Perverse second

伊吹美香

文字の大きさ
上 下
187 / 196
episode 6

決着

しおりを挟む
「私はもういいです。次のターゲット見つけたので」



何かに狙いを定めたかのようににやりと笑った竹下は、やっぱり男性社員からの人気が高いだけある。



魔性の笑みとでも言うのだろうか。



顔だけ見れば騙されるな……とこっそり思った。



竹下の言う次のターゲットとは、間違いなく津田さんだろう。



……頑張れ津田さん。



「じゃ、私帰りますんで。続きしても構わないですけど、これからの時間は人通り多くなりますから気を付けてくださいねー」



「しませんっ」



ムキになる三崎を見て竹下は鼻で笑うと、ヒールを鳴らして去っていった。



続きと言われても……。



俺は構わないけど、三崎はもうきっとキスさえさせてくれないだろう。



「……帰ろ」



ほら、もうそんなことを呟いている。



このまま帰してなるものか、と俺は慌てて三崎の手を取った。



「俺、まだ帰ってきたばっかで一緒に帰れねぇけど」



「まだ早いから大丈夫よ」



「そうじゃねぇだろ。話はこれからだっつってんの」



まったく何とぼけた事言ってんだよ。



三崎の気持ちは伝えてもらったけれど、俺からはまだ何も伝えていない。



ちゃんと言葉にするには、ここでは無理がありすぎる。



「速攻で終わらせてくるから、家で待っててくれるか?」



そう言うと俺はポケットの中からキーケースを取り出した。



「6階の610だから」



三崎の手を取りそっと手の中にキーケースを収めると、『ちゃんといろよ?』と祈りのように呟いて、返事を聞かずにリラクゼーションルームを出ていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

【完】あなたから、目が離せない。

ツチノカヲリ
恋愛
入社して3年目、デザイン設計会社で膨大な仕事に追われる金目杏里(かなめあんり)は今日も徹夜で図面を引いていた。共に徹夜で仕事をしていた現場監理の松山一成(まつやまひとなり)は、12歳年上の頼れる男性。直属の上司ではないが金目の入社当時からとても世話になっている。お互い「人として」の好感は持っているものの、あくまで普通の会社の仲間、という間柄だった。ところがある夏、金目の30歳の誕生日をきっかけに、だんだんと二人の距離が縮まってきて、、、。 ・全18話、エピソードによってヒーローとヒロインの視点で書かれています。

恋人契約

詩織
恋愛
美鈴には大きな秘密がある。 その秘密を隠し、叶えなかった夢を実現しようとする

トップシークレット

凛子
恋愛
池上部長が、度々小さな秘密を打ち明けてくるようになった。

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子
恋愛
 来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。  学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。  ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。  そんなじれじれな話です。 *学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記) *エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。 *拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。  ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。 *作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。 関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役) 『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー) 『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル) 『物狂ほしや色と情』(名取葉子) 『さくやこの』(江原あきら) 『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)

処理中です...