97 / 196
episode 3
リセット
しおりを挟む
扉を開いてしまったら。
部屋に一歩でも足を踏み入れてしまったら。
もう自分を抑えられないことは十分に分かっていた。
「柴垣くん?」
電気のスイッチに伸びた三崎の手を止めるため、俺は大きく踏み出した。
嫉妬ともどかしさに狂った俺の顔なんて明るい光の中で見られたくなかったから。
強引に三崎を壁に押し付け、ドンッと腕の中に閉じ込めた。
「…なに…してるの?」
「アイツと同じこと」
三崎が戸惑いがちに聞いてくる。
「中西さんはこんなに近くなかった」
「近づかれる前だったんだろ?」
中西なんかよりも近すぎる俺たちの距離。
ふわりとアルコール混じりの息がかかるが、それもまた媚香のようだ。
「お前、俺が来なかったらどうしてた?」
「え?」
意地悪な質問だと思う。
けれど中西には微塵も可能性がないということを、三崎の口から聞きたかった。
「俺が来なかったらお前はアイツについて行ってたわけ?」
「そんなわけっ……っ」
そう、聞きたかったのに。
その言葉を最後まで聞く余裕もなかった俺は、その唇を無理やり塞いだ。
言葉を発している途中だった唇は既に開かれていて、閉じさせるものかと舌を捩じ込む。
三崎の感情なんて全く無視した身勝手で最低なキス。
それでも逃げることなく容易に絡め取れた三崎の舌との水音は、俺の正気を簡単に無くしてしまった。
部屋に一歩でも足を踏み入れてしまったら。
もう自分を抑えられないことは十分に分かっていた。
「柴垣くん?」
電気のスイッチに伸びた三崎の手を止めるため、俺は大きく踏み出した。
嫉妬ともどかしさに狂った俺の顔なんて明るい光の中で見られたくなかったから。
強引に三崎を壁に押し付け、ドンッと腕の中に閉じ込めた。
「…なに…してるの?」
「アイツと同じこと」
三崎が戸惑いがちに聞いてくる。
「中西さんはこんなに近くなかった」
「近づかれる前だったんだろ?」
中西なんかよりも近すぎる俺たちの距離。
ふわりとアルコール混じりの息がかかるが、それもまた媚香のようだ。
「お前、俺が来なかったらどうしてた?」
「え?」
意地悪な質問だと思う。
けれど中西には微塵も可能性がないということを、三崎の口から聞きたかった。
「俺が来なかったらお前はアイツについて行ってたわけ?」
「そんなわけっ……っ」
そう、聞きたかったのに。
その言葉を最後まで聞く余裕もなかった俺は、その唇を無理やり塞いだ。
言葉を発している途中だった唇は既に開かれていて、閉じさせるものかと舌を捩じ込む。
三崎の感情なんて全く無視した身勝手で最低なキス。
それでも逃げることなく容易に絡め取れた三崎の舌との水音は、俺の正気を簡単に無くしてしまった。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説

【完】あなたから、目が離せない。
ツチノカヲリ
恋愛
入社して3年目、デザイン設計会社で膨大な仕事に追われる金目杏里(かなめあんり)は今日も徹夜で図面を引いていた。共に徹夜で仕事をしていた現場監理の松山一成(まつやまひとなり)は、12歳年上の頼れる男性。直属の上司ではないが金目の入社当時からとても世話になっている。お互い「人として」の好感は持っているものの、あくまで普通の会社の仲間、という間柄だった。ところがある夏、金目の30歳の誕生日をきっかけに、だんだんと二人の距離が縮まってきて、、、。
・全18話、エピソードによってヒーローとヒロインの視点で書かれています。

じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
モテ男とデキ女の奥手な恋
松丹子
恋愛
来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。
学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。
ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。
そんなじれじれな話です。
*学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記)
*エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。
*拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。
ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。
*作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。
関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役)
『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー)
『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル)
『物狂ほしや色と情』(名取葉子)
『さくやこの』(江原あきら)
『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる