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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第1章 ダンジョン②

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 階段を降りると、一面草原だった。空もある。ダンジョンどうなっているんだ?と思いつつ、幻影か?と思い空に向かって『光熱玉ライト』を唱えてた。一直線に飛んで行き、消えた。
「幻じゃないのか…」
 独り言の様に、ぽつりと言った。よく考えれば、私は状態異常無効だから、幻影にはかからないはずだ。ダンジョンとは、もしかすると異空間に繋がっているのかも知れない。
自動書込地図オートマッピング
状況を把握する為に地図を出すと、周囲は赤いランプに取り囲まれていた。
「巧、私に掴まって!」
巧が私の肩と腰に手を回すと、上空に浮いた。
飛翔レイヴン
上空に浮くと同時に、数匹の狼に襲われたが私達に届かず、その鋭い鉤爪は虚しく空を切った。
「フェンリルとは違うな…」
見た事の無い、狼の魔獣だった。20頭はいる。
「危なかった。きっと、あの狼に襲われた者もいるだろうね?」
「うん、襲われた皆んなを、連れて帰ってあげたいけど、難しいかもね」
空も安全とは言えないけど、地上よりはマシだろうと考えて、そのまま飛んだ。ちなみにSランク以上の私は空を飛べるから、先程の『飛翔レイヴン』は、巧の為に唱えたのは言うまでも無い。
「ねぇ、ループする前も空飛ぶ練習した事があるのよ。覚えてないだろうけど?」
「前のループが本当なら、今の俺とは違う俺だからね。覚えてる?って聞くのは違うんじゃないのか?」
「ふふふ、ごめんね。そうだね」
 確かに今の私は、前ループの私とは別人だ。だってこれは、「最初から女の子だった私」の物語になっているからだ。前ループの私は、唯一神によって消滅し、もう一度人生をやり直した。女の子として生まれて来た私は、再び唯一神と戦い消滅しかけて、右目から再生させた身体だ。今の私が、男だった時は全くない。
 空も安全ではなく、飛翔する魔獣が襲って来た。巨大な鷲に似ている。グリフォンだ。鋭いクチバシと鉤爪で、私達を捕食しようと襲って来た。
「巧!」
私と違って巧は、まだ飛翔が上手くない。完全に狙いを巧に絞って攻撃して来た。
「巧を傷付けたら、絶対に許さないから」
『隠しスキル』でグリフォンを見ると、SSランクだったので、巧が勝てる相手ではない。
光之矢雨ライトニングアロー
驚く事に、光の速さで攻撃する無数の矢を躱された。
「へぇ、あれを躱すんだ?」
 逸れた矢は、軌道を修復させてグリフォンを射抜いた。銃神スキルのお陰で百発百中だ。安心して油断した所をグリフォンの意地だったのか、羽ばたきを受けた。強烈な羽ばたきが巻き起こした竜巻に吹き飛ばされたが、巧の手を何とか掴む事が出来た。こんな所で巧を1人にしてしまったら、すぐに殺されてしまうだろう。離れ離れになってしまったら、私が半狂乱となって、巧を探している姿を容易に想像出来る。
 グリフォンの羽ばたきで、飛ばされた私達は、森の奥に落下した。
回復ヒーリング
木の枝で出来た、擦り傷や切り傷を治療した。
「ありがとう」
「ここも何か出て来そうな場所に落とされちゃったね」
「ダンジョンの中に草原や森、それに空とかって、どうなっているんだ?」
「さぁ?どうなっているのかしらね?」
ダンジョンをクリア出来たら、その謎も解けるのだろうか?1階層のボスは勿論、ただのスライムなどではなかった。ゴールデンバウムと名前が付いていた。しかもSランクのスライムだった。1階のボスでいきなりSランクだ。日本人のSランクは、麻生佳澄さんしかいないはずだ。そうそう、麻生さんと言えば、前ループで私が男性だった時の彼女であり、妻となった女性だ。巧が入社する1年前に入社して来て、私と並んで華友商事の「華の双璧」と影で呼ばれている。麻生さんは、今ループでは既に彼氏がいる。本当だったら、私と結婚していたはずなのに、と少し複雑な気持ちになったけど、今の私は女性だから仕方がない。
 森を進んで行くと、上半身が裸の女性で、下半身が蜘蛛の魔獣が少なくとも50匹はいる所に遭遇した。
「ア、アラクネだ…」
「アルケニー?」
「うん。ごめん。私、蜘蛛が1番苦手で…。もう戦意喪失してる。一刻も早くこの場から逃げたい」
「どうしたら良い?」
 私は有無を言わさずに目を瞑ると、巧の首にしがみ付いて、球体の結界を張り、そのまま回転しながら逃げた。アラクネ達が、結界を取り囲んだり、攻撃しながら追いかけて来るのが分かる。目を瞑ったまま、悲鳴を上げながら、何処とも知らず、めちゃくちゃに前に転がり進んだ。1時間以上はそのまま走り抜けた。何かの壁にぶち当たって、転がりが止まった。
「酔った…吐きそう」
巧は、気分悪そうに吐いていた。私はまだ目が開けられず、「もういない?」って聞いた。「いないよ」と言われて、ようやく目を開けた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
気分爽快回復リフレッシュ
体調を回復した。
「空まで続く石垣なんて…」
「先に進めそうにないから、壁伝いに進んで見ようか?」
自動書込地図オートマッピング』には、敵を示す赤い光は映っていなかった。
「飛んで行こう」
巧と手を繋いで飛翔した。やがて、入口が見えて来た。
「やっぱり思った通りだね?」
「この先にボスが居そうだな?」
警戒しながら入口に入ると、扉の間に来た。
「やっぱりかぁ」
半ば想像通りの展開となったが、中にいるボスがどんなのか分からない。ボスによっては苦戦するかも知れない。
気を引き締めて扉を開けた。
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