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【第1部〜序章編〜】
第5章 女性になった私が告白されちゃった
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それにしても飛行能力か。人類の夢だもんなぁ。皆んな誰もが子供の頃一度は、自分の力だけで空を飛んでみたいと思った事はあるだろう。その夢が叶うんだ、ワクワクしない訳がない。飛んでみたい。
そう言えば、女性変化の効果はどのくらい持続するんだ?空を飛んでる時に、時間切れで落ちたらまず死ぬな。不老不死だって女性の時だけの能力では?これは色々と検証してみる必要があるな。
非常階段を登って人目につかない様にしながら、屋上に出た。ここに来た目的は、こっそり空を飛んで見ようと思ったからだ。今までは屋上なんて来た事はなかったが、最近になって麻生さんがお昼に来る事を知って、お昼に公園と屋上を行き来する様にしていた。日中とは異なって夜の屋上からの景色はまた違って見える。ネオンの明かりがイルミネーションの様に綺麗だ。いつもならもっと沢山のネオンが灯ともっていたに違いない。
(あの声の、この力のせいで日本の治安が悪くなった。これからどうなる事やら)住んでいたアパートはまだ無事なんだろうか?別に災害が起こったわけじゃないんだから大丈夫だろう?と思いを馳せた。正直、世界がとか日本がとか、そんなスケールでの心配よりも人間は身近な自分の世界が壊されず、平穏であれば良いと思うものだ。日常が平穏ならそれで良い。
ふと目線を手すり側に向けると、山下がいた。
(なんで山下がここに?)
慌てて出ようとしたら、呼び止められた。
「待って、お嬢さん!話したい事があります!」
(お、おおおお嬢さん、って私?)
「は、はい?」
声をかけられるとは思わなかったので、驚きで声がうわずってしまった。
返事をして振り返ると、山下が目の前に詰め寄っていた。
(怖いぞ、山下…)
「あ、あの、その、さっき廊下でぶつかっちゃって、触ったのはわざとでは有りませんでした。ごめんなさい」
と言って深々と頭を下げた。
(嘘つけ、故意に胸を揉んだって言ってただろ!)
「えーと、わざとじゃないなら大丈夫です。それでは…」
その場を早く離れたくて話を切り上げようとしたが、山下は挨拶をして来た。
「営業二課の山下巧と言います。貴女のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
と尋たずねて来たので、思わず反射的に、「瑞稀です」と本名を応えてしまった。
「ミズキ…さん?何ミズキさんですか?」
(しまった。しかし、こいつ意外にぐいぐい来るな)
「神崎です。神崎瑞稀…」
咄嗟に母の旧姓を名乗って、その場を取り繕うとした。
「神崎さん!」と呼ばれて両手で肩を掴まれた。
「な、なんでしょうか…?」
何がしたいんだ山下?怪訝な表情で見つめると、急に真剣な表情をした。
「貴女に一目惚れしました。生涯貴女だけを愛します。結婚を前提に付き合って下さい」
掴まれていた肩を引き寄せられて、そのままハグされた。
(力、強っ。マジか山下。ほとんど初対面の相手にいきなりコレは凄いな。最近の若い奴らは皆んなこんな感じなのか?)
ハグから脱出を試みようと、両手で山下の胸を押して引き離そうとするが力が強くてびくともしない。
(確かこいつ、武闘家AAAだったよな?)
「ちょっ、苦し…」
弱々しく呟くと、抱きしめられてた手が緩んだ。
「すみません。どうしようもなく、貴女の事が好きです。絶対に後悔はさせません。付き合って下さい、宜しくお願いします!」
そう言って土下座された。
「あの、分かりましたから、立って下さい」
こんな所を誰かに見られる訳にはいかない、早く山下を起こそうと手を差し伸べた。
「ありがとうございます、必ず幸せにしてみせます!」
と言うなり手を引き寄せて抱きしめられ、キスして来た。あまりに唐突過ぎて躱せず、無理矢理に唇を重ねられた。
必死に離れようとしたが、力を込めて抱きしめられ、左手で頭を押さえられて舌を入れられた。私は目をクルクル回しながら、両手で肩を叩いてもう止めろと意思表示したが、そのまま1分以上されるがままだった。ようやく離れた瞬間に、ビンタを食らわせてやろうと右手を振り上げたが、簡単に手首を掴まれた。
「嫌でしたか?」
(何をどうして嫌じゃないと思ったんだ?)
「付き合ってもいないのに、いきなりキスされれば怒りますよね?」
「え?OKしたんじゃ?」
「はい?どこでOKされたと思ったんですか?」
「分かりましたと言われて、手を差し伸べられたので」
「それは、土下座されてる所を誰かに見られたりしたら恥ずかしいからですよ!」
「それにOKでも、いきなりキスは早過ぎるでしょ?」
「貴女を真剣に愛してる意思表示です。普通なのでは?」
この明らかにズレてる感性、でも私には理解出来た。こいつはドラマの見過ぎだ、それも中国ドラマの。私と山下が先輩後輩の関係を越えて仲良くなった理由は、お互い中国史が好きだったからだ。中国史好きが高じて中国ドラマもよく観ている。ちなみに中国ドラマの事は華流(ファリュウ)ドラマと呼ぶ。華流ドラマでは主人公が好意あるヒロインに、いきなり口付けをして大好きアピールをするのが定番だ。でもここは日本だし、中国だってドラマの世界での話だ。日本では距離感が重要だし、何よりもムードを大切にする。
(説教してやろう、こいつの為にも)
「いきなり抱きしめて来たり、キスして来たり、貴方を強制猥褻で訴えます」
「そんな、心から愛しているのに…」
ぽろぽろと大の男が人目も憚らず泣き出した。周りに人がいないのが幸いだ。
「あ、えっと、本気では。いきなりキスされて、頭に来て…。お願いだから泣かないで」
まさか泣き出すとは思わず、オロオロと狼狽えてしまった。
「すみません、泣くつもりは…。悲しくなっちゃって。せめて友達からお付き合いして頂けませんか?」
「はぁ…まぁ、友達なら…」
(実際、先輩後輩の域を越えて友人のつもりだしな。男女の情は勘弁して欲しいけども)
山下は大喜びしながら、再び私を抱きしめた。
「ほら、友達はハグなんてしないでしょう」
肩を両手で優しくタップして離れろアピールをした。結構イケメンな方だと思うが、拗らせているなぁ。だから彼女がいないんだな?と理解した。
(ごめんよ山下。お前が惚れた相手は女じゃないんだ。正体を知ったらショックを受けるだろうなぁ。私はお前とは付き合えないし、結婚も出来ない)
ようやく山下から解放された後は、トイレで何度もうがいをして口の中を濯ぎ、人目のつかない場所で元の姿に戻って、支給された毛布1枚に包まって眠りについた。その間、山下から電話とLINEの着信が何度も来たが、スルーしてやった。それにしても長い1日だった。明日からは今日までとは違う新たな1日が始まるだろう。
そう言えば、女性変化の効果はどのくらい持続するんだ?空を飛んでる時に、時間切れで落ちたらまず死ぬな。不老不死だって女性の時だけの能力では?これは色々と検証してみる必要があるな。
非常階段を登って人目につかない様にしながら、屋上に出た。ここに来た目的は、こっそり空を飛んで見ようと思ったからだ。今までは屋上なんて来た事はなかったが、最近になって麻生さんがお昼に来る事を知って、お昼に公園と屋上を行き来する様にしていた。日中とは異なって夜の屋上からの景色はまた違って見える。ネオンの明かりがイルミネーションの様に綺麗だ。いつもならもっと沢山のネオンが灯ともっていたに違いない。
(あの声の、この力のせいで日本の治安が悪くなった。これからどうなる事やら)住んでいたアパートはまだ無事なんだろうか?別に災害が起こったわけじゃないんだから大丈夫だろう?と思いを馳せた。正直、世界がとか日本がとか、そんなスケールでの心配よりも人間は身近な自分の世界が壊されず、平穏であれば良いと思うものだ。日常が平穏ならそれで良い。
ふと目線を手すり側に向けると、山下がいた。
(なんで山下がここに?)
慌てて出ようとしたら、呼び止められた。
「待って、お嬢さん!話したい事があります!」
(お、おおおお嬢さん、って私?)
「は、はい?」
声をかけられるとは思わなかったので、驚きで声がうわずってしまった。
返事をして振り返ると、山下が目の前に詰め寄っていた。
(怖いぞ、山下…)
「あ、あの、その、さっき廊下でぶつかっちゃって、触ったのはわざとでは有りませんでした。ごめんなさい」
と言って深々と頭を下げた。
(嘘つけ、故意に胸を揉んだって言ってただろ!)
「えーと、わざとじゃないなら大丈夫です。それでは…」
その場を早く離れたくて話を切り上げようとしたが、山下は挨拶をして来た。
「営業二課の山下巧と言います。貴女のお名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
と尋たずねて来たので、思わず反射的に、「瑞稀です」と本名を応えてしまった。
「ミズキ…さん?何ミズキさんですか?」
(しまった。しかし、こいつ意外にぐいぐい来るな)
「神崎です。神崎瑞稀…」
咄嗟に母の旧姓を名乗って、その場を取り繕うとした。
「神崎さん!」と呼ばれて両手で肩を掴まれた。
「な、なんでしょうか…?」
何がしたいんだ山下?怪訝な表情で見つめると、急に真剣な表情をした。
「貴女に一目惚れしました。生涯貴女だけを愛します。結婚を前提に付き合って下さい」
掴まれていた肩を引き寄せられて、そのままハグされた。
(力、強っ。マジか山下。ほとんど初対面の相手にいきなりコレは凄いな。最近の若い奴らは皆んなこんな感じなのか?)
ハグから脱出を試みようと、両手で山下の胸を押して引き離そうとするが力が強くてびくともしない。
(確かこいつ、武闘家AAAだったよな?)
「ちょっ、苦し…」
弱々しく呟くと、抱きしめられてた手が緩んだ。
「すみません。どうしようもなく、貴女の事が好きです。絶対に後悔はさせません。付き合って下さい、宜しくお願いします!」
そう言って土下座された。
「あの、分かりましたから、立って下さい」
こんな所を誰かに見られる訳にはいかない、早く山下を起こそうと手を差し伸べた。
「ありがとうございます、必ず幸せにしてみせます!」
と言うなり手を引き寄せて抱きしめられ、キスして来た。あまりに唐突過ぎて躱せず、無理矢理に唇を重ねられた。
必死に離れようとしたが、力を込めて抱きしめられ、左手で頭を押さえられて舌を入れられた。私は目をクルクル回しながら、両手で肩を叩いてもう止めろと意思表示したが、そのまま1分以上されるがままだった。ようやく離れた瞬間に、ビンタを食らわせてやろうと右手を振り上げたが、簡単に手首を掴まれた。
「嫌でしたか?」
(何をどうして嫌じゃないと思ったんだ?)
「付き合ってもいないのに、いきなりキスされれば怒りますよね?」
「え?OKしたんじゃ?」
「はい?どこでOKされたと思ったんですか?」
「分かりましたと言われて、手を差し伸べられたので」
「それは、土下座されてる所を誰かに見られたりしたら恥ずかしいからですよ!」
「それにOKでも、いきなりキスは早過ぎるでしょ?」
「貴女を真剣に愛してる意思表示です。普通なのでは?」
この明らかにズレてる感性、でも私には理解出来た。こいつはドラマの見過ぎだ、それも中国ドラマの。私と山下が先輩後輩の関係を越えて仲良くなった理由は、お互い中国史が好きだったからだ。中国史好きが高じて中国ドラマもよく観ている。ちなみに中国ドラマの事は華流(ファリュウ)ドラマと呼ぶ。華流ドラマでは主人公が好意あるヒロインに、いきなり口付けをして大好きアピールをするのが定番だ。でもここは日本だし、中国だってドラマの世界での話だ。日本では距離感が重要だし、何よりもムードを大切にする。
(説教してやろう、こいつの為にも)
「いきなり抱きしめて来たり、キスして来たり、貴方を強制猥褻で訴えます」
「そんな、心から愛しているのに…」
ぽろぽろと大の男が人目も憚らず泣き出した。周りに人がいないのが幸いだ。
「あ、えっと、本気では。いきなりキスされて、頭に来て…。お願いだから泣かないで」
まさか泣き出すとは思わず、オロオロと狼狽えてしまった。
「すみません、泣くつもりは…。悲しくなっちゃって。せめて友達からお付き合いして頂けませんか?」
「はぁ…まぁ、友達なら…」
(実際、先輩後輩の域を越えて友人のつもりだしな。男女の情は勘弁して欲しいけども)
山下は大喜びしながら、再び私を抱きしめた。
「ほら、友達はハグなんてしないでしょう」
肩を両手で優しくタップして離れろアピールをした。結構イケメンな方だと思うが、拗らせているなぁ。だから彼女がいないんだな?と理解した。
(ごめんよ山下。お前が惚れた相手は女じゃないんだ。正体を知ったらショックを受けるだろうなぁ。私はお前とは付き合えないし、結婚も出来ない)
ようやく山下から解放された後は、トイレで何度もうがいをして口の中を濯ぎ、人目のつかない場所で元の姿に戻って、支給された毛布1枚に包まって眠りについた。その間、山下から電話とLINEの着信が何度も来たが、スルーしてやった。それにしても長い1日だった。明日からは今日までとは違う新たな1日が始まるだろう。
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