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episode 6
決着
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会社に戻り一人でエレベーターに乗り込み階数を押すと、俺は壁に背中をあずけた。
暫くすると途中で止まり、ドアが開く。
「あ」
「あ」
そこに立っていたのは、ご褒美を渡すべき相手、三崎だった。
「お疲れ」
笑みを浮かべて三崎の顔色を伺うと、「お疲れ様」と三崎は晴れ晴れしく笑って乗り込んできた。
「コーヒー買ってきたの?」
エレベーターの中に充満している香りに気が付いて、三崎は何気にそう言った。
「ああ。給湯室のコーヒー、苦手なんだよ」
「私も」
俺はコーヒーの入ったビニール袋からコーヒーを一つ取り出すと、隣で笑う三崎に差し出した。
「ほら」
「え?」
戸惑う三崎の前で、カップを軽くゆすって受け取れと合図する。
「でもこれ、柴垣くんのでしょ?」
「俺のもちゃんと買ってきた」
ビニールの中のもう一つのコーヒーの存在を確認させ、「これはお前の」と微笑む。
「ありがとう…」
申し訳なさそうに受け取った三崎に、もう一つ、チョコレートを渡す。
「あとこれも。お前がいつも食べてるヤツ、ホワイトチョコも出てたぞ?」
「ありがとう。でもいいの?」
驚いたように俺を見上げる三崎の顔は喜びいっぱいにみえる。
こんなに喜ぶなんて、買ってきた甲斐があったってもんだ。
「ご褒美だ」
「ご褒美?」
俺の真意がわからない三崎は、小首をかしげて俺に問いかける。
その仕草が堪らなくて手が出そうになった瞬間。
指定階数に到着したエレベーターのドアが大きく開いた。
「なんでもねぇよ」
そう言って咄嗟に手を引くと、照れ隠しのように三崎を残して下りて行った。
暫くすると途中で止まり、ドアが開く。
「あ」
「あ」
そこに立っていたのは、ご褒美を渡すべき相手、三崎だった。
「お疲れ」
笑みを浮かべて三崎の顔色を伺うと、「お疲れ様」と三崎は晴れ晴れしく笑って乗り込んできた。
「コーヒー買ってきたの?」
エレベーターの中に充満している香りに気が付いて、三崎は何気にそう言った。
「ああ。給湯室のコーヒー、苦手なんだよ」
「私も」
俺はコーヒーの入ったビニール袋からコーヒーを一つ取り出すと、隣で笑う三崎に差し出した。
「ほら」
「え?」
戸惑う三崎の前で、カップを軽くゆすって受け取れと合図する。
「でもこれ、柴垣くんのでしょ?」
「俺のもちゃんと買ってきた」
ビニールの中のもう一つのコーヒーの存在を確認させ、「これはお前の」と微笑む。
「ありがとう…」
申し訳なさそうに受け取った三崎に、もう一つ、チョコレートを渡す。
「あとこれも。お前がいつも食べてるヤツ、ホワイトチョコも出てたぞ?」
「ありがとう。でもいいの?」
驚いたように俺を見上げる三崎の顔は喜びいっぱいにみえる。
こんなに喜ぶなんて、買ってきた甲斐があったってもんだ。
「ご褒美だ」
「ご褒美?」
俺の真意がわからない三崎は、小首をかしげて俺に問いかける。
その仕草が堪らなくて手が出そうになった瞬間。
指定階数に到着したエレベーターのドアが大きく開いた。
「なんでもねぇよ」
そう言って咄嗟に手を引くと、照れ隠しのように三崎を残して下りて行った。
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