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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第2章 秘めた恋心

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 社長の秘書として、精力的に仕事に励んだ。
一緒に働いていると、社長は全く無駄の無い計算し尽くされた行動で、山の様な仕事が面白い様に減って行く。
私のミスも優しく笑って許してくれる包容力に、居心地の良さを感じて、気が付けば30歳も年上の社長に恋をしていた。
私は今年19歳だから社長は48歳で、父よりも5歳も年上だ。

 恋をすると、益々仕事が楽しくなり、自分なりに勉強したりして成長すると、褒められた。
それがまた嬉しくて、仕事に励む。
単純な私は、会社に行くのが楽しくて仕方がなかった。

「神崎さん、今度一緒にお食事にでも行きませんか?」
会社の同僚に声を掛けられて、食事に誘われた。

「食事だけなら良いよ」

「神崎さんって、彼氏さんがいるんでしたよね?」

「うん、いるよ」
そう言う設定だったと思い出した。

「はぁ~彼氏さんが羨ましい。こんな可愛い彼女、俺も欲しいっす」

「私が可愛い…?」

「自覚無いんですか?めちゃくちゃ可愛いです。俺の方が、彼氏さんより大切にするんで、俺と付き合って下さい」

「あははは、付き合うのは、ちょっと…」

 そうか、私って可愛いんだ?女性になって2年が経つ。
自分が元男性で、女性が好きだったって言う感覚がもう分からない。
女性になったばかりの頃は混乱して、今みたいに男性の事を好きになるなんて信じられなかった。
そんな私も男性に恋をした。
いつの間にか社長の姿を目で追う自分がいた。私のお父さんよりも年上で、妻子持ちで、娘さんは私よりも年上だ。
愛に年齢は関係ないって言うけれど、なんで好きになっちゃったんだろう。
好きになってはいけない男性だ。
この恋心は誰にも知られてはいけない。
私の胸の中だけに秘めておこう。

 社長への恋心を包み隠す様に、男性社員達からの食事の誘いを断らずに受けた。
色んな男性と話をしながら、自分が男性だった時、こんなに友達はいなかったなと思うと、女性になって良かったとさえ思えた。
でも私を誘ってくる男性社員達は、全員が私とお付き合いしたいと、下心があるのは分かっている。
女性社員達の目から、私はどう映っているんだろう?男を手玉に取る悪女かな?ただ男友達が増えてるだけなんだけどな。
思わせなそぶりは、なるべくしない様に、食事に誘われた時は、彼氏大好きアピールをしているし。
彼氏と遠距離恋愛中の設定だから、彼氏から奪えちゃうかも?って思われてるのかも知れない。

「神崎さん、次の金曜日は出張になるから、そのつもりの支度をして来て下さい」
「出張ですか?畏まりました」

 私は秘書だから、社長の行く所には何処でも付いて行かなくてはいけない。
勿論、社長が好きな私は、密かに社長と旅行気分が味わえると内心浮かれていた。
仕事は、取引先との商談が主で、ほとんど社長が根回しをされているから、私の仕事はほとんど無かった。
申し訳無くて、少しでも社長の負担を軽くしようと雑用を率先してこなした。

「よく動き、気の利く秘書ですな。それに美人で羨ましい」

「そうでしょう?うちの自慢の秘書です」

社交辞令だと分かっていても、大好きな社長に褒められて、耳まで真っ赤になった。

 その晩遅くに、社長はベロベロに酔っ払って、宿泊している私のホテル部屋のドアを叩いた。
勿論、部屋は別々なのだが、どうして来たのだろう?何か明日の仕事の打ち合わせだろうか?と思ってドアを開いた。

 ドアを開けて社長を部屋に入れると、口付けをされて押し倒された。
身体をまさぐられ、下着をずり上げられると、胸を触られた。

 私は何が起こっているのか理解出来ずに呆然として、社長の頭を両手で抱きしめた。
口付けをされると、お酒臭かった。
酔っ払った勢いで抱かれるなんて嫌だ、と思いながらも身体は受け入れてしまっていた。
下着も脱がされて全裸になると、足を広げられた。社長に求められている、そう思うと興奮して直ぐにイってしまった。

「今度は、俺のを気持ち良くして」

そう言われると、私だけイって申し訳ないと思ったのと、ここまでしたら、大好きな社長に私を抱いて気持ち良くなってもらいたいと考えて、口でしてあげた。社長は立っていられなくなったのか、そのまま倒れ込んで来た。

「わぁ、この態勢だと出来ませんよ?」
社長の返事はなかった。

「あの、社長?社長~?」
私の上になったまま社長は眠っていた。

「もう、これからって時に…」
Hしても良いと思ったよと呟くと、眠っている社長のおでこにキスをした。

「うーん、もう朝か?えっ!?」

社長は隣で寝ている私に驚いて、上半身を起こした。
自分だけでなく私も全裸である事を確認すると、青ざめて私をゆすって起こした。

「か、神崎さん。神崎さん。こ、これは…?」

「社長、おはようございます」

「何で僕は裸なんだ?」

「ボクって…。昨晩の事、やっぱり覚えて無いんですね?ここ、私の部屋なのは分かりますか?」

「えっ?あぁ、そうだな…」

「酔っ払った社長は、私の部屋に入ってきて私を襲ったんです」

「そ、そんな…まさか…。すまん!覚えて無いとはいえ、まだ未成年の貴女にとんでもない事を。お金なら払う!どうか、どうかこの事は、内密に…!本当に申し訳なかった!」
社長は全裸のまま、土下座をして私に謝った。

「社長、お金なんて要りません!」
社長は今にも泣きそうな表情をしていた。

「私、社長の事が好きだったんです。社長に裸にされて、抱き合って嬉しかったんです。言われるがままに、口でだってしたんですよ。私がヘタだったのか、全然大きくならなかったんです。だから、挿入られてはいません」

「へっ?挿入れて無い…?」

「はい」

「良かったぁ…」

「良かった?」

「申し訳無い!まだ未成年の貴女と、そう言う行為をしていなくて良かった、そう言う意味の良かったです。未成年の貴女との行為は、犯罪だからです。未成年より5歳以上離れると恋人同士でも、法律上犯罪となるんです。貴女を深く傷付けた事は、後日必ず改めて謝罪させて頂きます」

「私、社長の事が好きだって言ったじゃないですか?」

「すまない。こんな事をして言うのは変だが、妻や子供を裏切る事は出来ない」

「奥さんやお子さんと別れて、私と一緒になって欲しいなんて言いましたか?」

「申し訳ない。この通りだ」
土下座して平伏し続ける社長の姿を見ると、これ以上何も言えなかった。

「分かりました。1つだけお願いしても良いですか?」

「何でも聞く。欲しいものがあるなら、何でも買わせて頂く」

「じゃあ、私に口付けして下さい。それで終わりにします」

「ほ、本当に良いのか?(そんな事で)」
社長の心の声が聞こえる様で悲しかった。

 そっと身体を抱き寄せられて、口付けを交わした。
私は涙を流して、強く抱きしめた。
こうして私の初めての恋は終わった。

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