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【第4部〜西洋の神々編〜】

第9章 西洋の神々12

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 男の後を追って中庭に出たが、既に男の姿は無かった。仕方ないので、暫くその辺りをウロウロしながら建物を見ていた。
「虞帝様に拝謁」
すれ違う人達が私に対して、恭しく拝礼する。まだ皇后では無いが、既に皇后として扱われている。
「虞帝様、何か用事でもございましたら、お申し付け下さい」
私は、側室候補の屋敷の近くに来ていた事に気付いて、慌てて引き返した。あらぬ疑いをかけられたくは無い。後日、私がこの女性を側室に推挙しただとか、この女性が側室になると邪魔になるから直接手を下そうとしただとか、この女性が側室になってもならなくても、変な噂が立つのは目に見えている。後宮は魔窟だ。1つの行動も慎重に行わないと、足元を掬われる。
 逃げ去る様にしてその場を後にすると、あのフードの男に会った。
「私とお話したい事とは、何でしょう?」
「こちらでは何ですので、あちらに」
案内された部屋は、資料室の様だった。男の後をついて行くと、隠し扉があり、何やら操作していると開いた。簡単に見つけられない様にしているみたいだ。
「ふふふ、その警戒心の無さには感服いたしますよ」
背後から声がしたので振り返った。
(女?いや、男か…?)
綺麗に化粧をした男が、背後の壁に寄り掛かって立っていた。
「私をどうするつもりなの?」
「ははは、何の警戒もせずについて来たのに、ここに来て怯えるのですか?何もしませんよ。一応、同族にはね?」
フードを被った男は振り返り、私の顎をクイッと指で上げて見つめた。
「透き通るほど美しい」
「貴方もね」
フードの男は、フードを取って話て来た。
「ここにお連れしたのは、何も取って食おうとした訳ではありません。先ずは貴女の『隠しスキル』で、私を見て頂ければ話が早くなります」
私は言われるがままに『隠しスキル』を使って、男を見た。
「えっ!?」
声が出ないほど驚いた。
ルシファーだ。
 魔界に行った時、知らない悪魔ばかりだった。不思議に思っていたのだ。こんな所にいたとは。振り返って、壁に寄り掛かっている男を見ると、ベルゼブブだった。
「蝿の王…」
ベルゼブブはクスリと笑った。
「貴女は、魔界の現役の女帝だ。人間だが、同族として扱いましょう。貴女は、何か目的があってここに来られたのでは有りませんか?」
私は少し考えたが、正直に話した方が良さそうだと思い、なるべく簡潔に話した。
「なるほど、貴女も唯一神への復讐ですか?神の子なのに?」
「その様らしいですが、私には自覚が有りませんし、された仕打ちは許せるものではありません」
「なるほど分かりました。しかし、今の貴女は弱い。例えSSSでもね。ここから先は頂上決戦だ。私達は封印された仲間を救いに来たのです」
「封印?」
「かつてソロモン王によって封印されし、我が同胞達を救いにね。魔王達はセブンスターであり、大公ら大貴族級はファイブスターです。西洋天界を抑えて、唯一神の力を削いで討ちます」
「しかし、解せないわねぇ?神の子なんでしょう?SSSなんて弱いはずないのにねぇ?」
「彼女もまた唯一神によって封印されている。見た所、あと三つ封印を解けば、本来の力を取り戻すはずだ。一つ外せばファイブスターに、二つ外せばセブンスターになるだろう。大きな戦力になる。貴女の封印を解く手伝いをさせて欲しい。そして、貴女には後宮に戻ってソロモンの居所を探って頂きたいのです」
「分かりました」
私はルシファー達と別れて、自分の宮殿に戻った。
「大丈夫なの?」
「一応、闇の女帝だ。魔族は自分の側で仲間だと思っている。裏切ったりしないだろう」
「その事じゃないわよ。彼女の封印を解く事よ。どうせ始末する相手を、わざわざ強くしてどうするのよ?」
「唯一神は強い。だが、唯一神の娘である彼女も唯一神と同じテンダラース(S10クラス)だ。しかも娘が相手では実力は発揮出来ないだろう。そこに我らが加われば必ず倒せる。その隙をついて、あの女も始末すれば良い」
「あはっ。貴方のそう言う所、好きよ」
地下の隠し部屋に2人の笑い声が木霊した。
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