上 下
64 / 360
【第4部〜西洋の神々編〜】

第8章 須弥山の攻防⑩

しおりを挟む
「良かったね。皆んなの罪は取り消されたみたいだよ?」
「罪…?罪とは…何でしょう?我らは皆、身に覚えの無い罪を着せられて、魔界に堕とされた者。我らの…これまでは何だったのでしょうか…」
皆、肩を震わせて泣いていた。
「冤罪だよ。皆、この冤罪を晴らす為に、今日ここまで苦労して来たのよね?」
「そうですね…ようやく無念を晴らす事が出来ました。陛下の、陛下のお陰です…」
皆んな喜んでくれて良かった。でも少し落ち着いたら、今度は復讐しようと言い出すかも知れない。西洋の神々が攻めて来るんだ。一つに纏まらなければ勝てる相手では無い。実際、前ループでは東洋天界の神々は、アダムに皆殺しにされて、私も連れ去られたのだ。アダムに犯された私は、何故かアダムの事を好きになってしまい、結婚した。その結婚報告で、唯一神によって消滅された私は、もう一度人生をやり直させられた。だけど、ようやくここまで来た。今度は、今度こそは倒してみせる。
「陛下、西洋の神々について伺いたい事が…」
 ルシエラは、先を見据えて私に尋ねて来た。皆んな感涙に咽せてるのに、クールだね。まぁ、そこが良い所だわ。クール美人が。と心の中で叫んだ。
 夜は、西王母の晩餐会に招待された。目玉として、噂に名高い「蟠桃」が出された。「蟠桃」とは、西王母の蟠桃園には3600本の桃の木があり、手前の1200本は3千年に一度熟し、食べた者は仙人になれ、中央の1200本は6千年に一度熟し、食べた者は不老長寿となり、奥の1200本は9千年に一度熟し、食べた者は天地がある限り生き永らえると言われる仙桃である。天地がある限りとは、「天界や地上の世界が続く限り」と言う意味で、事実上の不老不死と言う事である。
 皆は酒を飲んで喜び合い、仙桃に齧り付いた。男達は、桃の皮ごと丸齧りにしていたので驚いた。私は勿論、皮を剥いて8当分にされた物を口に運んだ。甘い。桃の香りが鼻を抜け、口一杯に濃厚な桃の甘さが広がる。なんて美味しい桃なんだろう。こんな桃は食べた事が無い。西王母に、桃を褒めまくると嬉しそうにして、桃の管理をどれだけ気にかけて行っているか、延々と聞かされた。しまったな。ご機嫌になってくれたのは良いが、あんまり細かく掘り下げられて話されてもなぁ、と困った表情でルシエラを見たが、肩をすくめられて微笑まれた。大人しく聞くしかないみたいだ。
 お酒を交えての宴会は良い。昨日まで敵だった者達が、蟠りを捨てて仲良くなるキッカケになる。
 私はほろ酔い気分でフラフラと外を歩くと、釈迦がやって来て私を抱きしめながら空いている部屋に連れ込んだ。
「一目見た時から貴女とこうしたいと願っていたのです」
そう言うと、私をベッドに押し倒した。煩悩を捨てたはずの釈迦まで魅了してしまったのか私は?等と思っていると、抱き起こされた。
「すみません。もう大丈夫でしょう?」
「?」
私が何が起こったの?みたいな顔をして呆けていると、釈迦が理由を説明してくれた。帝釈天(インドラ)が私を狙って襲おうと、背後から付け狙っていたとの事で、不本意だったが、私を平和的に守る為に、自分のお手付きにしてしまう事にした。釈迦の女であれば、帝釈天(インドラ)でも手を出しにくくなる。勿論、実際に私に手を出すつもりは無く、そう思わせる事が目的で、扉の向こうで聴き耳を立てていた帝釈天(インドラ)が立ち去るのを待っていたのである。
「助けて頂いて、ありがとうございます」
「お礼は要りませんよ。私達は友達なのでしょう?」
「そうだね」
私は釈迦の腕に抱きついた。
(ふふふ、本当にされちゃっても、釈迦ならちょっと良いと思ったけどね…)
 ダメダメと、頭を振って邪な思いを吹き飛ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

処理中です...