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【第5部〜旧世界の魔神編〜】
第2章 恋の終わり
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社長との恋が終わった私は、放心状態でシャワーを浴びた。
昨晩は、私の身体をあんなに夢中で貪ったのに、覚えてもいなかった。
その上、Hしなかった事に安堵された。
「Hしなくて残念だった」では無くて「Hしなくて良かった」と言われたのは深く傷付いた。
だから、「思い出に私を抱いて下さい」と言ったら、「こんなおじさんを好きになってはいけない。もっと自分を大切にしなさい」と叱られた。
ただ、「娘が幼い頃、パパのお嫁さんになる」と言っていたのを思い出して、懐かしくも嬉しい気持ちになった、と言われて感謝された。
「こんなおじさんを好きになってくれて、ありがとう」
やっぱり社長は良い人だった。
若くて自分を慕う女の子を、弄ぶ事だって出来た。
飽きるまで私の事を抱いて、飽きたら捨てる事だって出来たはずだ。
それをしなかったのは、社長の優しさや人柄だ。
社長の娘さんよりも年下だから、娘さんと重ねて見えたのかも知れない。
社長にフラれたのはショックだったけど、前向きに進もうと思えた。
出張から戻ると、「大丈夫だった?社長、手が早いので有名よ?もう、しちゃったかしら?」と、先輩の事務長さんに言われた。
手が早いって?私には何もしなかったけど、やっぱり法律を恐れたんだ?と思った。
なら私が20歳だったなら、最後までしていたんだろうか?考えるほどに未練が断ち切れなくなる。
しかし、想像もしていなかった状況で、私の想いは断ち切られる事となった。
数日後、政府関係者の車が会社に停まっていたので、嫌な予感がした。
出勤するとすぐに社長室に呼ばれた。
「瑞稀くん。重要な話があって来た」
「そうでないと、度々来られても困ります」
「そうだね。すまない」
「まあまあ、座って話しましょう」
そう言って社長は、私に席をすすめた。
「何しに来られたんですか?」
「もうすっかり女性らしくなって…」
「そんな話をしに来られたんじゃないでしょう?」
「神崎さん、穏やかに話そう」
「私は女性として生きる決意をしたんです。それなのに今更、春町出身だなんて会社の皆んなにバレたら、ここにいられなくなります」
「申し訳無い。なるべく手短に話すよ」
政府関係者の話は寝耳に水だった。
研究機関によると、春町全体があの場所にあって、あの場所には無いと結論づけられた。
つまり、あの春町は異世界に存在していると言う。
理屈はまだ研究中だそうだ。
そして、ここからが重要で、春町の住人に異変が起こったと言うのだ。
程度によるのだが常人には無い、言わば超能力の様なものが発現したらしい。
それは、制御が必要なほど危険なものも存在すると言う。
私はまだ発現していないが、一度研究室で検査して、大丈夫であれば、また元の生活を送る事を保証すると言われた。
裁判所から発行された、強制執行が可能となる書状を見せられた。
「身支度を整える時間は差し上げますので、帰って準備をして下さい」
「分かりました。少しの間だけ、社長と2人にして頂けますか?」
「分かりました。5分、外で待機します」
政府関係者は、社長室から出て行った。
これでは私と社長が恋人同士であると言わんばかりだったが(実際は違って私の片思い)、もうなりふり構っていられない。
「社長、もう戻って来れないかも知れません。今までお世話になりました。ありがとうございました」
社長の胸で泣いた。社長も涙を流して私を抱きしめてくれていた。
「こほんっ、時間ですが、もう良いですかな?」
ドアを開けて、私達が泣いて抱き合っていたので、気を遣って中に入って来なかった。
社長室を出ると、皆んなに別れを告げて、政府関係者にアパートまで送られた。
出張で使ったスーツケースに、着替えなどを詰め込んで部屋を出た。
「アパートの荷物は、今はそのままにして置きますが、場合によっては、アパートを引き払って、春町のご実家に送らせて頂きます。その際の費用は政府が持ちますので、ご安心下さい」
もうすっかり見慣れた景色ともお別れだ、そう思うと感慨深いものが込み上げて来た。
長く感じたが、実際は半年くらいしか住んでいない町だった。
社長や会社の皆んなの居心地の良さが、この町から離れたくないと思わせるには十分な理由だった。
知らずに、涙が流れていた。
隣に座った政府関係者は、私を気遣って声を掛けて来なかった。
「瑞稀くん、パーキングに着きましたが、お手洗いとか大丈夫ですか?」
そう言われて、いつの間にかに寝ていた私は起こされた。
「すみません。いつの間にか寝ていた様で…。化粧室に行って来ます」
女性の政府関係者が後ろから付いて来た。
ボディーガード兼見張り、と言った所だろう。
トイレを済ました後、涙の跡が残る顔を洗い、軽く化粧直しをしてリップを塗った。
「温かいコーヒーでも飲みますか?」
女性の政府関係者から缶コーヒーを渡された。
それは微糖だった。
私は甘党だが、紅茶やコーヒーはブラックが良い。
まぁ良いか、と受け取って一口飲むと、冷えた身体が芯から温まる気がした。
「温かい飲み物って、心が落ち着きますね」
ポツリと独り言の様に言った。
再び乗車し、走り続けると、懐かしい春町に入った。
本当にここが異世界なのだろうか?俄かには信じられない。
山口県を出た時は14時過ぎだったが、既に1時を回っていた。
11時間も車に乗っていたから、背中や腰が痛い。
大きく背伸びをしながら、欠伸をした。
昨晩は、私の身体をあんなに夢中で貪ったのに、覚えてもいなかった。
その上、Hしなかった事に安堵された。
「Hしなくて残念だった」では無くて「Hしなくて良かった」と言われたのは深く傷付いた。
だから、「思い出に私を抱いて下さい」と言ったら、「こんなおじさんを好きになってはいけない。もっと自分を大切にしなさい」と叱られた。
ただ、「娘が幼い頃、パパのお嫁さんになる」と言っていたのを思い出して、懐かしくも嬉しい気持ちになった、と言われて感謝された。
「こんなおじさんを好きになってくれて、ありがとう」
やっぱり社長は良い人だった。
若くて自分を慕う女の子を、弄ぶ事だって出来た。
飽きるまで私の事を抱いて、飽きたら捨てる事だって出来たはずだ。
それをしなかったのは、社長の優しさや人柄だ。
社長の娘さんよりも年下だから、娘さんと重ねて見えたのかも知れない。
社長にフラれたのはショックだったけど、前向きに進もうと思えた。
出張から戻ると、「大丈夫だった?社長、手が早いので有名よ?もう、しちゃったかしら?」と、先輩の事務長さんに言われた。
手が早いって?私には何もしなかったけど、やっぱり法律を恐れたんだ?と思った。
なら私が20歳だったなら、最後までしていたんだろうか?考えるほどに未練が断ち切れなくなる。
しかし、想像もしていなかった状況で、私の想いは断ち切られる事となった。
数日後、政府関係者の車が会社に停まっていたので、嫌な予感がした。
出勤するとすぐに社長室に呼ばれた。
「瑞稀くん。重要な話があって来た」
「そうでないと、度々来られても困ります」
「そうだね。すまない」
「まあまあ、座って話しましょう」
そう言って社長は、私に席をすすめた。
「何しに来られたんですか?」
「もうすっかり女性らしくなって…」
「そんな話をしに来られたんじゃないでしょう?」
「神崎さん、穏やかに話そう」
「私は女性として生きる決意をしたんです。それなのに今更、春町出身だなんて会社の皆んなにバレたら、ここにいられなくなります」
「申し訳無い。なるべく手短に話すよ」
政府関係者の話は寝耳に水だった。
研究機関によると、春町全体があの場所にあって、あの場所には無いと結論づけられた。
つまり、あの春町は異世界に存在していると言う。
理屈はまだ研究中だそうだ。
そして、ここからが重要で、春町の住人に異変が起こったと言うのだ。
程度によるのだが常人には無い、言わば超能力の様なものが発現したらしい。
それは、制御が必要なほど危険なものも存在すると言う。
私はまだ発現していないが、一度研究室で検査して、大丈夫であれば、また元の生活を送る事を保証すると言われた。
裁判所から発行された、強制執行が可能となる書状を見せられた。
「身支度を整える時間は差し上げますので、帰って準備をして下さい」
「分かりました。少しの間だけ、社長と2人にして頂けますか?」
「分かりました。5分、外で待機します」
政府関係者は、社長室から出て行った。
これでは私と社長が恋人同士であると言わんばかりだったが(実際は違って私の片思い)、もうなりふり構っていられない。
「社長、もう戻って来れないかも知れません。今までお世話になりました。ありがとうございました」
社長の胸で泣いた。社長も涙を流して私を抱きしめてくれていた。
「こほんっ、時間ですが、もう良いですかな?」
ドアを開けて、私達が泣いて抱き合っていたので、気を遣って中に入って来なかった。
社長室を出ると、皆んなに別れを告げて、政府関係者にアパートまで送られた。
出張で使ったスーツケースに、着替えなどを詰め込んで部屋を出た。
「アパートの荷物は、今はそのままにして置きますが、場合によっては、アパートを引き払って、春町のご実家に送らせて頂きます。その際の費用は政府が持ちますので、ご安心下さい」
もうすっかり見慣れた景色ともお別れだ、そう思うと感慨深いものが込み上げて来た。
長く感じたが、実際は半年くらいしか住んでいない町だった。
社長や会社の皆んなの居心地の良さが、この町から離れたくないと思わせるには十分な理由だった。
知らずに、涙が流れていた。
隣に座った政府関係者は、私を気遣って声を掛けて来なかった。
「瑞稀くん、パーキングに着きましたが、お手洗いとか大丈夫ですか?」
そう言われて、いつの間にかに寝ていた私は起こされた。
「すみません。いつの間にか寝ていた様で…。化粧室に行って来ます」
女性の政府関係者が後ろから付いて来た。
ボディーガード兼見張り、と言った所だろう。
トイレを済ました後、涙の跡が残る顔を洗い、軽く化粧直しをしてリップを塗った。
「温かいコーヒーでも飲みますか?」
女性の政府関係者から缶コーヒーを渡された。
それは微糖だった。
私は甘党だが、紅茶やコーヒーはブラックが良い。
まぁ良いか、と受け取って一口飲むと、冷えた身体が芯から温まる気がした。
「温かい飲み物って、心が落ち着きますね」
ポツリと独り言の様に言った。
再び乗車し、走り続けると、懐かしい春町に入った。
本当にここが異世界なのだろうか?俄かには信じられない。
山口県を出た時は14時過ぎだったが、既に1時を回っていた。
11時間も車に乗っていたから、背中や腰が痛い。
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