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【第4部〜西洋の神々編〜】
第9章 西洋の神々11
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私は西洋天帝・アダムの皇后となる事が正式に発表された。前ループでは先に皇太后になってからの皇后だったっけ。それにお后候補達から虐められたっけ。今ループはそれがないな。良かった、良かった。
既に皇后が内定している私は、西洋天界では絶大な権力を有していた。後宮、日本で言う所の大奥の世界では、私がトップだ。正室である皇后が決まったので、他のお后候補達は、側室狙いで争っている。側室のトップは「貴妃」で、次いで「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」と続く。これら側室は正一品で四夫人と呼ばれた。この枠に入れるのは、後ろ盾が強大な権力を持つ貴族だけだ。中には有名な唐の楊貴妃の様に、身分の低い舞姫だが、美しさだけでなく、舞や琴、書画の才に長け、頭の回転も早くて玄宗皇帝を虜にして、その座を得た者もいる。ちなみに美しさだけなら、同時代では玄宗の孫の李俶(後に李豫と改名)に嫁いだ幻の皇后・沈珍珠の方が、楊貴妃よりも遥かに美しかった。幻の皇后と呼ばれる理由は、李俶がまだ皇太子(公平王)の身分である時に、安史の乱を平定したが、その戦の最中に消息不明となってしまったからだ。王妃であった為、当然ながら李俶が皇帝になれば皇后になるはずであった。しかし行方不明の為に、李俶は愛する妻を探し続け、沈珍珠しか皇后にはしないと明言し、在位中の皇后位は空位にされて皇后がいなかった。やがて李俶が亡くなり、徳宗が皇帝になると、母の沈珍珠に皇太后位を追賜した。生きていれば皇太后だからだ。しかし、沈珍珠は皇后位を得ておらず、皇后位を追賜されるのは徳宗が亡くなり、沈珍珠の孫にあたる順宗が即位すると、祖母に睿真皇后位を追賜した。
「虞帝(ユー・ディ)様、お召し物をお持ち致しました」
私は生活魔法の『衣装替(チェンジ)』で好きな服が着られるので、必要ないのだが、拒むと彼女達の仕事がなくなり、仕事を奪う事になる。なので、侍女達に身の回りの世話をお願いしていた。当然、服を着替えるのも彼女達が付きっきりで行う。
ちなみに虞帝(ユー・ディ)と呼ばれているのは、私はまだ皇后に即位していないし、魔界の女帝である為に、官位に名前を付けて呼ばれているのだ。初めは侍女達は私を恐れて震えていた。なにせ、魔界の女帝だから。どんなに怖い女性だろう?何で闇の皇帝なんかを皇后にするのだろう?と思われていた。私が全く警戒するには当たらないと思われるまでには、時間がかからなかった。だって自分で言うのも何だけど、私には威厳なんて無いし、怖くも何とも無い。彼女達を冷たくあしらったり、虐めたり、無茶な注文をしたりもしない。結構良い上司だと思う。
皇后を含めた妃嬪達は、自分の意思で後宮からは出る事が許されない。皇帝のお供として祭りの日に民の前に姿を現したり、狩りのお供として城から出る事が出来たりする事もあるが、基本的にはそんな事でも無い限り出る事が許されない。全く自由が許されない世界で生きる事になる代わりに、何不自由しない生活を送る。庶民が一生かかっても買う事が出来ないほど高級な菓子も、好きなだけ食べる事が出来た。食事は朝餉(朝食)と夕餉(夕食)だけなので、お昼にお腹が空くと、お菓子を食べて過ごしていた。
侍女も自分の主に付きっきりで自由など無いが、主の身分によって身嗜みを整える必要がある為、高級な衣装に袖を通して綺麗に着飾る事が出来、主の残りのお菓子も食べる事が許された。主の身分が高ければ高いほど侍女達の権力も増していき、主に口利きする見返りとして、賄賂も懐に入る為に生活は裕福だった。
侍女達は奴婢と呼ばれ、奴婢は日本では奴隷と訳されるが、想像している奴隷とはかけ離れている。どちらかと言うと、より自由が無く、家政婦の仕事までする付き人かマネージャーと言った所だ。
侍女達に着替えさせられると、朝餉の準備をしてアダムが来るのを待っていた。天帝であるアダムと一緒に朝食を摂るので、来るまでじっと待っている。今はまだ妻が私しかいないから良いが、側室を迎えると、側室と朝食を摂って私の所に来ないかも知れない。そうなると、寂しく侍女達と共に朝食を食べる事になるのだ。勿論、来ない場合は報告が入る。後宮では、自分の生んだ子が次の後継になれば、自分は安泰となる為、抱きに来てもらう為に、知略の限りを尽くす。他の女を抱きに行かせない為に、あの手この手を尽くすのだ。その為、相手を陥れたり、先に妊娠されれば毒を仕込んで暗殺するか、あわよくば流産を狙う。後宮は陰謀が渦巻く、ドス黒い女達の戦場だ。少しでも隙を見せれば、命取りとなるのだ。
「虞帝様、申し訳ございません。アダム様は多忙の為、いらっしゃいません」
「ありがとう」と一言伝えると、私は侍女達と一緒に朝食を食べた。規則では、主が食べ終わるのを待ってから、ようやく食べる事が許されるみたいだが、「そんなの良いから一緒に食べよう」と言って食べる様になった。
侍女達とも少し仲良くなり、身の上話を聞くと、2人とも戦争孤児で、親とは早くに死に別れ、拾われた育ての親にまだ幼いうちに、売られてここに来たと聞いた。
「ご両親に会いたい?」
「会いたいですが、もう顔も覚えてない小さな頃の事ですので」と悲しそうな顔をされた。戦争なんて無くなれば良いのに。悲劇しか生まれない。
食事が終わって侍女が片付けている間、窓を開けて外を見ると、あのフードのイケメンがいた。2人っきりで話がしたいと言っていたな?まさか愛の告白では無いだろう?私はもう人妻になるのだし。とか思って彼を眺めていると、目が合って手を振られた。私も手を振り返すと、今度は手招きをされた。
「えっ?どうしよう。行くべきか、行かざるべきか」
後宮で男と2人で会っていたなんて知られたら、タダでは済まされない。皇后の内定は取り消されるかも知れないが、そんな事は別に良い。最悪なのは、関係の無い侍女達がとばっちりを受けて、世話を怠ったとして処刑される可能性だ。自分の過ちで侍女を死なせたりしたら目覚めが悪い。身分の高い者を反省させる為に、よく使われた手でもあるから、十分に有り得る。私は手を横に振って、「行けない!」とアピールした。フードのイケメンは、手を振るのを止めて去って行った。重要な話なんだろうとは思う。もしかすると、東洋天界の遣いかも知れない。私をここから連れ出す算段をしているのかも知れない。でも私は前ループとほぼ同じ所まで来たのだ。ここで東洋天界に戻るとか、後戻りを選択したく無い。だけど、話だけは聞いてみようか?イケメンだし。と思い悩んでいた。
既に皇后が内定している私は、西洋天界では絶大な権力を有していた。後宮、日本で言う所の大奥の世界では、私がトップだ。正室である皇后が決まったので、他のお后候補達は、側室狙いで争っている。側室のトップは「貴妃」で、次いで「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」と続く。これら側室は正一品で四夫人と呼ばれた。この枠に入れるのは、後ろ盾が強大な権力を持つ貴族だけだ。中には有名な唐の楊貴妃の様に、身分の低い舞姫だが、美しさだけでなく、舞や琴、書画の才に長け、頭の回転も早くて玄宗皇帝を虜にして、その座を得た者もいる。ちなみに美しさだけなら、同時代では玄宗の孫の李俶(後に李豫と改名)に嫁いだ幻の皇后・沈珍珠の方が、楊貴妃よりも遥かに美しかった。幻の皇后と呼ばれる理由は、李俶がまだ皇太子(公平王)の身分である時に、安史の乱を平定したが、その戦の最中に消息不明となってしまったからだ。王妃であった為、当然ながら李俶が皇帝になれば皇后になるはずであった。しかし行方不明の為に、李俶は愛する妻を探し続け、沈珍珠しか皇后にはしないと明言し、在位中の皇后位は空位にされて皇后がいなかった。やがて李俶が亡くなり、徳宗が皇帝になると、母の沈珍珠に皇太后位を追賜した。生きていれば皇太后だからだ。しかし、沈珍珠は皇后位を得ておらず、皇后位を追賜されるのは徳宗が亡くなり、沈珍珠の孫にあたる順宗が即位すると、祖母に睿真皇后位を追賜した。
「虞帝(ユー・ディ)様、お召し物をお持ち致しました」
私は生活魔法の『衣装替(チェンジ)』で好きな服が着られるので、必要ないのだが、拒むと彼女達の仕事がなくなり、仕事を奪う事になる。なので、侍女達に身の回りの世話をお願いしていた。当然、服を着替えるのも彼女達が付きっきりで行う。
ちなみに虞帝(ユー・ディ)と呼ばれているのは、私はまだ皇后に即位していないし、魔界の女帝である為に、官位に名前を付けて呼ばれているのだ。初めは侍女達は私を恐れて震えていた。なにせ、魔界の女帝だから。どんなに怖い女性だろう?何で闇の皇帝なんかを皇后にするのだろう?と思われていた。私が全く警戒するには当たらないと思われるまでには、時間がかからなかった。だって自分で言うのも何だけど、私には威厳なんて無いし、怖くも何とも無い。彼女達を冷たくあしらったり、虐めたり、無茶な注文をしたりもしない。結構良い上司だと思う。
皇后を含めた妃嬪達は、自分の意思で後宮からは出る事が許されない。皇帝のお供として祭りの日に民の前に姿を現したり、狩りのお供として城から出る事が出来たりする事もあるが、基本的にはそんな事でも無い限り出る事が許されない。全く自由が許されない世界で生きる事になる代わりに、何不自由しない生活を送る。庶民が一生かかっても買う事が出来ないほど高級な菓子も、好きなだけ食べる事が出来た。食事は朝餉(朝食)と夕餉(夕食)だけなので、お昼にお腹が空くと、お菓子を食べて過ごしていた。
侍女も自分の主に付きっきりで自由など無いが、主の身分によって身嗜みを整える必要がある為、高級な衣装に袖を通して綺麗に着飾る事が出来、主の残りのお菓子も食べる事が許された。主の身分が高ければ高いほど侍女達の権力も増していき、主に口利きする見返りとして、賄賂も懐に入る為に生活は裕福だった。
侍女達は奴婢と呼ばれ、奴婢は日本では奴隷と訳されるが、想像している奴隷とはかけ離れている。どちらかと言うと、より自由が無く、家政婦の仕事までする付き人かマネージャーと言った所だ。
侍女達に着替えさせられると、朝餉の準備をしてアダムが来るのを待っていた。天帝であるアダムと一緒に朝食を摂るので、来るまでじっと待っている。今はまだ妻が私しかいないから良いが、側室を迎えると、側室と朝食を摂って私の所に来ないかも知れない。そうなると、寂しく侍女達と共に朝食を食べる事になるのだ。勿論、来ない場合は報告が入る。後宮では、自分の生んだ子が次の後継になれば、自分は安泰となる為、抱きに来てもらう為に、知略の限りを尽くす。他の女を抱きに行かせない為に、あの手この手を尽くすのだ。その為、相手を陥れたり、先に妊娠されれば毒を仕込んで暗殺するか、あわよくば流産を狙う。後宮は陰謀が渦巻く、ドス黒い女達の戦場だ。少しでも隙を見せれば、命取りとなるのだ。
「虞帝様、申し訳ございません。アダム様は多忙の為、いらっしゃいません」
「ありがとう」と一言伝えると、私は侍女達と一緒に朝食を食べた。規則では、主が食べ終わるのを待ってから、ようやく食べる事が許されるみたいだが、「そんなの良いから一緒に食べよう」と言って食べる様になった。
侍女達とも少し仲良くなり、身の上話を聞くと、2人とも戦争孤児で、親とは早くに死に別れ、拾われた育ての親にまだ幼いうちに、売られてここに来たと聞いた。
「ご両親に会いたい?」
「会いたいですが、もう顔も覚えてない小さな頃の事ですので」と悲しそうな顔をされた。戦争なんて無くなれば良いのに。悲劇しか生まれない。
食事が終わって侍女が片付けている間、窓を開けて外を見ると、あのフードのイケメンがいた。2人っきりで話がしたいと言っていたな?まさか愛の告白では無いだろう?私はもう人妻になるのだし。とか思って彼を眺めていると、目が合って手を振られた。私も手を振り返すと、今度は手招きをされた。
「えっ?どうしよう。行くべきか、行かざるべきか」
後宮で男と2人で会っていたなんて知られたら、タダでは済まされない。皇后の内定は取り消されるかも知れないが、そんな事は別に良い。最悪なのは、関係の無い侍女達がとばっちりを受けて、世話を怠ったとして処刑される可能性だ。自分の過ちで侍女を死なせたりしたら目覚めが悪い。身分の高い者を反省させる為に、よく使われた手でもあるから、十分に有り得る。私は手を横に振って、「行けない!」とアピールした。フードのイケメンは、手を振るのを止めて去って行った。重要な話なんだろうとは思う。もしかすると、東洋天界の遣いかも知れない。私をここから連れ出す算段をしているのかも知れない。でも私は前ループとほぼ同じ所まで来たのだ。ここで東洋天界に戻るとか、後戻りを選択したく無い。だけど、話だけは聞いてみようか?イケメンだし。と思い悩んでいた。
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