたオモチャを友達と呼び、一緒に遊んだ。そこまでなら普通の子供と変わらぬ。しかし、作られた彼らをお前は、いつの間にか自分と同じ存在だと思い込む様になってしまったのだ。だが別にそれは悪い事では無い。でもその為に、実の父をも殺害してしまうとは、愚かよな」
「ごめんなさい、お父さん。私が間違っていたわ」
「反省したなら…分かってくれたなら良いのだ」
私は父と母に歩み寄ると、優しく抱きしめられた。
「これからは、家族の時間を過ごそう」
「お母さん、ダンジョンを降りたらお母さんが居て、催眠攻撃を受けたわ。目が覚めるまでの間、春町の住人として過ごしたけど、あれは全て夢だったの?」
「そうよ。夢だから、貴女の願望にも左右されるの。見たい夢を見て、それがリアルに感じられるほど、この世界は夢であるとは認識されないの。そうなればなるほど、その夢の世界から抜け出る事は出来なくなるのよ」
何てとんでもないスキルなのだろうか?あの春町で生活した日々の全てが夢だったなんて、とても信じられない。あの世界に戻りたいと願っても、夢であるならそれは叶わぬと言うものだ。これでは「胡蝶の夢」ではないか。
「胡蝶の夢」とは、荘子が夢の中で、胡蝶として飛んでいて目が覚めたが、果たして自分は蝶になった夢を見ていたのか、それとも夢で見た蝶が本来の自分であり、今の自分は蝶が見ている夢なのか、と考えさせられた説話だ。これに対して荘子は、3つの説話で説いたのだが、ここでは割愛しよう。
私はまだ夢の中にいるのか、夢の中の私が見ている夢なのか分からなくなった。
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