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【第2部〜魔界編〜】

第3章 新たな魔王

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 あれから魔王となった私は、ロードの領地を隅々まで見回った。王が代わり、配下となる者達への顔見せの意味も込められていた。それよりも何も、人間である私を王であると認められるかどうか、それが1番の心配事だった。事実、ロードから譲位された時、側近以外の全ての重臣に反対され、「力を示せ!」とか言われて剣を抜かれた。ここ魔界では力こそ全てらしい。まぁ、魔族だもんねぇ、想定内だわ。有無を言わさず斬りかかられたので、仕方なく応戦した。防御魔法SSSの呪文の中にある、『物理攻撃無効』と『魔法攻撃無効』を唱えた。これで『貫通』のスキル持ち以外の攻撃は効かない。私はRPGゲームのボス戦では、まず防御を固めてから相手をじっくりと料理するスタイルだ。襲いかかって来た全員の攻撃が効かない。
「?」
彼らはやがて疲れ果て、その場に座り込んだ。
「不思議ですか?『貫通』のスキルはレアで誰もが持っている訳ではありません。私を含めて側近も数人が使える程度です」
座り込んでいる配下を見下ろして、
「理解したか?これがお前達とこの方の違いだ。そもそも立っているスタート地点が違うのだ。敵うはずもない」
ロードは跪いた。
「これより我らは貴女に永遠の忠誠を誓います」
と、頭を下げた。
(私が魔王かぁ…)
全く実感が湧かない。領民達も見た目が人でないだけで、暮らしぶりも、感情とかも人間のそれで、どこも変わらない。彼らを見た目が違うだけで「悪魔」と呼び、思い込みと偏見で、残酷で残虐な悪だと決めつけていた自分を恥ずかしく思った。
「ロード、領地からだいぶ離れた様に見えるけど、今向かっているのは?」
「はい、隣国の魔王フレイアとは盟友です。貴女の傘下に就かせるべく向かっております」
「えぇ?承知してる…訳じゃないよね?」
「はい、最悪の場合、戦闘も辞さない覚悟です」
「ちょ、ちょっと待って!私にその覚悟が出来てないんだけど」
もしかして、戦闘回避不能な状況に私を追い込んで、戦わせるつもりだったの?無策、無謀、その自信の根拠は?まさか私に期待してるって事かしら?彼ら(魔族)とはまだまともに戦ってはいない。だから魔族がどれほど強いのか分からない。『貫通』スキル持ちなら、私の防御魔法や結界など紙の様なもので、防御が効かなければ人間の私なんて、ひとたまりも無い。そして私の攻撃が全く効かなかった場合、私が死なないばかりに、一方的にダメージを与えられ続けて、苦しむ事になるかも知れない。不死とは言え、痛みはあるので攻撃を受けるのは怖いのだ。世界がRPGゲームの様になってしまったけど、ゲームの様には行かない。これがゲームだったなら、死なないので防御を捨て、攻撃のみに全力を注いで敵を倒すプレイを選択する。
 しかも魔界を統一するとか言ってるから、隣国から併呑して足場を固めて行くんだろう。確かに定石通りだけど、強大になるに連れて周辺国に脅威を与えると、新たな結束を生む事になる。戦国時代、秦国の脅威に対抗して六国が合従連衡した様に。本気で魔界を統一するつもりなら、個人の武勇だけではダメだ。そんな事を考えている間に魔王フレイアの居城に着いた。
「魔王ロード様自らのお越しとは…どうぞ此方へ」
盟友国の王が自ら足を運んでいるのだ。
丁重に迎えるしかないだろう。しかし相手も面食らって慌ててるだろうな。盟友国なので、例えるなら突然、米国の大統領がアポ無しで、日本に来る様なものだからね。謁見の部屋に通されるまで、やはり幾通りもの門や部屋を介かいした。最終的に通されたのは、私とロードと2人の側近だけだった。どんな魔王なんだろう?ロードと同じ女性だと聞いたけども。なんだか緊張するな。
 中に入ると、とてつもなく広い部屋だった。部屋と言って良いのか?これ。多分、東京ドームより広いな。よく見ると、玉座らしき椅子に着物を着た女性が座っていた。日本人の私には、着物を着ているだけでフレイアと言う魔王の好感度が上がった。近づくに連れて徐々にフレイアが見えて来た。赤やピンクなどの少し派手目な着物だが、ブロンドヘアーで碧の瞳。まるで外人さんが着物を着ているみたいで、綺麗で可愛い。ロードとも甲乙付け難い美女だ。
 キセルの様な者で煙草を吹かしている様に見えたが、煙草では無い。煙の様にも見えるが、煙では無い。自動音声ガイドが〝あれは、高濃度で密度の高い魔力だ〟と、教えてくれた。恐らく魔力の磁場で簡易結界の様な物を張っているのだろう。結界内では、ほぼ無敵状態に違いない。守ってから戦闘に臨む私のスタイルと似ていて、戦いになったらやりにくい相手だ。それだけ此方を警戒していると言う事だろう。当然だ。何せ魔王級が2人もいるのだ。まともに戦う馬鹿はいないだろう。
「久しぶりね、ロード…。突然の来臨は何かしらねぇ?」
「フレイア、素直に言おう。この方の傘下に入って欲しい」
「あははは、正気で言っているのかしらねぇ?噂によれば、戦いもせず人間の軍門に降ったらしいわねぇ?腰抜けと噂されているわよねぇ」
「……」
「とは言え、私は貴女をよく知っているのよねぇ。だからその人間にも興味があるわねぇ。…なるほど、スキルだけは強力ねぇ。でもそんなステイタスで我々魔族の頂点に立とうなど、烏滸がましいわねぇ」
彼女を中心に空気が変わった。重苦しい冷気の様な殺気が、私の全身を舐め回す。凄まじいプレッシャーだ。冷や汗が吹き出して、思わず身構える。
「配下の手前、戦わずに軍門に降る訳にはいかないのよねぇ」
相変わらずキセルを吹かし続けている。そして深呼吸した様に見えた。
ゴゴゴゴゴ…。
城全体が揺れている。フレイアは全身に力を込めて戦闘態勢に入った。
 軽く手を振り翳かざすと、巨大な火炎球が5つも飛んで来た。飛んで回避した所へ、真空の刃が襲った。たった1発で5重に張った防御結界が全て割れ、直接ダメージを受けた。地面に落とされ立ちあがろうとしたが、立てず上半身を起こしたら下半身と離れていた。真っ二つ?と思った瞬間に身体がくっついて治った。素早く飛び上がって立ち上がった所へ、水龍の形を成なした呪文が襲って来たが、回避出来た。斬られた痕は無く、アドレナリンのおかげなのか?痛覚も鈍くなっていて痛みは感じ無かった。いや、斬られた瞬間は熱い様な、冷たい様な感じがした。
「はぁはぁはぁ。やはり貫通持ちか。防御の意味は無いって事ね」
フレイアは私を見て、薄ら笑いを浮かべている。
(その余裕、今にみていろ)
私も頭に血が登って来たみたい。
『光之神槍』
魔法で創り出した槍が、光の速さでフレイアを貫く。呪文の使用説明には、光速で回避不能な上、貫通効果も得られると書かれていた。しかし、身体を貫いたが、傷が一瞬で塞がった…のが見えたが、フレイアの姿は消えていた。私は数メートル先の床に這つくばっていた。どうやら一瞬で背後に回られて、キセルで後頭部を殴られ、頭が吹き飛んだ様だ。
「ロード様、手を貸さなくて宜しいので?」
ロードの側近が尋ねた。
「ミズキの力は神をも倒せる。だがミズキには、戦闘経験が圧倒的に足りない。しかし、実戦に勝る経験など無い。それも相手は魔王級だ。これ以上の実戦経験などあるまい?不死であるミズキに敗北は無いから安心して見ていろ」
「しぶといわねぇ。不死がこれほど厄介だとはねぇ」
攻撃は効くが、すぐ元通りになる私に有効な攻撃方法を考えあぐねている様子だ。
「まぁでも、閉じ込めちゃえば良いのかしらねぇ?」
魔王の名に恥じないほど、強力な魔法攻撃をして来る相手だ。閉じ込められれば脱出は不可能かも知れない。
「流石は魔王ね。ゲームでこんな強いボスが出て来たら、ブチ切れてコントローラーを壁に投げ付けてるわ」
「貴女、不死の特異性だけで大した事ないわねぇ。ロードが貴女に入れ込んだ理由が良く分からないわねぇ?」
両手を翳すと不気味な青黒い光に包まれて行く。
『光之堅牢』
それよりも早く私が光呪文を唱えると、光の牢屋が現れて私を閉じ込めた。
「光の牢屋に包まれている間は攻撃が出来ない。また、相手の攻撃も受け付けない」と説明文にあった。もしかするとこの中にいる間は、相手の結界を無効化するのではないのか?と思って使ってみた。フレイアが唱えた呪文が光の牢屋に弾かれて消えた。思った通り、結界を無効にするようだ。
(防御は意味が無い。そして死なないなら、攻撃に特化して特攻しようか。光呪文で一定時間光速で動ける様にして、身体強化も限界まで掛けよう。それでダメなら手詰まりだ)
覚悟を決めて連続で呪文を唱えた。フレイアは此方の攻撃が来るのを見越して身構えるのかと思いきや、相変わらずキセルで煙草を吸っているかの様に魔力を吐き出している。
「砕!」
渾身の光のスピードに乗った全力攻撃を放った。しかし、ひらりと躱された。
(嘘でしょ?)
まさか光の速さで繰り出した攻撃を、躱されるとは思わなかった。カウンターで身体を凍らされて、足首を掴まれた。床に叩きつけて身体を粉々にしようとしたのだろうが、直ぐに凍った身体が元に戻って行く。身体状態異常無効が効いている。掴んでいた手を放した瞬間、私の身体に青い光が走った。雷系の呪文だろう。
 一体何度私は床を這いつくばり、転がっただろうか?だけど良く考えたら、どれ程のダメージを受けても次の瞬間には平気で立ち上がれている。本当に私は死なないのだ。攻撃を受ける事に対して、不思議と恐怖心が無くなっていた。
 フレイアにゆっくりと近づいて行く。強力な魔法によって私の左顔半分が吹き飛び、お腹に風穴を開けられ、右肩も無くなった。それでも何事も無かったかの様に元に戻る。
『光収束砲!』
私はフレイアの足下の魔法陣を吹き飛ばした。キセルで吐き出されていた濃密な魔力が、魔法陣を描いている事に気付いたからだ。勿論、肉眼では魔法陣は見えない様に、細工されていた。フレイアが一定の範囲から動かないので、推測した。間違いだったら無意味な攻撃だったけども。
『光之神槍!』
続け様に唱えた光の槍が、フレイアの身体を貫くと、初めて床に倒れた。
「そこまで!」
ようやくロードが仲裁に入った。
「人間にしてはやる方だったわねぇ」
「お茶でも飲みながら今後について話そうか」
私がキョトンとしていると、笑いながら説明してくれた。フレイア達が私の傘下に加わる事は既に決定していたらしい。その上で、納得しない者の口を封じる為に敢えて戦って見せたとの事だった。そして私のレベル上げも兼ねていた様だ。レベル21だった私が一気にレベルが53まで上がっていた。人間は殺し合いなんて戦争でもない限り出来ない。だからレベルが上がりにくい。通常は年齢と共にレベルが上がるから、今の私は53歳相当と言う事かな?50歳過ぎるとステイタスにマイナス補正10%が付くのだが、不老不死の私にはマイナス補正が付かない。
 ロードから、これからは定期的にロードとフレイアと実戦形式でレベル上げを行っていく、と言われて愕然とした。ロードに魔王のレベルが幾つなのか尋ねると、99999以上は上がらないので分からないと言われた。すると、レベル約10万?
最低、レベル1万になるまでは続けると脅された…。人間のレベルって、そこまで上がらないのでは?知らないけども。だけど確かにレベルは上げた方が良い。結局、フレイアには勝てたとは言えない。恐らくロードも同じくらい強いだろう。私はまだまだだな、と溜息をついた。
 会議室の様な場所で3人で会談した。ロードの領地とフレイアの領地を統一し、彼女達は副王になり、私の側近として使える事になった。統治する政治担当はフレイアが行い、軍事に関してはロードが担になう事で決まった。そして、フレイア領の隣国「魔王クラスタ」が収める地を次の標的と決定した。魔王クラスタは、ロードにしつこく付き纏っていたらしく、ロードが侵攻して来たと聞けば、戦わずに城門を開けるかも知れない。準備を整えるまでフレイアの城下町でも散策したいな。あれからバタバタと慌ただしい日を数日過ごした。ようやく少し時間が取れたので、城下町を散策している。断ったんだけど、護衛を付けられてしまった。フレイアが着物を着ていたので、街並みは和風チックなのかと思っていたけど、本人の趣味ってだけで、全然和風ではない。まぁ期待してた訳ではないので、別に良い。むしろ、レンガで出来た家や、石畳など作りはヨーロッパ風だ。私としては和風チックより、こっちの方が外国に来た感じがして楽しい。
 屋台みたいなのもあり賑わっていて、活気があって良い。賑わってる屋台の前に来ると何か、焼き鳥みたいな感じで串に刺さっている。なんだろう?と思って近づくと、
「キャッ!」
思わず悲鳴が出てしまい、慌てて口を押さえた。
「あははは、ごめんなさい、あははは」と私は笑って誤魔化して、周囲に頭を下げながら後退りした。護衛が不思議そうに、「どうされましたか?」と聞いて来たので、私は虫が苦手で食べられないと伝えた。効率良く高品質なタンパク質が摂れるので、地上の人間の世界でも注目されていて、専門料理を出す所もあるけど、私は…ちょっとごめんなさい、無理です…。また民族によっては、主食になってたりもするので、その食べ物に対して失礼な態度を取って申し訳ない、と謝った。
(でも食べられない物は食べられないし。しかも私が一番苦手な蜘蛛クモに似た虫だったし、絶対無理。食べるどころか触るのも無理だよ…そりゃ悲鳴も出るわよ…)
テンションがダダ下がりで、しょぼくれて街を歩いていると、何やら香ばしい匂いがして来た。
 護衛の1人が3本ほど買って来て、「お口に合いますかどうか」と言って差し出された。見た目も匂いも焼き鳥のそれだった。何の肉か聞いてみると、ヂョウ・シーと言われ、初めは聞き取れず何度か書き直してしまった。ヂョウ・シーとは、アヒルに似た鳥だった。これは後から実物を見て知った。味もアヒルに似て淡白な味わいで、肉は柔らかくクセもなく、脂身は甘くてジューシーで美味しい。ちなみにアヒル、鴨かも、合鴨はどれも英語でダックと言う。一応、区別する時に鴨をワイルドダック、アヒルをドメスティックダックと呼ぶ。白いのがアヒルで、白く無いのが鴨と言う区別では無い。アヒルは家鴨と書く様に、真鴨化されたものの事で、鴨は野生のものの事なのだ。
 家禽とは、食用や卵、羽毛を取る為に飼育されている鳥の事だ。アヒルなんて食べた事無いよ、って言う人も、鴨蕎麦とか、鴨南蛮とか食べた事がある人はいるのでは?
「鴨の焼き鳥みたいで美味しい」
私が美味しそうに食べてるのを見て、私の為に買って来てくれた護衛も満足そうだった。
「なんか屋台ってだけでお祭りみたいで楽しいよね」
と油断していると、蠍の姿揚げが袋一杯に詰め込まれて売られているのを見てしまった。人間の世界でも、お菓子代わりに食べられてる国もあるよね。
「うげげ…」
食べた事無いけど、噂によると蟹と海老を足して割った様な味がして、美味しいらしいよね?そう言えば、台湾の屋台で串焼にされた蠍サソリを見たわ。若い女の子達にも人気で、スナック菓子の感覚で食べられてるらしいよね。私が物欲しそうに見てるのかと勘違いして護衛が、「買って来ましょうか?」と言うので、首を横に振って拒絶した。服とかアクセサリーとか無いのかなぁ?と思って店を案内してもらって向かっていると、衛兵達が何やら騒いでいる。すると大音量でサイレンが鳴り響いた。護衛が「敵襲です」と言って、城に急いで戻る様に促された。全力で走ってロード達と合流した。
「どうしたの?何があったの?」
私はロード達に報告している見張りに尋ねた。
「人間です」
息を整えながら報告した。
「人間?」
(魔王の居城でしょ、ここ?そんな騒ぐ事ですかね?)
「パーティーを組んで攻めて来ました」
「パーティーって、勇者とか?」
「分かりませんが、これが偵察の資料です」
顔の写真の様な物の下にステイタスが記入された資料だった。資料に目を通すと5人パーティーの内、2人に見覚えがある気がする。
「ミズキ、知った顔がいるのか?」
ロードから尋たずねられたが、はっきり分からないので首を横に振った。何か知ってるかもと思って、自動音声ガイドをONにした。
〝主様、中国のSSSランク張玉と歳を重ねて見た目が老いましたが、銃神SSランクの王がいます。2人とも主様とは浅からぬ縁がございます〟
「浅からぬ縁って、どんな縁なの?」
〝思い出したくも無い筈の前世の記憶だと考えられますが、それでも聞かれますか?〟
「何、その勿体ぶった言い方は?逆に気になるんだけど?」
〝それではお話致します。当時は台湾問題で中国と日本は水面下で緊張状態でした。主様は麻生さんと山下さんが日本政府によって召還された為、戦争になった場合、危険が及ぶのでは?と考え単身、台湾に渡りました〟
私だけでなくロードも聴き入っている。
「?」どうやら、ロードには自動音声ガイドの声が聞こえているみたいだ。
〝そこで出会ったのが彼らです〟
ウンウンと頷いて話を聞く。
〝張玉とは主様が台湾に渡って、旅行気分に浸られている時に出会いました。彼は主様に一目惚れし、一緒に食事に行ったり、足湯に行ったりとデートされ、主様もまんざらでは無い様子でした〟
「えっ?巧とは?私が浮気してたの?」
〝いえ、浮気ではございません〟
「それで、どうして思い出したく無い記憶なのかな?」
〝はい、それはここからの話となります〟
ゴクリと唾を飲み込んで続きを聞いた。
〝2人は良い雰囲気のままその日は、別れられました。翌日、主様は空軍国防部に侵入を試みて失敗し、王に捕らえられ犯されたのです〟
「はっ?えっ?今何て…?」
〝主様は、王に犯されました。正確には、犯されかけました。全身を舐め回され、口で奉仕させられた後、局部に押し当てられましたが挿入される前に、張玉に助けられた為、未遂に終わりましたが、私は顔面蒼白になり、身体がガタガタと震えた。
突然フラッシュバックし、その時の記憶がまるで映像の様に次々と脳裡に浮かんでは消えた。私は意識を失って、その場に倒れた。意識を取り戻して目が覚めると、攻めて来た中国軍パーティーはどうなったのか聞くと、敵のSSSランクが魔王級であり、銃神スキル持ちのSSランクも相当に厄介で、かなりの犠牲が出たとの事だ。幸いにも遺体は野晒しにはされず、全て回収されていた。スキルがなぜ幸いかと言うと、回復魔法SSSだけが使える『死者蘇生』を使って蘇らせ、重症者も『完全回復』で治療出来るからだ。私がいれば被害もリセット出来る強味がある。遺体や重症者の傷の殆どが、銃による物だった。私を辱めたアイツ…、アイツだけは何とかしないとダメだ。必ず思い知らせてやる。固い決意を胸に、城壁から中国軍の方を向いて睨んだ。
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